風立ちぬ・美しい村/堀 辰雄

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新潮文庫

堀 辰雄(1904年12月28日 - 1953年5月28日)は、それまで私小説的となっていた日本の小説の流れの中に、意識的にフィクションによる「作りもの」としてのロマン(西洋流の小説)という文学形式を確立しようとした小説家。フランス文学の心理主義を積極的に取り入れ、日本の古典や王朝女流文学にも新しい生命を見出し、それらを融合させることによって独自の文学世界を創造しました。肺結核を病み、軽井沢に療養することも度々あり、そこを舞台にした作品を多く残しました。

『風立ちぬ』は、実体験をもとに執筆された代表的中編小説。美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、重い病に冒されている婚約者に付き添う「私」が、やがて来る愛する者の死を覚悟し、それを見つめながら2人の限られた日々を「生」を強く意識して共に生きる物語。

『美しい村』は、初期の代表的作品で、「序曲」「美しい村 或は 小遁走曲」「夏」「暗い道」の4章から成り、「夏」の章において、のちの『風立ちぬ』のヒロインとなる少女が登場します。まだ夏早い軽井沢の高原の村を訪れた傷心の小説家の「私」が、1人そこに滞在しながら、村で出会ったことを徒然に書いてゆくフーガ形式の物語。

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