「古典屋」 赤羽 勲・木村 邦雄さん    追憶 #1  新橋 地下鉄・プロムナード

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その昔、地下鉄銀座線新橋駅の改札口近く、地下鉄構内にあった「古典屋」は、「目も眩むばかりの世界」に 私を引きずり込んだ記念碑的な店でした。

店主の赤羽さんが六本木で質屋を営む傍ら、昭和20年、新橋・地下鉄ストアーに「生活骨董の店 古典屋」の看板を挙げたのが始まり。

得体の知れない諸々の宝物が、地下鉄への通路に面してうず高く積み上げられている。
戦後の焼け跡の雰囲気を色濃く残し、余人を寄せ付けぬ砦のごとき趣であった。

この宝島を発見した時は、
なぜか、熱い血潮が体の隅々までドックン・ドックンと流れるのを感じました。
さて、赤羽さんはと言えば、掃溜めに鶴といった風情の旦那様で、
駆け出しの若者の無知で無礼な問いかけにも丁寧に応え、
モノにまつわる知識や、こだわりを色々と教えて頂きました。

フランス枕と愛称される古時計に最初に出逢ったのがこの店
真鍮のフレームに、面取りガラスの端正な置時計。

裏面の扉を開き、カリッ・カリッと鍵を巻く。
上から覗くと脱進機がリズミカルに回りだす。 
機密性が高く音が静か、枕元においても気にならない。
枕時計と呼ばれるゆえんだ。  
まさしく「美しい機械」との出逢いであった。

さて、その赤羽さんは'77年70歳で亡くなられ、
口ひげが特徴的な番頭の木村さんが跡を継がれた。 
お店には、もう一人、紺色の事務服を着た甲高い声のおばさんが、店番をしていた。

この店で、北原照久さんや緑川洋一氏と何度となくすれ違ったことです。

1970年代前半、新橋地下の大規模開発(WING 新橋)に伴い、古典屋は八重洲の梅田ビルに移転。 
梅田晴夫さんのオフォスのあったビルで、
「紳士のライセンス」など、男の嗜みやこだわり・薀蓄の著作を多く著す。
一方「GEM の会」を主宰し、コレクター同士の交流会などが催されていた。

やがて、その梅田ビルも再開発と言うことで、渋谷区東へ移転した。  
そうです、ここを訊ねたときにも、忘れられない物語が有りました。  

それはまた後程・・・

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