六種の薫物とは?
平安時代には、粉末にした香料を調合し、蜂蜜や梅の果肉などを使って練り合わせた薫物(たきもの)と呼ばれる練香がお香の主流だった。基本となる調合方法をもとに、香料を微調整しながらオリジナルの薫物を創作することは、平安貴族にとって教養や財力、センスの良さを表現するものでもあった。このように創作されてきた薫物の中から優れたものは後世に引き継がれ、洗練されていき、その代表格が「六種の薫物(むくさのたきもの)」と呼ばれる。
六種の薫物は、「梅花(ばいか)」「荷葉(かよう)」「侍従(じじゅう)」「菊花(きっか)」「落葉(らくよう)」「黒方(くろぼう)」の六種類の香り。その調香処方は、平安朝の薫物記述の古文献『薫集類抄』に詳細記載され現代に伝わる。後伏見天皇、後小松天皇の各『宸翰書』も、『薫集類抄』に基づいている。
鎌倉時代末期に記されたとされる香道の起源・香趣を説いた伝書である『後伏見院宸翰薫物方(ごふしみいんしんかんたきものほう)』などでは、それらを春夏秋冬になぞらえている。