テーラードジャケットのバリエーションとは?
今回はジャケットを愛用する3名(LOUD GARDENクリエイティブディレクター岡田亮二さん、服飾ジャーナリスト倉野路凡さん、ミューゼオ・スクエア編集長成松淳)のお気に入りのジャケットを紹介。それぞれのこだわりやお気に入りのポイントがどうバリエーションの幅を広げているのか見ていこう。
ベーシックなシングルジャケットもディテールで全く違う印象に
視覚的にスタイル良く見える! パーツに工夫が盛り込まれたお気に入りの一着。
5年ほど前にテーラー羊屋さんでオーダー。生地はハリスツイードを使用。見た目の割には軽い着心地。胸ポケットのデザインはバルカポケット。背面はサイドベンツ。
着心地が重たくならないよう裏地面積はコンパクトに。
カントリーテイストのある外付けパッチポケット。袖と合わせて革ボタンで統一した。
衿はノッチドラペルで幅広め。上り衿なのもスタイルを良く見せる工夫の一つ。
お気に入りのポイントは、視覚的にマイルドな肩周りに見えること。もともと肩が怒肩っぽく見える体型なので、それを補正するために首元に向かって富士山のようにぐっと衿を登らせて、さらに肩幅の距離を縮めるように肩を内側に入れて詰めてもらったんです。テーラーの羊屋さんが僕の体型や気にするポイントを良く理解してくれて形にしてくれた一着ですね。(服飾ジャーナリスト・倉野路凡さん)
ロバートレッドフォードに憧れてオーダーした一着。
ムーンビームはラムズウールとアンゴラを織り上げた、着心地柔らかな高級服地生地。
スラント(傾斜した)のチェンジポケット。
袖は4つボタンの本切羽を採用。
「映画「夜霧のマンハッタン」で俳優のロバート・レッドフォードが都会的な着こなしをしていたのがかっこよくて。彼が着用していたような黒白のヘリンボーン柄ジャケットがずっと欲しかったんです。ラペルやポケット、袖などはオーソドックスな組み合わせなので、少しエレガントな印象にするために着丈はやや長めでリクエスト。これに白のボタンダウンシャツ、黒のニットタイ、グレーフランネルのパンツ、そして黒のストレートチップシューズを履けば、モノトーンで都会的なニューヨークトラッドスタイルの出来上がりです」(倉野さん)
日本でまだ珍しかったハッキングジャケットをオーダーで再現。
倉野氏初めてのオーダーがこちら。英国で著名な生地メーカーTEVIOTEX(テビオテックス)のツイード。コートに使用もされるかなりヘビーウェイトのもの。乗馬用のジャケットデザインらしく、バックの深いセンターベントが特徴。
日本では仕入れが珍しい「TEVIOTEX(テビオテックス)」の生地タグ。
オプション追加で依頼したターンナップデザインの袖。
Vゾーンが狭く、通常よりラペルが短いのがハッキングジャケットならでは。
「当時まだ日本で手に入りにくかった英国のハッキングジャケット(乗馬用ジャケット)をイメージしてオーダーしました。背面のセンターベントや、スラントポケット、Vゾーンが狭い衿周りなど乗馬している時の利便性を考えた本来のデザインをできるだけ忠実にリクエスト。ターンナップ袖に至っては、自分でデッサンして縫製工場に無理言って再現してもらったんです。その甲斐あってか、ジャケットを着て渋谷駅を歩いてたら中年専用のモデル事務所からスカウトを受けました(笑)」(倉野さん)
柔らかい素材×カッチリフォルムの組み合わせはオーダーならでは。
ホーランド&シェリーのカシミアのダブルフェイス生地(2枚の異素材を組み合わせて一枚にしたてた生地)を使用。コートに使用されるヘビーウェイトのもの。
ビビッドなレッドカラーの裏地(ライニング)。リアブラウン&ダンスフォードのサテン生地を使用している。
腰ポケットは両サイドともチェンジポケット。右脇は3連に。
衿裏にも挿し色のレッドのチェック柄を採用した。
「まずはこのカシミア素材を使ってジャケットを作りたかったんです。一般的にカシミアは柔らかな素材感と柔らかなフォルムでデザインされることが多いのですが、そこは敢えてかっちりとした印象になるようにお願いしました。特に肩周りはコーンケープ気味の構築的なデザインになっています。また、レッドカラーの裏地や、衿裏、3連のチェンジポケットなど、パーツに変化を加えて、一件シンプルな中にもエッジを効かせたのが僕なりのこだわりです」(ミューゼオ・スクエア編集長 成松 淳)
個性派ジャケット、違いはどんなパーツ選びに表れる?
一見ベーシックなダブルジャケットも変形パーツで個性派な一着に。
生地はマーティンソンのイングリッシュフランネルで一番肉厚なものをチョイス。
裏地は赤・白・青のトリコロールカラーに。
ボタンは8つ。ボタンホールのカラーにも少し遊びを。
前身頃を合わせるところがカーブした独自のライン
「ネイビージャケットとしてもスーツとしても 幅広く使用できるように作ってもらいました。ダブルジャケットの中でもかなり変形したダブルジャケットだと思います。ラペルはフィッシュラペルに近い幅広のセミピークドラペルで大きくカーブしているところが個性的。胸のフラップポケットもラペルのカーブに合わせてカーブしています。ディテールには凝っているけれど、ぱっと見オーソドックスなネイビージャケットに見えるところがお気に入りのポイントです」(成松)
サーティーズデザインを意識したエレガントなパーティージャケット。
葛利毛織さんにお願いした別注のオリジナルハートカモフラージュ生地を使用。
裏地はオリジナルのハートカモフラージュのシルク。
生地違いのスラントさせたチェンジポケット。
ゴージラインが高めのピークドラペル。衿幅も広めでエレガントな印象に。
「(サーティーズファッションと称されることも多い)1930年代の独特なスタイルをイメージしました。セットアップでパーティーシーンなどでも使えるエレガントさが特徴です。スラントポケット(水玉柄)を内側にしまっても違和感のないようにポケット位置を低めに設定、また一つボタンのカッタウェイフロントで裾を開き気味にするなどディテールにこだわりました。もともとはクラッシックなデザインですが、全体的には軽快な印象になるよう仕上げています」(LOUD GARDENクリエイティブディレクター・岡田亮二さん)
カントリーテイストにディテールでモダンさをプラス。
裏地は表地とは対照的に目がさえるような明るいパープル。
袖口&フロントには大小サイズ違いの革ボタンを。
衿裏には同系色のカモフラ柄生地。ノッチトラペルの衿にタブをつけ、カントリーテイストを演出。
「着丈が長く細身、体にフィットするデザインのエドーワーディアンスタイルのジャケットをイメージしました。カントリーテイストの生地を使いつつも逆スラントのポケットや大小のボタンを使うことでモダンなテイストに仕上げています」(岡田さん)
細身にシェイプして強い印象を与えるロングジャケット。
裏地はスカル柄のものを使用
ターンナップ袖でボタンは5つ
通常より衿幅が細めでシャープな印象
「細く長くというコンセプトで作ったロングジャケットです。ノッチトラペルの衿も、コンセプトに合わせて衿幅を意識的に細くしています。胸元は箱ポケット、腰にスラントさせたチェンジポケット、背面はセンターベンツを採用しています。着丈の長さも特徴で、意志の強い印象を与えたい時に着用しています」(岡田さん)
ラペルパーツだけでもこんなに!胸元を比較してみた!
ノッチドラペル、ピークドラペル、フィッシュマウスラペルなどの形や、ゴージラインの位置、そして衿幅の違いで胸元のバリエーションが広がる。肩周りも、なだらかなラインを描くナチュラルショルダーや、しっかりとした存在感を放つロープドショルダーなど印象も違ってくる。
ーおわりー
クラシッククロージングを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
男のお洒落はこの3人に学べ!
シャツからジャケットまでオールシーズンのものを29点紹介
カジュアルからドレスアップまでのメンズシャツ
スポーツ、ドレス、ミリタリー、ワークシャツと4タイプのデザインを、素材を替えてシャツからジャケットまでオールシーズンのものを29点紹介。女性も着られるSサイズからM、L、XL、XXLの5サイズ実物大パターンつき。