「カシミヤ」の特徴とお手入れ方法。秋冬の服地・獣毛素材を知る

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文/ミューゼオ・スクエア編集部

涼しくなってきて、スーツやジャケットの素材も色々と楽しめるようになってきました。この時期に気になるのが、保温性に優れているカシミヤ、アンゴラ、アルパカ、キャメルなど。これらを総称して獣毛素材と呼ぶのですが、それぞれどんな特徴があって、どんな違いがあるでしょう?
スーツやジャケットを新調する前に、獣毛素材について一つ一つを深掘ってみませんか?

今回は、カシミヤについて。

暖かく、ソフトな触り心地が特徴のカシミヤ。ニットやストールに使われているのをよく見かけますが、上品な見た目と着心地の良さでスーツやジャケットの素材の中でも人気です。

秋冬の代表的な素材「カシミヤ」とは?

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カシミヤは、カシミヤ山羊という種類の山羊から採取される獣毛素材。冬の寒さをしのぐために生えてきた産毛のみを原料としています。

名前の由来は、インドの山岳地帯カシミール(Kashmir)からとったもの。現在の産地は、中国、中央アジア、イラン、イラク、トルコ、チベットなどに広く分布しています。

強度の関係で単独の素材として使われるのはジャケットがほとんどで、スーツに用いられる場合は、他の繊維と混紡しているものが多いようです。

カシミヤの特徴は主に3つ「保温性・肌触り・保湿性」

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①冬は暖かく夏は涼しい!?
空気を多く内包し、熱伝導率が低いので、冬は特に暖かく着用できます。生地の織り方次第では、夏でも比較的涼しく過ごせます。

②極上の触り心地
軽く伸縮性に優れているので、肌触りが非常にしなやかで柔らかい。また弾力性があり、シワもなだらかで型崩れしないのもカシミヤの特徴です。

③優れた保湿性による艶と光沢
カシミヤの表面のキューティクル構造が空気中の水分を吸収・放出するので、一定の湿度を保ってくれる機能があります。この保湿性による独特のヌメリ感で、艶と光沢のある色彩が楽しめます。

※カシミヤ、アンゴラ、モヘアとの違い

毛足が長くふんわりとした風合い、保温性に優れている点など、カシミヤとアンゴラ、モヘアの3素材は似ており、よく比較されています。アンゴラはアンゴラウサギ、モヘアはアンゴラ山羊からの毛からできています。

カシミヤを選ぶ前に知っておきたいこと

カシミヤって、どうしてこんなに値段が高いの?

実は、山羊一頭から採れるのは150g程度といわれています。先述の通りカシミヤの原料となるのは、冬場に生えてくる「柔毛」という産毛のみ。クシでかき集めても、一頭から採れる量はごくわずかです。ニット1着に必要となる量は、約4頭分で、他の獣毛と比べても高価なのです。

カシミヤの品質の見分け方って?

アイテムによって様々な生産方法があるため一概には言えませんが、手で触った時に簡単に毛が脱落してしまうものは耐久性が低くなっている可能性があるので、日常使いにはおすすめできません。また、生地がスカスカなものを選んでしまうと、最初のタッチは良くても、すぐに消耗してしまう恐れがあります。購入の前には、目の詰まり具合も確認してみてください。

目的によって最適な混率をセレクト!

肌触りを重視するなら、カシミヤ100%が最適

カシミヤ100%のジャケット

カシミヤ100%のジャケット

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柔らかな肌触りや着心地を求める場合は、カシミヤ100%が理想的です。保温性が高まり、機能面でも最高のポテンシャルを発揮してくれるはず。もし強度を高めたいという場合は、混紡素材もおすすめです。

耐久性を考えるなら、ウール混を選択

ウール90%、カシミヤ10%のコート

ウール90%、カシミヤ10%のコート

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スーツやコートなどの耐久性を優先するアイテムは、ウールとの混紡素材を選ぶと実用的です。カシミヤのなめらかなタッチと美しい光沢感を残しながら、ウールならではのハリと強度も備わって気負わずに着られます。

光沢感を出すなら、シルク混がベター

エレガントな見た目が重視されるストールなどの小物は、カシミヤとシルクの混紡がおすすめです。カシミヤの繊維はシルクの風合いと相性がよく、両者がもつ光沢がミックスされる相乗効果でより高級感が高まります。

カシミヤのデメリットも知っておこう!

「生地の宝石」とも呼ばれるカシミヤですが、着用後のお手入れが必要で日常使いしづらいことなど、短所もあるんです。素材の良し悪しを知って、選ぶ基準にしてみてください。

①繊維が細いため、摩擦に弱い
デリケートな繊維なので、摩擦に弱く、毛玉ができやすいというデメリットがあります。股部分が擦れるトラウザーズには、単独の素材として用いるのは向きません。

②水に弱い
汚れに弱く、一度シミができてしまうと落としにくくなります。雨などで濡れたらすぐに拭いてあげるようにしましょう。

③虫食いされやすい
他の生地にも言えることですが、虫食いが発生しやすいので保管には気をつける必要があります。長期保管する場合は、ジップ付きのビニール袋で密封し、乾燥剤や防虫剤などを一緒に入れておくことをおすすめします。また、密封する前にはよく乾燥させましょう。

カシミヤは定期的なお手入れが必要!

カシミヤは、繊維表面にスケール(キューティクル構造)が存在します。このスケールの反り返り同士が着用中の摩擦などで絡み、毛玉ができてしまうのです。カシミヤと長く付き合っていくためには、定期的なお手入れをする必要があります。

着用後はこまめにブラッシング

カシミヤは、カシミヤ専用のブラシを使うのがおすすめです。今回使用したのは、「<a href="https://artbrush.shop/" target="_blanck">浅草アートブラシ</a>」のもの

カシミヤは、カシミヤ専用のブラシを使うのがおすすめです。今回使用したのは、「浅草アートブラシ」のもの

着用後は形を整え、毛並みに沿ってブラッシングをしましょう。またカシミヤは撥水性が弱いので、水分のついた部分がシミになることもあります。雨などで濡れたら早めに拭いて、乾いたあとにブラッシングをしてください。

シミができた時のメンテナンス

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カシミヤにシミがついてしまうと、そのシミが虫食いの原因となってしまうことも。もしシミができたら素早く対処しましょう。
柔らかいタオルに薄めた洗剤をつけ、叩くようにしてシミを拭き取ります。そのあと、水に浸したタオルで洗剤をきれいに拭き取ってください。最後にブラッシングをして、乾くまで部屋干ししてください。

毛並みが寝てしまった時のメンテナンス

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毛が寝てへたってしまっときは、アイロンのスチームをあてて陰干しをしておくと、ふんわりした毛並みが復活します。ただし、アイロンを直接あててはいけません。また、生地が伸びないように置いて干しましょう。

カシミヤは摩擦に弱い繊細な素材なので、どうしても毛玉はできてしまいます。毎日連続して着用することは控え、こまめにお手入れをしながら上手く付き合っていきましょう。

ーおわりー

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公開日:2019年10月7日

更新日:2022年5月2日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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