伝統を継承する英国アンティーク家具の魅力

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文/竹治昭宏

気品漂う大人の家具。そんな言葉が英国のアンティーク家具にはよく似合う。英国の職人技が成したデザインと、歴史を刻んだ装飾美など、一言では言い表せない魅力が詰まってる。インテリアに取り入れたいと思っている人も多いのでは?

そこで、自社工房にて丁寧に修復を施した英国のアンティーク家具を中心に、照明・食器・雑貨など幅広く扱う東京・目黒のアンティークショップ「ジェオグラフィカ」の岡田明美さんに、英国アンティークの歴史と魅力について話を伺った。

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時代ごとに異なる様式。好きなデザインを探ろう

英国アンティーク家具のおもしろいところに、元々の用途にとらわれないことがあります。例えば1930年代、ウォールナット材のウォッシュハンドスタンド。

1930年代、ウォールナット材のウォッシュハンドスタンド(参考商品)

1930年代、ウォールナット材のウォッシュハンドスタンド(参考商品)

マーブル(大理石)トップや真鍮製のタオル掛け、すっきりとしたテーパードレッグなどのアンティークならではの趣をもった家具は、お部屋のアクセントにもぴったり。収納や飾り棚としての実用性も兼ね備えています。当時キャンドル立てに使われていたであろう小棚部分は、現代でも小物やお花を飾ったりと素敵にアレンジできそうです。自由な発想で家具を楽しむのも英国アンティーク家具を味わう秘訣です。

英国アンティーク家具はその多くが1点もの。同じデザインのものを見つけることは難しく、例え、同じデザインであったとしても、使われてきた状況などによってどれも異なる表情を持っています。そんな唯一無二のラインナップの中から自分だけの出会いを楽しむのも、アンティーク家具の素敵なメリットといえるでしょう。

英国のアンティーク家具の魅力といえばクラシカルなデザイン。現代では再現が難しい、細やかな細工が施されているのもアンティークの見所のひとつです。デザインは、時代によって曲線的で優雅なものから、シンプルなものまでさまざまです。当時、貴族階級のために作られた家具には、時代の変化などによって「王制」と「様式」がリンクしており、ゴシック様式チューダー様式などが存在します。

例えばチューダー様式の家具は英国アンティーク家具の原点ともいうべき存在。浅浮き彫りと呼ばれる比較的凹凸の少ない彫刻デザインが際立ちます。

アンティーク家具好きならば、誰もが知っている「猫脚(カブリオールレッグ)」。 これはクイーンアン様式を代表するもの。緩やかで優雅な曲線のデザインが見る人を惹きつけます。

浅浮き彫りはチューダー様式のみならず、その後のさまざまな様式の家具に用いられてきた。

浅浮き彫りはチューダー様式のみならず、その後のさまざまな様式の家具に用いられてきた。

クイーンアン様式を代表するデザインの一つであるカブリオールレッグ。その後のジョージアン期を通しても良く用いられ、現在に至っても大変ポピュラーなデザインとなっている。語源はフランスの舞踏用語。さらにさかのぼるとイタリア語のCapriolaとなる。これは山羊が飛び跳ねることを意味している。

クイーンアン様式を代表するデザインの一つであるカブリオールレッグ。その後のジョージアン期を通しても良く用いられ、現在に至っても大変ポピュラーなデザインとなっている。語源はフランスの舞踏用語。さらにさかのぼるとイタリア語のCapriolaとなる。これは山羊が飛び跳ねることを意味している。

1837年、ビクトリア女王の時代になると折衷主義と呼ばれたヴィクトリアン様式が登場します。これは左右非対称の豪華絢爛な装飾が特徴的なバロック様式や、アシンメトリーで自由な輪郭が優美・繊細なロココ様式などのデザインを取り入れ、より機能的な家具を目指したものになります。特権階級のための様式家具が一般市民のものになり、多種多様なスタイルが混在してきます。

この通り、時代によって英国アンティーク家具にはいろんなデザインが登場します。特に英国が世界の覇権を握っていた黄金時代のころに流行したヴィクトリアン様式の家具は、高い人気を誇ります。

「脚」のデザインひとつとってみても、昔から使われてきた伝統的なデザインを基にどれも凝っていてとても優雅です。球根のような「ブルボーズレッグ」、ゴルフのパッドに似た「パッドフットレッグ」、先に行くほど細くなるシンプルな脚「テイパードレッグ」、お菓子の形に由来する「ツイストレッグ」や美しい曲線が魅力の「カブリオールレッグ」など、脚だけでも注目してみると楽しいと思います。

ブルボーズレッグのドローリーフテーブル(参考商品)

ブルボーズレッグのドローリーフテーブル(参考商品)

ツイストレッグのオケージョナルテーブル(参考商品)

ツイストレッグのオケージョナルテーブル(参考商品)

木材でわかる、アンティークの時代背景

また、歴史の流れとともに家具製作に使われる木材のトレンドが変化しているのも大切なポイント。時代を追うごとに、「オーク材」「ウォールナット材」「マホガニー材」といった3種類が主に使用されます。

オーク材

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17世紀までの家具によく使われていたのが、強度や耐久性に優れた「オーク材」です。虎班(とらふ)と呼ばれる木目と、重厚な雰囲気の質感が特徴的で、英国アンティークといえば、まずこのオーク材製をイメージする方も多いです。

ウォールナット材

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続いて17~18世紀に人気を博したのが艶やかな木肌が魅力の「ウォールナット材」です。ウォールナット材はゆがみや収縮も少なく、頑丈な家具作りには最適でした。使い込むうちに馴染む艶やかさは、アンティークならではの味わいを引き出します。

マホガニー材

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最後に18世紀にウォールナット材に取って代わり主流になったのが、赤みを帯びた色合いと光沢のある木肌が特徴の「マホガニー材」です。マホガニー材は木目が締まっていて、とても頑丈。それでいて材質はやわらかく、加工しやすいという特性があります。そのため、今まで主流だったオーク材やウォールナット材などの堅い木材では表現できなかった繊細な装飾や彫刻が可能となり、それまでの家具にはなかったアイテムが作られるようになっていきました。

日本のライフスタイルに寄り添う、アンティークならではの個性

英国アンティーク家具は、素材と構造、そしてデザイン。この3つのバランスが大切です。年代ごとにジャンルや様式、その呼ばれ方は変わりますが、主に1930年代ごろまでに作られたものを「アンティーク」というのが一般的です。1930年代以降の新しいものはヴィンテージ家具と呼ばれています。

アンティーク家具として日本に輸入されているものは、1920~1960年ぐらいの間に作られた実用性のある家具がほとんど。これらの家具は折衷様式と言われ、古くからあるさまざまな様式を取り入れ、デザインされたものです。

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残念なことに、質の良いオーク材やマホガニー材で作られた家具は、現代では手に入らない贅沢な素材となってしまいました。いま同じものを作ってもアンティークと同じ値段では提供できず、とんでもないコストになってしまうのが現実です。本当の意味で本来の木材の良さを引き出した家具の美しさを楽しむことができるのは、アンティークの強みです。

ひとつひとつ手づくりで、丁寧な彫刻が施された美しいクラシカルなデザイン、そして使い込んだ独特の色合い。高級だけど、現代では考えられないほどの質に対するコストパフォーマンスのよさ。これらのことが英国アンティーク家具の魅力になってくるでしょう。

現代の家具にはない魅力にあふれた英国アンティーク家具。お部屋に置きたいと思った際に、他の家具がアンティークではないからといって躊躇してしまうのはもったいないことです。別にセットで揃える必要はありません。ダイニングを買ったら、次はキャビネットを追加して……。そういった具合に気に入ったものを選んでいけば、アンティーク家具の懐の広さを感じていただけるはずです。

機能面や価格面では、現代の家具の方が使い勝手が良いかもしれないけれど、アンティークは時代とともに歩んできた本物であり、メンテナンスしながらいつまでも大切に使い続けてほしい逸品。それが英国アンティーク家具の醍醐味なのではないでしょうか。

ーおわりー

※本記事に掲載されている製品はすべて参考商品です。

File

ジェオグラフィカ

東京・目黒通り沿いに店舗を構える、アンティークショップ。地下1階から3階までの広い店内には、目利きのバイヤーが現地から買い付けてきた家具、照明、アンティーク小物が幅広く豊富に取り揃えられている。購入したアイテムは店舗スタッフが丁寧にアフターサービスの対応をしてくれる。アンティーク家具に囲まれた店内の雰囲気を楽しみながら食事をすることができるカフェも併設。不定期でアンティークにまつわるイベントも開催される。

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公開日:2019年10月15日

更新日:2021年12月2日

Contributor Profile

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竹治昭宏

出版社にてファッション誌などの編集・執筆に携わり、現在はさまざまな媒体を通して編集・執筆。さらにはインタビュー、ブランディングからプロモーション、キャスティングまで幅広くお仕事をしております。

終わりに

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長い年月が経ったからこそ滲み出る味わいや風合いがあるアンティーク家具。特に英国アンテイークは当時の生活スタイルや持ち主の生活感などが映し出されており、時代背景や昔の様子が窺えるところがおもしろかったです。最近はシンプルな北欧スタイルの家具やアメリカのインダストリアル系が世の主流だが、モダンなインテリアとも調和する英国アンティーク家具に新たな魅力を感じます。

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