意外と身近なシャンデリア
シャンデリアといえば、高級ホテルやお金持ちの家に飾られているイメージがあったが、現在では店舗の照明に使われたり、意外と身近な存在になってきた。
ミュージックビデオに使われる機会もあり、印象的だったのはAKB48が一躍有名になった2010年に発売された「ヘビーローテーション」だ。この中で大島優子が猫耳をつけてシャンデリアと戯れるシーンがある。ビデオを監督したのは蜷川実花である。
【MV full】 ヘビーローテーション / AKB48 [公式]より。記載のシーンは02:30〜。
お店で見た中では、フレグランスで人気のJO MALONE LONDONに飾られていたブラックのシャンデリアが印象的だった。
さて、アンティークのシルバーカトラリーと同様にシャンデリアを集めている。具体的にいうとアンティークのクリスタルのパーツなのだが、シルバーカトラリーのように刻印による製造年代がわかるわけではなく、製造した国も不明という困りものなのだ。
国内のアンティーク市で見かけたら購入している程度のゆる~い熱意のコレクションで、いちおう販売している店主にどこ製なのかは確認している。不明あるいは仕入れたのはフランスという場合が多く、製造国などの詳細はわからないのだ。
ボクのなかでは製造年が明確にわかるイギリス製のシルバーカトラリーとは対照的に、見て楽しむという感覚的な楽しみ方をしているのである。
イギリスのシルバーカトラリーにはホールマークが刻印されている。これで製造年などがわかるのである。
シャンデリアの起源を辿る
シャンデリアの歴史を簡単に説明しておくと、中世初期に登場し、教会などの大きな空間を照らす照明として存在していた。
この頃はまだ蝋燭が光源の地味なものだったが、18世紀になると鉛ガラスが普及し、現在のようなガラス製のシャンデリアが登場する。光源もガス灯から電球へと進化を遂げている。
たぶんだが、ヨーロッパ製の名のあるアンティークの高級なシャンデリアなら、ガラスはボヘミア(現在のチェコ)の工房で作られたガラスだろう。
ボクが買っているのはバラバラに解体されたシャンデリアのパーツである。つまりそれほど高級なシャンデリアではなかったのではないかと推測する。
中古の普及品だからバラバラにしてパーツごと売っているのだろう。ガラスを科学的に分析すれば成分の含有率もわかり、どこ製なのかわかるかもしれないが、そんな不粋なことはしない。
普及品であっても、それほど古い物でなくても満足しているのだ。
多面カットされたクリスタルガラスは、まるで宝石のよう
集めているクリスタルパーツというのは、クリスタルガラスが針金で数珠つなぎになったクリスタルラインと呼ばれるものと、先端にぶら下げるものがある。
先端につくのは少し大ぶりの多面カットされたもので、涙型のドロップ型、球状のボール型、縁がギザギザになったリーフ型などがある。
基本的に透明なものが多いが、少し黄ばんだもの、茶系のスモーキーなものもある。
多面カットされたドロップ型は、ボクにとっては宝石のようなもので、見ていて飽きることがない。
透明度やカットの美しさに関しては現行品には敵わない。現在のシャンデリアのパーツではスワロフスキーのものがトップのようで、写真で見る限り、美しさはボクが集めているものより数段上だ。
ちなみにスワロフスキーは双眼鏡も有名で、それだけ透明度が高い高品質なクリスタルを製造できるということなのだ。
役目を終えたクリスタルを、もう一度輝かせる
現在でもいろいろなメーカーがシャンデリアを手掛けているが、有名どころではウィーンのロブマイヤーだろう。
ハプスブルク家お抱えで、王宮やN.Y.のメトロポリタンオペラのシャンデリアもロブマイヤーのものだ。アイルランドで創業したウォーターフォードも有名で、ロンドンのウエストミンスター寺院にも納めている。
もっとも日本で馴染み深いのはやはりバカラだろう。恵比寿ガーデンプレイスに飾られる巨大なシャンデリアは見る価値がある。
バカラの凄いところはフィリップ・スタルクなどの有名なデザイナーを起用し、モダンなシャンデリアを世に送り出しているところだ。これまでシャンデリアというとクラシックなイメージだったが、それを払拭し続けるバカラは立派なのである。
アンティークのシャンデリアのパーツ収集は誰かに見せる機会もなければ、シルバーカトラリーのように使う機会もない。
しかも輝きにおいては現行品のパーツに劣っている。それでも集めているのは、過去には美しく輝き、住人や来客者を照らし、ときにはうっとりさせたに違いない、そう思うからだ。
役目を終えていまはボクのところで休んでいるが、いつか手作りのシャンデリアを作って、もう一度クリスタルたちを輝かせてあげたいと密かにたくらんでいる。
ーおわりー
コレクションを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
ガラス工房に今も息づく職人技と歴史を訪ね、類い稀な逸品を収蔵するミュージアムを巡る工芸紀行。
欧州ガラス紀行 (ほたるの本)
何故、同じワインの味もグラスによって異なるのか、この『欧州ガラス紀行』を一読したら答えがわかることでしょう。そしてワインの味にもうひとつ深みやニュアンスも加わるはずです。グラスは食器であると同時に、ヨーロッパの輝きの芸術。ハプスブルク家やブルボン王朝始め王侯貴族に愛され、ジャポニスム、ベルエポック、世紀末ウィーンに咲いた光の華。そんな優雅な背景を知れば知るほどワインも美味しさを増すというもの。あっ、ビールでももちろん。そういえば懐石の名店ではカリガラスのグラスをビールに用いますね。「カリガラス?」これも本書を一読いただければ・・・と。
世紀末ウイーンに開花したガラス工芸の名門
終わりに
集めているクリスタルガラスはヨーロッパのものもあるが、日本製のものもあるようだ。
日本でも高度経済成長期には富裕層の一般宅に飾られていたわけだし、それが世に出てきてもおかしくはないだろう。
ちなみにボクが初めて家庭用のシャンデリアを見たのは高校生の時。同級生のお家がお医者さんで、そのリビングに吊るされていた。現在ではお手頃なシャンデリアもあるようだが当時はまだまだ高額だったに違いない。その頃にシャンデリアに目覚めたのだと思う。