トルコは何かにつけて紅茶を飲む文化がある
トルコのガラスカップやランプが一面を埋め尽くすセヴィンチエイトの店内。その中でも、色とりどりのガラスカップが店頭の目立つところに陳列されています。
トルコは紅茶を飲む独特な文化があるとのことですが、そもそもトルコとはどんな国なのでしょうか?
まずはトルコという国について、代表の小坂さんに聞きました。
「トルコはヨーロッパとアジアの間に位置し、シルクロードの最終地でもありました。東洋の文化も西洋の文化も、いろんな文化が入ってきやすい土地なんです。多くの文化に触れてきた歴史があるので、芸術の感度が高い国民性だと思います」
セヴィンチエイトの小坂さんによると、日本人がお茶を飲む量より、トルコ人が紅茶を飲む量のほうが多いといいます。
トルコで紅茶文化が盛んになったのは20世紀と言われており、コーヒー豆が高騰して高級品となったため、かわりに紅茶を飲み始めたのが、紅茶が広まったきっかけとされています。
「トルコ語で紅茶をチャイと言います。
日本人がチャイと聞くと、インドのミルクやスパイスが入っているものをイメージすると思うのですけど、トルコのチャイはミルクも砂糖も入れない、普通のストレートティーです。紅茶の作り方も独特で、チャイダンルックという二段重ねのティーポットで作るんです」
店舗スタッフで、トルコで生まれ育ったブルジュさんがトルコのチャイ事情を詳しく説明してくれました。
「チャイで使う茶葉は日本で売っている紅茶の茶葉とちょっと違いますね。
トルコのチャイは、まろやかな味が多いと思います。トルコでは、朝ご飯のときにチャイを飲みますし、ランチまでの休憩時間でもチャイを飲みます。ランチを食べた後もすぐチャイを飲みに行きます。晩ごはんの後、ちょっとテレビ見ようと誰かが言ったら、じゃあチャイ作りますねってなるんです。
お客さんが来たときもずっとチャイを飲んでますね。だから、トルコではチャイの茶葉を2~3kgぐらいの量で売ってるんですよ」
「トルコ人は、1日で大体20~30杯ぐらい飲んでいると思う」と小坂さん。
すごい杯数ですが、トルコでは、チャイを飲むとき、専用の小さいティーカップで飲むのが一般的だそう。
トルコのティーカップは小さなチューリップ型がスタンダード
トルコではチャイを飲む用のティーカップをチャイグラス、またはチャイバルダックと言います。独特の形状の理由を小坂さんが説明してくれました。
「トルコで一般的なチャイグラスがこの形状です。チューリップの形から来ていると言われていますが、真ん中がすぼんでいることで、チャイが冷めにくくなるんです。このカップで100ccですね。日本の一般的なティーカップは200ccぐらい入るので、半分ぐらいのサイズですよね。トルコではこのチャイグラスに砂糖を何杯も入れて飲むんです」
ブルジュさんが補足してくれました。
「トルコではチャイを熱いまま飲むので、冷めないうちに飲み干せる量になったんだと思います」
トルコのチャイグラスは「取っ手がついていないのが一般的」と小坂さん。
「このチューリップ型のチャイグラスは、トルコでは取っ手がついていなくて、トルコの人はそのまま手で持って飲みます。当店では取っ手が付いているタイプもあるんですが、これは日本人が使いやすいように、当店がオリジナルで取っ手を付けたタイプになります」
より本場の雰囲気を味わいたいなら、取っ手なしでチャイを飲むとよさそうですね。
ソーサーの中央に、ティアドロップのマークが見えます。これがトルコの老舗ガラスメーカー、パシャバチェ社のマーク。
「このカップアンドソーサーでパシャバチェ社が手掛けているのは、ガラスの形状だけなんです。装飾は当店が職人さんに発注しています。パシャバチェ社は装飾を施していない商品をいくつも扱っているので、日本でも、カフェなどに行くとこのマークがあるカップを見かけますね」
無数にあるチャイグラスの中から、小坂さんがおすすめを1つ選んでくれました。
「当店では、こんなデザインが人気ですね。
トルコを意識したモザイクっぽいデザインが、日本であまり見かけないからだと思います。繊細なデザインだから脆そうに見えるかもしれませんが、パシャバチェ社はすごくしっかりしたガラス製品を使っているので、見た目より丈夫なんです。もちろん耐熱ですし」
ブルジュさんによると、ソーサーの赤い色にも意味があるそうです。
「トルコのチャイは赤みがあるので、チャイを注いだときカップが赤い色だと、チャイがきれいに見えるんです。同じ理由でソーサーにも赤い色が使われているんです。
最近はトルコでも、もっと凝ったデザインが喜ばれるようになって、シンプルな赤はちょっと少なくなってしまいましたね」
特別な日用のゴージャスなデミタスカップ
エスプレッソなどを飲む小さいサイズのコーヒーカップ・デミタスカップもありました。
ちょっとおもしろいギミックを持ったデミタスカップがあるのも、様々なシーンでコーヒーを飲むトルコならでは。
ブルジュさんによると、来客用や特別な日用だそう。
「これは蓋がシュガーケースとしても使えるようになっていて、砂糖やひと口サイズのお菓子を入れられるようになっているんです。トルコでは普段シンプルなカップで飲むことが多いです。こんな豪華なカップはお客さんが来たときなど、特別な日に使われることが多いです」
「蓋の中に砂糖を入れて、お客さんに出します。砂糖を別に出すより、デミタスカップと一緒に出したほうがおしゃれですよね。メタルパーツは簡単に取り外しができるので、洗うのも簡単です。中のカップを別のカップに入れ替えて使ったりもできるんです」
蓋のデザインもイスラム文化ならでは。イスラム教の寺院・モスクをイメージさせますね。
取っ手が取り外せるデミタスカップも
エスプレッソなどを飲むデミタスカップもありました。取っ手が付いているものもあれば、取っ手が取り外せるものもあります。
取っ手が取り外せるようになっているのは、取っ手なしのでチャイやコーヒーを飲むトルコの文化が影響しているのかも。小坂さんも取っ手がないほうが使いやすいと話します。
「私は、コーヒーを飲むときは取っ手がないほうが飲みやすいと思います。特別な日用にはおしゃれなデザインがいいですけど、普段使いするなら、装飾は何もないのが一番飲みやすいんじゃないでしょうか。だから、取っ手が取り外せて、普段でも特別な日でもどちらも使えるようになっているのは便利ですよね」
異国の文化を知ってお茶を楽しむ
ティーカップだけでも種類豊富なトルコのガラス。ここで素朴な疑問が湧きました。
トルコのガラス産業が盛んなのはどうしてでしょう? 小坂さんに聞きました。
「オスマン帝国時代、ヨーロッパのほうまで領土を広げていたのですが、その時代にガラス製品が盛んになっていきました。
その後はヨーロッパで産業革命が起こって産業の工業化が進んだ影響を受けたり、オスマン帝国が衰退していったりして、ガラス産業は一度下火になっていったんです。
19世紀にオスマン帝国が滅亡し、トルコ共和国が誕生しました。
建国の父と言われる初代大統領アタチュルクは新しい国をつくるにあたり、銀行をつくったり貿易の整備をしたり、いろんな政策を行ったのです。
そのなかでガラス産業も整備され、パシャバチェ社というガラス製品の会社が作られました。パシャバチェ社は様々なガラス製品を海外に販売し、今は世界中に支店を持っています。当店でもパシャバチェ社から仕入れているガラス製品があるんです」
ひとつひとつデザインが違うチャイグラス。お気に入りを探してみたい。
チャイグラスはデザインや形状、装飾など幅広いバリエーションがありますが、どれもトルコの雰囲気をまとっており、1つあるだけでトルコのカフェにいるような気分になれます。そこでお気に入りを見つければ、お茶の時間がもっと楽しくなるに違いありません。
ーおわりー
sevinç8
トルコを中心とした国々のガラス食器、服飾雑貨、テキスタイル商品などを取り扱う雑貨店。直輸入商品のほとんどが現地の職人によるハンドメイド商品で、日本国内ではあまり見かけない独特の幾何学模様や明るい色使いが特徴。模様や色のひとつひとつに「幸せ」「調和」「繁栄」「魔除け」といった意味が込められている。自宅での使用はもちろん、大切な人へのプレゼントに購入していく人も多い。店名の由来は、トルコ語で幸せを意味する「sevinç(セヴィンチ)」と、末広がりを意味する数字の「8」を掛け合わせた造語。"末永く続く幸せ"を願う意味が込められている。
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明治から昭和初期にかけて、日本国内で生産が広まったガラス製品。
西洋のデザインを模倣した製品や、その途中でオリジナリティが加えられたもの、
また、日本古来の文様と融合したデザインなど、バラエティ豊かなガラスが作られていました。
同じ形であっても色や模様のバリエーションが多様で、様々な表情を見せています。
ガラスは、工業的な背景だけではなく、文化的な背景とともに発展してきました。
かき氷を盛るための「氷コップ」、アイスクリーム専用の「アイスクリームコップ」、
広まり始めた洋酒を飲むための「リキュールグラス」……。
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ガラスの持つ透明感や軽やかさの伝わる写真を数多く掲載。
細部へのクローズアップや、別角度からも見つめることで、さらに作品の奥深さを味わうことができます。