写真左端のサイズの小さいものから、Zゲージ、Nゲージ、TTゲージ、Oゲージ、Gゲージ。
Nゲージ、Oゲージ、Zゲージ……。サイズが違えば世界も変わる、鉄道模型の種類とは?
シンプルに言い換えれば、鉄道模型=鉄道のミニチュアなのだが、実は縮尺とゲージ(走らせる線路の幅)の違いでいくつも種類があるのをご存知だろうか。その違いがNゲージやZゲージという名前の違いで表現されているのだ。当然、走らせる車体や線路の種類が違えば、それにふさわしいジオラマのサイズももちろん変わってくる。
そのため、模型ファンの間ではこの種類違いで全く別の世界として捉えている人がほとんどだという。では、まずは代表的なものにどんな種類があるのかを解説していこう!
鉄道模型界の最小サイズ。Z(ゼット)ゲージ。
写真はドイツのメルクリン社製、ドイツ鉄道(DB) Regio AG 110形。
縮尺:1/220
線路幅:6.5ミリ
これ以上小さいサイズのものは登場しないだろうということからアルファベットの最後のZが使用されたのがZゲージの名前の由来。1970年代に世界最大の鉄道模型会社であったメルクリンが「ミニクラブ」の名で発表されたのがZゲージの始まり。
その小ささの利点を生かして手持ちができるトランクにレールやジオラマを作りこんで走らせるトランクレイアウトという楽しみ方もある。
日本でのシェア、人気を誇る定番。N(エヌ)ゲージ。
写真はドイツのTRIX社製、ドイツ鉄道(DB)ICE train 3型。
縮尺:1/148 ~160
線路幅:9ミリ
英語の9(Nine)の頭文字がNゲージと呼ばれる名前の由来。イギリスでは1/148、日本では1/150、そして欧米では1/160の縮尺が基準となっているため1数値に幅がある。
先に海外で主流となっていたHOゲージと比べ小型サイズなので、所有し走らせるスペースもコンパクトに収まるという利点もある。
大きなレイアウトを置くことができない家庭でも鉄道模型を楽しめることが魅力となり、日本国内ではNゲージは鉄道模型市場の約80%を占めるほど普及している。主要メーカーはKATO、TOMIX、マイクロエース、グリーンマックスなど。入門セットを販売しているメーカーもあるので、まず鉄道模型に興味を持ったらNゲージから揃えていくのがおすすめだ。
発祥は1950年代のアメリカ。HOより少し小柄なTTゲージ。
写真はドイツのPIKO社製、ドイツ鉄道(DB)ICE train 3型。
縮尺:1/120
線路幅:12ミリ
テーブルの上でも遊べる鉄道模型(Table Top)の意味から、その頭文字で略したのが名前の由来。HOゲージより少し後の1950年頃に登場。日本では日本型のTTゲージは生産されず、あまり普及しなかったが、のちに縮尺1/120で軌間が9mmのTTゲージナロー「tt-9」という規格が登場。すでにあるNゲージの線路の使用可能となった。
イギリス、ドイツをはじめとした海外基準サイズ。HO(エイチオー)ゲージ。
写真はアメリカのWalthers社製、ニューヨークセントラル鉄道 蒸気機関車。
縮尺:1/87
線路幅:16.5ミリ
名前の由来は先に登場していたOゲージの半分(Half)のサイズであるということから。世界の鉄道模型人口の大半がこのHOゲージのファンと言われるほど人気で、HOゲージ製品を生産するメーカーも多い。ドイツ北部にある世界最大の鉄道模型のテーマパーク・ミニチュアワンダーランドでもこのHOゲージの鉄道模型が採用されている。
HO登場以前に人気のあったO(オー)ゲージ。
写真は日本のDDF社製、JR東日本 205系総武線 自由形。
縮尺:1/43・45・48
線路幅:32ミリ
1900年代ごろに登場したOゲージ。国や車種、メーカーによっても縮尺が違うのだが、イギリスでは1/43、アメリカでは1/48の縮尺が主に普及している。日本では独自の縮尺1/45でOJゲージと呼び日本製の鉄道模型車両も登場している。第二次世界大戦後HOゲージの登場で、徐々にOゲージからHOゲージへと世界での人気が移っていった。
Zゲージとの大きさの違い約10倍⁉︎ とにかくBIGなG(ジー)ゲージ。
写真はドイツのLGB社製、ICE train風に製作された自由形。
縮尺:1/22.5
線路幅:45ミリ
トップの鉄道模型車両の整列写真で改めて見てみると、最小サイズであるZゲージとの差がすごいGゲージ。縮尺で比較すると約10倍ほどの差が。
ドイツ語で大きい(Gross)を意味するワードの頭文字が名前の由来になっているように、ドイツでの生産が盛んだった。日本ではあまり見かけられないタイプだが、ヨーロッパでは「庭園鉄道(庭の敷地など屋外にレールをひいて車両を走らせる)」向けの鉄道模型として浸透している。
知ってナルホド。鉄道模型トピックス!
日本初のNゲージはソニー製だった⁉︎
日本きってのものづくり企業として様々なプロダクトを生み出してきたソニー、実は元祖Nゲージの生みの親でもあった。1964年に鉄道模型に特化したソニーマイクロトレーンブランドを設立、第一号の試作品が関係者に配布されたが、一般発売までは至らず。その後ブランドも解散となってしまったため、現存しているサンプル車両はファンの間では垂涎の幻のNゲージとして非常に希少価値が高い。
鉄道模型界のパイオニアKATO。なんと始まりは社長の趣味だった。
鉄道模型ファンの間ではお馴染みの鉄道模型メーカーKATO。創設者の加藤裕治氏が趣味で製作した模型を鉄道模型博物館のコンクールに出品。見事入賞し、この道を極めていこうと意志を固めたことから1957年に起業したというから驚きだ。60年代からNゲージ開発、日本初のNゲージ車両販売を開始。水平走行だけではなく、線路に傾斜がついたカーブ通過時の実軌での傾きをリアルに再現した振り子機構を開発。業界の先駆者となっている。現在はKATO、そしてトミックス(玩具メーカートミーの子会社)が主要なNゲージ鉄道模型メーカーとして業界を牽引。他メーカーは2大メーカーが販売していないような鉄道模型車両をリリースするなど販売路線の違いに各社特徴が見られる。写真はKATO社の北陸新幹線車両「かがやき」
鉄道模型界の第一次・第二次ブーム到来! 0系新幹線、SL、ブルートレインなど実車両ブームと共に湧き上がる
1960年代〜80年代ごろまで、新幹線、SL(蒸気機関車)、ブルートレイン(寝台車)の鉄道ブームが巻き起こる。SLに至っては国鉄が日本での蒸気機関車廃止の意向を打ち出したことで、消えゆく車両を惜しむようにSLの走行を撮影したり、牽引する列車に乗る鉄道ファンが増加。それに伴うように鉄道模型界でも多くの車両が発売された。ただ、価格は2〜5万円と子供が買うには高額だったため当時憧れを抱いていた世代(50〜60代)が今現在の鉄道模型ファンのコア層にもなっている。ちなみに90年代に発売された鉄道運転シュミレーションテレビゲーム「電車でGO!」(タイトー)や、幼児向けのテレビ番組「きかんしゃトーマス」のヒットなどもあり、子どもと一緒に楽しむ母親・父親(ママ鉄やパパ鉄とも言う)なども取り込んで幅広い世代での鉄道模型ファンが急増したという。
より細部のリアリティを追求。改造マニア現る!
鉄道模型第一次ブーム時に比べ、各車両の精密さも格段にアップしているという現在の鉄道模型だが、そのまま走らせるだけでは芸がないと車両に改造を加えるファンも多くいるという。例えば、北海道函館本線で走っていたC62形蒸気機関車を「寒冷仕様」にするために、旋回窓(雨や雪を吹き飛ばすための回転装置がついた窓)を取り付けてみたり、新車両のようなピカピカの状態ではなくわざと汚れ塗装を施してみるなどファンによってこだわりの改造ポイントも細分化している。
鉄道模型撮影システムに3Dプリンタ。先端技術で楽しみをシェアする時代に
これまでも車両内にLEDや豆電球を仕込んで走行させたり、レールの継ぎ目の隙間を調整し車両の走行音に変化をつけたりと細かな車両改造での楽しみ方が開拓されてきた。そして今新たに、時代の先端技術を取り込んで楽しみの幅もより広がっている。カメラを搭載した車両を走行させてあたかも自分がジオラマの中で電車に乗って操縦しているような感覚を味わうことができるように。そして、3Dプリンタの登場で市場に出ていない車両を作り出すことも可能になってきた。さらには撮影動画をSNSでシェア、3Dプリンタで作成した車両を展示または販売するなど、今までの一人だけで楽しむ世界からファン同士のコミュニケーションを生んで楽しむという時代へと変化してきたようだ。
鉄道模型車両を持ち込むだけ! レンタルレイアウトで走らせる楽しみ方
鉄道模型というと「鉄道模型ジオラマを自作したり、広い場所にレールを設置しないと楽しめない」と思いがちだが、心配ご無用。自分の鉄道模型車両を持ち込むだけで楽しめるレンタルレイアウトというお店が存在しているのだ。店内には自宅で再現できないような大型の鉄道模型ジオラマが設置され、時間単位で利用料を支払うというシステムが一般的。お店の車両を走らせて楽しむことももちろん可能だ。またレンタルレイアウトの他にも、お酒や食事を楽しみながら鉄道模型を眺めたり、走らせたりできるお店もある。自宅の収納スペースや設置スペースを気にする必要なし。まずは試しに遊んでみたいという人にもオススメの楽しみ方だ。
ーおわりー
※おわび 「Zゲージの線路幅:9.5mm」とあったのは「Zゲージの線路幅:6.5mm」の誤りでした。2020年7月29日時点で修正しております。
鉄道模型を一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
コレクションを充実させたい人!これから模型を始めたい人も!
Nゲージカタログ 2021-2022 (イカロス・ムック)
2020年7月から2021年6月までに発売された新製品を、1両ずつ写真入りで紹介。ほしいモデル、買い逃したモデルを探すのをサポート。また、主要模型メーカーであるKATO、TOMIX、マイクロエース、グリーンマックス、MODEMO、ポポンデッタのラインナップの特徴や最新情報も収録。
世界最小! デスクトップのミニチュア鉄道
Zゲージパーフェクト入門(鉄道模型をはじめよう! シリーズ) (NEKO MOOK)
量産品で世界の模型メーカーがリリースする鉄道模型の中で、 各社共通のスケールとしては最小クラスのスケールと言われるのが1:220スケール、つまりZゲージです。
日本では2006年にプラスアップ社の手によりスタートし、7年の時間が経ちました。
その間何社か入れ替わりながら、現在大手4社によって車輌やレールが発売されています。
本誌は業界初めての入門本で、日本型Zゲージでの車輌、レールその他の周辺製品も含め1:220スケールを発売する各社の製品を横断的なカタログとして紹介し、鉄道模型のひとつの到達点であるレイアウト作品をはじめレイアウトプラン集など、既にZゲージを始めている人はもちろんこれから始める人も含め、全てのZゲージファンに送る必携本です!