最高のコミュニケーションツールであり、宝物でもある。バンドTシャツは、単なるお土産じゃない。

最高のコミュニケーションツールであり、宝物でもある。バンドTシャツは、単なるお土産じゃない。_image

取材・文 / 松田 佳祐
写真 / 中村 優子

近年、バンドTシャツの人気が再燃している。


たとえば、セレクトショップが古着のバンドTシャツを新品と混ぜて並べたり、多くのブランドが古着をリメイクしたバンドTシャツをリリースしている。その影響もあって、これまで以上にバンドTシャツの値段が高騰。球数が減り希少性も上がっているらしい。


だが、バンドTシャツと言えば、そもそもお土産のようなもの……と思っている方も少なくはないはず。そこで、音楽とミュージシャンをこよなく愛し、自身でもバンドTを蒐集しているという古着屋「STRANGER」のオーナー・岩尾修平さんにバンドTシャツの魅力を語って頂いた。

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バンドTとは、着るアート

この間、バラエティ番組の街頭インタビューを観ていたら、思わず笑ってしまった回答があったんです。


ニルヴァーナのカート・コバーンが大きくプリントされたTシャツを着ている人に、「その人は誰かわかりますか?」と聞いたところ、わからなかったという(笑)。


きっと、その人は単純にかっこいいから着ていたんだと思います。バンドTの魅力の一つはインパクトの大きさ。たとえば、CDのジャケットがプリントされたものであったり、バンドメンバーの顔やイラストがプリントされているものであったり、普通のTシャツと比べてパワーがあるんですよ。

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ヴィンテージだと生地やプリントの質感もあるので、なおさら雰囲気があります。アート作品と一緒ですよね。自分の感性で見てビジュアルに魅かれたら着たくなる。そういう意味では、着るアートと言っても過言ではないかもしれません。


それに、逆にTシャツのビジュアルから好きになって、「せっかくだから曲も聴いてみようか」と思ったら、良い出会いやきっかけになると思うんです。まずは、知識よりも感覚で好きなデザインを選んでみるのが良いのではないでしょうか。僕もお店には、好きなバンドのTシャツだけしか選んできてないですし(笑)。

アメリカ製を見極めるポイントは、タグとプリント

一般的に1970年代後半〜90年代後半にアメリカで活躍していたバンドが多いので、オリジナル(オフィシャルのTシャツ)に近いものだと基本的にはアメリカ製になります。


1970年代〜80年代にかけては、通称「パキ綿」と呼ばれるパキスタン製のコットン100%のTシャツも存在していますが、それはライブ会場には入れずオフィシャルTシャツを買えなかった人向けに作ったコピー品。生地が薄いのですが、オリジナルとは違う雰囲気があり、古着市場では人気です。

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アメリカ製のボディにもレプリカがありますが、オリジナルかどうか見分ける方法の一つとして、「プリント」があります。


オリジナルには地厚のボディが多く、レプリカと比べてサイズの大きいプリントが施されています。あとは、ラバーがベッタリ乗っているのも特徴で、見慣れてくるとプリントの質感や割れ方で分かるようになります。

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そもそもレプリカとして復刻されてないようなデザインもあるのですが、オリジナルのプリントが持つ雰囲気やパワーは一度見ると全然違うということに気づきますよ。


他に識別する方法としては、「タグ」があります。「giant」や「BROCKUM」、「Fruit of the Loom」や「SCREEN STARS」のように、バンドTによく使われているボディというのがあり、生産されていた時代背景にもよりますが、アメリカ製のモノはタグに「MADE in USA」と書かれていることが大半です。

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そのあたりにも注意して見ていくと、だんだん「このバンドは、このボディのTシャツが多い」などの識別をできるようになります。


とはいえ、オリジナルかブートか、または精巧に作られたレプリカなどの判別は難しく、プロでも絶対とは言い切ることができないんです。でも、仮にブートだとしてもその時代に作られたものだということ自体にすでに高値が付き始めていることを考えるとオリジナルでもブートでも当時の熱量が込もっているモノには十分な価値があります。


ピンキリですが、実際にブートでも良いデザインのものは存在するので、その辺りも含めて選んでみるのも楽しみの一つだと思います。

一生の宝物になる可能性を秘めている

バンドTシャツは、そのモノ自体の珍しさを超えた宝物になるのも魅力です。


たとえば、僕の好きなデヴィッド・ボウイのTシャツ。これは90年代前半から各都市を廻っていた『Sound+Vision』というアルバムのワールドツアー当時のモノ。

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亡くなられた後だからかも知れないですが、後ろ姿に余計に哀愁を感じますよね。ちなみにこのモダンな黒のスーツは「ジョルジオ・アルマーニ」のデザインだったようです。

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バンドTシャツにはブラックボディが多いので、当時のホワイトボディのTシャツが残っているのは貴重なんですが、それに加えてバックプリントのデザインからも高いアート性が伝わってきます。


「デヴィッド・ボウイ大回顧展」を日本で観た後、再度ニューヨークへ観に行ったほど好きだということもあって、Tシャツながらミュージシャンの枠を越えた一人のアーティストの生き様やストーリーを感じてしまいます。


あと、これは僕の私物ですが、宝物の一枚です。

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これは昔プライマル・スクリームのライブへ行った時に着ていた「ザ・ストーン・ローゼズ」のTシャツ。


そもそも「ザ・ストーン・ローゼズ」自体のTシャツが貴重なんですが、楽屋の近くで出待ちをしていたら、当時のメンバーでベースを弾いていたマニが出てきてサインをもらったんです。


たかがTシャツかもしれませんが、バンドTシャツはコミュニケーションのツールにもなりますし、バンドと自分との思い出によって付加価値をつけることができるのも楽しさだと思います。ぜひ自分の好きなバンドの一枚を手に入れてみてください!

ーおわりー

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3年前に発刊してロング・セラーを記録している「VINTAGE POSTER SCRAP」同様、所謂コレクター向きの内容ではなく、音楽プロデューサーならではの視点で集められたヴィンテージ・Tシャツの数々を12のカテゴリーに分けて紹介。

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Vintage T-shirts: 500 Authentic Tees from the '70s and '80s

Vintage T-shirtsは、あらゆる形態のTシャツへの強い愛と、それらが蘇らせるノスタルジックな記憶に敬意を表しています。取引されたり、恋人にあげたり、ボロボロになるまで着たり、カスタマイズしたり、切り刻んだりしたTシャツは、今日では子供からお年寄りまで誰もが着ることのできる、どこにでもある衣類のアイテムです。

この本では、音楽、テレビ、映画、広告、スケートやサーフィン、エンターテイメントなど、ポピュラーカルチャーの世界を視覚的に旅することで、Tシャツを長く愛される定番アイテムにしています。さらに、Tシャツファンやマニアのコレクションやバックストーリーを紹介する見開きのコレクタープロフィールも掲載されています。

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STRANGER

渋谷や下北沢からほど近い、京王井の頭線・池ノ上駅を出たら南側へ直進。右側に見えるレトロなマンションの階段を登った先にある古着屋。店名の「STRANGER(ストレンジャー)」は、ジム・ジャームッシュ監督の「STRANGER THAN PARADISE」から。年代に縛られることなく、オーナー・岩尾修平さんの好きなミュージシャンや映画のスタイルをベースに買い付けられたアメリカ古着が並ぶ。とくに、オーナー自身が好きで集めているというレアなバンドTシャツは必見。洋服以外にもミュージシャンのカセットテープ音源や、アート作品の販売もあり。店内で、ビールやドリンクを楽しむこともできる。

公開日:2018年8月25日

更新日:2021年8月25日

Contributor Profile

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松田 佳祐

1987年生まれ。新潟県三条市出身。大学在学中にセレクトショップに勤務し、洋服のカルチャーと小売業の仕組みを学ぶ。卒業後、フリーランスの編集・ライターとして活動をスタート。数々のファッション・ライフスタイル誌に携わる。その後、編集プロダクション・広告代理店・デザイン会社を経て2017年に独立。現在は、フリーランスの編集者/コピーライターとして活動。

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