「サテン」と「ピケ」をご存知だろうか。プレッピースタイルが流行った60年代、Leeのウエスターナーやホワイトリーバイスといった、それまでの流行だったブルーデニムではないホワイトのジャケットが登場し、そこに使用されていたのがサテンとピケだった。同じホワイトジャケットでありながらフェイスが異なるふたつの素材。今回はミューゼオ・スクエア編集長成松の「サテン」と「ピケ」との出会いを振り返りながら、今なお興味を掻き立てられる理由を探る。
ジャケットの雰囲気を変える不思議な素材
学生時代、自宅近くの洋品店によく足を運んでいた。綺麗めなヨーロピアンワークの店で、店頭にオフホワイトのジャケットとジーンズの組み合わせが飾ってあったのを覚えている。ブルーのデニムアイテムがオフホワイトに変わると、なかなか上品に変化するものだと印象に残っていた。
そのジャケットとジーンズはおそらくピケを使用したものだったのだと思う。その後サテンを使用したLeeのウエスターナーとか、ピケを使用したホワイトリーバイスというものがあるのを知った。ふたつはどちらもGジャンだが似て非なるもので、サテン地はやわらかくて艶があり、ピケ地は荒々しくて立体的。素材が違うとこうも雰囲気が変わるのかと不思議に思ったものだ。学生の頃から随分時間は経ったが、素材好きとしては今なお気になる存在だ。
サテン
朱子/繻子ともいう。織物の三原組織のひとつである朱子織りのこと。朱子組織で織った織物の総称。「サテン」という場合は、細かい糸使いで光沢の強い優美な織物をいう場合が多い。平織りや綾織りよりも圣が長く浮いている織りのため、丈夫さにはやや欠けるが、滑らかな手触りと光沢が特徴。綿のサテンは「綿朱子」ともいい、英語ではsateen(サティーン)と表記される。綿朱子の高級なものは「綿ベネシャン」、地厚で密でしっかりしたものは「ヘビー・サテン」などがある。
ピケ
盛り上がった太めの畝(うね)や、凹凸の柄を浮き出させた、厚手のしっかりした織物。「浮き出し織り」ともいう。二重織りの一種で、たて系とよこ糸を組み合わせる接結点によって畝を作り出す。本来はよこ畝の梳毛(そもう)織物だったため、たて畝は「たてピケ」と区別して呼ぶこともあるが、現在は綿タイプやたて畝が多く、厳密な区別はない。芯を入れて畝を強調したものも多い。(芯入りピケ)。張り・コシがあり、肌触りがさらりとしているため、夏のジャケットやドレスなどに向いている。ピケはフランス語で「畝」や「刺し子縫い」の意味。
(画像引用元:ROCOCO)
憧れとしてのウエスターナー
所有するウエスターナーはたまたま原宿で見つけた130周年記念モデル。
どちらかといえばピケの頑丈な感じが好きだが、それでもサテンのウエスターナーが気になってしまう。
「ウエスターナー」の名の通り、ミリタリーやワークとも違うカントリー的なテイスト。サテン特有のクリアな雰囲気を纏っているため、アメリカンとヨーロピアンのふたつの性質がミックスされたような上品な印象を受ける。
ウエスタン系のファッションは自分のライフスタイルには合わないし実際着こなしも難しくなかなか着用する機会は少ない。それでも「ウエスターナー」という名前が憧れとして頭に刻み込まれてしまっている、そういう存在だ。
Leeの130周年記念復刻ウエスターナー
無骨さに心惹かれるピケ
ピケに惹かれる理由は明確で「素材感」だ。立体感があってへこたれないし、無骨だが柔らかさもある。学生時代から今に至るまでずっと惹かれているアイテムだ。
最近になってFOBのピケジャケットを買ったが、その理由はリモートワークになったため。ビデオ会議の時にわざわざテーラードのジャケットは着たくないが、すこし背筋が伸びるアイテムとしてピケジャケットは重宝する。着ているうちに自分の中の「ピケ熱」が再燃してジャパンブルーデニムのピケパンツも購入した。
FOBのピケジャケット
ブランド:FOB factory
商品名:PIQUE 2nd JK
価格:18000円(税抜)
当時アイビーやプレッピー達に人気を博したWHITE LEVI’S BEDFORD CORD、通称PIQUE (ピケ)の復刻。畝があることで表情豊かなこの素材は着用伸びも少なく、非常にタフ。
肩周りのパターンメイクに注力し、ボックス型のシルエットを活かしたオーセンテックなセカンドタイプ。古着とは違いシルエットに気を遣ってデザインを変えることなく現代風に見える事がテーマ。
FOB factoryオンラインショップ
ジャパンブルーデニムのピケパンツ
ブランド:ROCOCO別注JAPAN BLUE JEANS
商品名:JAPAN BLUE JEANS 別注 セミワイドテーパード 5P ピケパンツ
価格:14850円(税込)
ヴィンテージの雰囲気漂う生地を使用し、現代的なシルエットで魅せたROCOCO完全別注のピケパンツ。
60年代初めに流行し、現代でも「リーバイピケ」という名称で親しまれるリーバイスのモデルを踏襲。フロントは、着脱のしやすいファスナー仕様で、JAPAN BLUEオリジナルの『ジップ』と『ドーナツボタン』を使用した、クラシカルな5ポケットタイプ。 股下はやや短めに設定した9分丈。『くるぶしが出るか出ないか』くらいの少し短めの丈にすることで、足元が重たくなり過ぎずスッキリ見せてくれます。当時の武骨さを残しながらも、今の着まわしにフィットしやすい点もポイントです。
ROCOCO オンラインショップ
微細な差異と付き合う楽しさ
昔から似た属性の中にある微妙な差に惹かれてしまう。例えばスポーツカーのデザインとか、昆虫のツノの違いや軍用機の種類。同じようなものでも素材やテイストの差を比較するのは面白い。
素材の微細な差異に興味が湧くのもそれと同じことだ。サテンとピケは同じように使われるが、かたやフワフワとした柔らかさがあり、かたや堅牢。そういったテイストが違う異素材のアイテムをシーンによってどう使い分けるかを考える事が楽しくて仕方がない。
改めてウエスターナーやピケジャケットを着る機会が増えて、個人的な好みは無骨なピケに軍配があがっているが今後は分からない。最近では敢えて異なるテイストをミックスして着る、というのも良いなと思う。これからの人生、ふたつの素材とどのように付き合っていくか、それも楽しみだ。
ーおわりー
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501XXは誰が作ったのか? 語られなかったリーバイス・ヒストリー (立東舎)
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「商標を鵜呑みにしてはいけない理由」「ツーホースマークの元ネタは?」「人員募集広告から見る、リーバイ工場の変遷」など、数々の史料から導き出した独自の持論を、多数掲載。
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