ハバーサックで知る、服がもつヒストリーをオマージュしながら着る楽しみ

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撮影/木村武司(木村写真事務所)
文/ミューゼオスクエア編集部

編集部一の服好き編集長・成松は、服を購入するにあたって素材やデザインの変遷、あとは服が持つ「ヒストリー」に興味があるそう。昔からクラシックと並んでコロニアルとかサファリといったテイストの服を好むのは、そういったテイストを作り上げてきた背景に惹かれるからだそうです。今回はそんな服の持つ「ヒストリー」と、それを着る楽しみについて編集長が語ります。

服が持つ「ヒストリー」に惹かれて

ハバーサックとの出会いは、代官山に行きつけのテーラーの帰りにふと立ち寄ったのがきっかけだった。ハバーサックは自らを「ヴィンテージ・モダン」と謳い、過去を踏襲したような伝統的なアイテムを展開するブランドだ。ほかではなかなかお目にかかれないアイテムが多く、また彼らはシーズンごとにテーマを決めてアイテムを出しているので、定期的にショップに顔を出したり新作をチェックしたりするようになった。コレクションが気に入った年だと3着ほどまとめて購入することもある。以前もいくつか紹介してきたが、モーターサイクルコートとかラベンハムの別注ダッフルコートとか、直近ではべアコートを愛用している。

旅先で活躍する迷彩アイテム

MuuseoSquareイメージ

これまで秋冬モノを紹介することが多かったが、春夏で愛用しているのがこのバンドカラーシャツだ。白いスリッポンにあわせて歩くのが夏の恒例行事で、旅先でも重宝している。このシャツが気に入り、同じ迷彩のアイテムを見つけてふたつも買ってしまった。

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アースカラーと独特のクラシックなテイストからか、着用すると自分の好きなコロニアル的なテイストになるのが魅力だ。普段のコーディネートに1つ取り入れるだけで気分が変わってとても良い。生地もしっかりしていてコットンの素材感もある。真夏などにもカバンに忍ばせておけばエアコン下などでも安心できる。

歴史へと誘う迷彩のひみつ

ハバーサックの迷彩にふと惹かれて購入したものの、使いこなすのは難しいかなと思っていた。しかし気づけば意外にも「お気に入り」と化し、何年も使用している。それはなぜか。圧倒的な使いやすさはその理由のひとつ。だがもっとも重要な、もうひとつの大きな理由はこの迷彩にある。

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「ザ・迷彩」という感じの迷彩服を着用するにはやや戸惑いがあるのだが、ハバーサックの迷彩はとても上品だ。この迷彩はおそらく「DPM迷彩」をオマージュしていると思う。DPM迷彩というのはイギリス軍の特殊部隊が砂漠などで使用していたものだ。イギリス軍の装備はいまだにコロニアルな文脈を感じることがある。このシャツに使われている迷彩は、アースカラーの色合いが上品でデザインにすると落ち着いており、何年たっても重宝できる理由のひとつだ。

「オマージュしながら着る」という服の楽しみ方

ハバーサックはかの有名なウィリス・アンド・ガイガーをどこか感じさせる。
ウィリス・アンド・ガイガーは昔のアメリカのアウトドアブランドで、カタログを夢中になって見ていた。ウィリス・アンド・ガイガーにはフライトジャケットやサファリジャケットなどミリタリーやコロニアル由来のアイテムが詰まっていた。

ウィリス・アンド・ガイガー

1902年北極探検家ベン・ウィリスによって創設された本格アウトドアブランド。登山や撮影を目的としたアンデス探検隊に独自デザインを起す。1930年代に、アメリカ東海岸の上流階級の間で、サファリ旅行がブームになった際に、いち早くサファリクロージングを発売。当時非常に人気の高かったN.Yにある富裕層の為の高級ハンティングショップAbercrombie & FitchのOEM生産を受けるようになった。またアメリカ軍からの要請でパイロット達の防寒性の高い飛行服をも手がけるようになり、更にブランドステイタスを上げていった。

私がサファリやコロニアルといったテーマに惹かれてしまうのは、ウィリス・アンド・ガイガーのような機能性をバックボーンにしたヒストリーが興味深いからだ。グルカパンツや今回のDPM迷彩の独特なカラーや形状も、砂漠や戦場という極端な場所で生まれたからこそのもので、そこに面白さを感じる。
ハバーサックがウィリス・アンド・ガイガーを思い起こさせたのは、ハバーサックが「服を形づけてきたヒストリー」を受け継ぎ、デザインに落とし込んでいるからだろう。服が持つヒストリーを、現代でオマージュしながら着る楽しさ。それを与えてくれるのがハバーサックなのだと思った。今年はどういったヒストリーを感じさせる服が登場するのかとチェックすることが毎シーズン楽しみで仕方がない。


ーおわりー

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HAVERSACK

〝ヴィンテージモダン〟をテーマに、ミリタリー、ワーク、ユニフォーム、テーラードといった普遍的なカテゴリーの洋服を、現代にアップデートさせているブランド、HAVERSACK。
その多くのアイテムには、様々な着こなし方ができる工夫が施されています。デザイナーである乗秀幸次が理想とするのは、着る人それぞれの経験や考え方を尊重し、人間の多様性を後押しするようなワードローブ。コレクションルックこそ存在しますが、それはあくまでも乗秀自身が考えるひとつのスタイルにすぎません。完成させるのは、あなた自身なのです。
HAVERSACKが提案するワードローブと、あなたの生き方や感性を重ね合わせたとき、生まれてくるスタイル。それこそが世界にたったひとつの、誇るべき個性なのです。

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イギリス文化史

制度と文化の関係、文化史の方法に配慮しながら、近代以降の「イギリス文化史」を考察。「文化史とは何か」という問いを念頭におき、「文化史というアプローチを問い直す」からはじまり、第1部では、宗教・政治・労働など問い直す「制度と文化」、第2部でイギリスらしい(と思われる)「なぜ?」を問い直し、第3部では「20世紀イギリスを文化の視点から見直す。

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メンズウェア100年史

カジュアルの元祖は、英国のエドワード7世だった…!? ロイヤルファッションから、ナチス体制への反発心を表現していたザズー・スタイル、究極の作業着をデザインしたロドチェンコ、革ジャンを流行らせたマーロン・ブランドの映画、1960年代の「ピーコック革命」、ジョン・レノンの髪型、パンクとクラブ・シーン、時代を先導した雑誌たち、そしてトム・ブラウンのタイトなジャケットまで。
この100年間にメンズウエアの世界で巻き起こった革命を、ファッション史家、キャリー・ブラックマンの解説付きでわかりやすく紹介した贅沢な写真集。
希少価値のある写真やイラストを通して、この100年の間に、サヴィル・ロウの上品なテーラードや、耐久性のあるカーキ色の軍服、制服や作業場で着用されていたデニムなどが、スタイルや色使いにおいてどれだけ変化してきたかということを順序立ててわかりやすく紹介されている。ハリウッド・スターのファッションや1930年代に活躍した個性的な芸術家たちなどの素晴らしい写真がこれほどふんだんに掲載されている本は珍しく、それらを参照しながら、実用服からピーコック・ファッションに至るまでのメンズウエアの進化を探求している。
この貴重な本の中では、ピエール・カルダンやジョルジオ・アルマーニ、ラルフ・ローレンなどの有名デザイナーたちが与えてきた影響力と1960年代のストリート・ファッションが対比されていて、パンクやクラブ・シーンがメンズウエア市場を発展させた経緯についても言及している。
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公開日:2021年7月15日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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