身に付けたいのは歴史と哲学。スイスの機械式腕時計ブランド辞典

取材日: 2017年12月8日

文/ミューゼオ・スクエア編集部 写真/佐々木 孝憲・松本 理加・倉野 路凡・ミューゼオ・スクエア編集部

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「小さな宇宙」と表現されることもある機械式時計。登場から200年以上経ち、スマートフォンで時間を確認できるようになったいまでも変わらない姿で人々に愛されている。その理由は、40mmほどのケースの中に英知の結晶ともいうべきものづくりのこだわりが秘められているからではないだろうか。

この記事では、いずれも長い歴史を持つスイスの機械式時計メーカーをピックアップ。一生を共にする時計が見つかれば幸いだ。

MuuseoSquareイメージ

IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)

ミューゼオ・スクエア編集部私物

ミューゼオ・スクエア編集部私物

IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)

国・地域:スイス シャフハウセン

創業年:1868年

創業者:フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズ

ボストン出身の時計職人フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによって創業。スイスのシャフハウセンに積み重なってきた伝統的技術と、アメリカの機械自動化の製造技術を組み合わせた時計は世界中から高い評価を受けた。

ポルトキーゼやポートフィノなど、質実剛健で洗練されたシンプルな機械式時計が揃う。その品質の高さはミニッツ・リピーターや永久カレンダーなど高品質な機能を備えた自社製ムーブメントを製造してきた実績が物語っている。

IWCはパイロットウォッチの開発にも力を入れて取り組んでおり、代表モデルとも言われるマーク11はもともと英国空軍のために開発され、30年以上にわたって愛用された。現在でもモデルチェンジを繰り返しながら発売されている。

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オメガ(OMEGA)

オメガ(OMEGA)

国・地域:スイス ラ・ショー=ド=フォン

創業年:1839年

創業者:ルイ・ブラン

日本では、ロレックスに勝るとも劣らない知名度を誇るブランド「オメガ」。

オリンピックでオフィシャルタイムキーパーを幾度となく担当してきた実績や英国軍のミリタリーウォッチも生産しているエピソードから、妥協なき精密時計を製造している様子が伺える。機能美に惹かれてオメガを購入する人も少なくない。一方で、クオーツ時計ならば20万円以下で購入できるモデルもあり、高級腕時計の入門としても人気が高い。

代表モデルはスピードマスター。アポロ11号の宇宙飛行士が身につけていたことで特に有名だ。当時、NASAが時計メーカーに対しクロノグラフの時計の見積もりを依頼。数あるメーカーの中からテストにパスしたのがスピードマスターだった。機械式時計は自動巻きが主流になった今でも、手巻き式クロノグラフ・ムーブメントを現行モデルでも採用し続けている。

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パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)

パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)

国・地域:スイス ジュネーブ

創業年:1839年

創業者:アントワーヌ・ド・パテックとフランソワ・チャペック

社名はふたりの人物アントワーヌ・ド・パテックとアドリアン・フィリップスに由来。

ジャン-アドリアン・フィリップは、19世紀中期にリューズ巻上げ機構を開発。この機構は現在の腕時計にも使われている、ゼンマイの巻き上げと針合わせをリューズで行うもの。世界で最も複雑な、33もの複雑機構を搭載する機械式タイムピースを開発した実績もあり、技術、品質共にジュネーブ随一の最高級時計メーカーとして名声を博している。

代表となるモデルはカラトラバ。インデックスと針のみで構成された文字盤は、「機能がフォルムを決定する」という20世紀初頭のドイツのバウハウスの哲学に強く影響を受けて創作されたと言われている。時間を知るという時計の機能に特化したデザインは、永遠の古典として今なお現行モデルでも親しまれている。

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モバード(MOVADO)

提供:倉野 路凡氏

提供:倉野 路凡氏

モバード(MOVADO)

国・地域:スイス ラ・ショー=ド=フォン

創業年:1881年

創業者:アシール・ディテシェイム

1881年にアシール・ディテシャイムがスイスのラ・ショー=ド=フォンで始めた工房が始まり。この工房はLAIディテシャイム製造会社を名乗っていたが、1905年に社名をモバードに変更。

モバードとはエスペラント語で「たゆまぬ前進」という意味。その言葉通り、手首に沿うよう湾曲したケースを持つ「ポリブラン」や、黒の文字盤と12時の位置に金色のドットだけのシンプルな「ミュージアムウォッチ」など独創的で先進的な時計を数々世の中に送り出してきた。

クオーツウォッチが徐々に台頭し始めた60年代、モバードは自動巻きの高振動化を推進。69年に発売された「エル・プリメロ」は世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントとして、また1/10秒単位の計測が可能な世界で最も精度が高い量産型クロノグラフムーブメントとして知られている。

現在はモバードグループとして、COACH(コーチ)など有名ブランドのライセンスも手がけている。

ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)

提供:倉野 路凡氏

提供:倉野 路凡氏

ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)

国・地域:スイス ル・ロックル

創業年:1846年

創業者:ユリス・ナルダン

1846年にユリス・ナルダンがスイスのル・ロックルに創業。

ユリス・ナルダンは1878年、パリ万国博覧会でポケットウォッチとマリーン クロノメーター部門で金賞を受賞。20世紀初頭には、日本やロシアの海軍に数多く時計を供給していた。1985年〜1992年に発表された天文三部作「アストロラビウム・ガリレオ・ガリレイ」、「プラネタリウム コペルニクス」、「テリリウム・ヨハネスケプラー」は超複雑時計として大きな話題となった。その後も複雑時計の製造に力を注いでおり、ユニークで大胆な発想が興味深いブランド。

ロレックス(ROLEX)

ロレックス(ROLEX)

国・地域:スイス ジュネーブ(創業はイギリス ロンドン)

創業年:1905年

創業者:ハンス・ウィルスドルフ

ロレックスの特徴は、時計に必要な全ての部品をデザインから製造まで自社内で行なっていること。スイスの時計産業は分業化が進んでいたが、ハンス・ウィルスドルフは創業後早い段階から自社でムーブメントを設計・開発するよう力を注いできた。

1910年にロレックスはビエンヌにあるスイスクロノメーター歩度公認検定局から、腕時計として初めてクロノメーターの公式証明書を獲得した。1926年にはブランドの代名詞と言えるオイスターケースを発明。防水性と防塵性を備える世界初の腕時計は業界に驚きをもたらした。

人気モデルはエクスプローラーやサブマリーナをはじめとするスポーツモデル。流行に左右されない普遍的なデザイン、そして常に腕時計の新しい技術を探求してきた姿勢に憧れを抱く人も多い。

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ロンジン(Longines)

ロンジン(Longines)

国・地域:スイス・ル・サンティエ

創業年:1832年

創業者:オーギュスト・アガシ

オリンピック公式時計をはじめ、「リンドバーグ」や「ウィームズ」などの航空腕時計、また高精度ムーブメントの開発で名を馳せる。

創業者オーギュスト・アガシの甥であるアーネスト・フランシロンは、当時分業で別々の場所で製造されていた時計の工程を、一つの場所にまとめることを考案。スイス初の時計工場を設立した。

また、今では当たり前となっているブランドロゴを時計に刻むことをはじめたのもロンジン。翼のついた砂時計は高品質の証として記されている。

1970年代までは機械式ムーブメントを自社で設計していたが、1977年に搭載した当時最高水準の薄型自動巻ムーブメント「キャリバーL990」を最後に、ムーブメントと製造機器の全てをETA(エタ)社に売却。自社製造にピリオドを打った。当時の高品質のムーブメントを採用したモデルは、アンティーク時計愛好家の人気も高い。

現行品は30万円前後で購入できるモデルを数多く揃えており、スイスの機械式時計メーカーの中では比較的手に取りやすい。

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ーおわりー

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