今回登場する靴たち
- コールハーン「ピンチペニー」
- リーガル「2177」
- リーガル ウイングチップ クレープソール
- チャーチ「ピカデリー」
- チャーチ「ヒックスティッド」
- リーガル、シェットランドフォックス「ホワイトバックス」
- リーガル、ブリティッシュコレクション「タッセルスリッポン」
- ジョンストン&マーフィー「5504」
- チャーチ フルブローグ
チャーチやリーガルなど、各ブランドの特徴を知ると記事をより楽しめます!
▶ものづくりの哲学とヒストリーを携えた、著名革靴ブランド10選。
憧れの靴がそこに。ショーウィンドウをひたすら覗いていた青春時代。
3人共に靴が好きというところが共通しているんですが。お二人が靴に興味を持ったきっかけを教えてください。
当時値段も高かったし、どこで買っていいかすらわからなかった。田舎だったからね(笑)。結局、リーガルのビーフロールのローファーを買ったのが高校2年生。
その後、京都でリーガルのベロア素材で
クレープソールのウイングチップを買って。カタログに載ってたやつね。あれで初めてクレープソールを知って。飯野さん覚えてます?
うんうん。倉野さんが買った場所は京都の寺町京極のリーガル?
そうだと思う。あと、もう一足、冠婚葬祭用に黒の
プレーントウをリーガルで。10代の頃はその3足を履き回していたと思いますよ。
伝説にもなった「新宿三越南館の閉店」で遂にチャーチを手にいれる!
私にとって倉野さんといえば、
オールドチャーチを広めた方という認識をしているんですけど(笑)。その3足からどう繋がっていくんですかね?
自分がいろんな靴を買い漁ってからですね(笑)。
多分、飯野さんも同じ世代だからわかると思うんですけど、当時英国靴っていうとチャーチしかなかったんですよ。5万円出せばどうにか買える。でも、リーガルだと2万円代後半から買える。だから、チャーチは我慢して、順を追ってステップアップしていずれ買おうっていう対象だったんですよね。実際初めてチャーチを買ったのは、
新宿三越の南館が閉店になるっていう、あの時です。
あーーー! 投げ売りでしたよね! 98年とか99年でしたっけね。
そのときまで待ってましたね。そこで初めてチャーチの「ピカデリー」と「ヒックスティッド」を買いましたね。(この2足について詳しくは
倉野さんの連載で!)
チャーチ「ピカデリー」
チャーチ「ヒックスティッド」
チャーチへ思い入れが強かったから、サイズが合わなくてもいいと思って買いました(笑)。あと、一緒にフォックスフレームの市原(傘の老舗メーカー)製の傘も買いました。
それがチャーチとの最初の出会い。英国靴の一番最初っていうのは、それより少し前で東京に上京してきた86年ですね。吉祥寺のPARCOにリーガルがあったでしょ?
はい、ありました! 吉祥寺PARCOの5階、
テイメンさんの隣!
それがファクトリーはどこかわからないけど、英国製の
フルブローグ。3万8000円ぐらいだったかな? 今でも持ってますね。
いろんなファクトリーからリーガルブランドで出してたんですよね。
ほぼ平行して2つのラインがありましたね。その当時、リーガルには優秀な企画担当者がいらっしゃったんです。これから、リーガルはどうしていくのかというときにやっぱり本場イギリスの靴を提案したいということで、英国靴を輸入しなきゃねってことでリーガルネームで仕入れて販売する最高級ラインのブリティッシュコレクションというのを作ってたんですよね。
しかも、シェットランドフォックスの靴を取り扱っていたのは、テイジンメンズショップ?だけよね。イギリス製に劣らない日本製っていうのがシェットランドフォックスだったんですよ。
「ただ、面白いことに、そのシェットランドフォックスにもイギリス製と日本製とあったんです。イギリス製のシェットランドフォックスは、実はクロケット(&ジョーンズ)が作っていた。
話はそれましたが、僕は
エーボンハウスのブレザーとパンツ買って。それにあわせてシェットランドフォックスのホワイトバックス買ったんです。
始まりは意外なところから。コンフォートシューズに心惹かれた10代
靴に興味を持つようになったのは、高校入学の時ぐらい。服装がなんでもありの学校だったんです。塾通いの途中で、今はなき神田の
平和堂靴店に立ち寄った時に、当時、平和堂で一番安かった平和堂オリジナルモデルの高校生向けローファーが5800円か4800円あって。「
ジョンストン&マーフィーモデル」って手書きで書かれてました。
倉野談:ちなみに、何がヤバイのかというと、ジョンストン&マーフィーモデルと勝手に名付けて売っていた平和堂靴店。そして、ジョンストン&マーフィーに興味を抱いた飯野さん。ジョンストン&マーフィーはアメリカ大統領御用達ブランドだったので、飯野さんはやっぱりアイビー一筋の人だったんだ、と感じたエピソードでした
「ジョンストン&マーフィーってなんなんだろう」と思いながらも買いました。しかも、当時、平和堂はディスプレイにいろんなブランドの靴が混ざって並んでたんですよ。一番最初に気になったのは実は、クラークスのネイチャーベルトっていう、今で言うコンフォートシューズ。
10代の頃から既に、コンフォートにいってるという(笑)。で、店内に入ると、これとは違っていかにもトラディショナルな風貌な紳士靴も有った訳です。その靴をひっくり返すと、底に「Custom Made Hand Sewn」って書いてあった。のちのち、それが小笠原シューズが作っていたことを知るんですけど。そういうのを見てると、高校生ながら面白いなぁ~と思ってましたね。その後、大学に入って、私は男声合唱団に所属していたんですが、黒い靴が必要だったんです。ちゃんとした紐靴の方がいいんだろうなと分かっていたんだけど、要はスリッポンとかじゃないと楽屋に上がったり移動とか大変だよねと頭で思ってた。で、たまたま神田で入った靴屋で出会いがありました。お店の裏に行くと、リーガル廃盤コーナーっていうのがあったんですよ!(笑)例えば、北海道とかでしか売っていない、雪バージョンのリーガルだとか、なんか変なものがたくさんあったんです。そこで見つけて「これだったらちゃんとしてて、脱ぎ履きも楽だろうな」と思って買ったのが、実はリーガルのブリティッシュコレクションの
タッセルスリッポンだったんです!
飯野さんが大学時代に購入したというリーガル・ブリティッシュコレクションのタッセルスリッポン。
まぁそうね~。でも黒でしょ? やっぱり選んでたんだ!
今でも持ってます。その辺りからイギリスの靴とかトラッドな靴ってどういうものなんだろうという意識が冴え出してきました。例えば、当時、デパートで品揃えがよかったのが松屋銀座だったんですね。靴売り場の一番上にチャーチがあって、そのすぐ下ぐらいにさっき出てきたジョンストン&マーフィーというのがあるわけですよ!(笑)当時これは
チヨダシューズさんがライセンス生産してたんです。新潟にあるこの靴を作っていた工場は、やがてリーガルの製造子会社となりその最上級ラインを任されることになるんですよね。
ええ。ライセンス生産のものでジョンストン&マーフィーが当時、3万8000円。チャーチが4万8000円。両方見比べてみて、マーフィーはつま先の裏が革素材、チャーチのチェットウインド(?)の裏は布!「これは! この1万円の差はなんなんだろう⁉︎」って思ったり。さらに当時、伊勢丹が100周年記念だったんですけど、そこで伊勢丹100周年記念、何故かリーガルとのトリプルネームのエドワードグリーンという一足を見たんです。
内羽根式のフルブローグ、マルバーンの黒です。木箱に入って、価格は今でも覚えてる、10万円!
88年とかかな。僕は当時21歳ぐらいで。いいな~でも10万円だよな~、買えるわけないよな~って思って眺めていたんですね。ところが、月日が経てば高すぎるから、売り残る。それで最終的には4万円まで下がったんですよ! これだったら買える買える! 買いに行こう! しかも自分のサイズは残っているらしい。もうバイトで貯めたお金を握りしめて、行って、さぁ買うぞ!って。意気込んだんですけど、結局、まだ俺には早いなと思っちゃったんです。
やめたんですよ。で、その足で松屋銀座に行って、ジョンストン&マーフィーの内羽根式フルブローグを買ったんです。
その時はジョンストン&マーフィーを買ったんですね!
ええ。5504っていう。モデルの品番名も覚えています。黒と茶色!!
ジョンストン&マーフィーの5504。
どうしても黒・茶の2色セットで買いたくなる衝動。
その理由はなんなの? 黒と茶色、両方集めるっていう。
普通、黒が好きか、茶色が好きかじゃない? 普通は。でも両方集めたいんだ。
飯野さんは最近だとテレビ番組にもご出演されてその愛好ぶりがフィーチャーされたわけですけれども、いつごろ靴への興味関心が加速したのですか?
加速したのは恐らく、それこそ新宿南館が閉まる前後ぐらい。
行ったら、もぬけの殻だったんですよね。私が行った時もう。わぁ、もう自分のサイズないや!って。
全く情報なかったもんね! あの場でチャーチが叩き売りとか。(笑)
それまでは例えばそれこそ、リーガルのブリティッシュコレクションだとか、ジョンストン&マーフィーのライセンスだとか、そういう国産の当時の靴を、かちっかちっ!と買っていたんですよ。
ええ。でそこで、チャーチを買いそびれて、たまたま遊びにニューヨークにいった時に、
J.PRESS(Jプレス)のニューヨークでたまたま一足175ドルでジョセフチーニーの当時の最上級モデルが出てたんですよね。店員さんがちゃんと測ってくれて、それで「お前のサイズあるぞ」と。
外羽根式のプレーントウと、内羽根式の
パンチドキャップトウとフルブローグ、全部黒と茶色があったんですよ。さんざん考えて3セット持って帰るのはさすがに辛い。悩んだ末、フルブローグを1セット買っていったんですね。
それが98年くらい。なんだかんだで所有している靴は今は160足くらいですかね。
飯野さんがニューヨークで購入したチーニーのフルブローグ。
ちなみに僕の話をすると。ワラビーとかダナーとか学生のころ好きでしたね。
ちょうど資格試験を受験をしているころ予備校が神保町にあったので、平和堂や
ミマツ靴店に出入りするようになったんです。ただ、私もあまりお金がなかったので、日本製の茶色のローファーを買ったのを覚えてます。
ぼくも買うのは茶色なんですよ。飯野くん黒でしょ? 黒を選ぶ人と茶系を選ぶ人とちょっと違いますよね?(笑)
倉野談:ちなみに、僕の中で黒のローファーを選ぶのは真面目な優等生のイメージ。茶のローファーを選ぶのは、バンカラなイメージ。アイビー世代はバンカラ(蛮カラ)という言葉をよく使います。茶のローファーをあえて黒の靴クリームで磨いて濃淡をつけるのが1980年アイビーの基本。素足にローファーとかも蛮カラですね。飯野さんはそういうことをしない優等生タイプのアイビーだと感じましたね。余談ですが、1986年の2月に上京して驚いたのが、東京の電車(山手線、中央線)のサラリーマンの足元。みんな黒の革靴! それにトレンチコート着てる!大阪の環状線のサラリーマンは茶革靴も多いしジャンパーのおっさんも多かったから(笑)。
なんとなくいわんとしていることはわかりますよ。私の場合、スエードは黒は買わないっていう個人ルールがあるので。結果的には茶色のほうが多いですと。ただ、通常の牛革はほぼ半々。黒と茶セットで買うので(笑)
お二人ともこれまでにあらゆる靴をご覧になってきたと思います。後半では、ぜひお二人の特に思い入れのある靴についてお聞かせください。
さて、話が膨らむに膨らんだ前編の革靴との出会い。(本編からこぼれたお話は是非動画にてごチェック!)次回はズバリ、思い入れの強い靴たちについて。あらゆる靴を手に取ってみた3名が選んだ至極の3足とは⁉︎ 個性は選んだ靴にも現れる! 後編へ続くっ!
終わりに
みなさん、革靴との出会いについて語っている時の表情がなんとも嬉しそう。倉野さん、飯野さんのお話を聞いているとやはり圧倒的に英国靴=チャーチの印象が強かったみたいですね。それにしても、靴の名前のみならずラスト(型番)までパッと紐付く飯野さん……。以前、倉野さんから「分からない時は飯野くんに聞くに限るよ」と断言されていたのが良くわかりました!(笑)。