靴に興味を持ち始めたきっかけについて語った前編に続き、後編では3名の至極の靴について。更には素材の革へのこだわりにまで話は広がります。革のカラーと種類だけにとどまらず、製造元の指定まで! まさに歩く靴事典!と賞賛したくなる精通っぷり。ではでは、引き続き3名の靴談義に耳を傾けてみましょうか。
今回登場する靴たち
- チャーチ「グラフトン」
- チャーチ「バック」
- ジョンホワイト「マッドガード」
- エドワードグリーン「バークレー」
- チャーチ「チェットウインド」
- ジョンストン&マーフィー「5504」(日本ライセンス品)
- オールデン チャッカーブーツ
- オールデン ロングウイングチップ
- ジョンロブ ヴィンテージシリーズ「8896」
- チャーチ 125周年限定モデル
- チャーチ「チェットウィンド」
服飾ジャーナリストの飯野さん、倉野さんが革靴の虜になった経緯を伺った前編はこちらから
靴好きの3人が思いのままに語る革靴談義。僕らが靴のとりこになった理由。
靴愛好家の3人が独断でセレクト。私の偏愛靴3選。
3人の本日の装い。足元の靴については記事内で後ほど。
難しい選択かもしれませんが、3足自分の中で好きな靴を選ぶとするとなんですかね? 倉野さんの場合、きっと
チャーチになるんでしょうが
倉野さんの好きな靴1:チャーチ「グラフトン」
倉野さんの好きな靴2:チャーチ「バック」
理由ですか? まず、ごつい靴への憧れがあるんですよね。でもトリッカーズのカントリーだとゴツすぎるじゃないですか。いい按配なのがチャーチのグラフトンかと。
それはもう! 英国靴はチャーチしか知らなかったんですよ(笑)。
そのあといろんなブランドも出てきたわけじゃないですか
圧倒的な知名度じゃないですかね。 チャーチより
エドワードグリーンの方が作りがいいんでしょうけど、そうゆう問題ではなく。もちろん
ジョンロブにも憧れがあったんですけど、もう刷り込みですよ(笑)。
倉野さんのセレクトがそうなると、僕は自動的にチャーチのチェットウィンドって言わなきゃいけないじゃないですか(笑)。それにオチとしてあれでしょ? 私は黒と茶色のワンセットってことですよね?(笑)。
順番にセットで買って次に何買おうかって決めてるわけでしょ? あれ、全部買い揃えた後になんかいいことが待ってるって思ってたの?
飯野さんの好きな靴1:エドワードグリーン「バークレー」
飯野さんの好きな靴2:チャーチ「チェットウィンド」
飯野さんの好きな靴3:ジョンストン&マーフィー「5504」
ジョンストン&マーフィーについてはさっきも話しましたが、思い残すところがあって。革の良さってなんだろうと教えてくれたのがこの靴ですね。今も現役です。チャーチが好きな理由は倉野さんと一緒です。デパートや
平和堂靴店で見ていて一番上に鎮座している靴がチャーチ。なのに内張が布。このギャップはなんだろうと、ぐるぐる頭をめぐらせていた思い出が強く残っています。エドワードグリーンはやっぱり足を入れた瞬間に、まるで違う靴だと衝撃を受けたのが印象に残ってますね。
イギリスとアメリカが混在したセレクトですね。ちなみに私が本格靴に目覚めたのはユナイテッドアローズの栗野さんがよく雑誌で紹介していた、
オールデンの
ウィスキーコードバンのチャッカブーツ。これをすぐに買えなくて、代わりにその時買ったのがロング
ウィングチップ。これが初めて買った本格靴でしたね。磨くともう凄くって、もっているのは楽しかったですけど、合わせる服は選ぶなと感じていましたね。何かでジョンロブのヴィンテージシリーズがあると知って、「ヴィンテージ1999」これだけは私も黒と茶を揃えてしまいました。
はい、8896が私もすきでして。でもう一足は、チャーチの125周年のものです。たまたまオークションで新品が売っていて、さほど高くはなかったんですよ、なのでついつい買ってしまった。今はなるべくそれを使って楽しんでます。
成松編集長の好きな靴1:オールデンのチャッカーブーツ
成松編集長の好きな靴2:ジョンロブ「ヴンテージ1999」
成松編集長の好きな靴3:チャーチ125周年記念モデル
素材の革こそが靴の個性⁉︎ 磨くことが楽しくなるこだわりの革とは。
ちなみに素材については好みやこだわりがありますか?
私は、銘柄指定をしちゃうと、今は亡き、ドイツ・
カールフロイデンベルグの
ボックスカーフの黒。チャーチ125周年の靴はこの革を使っていました。磨くとバキバキに抜けのいい光り方をしてくれる。地肌が見える系の透き通った光り方をする。黒はなんだかんだいってこの革が好きですね。茶色でいえば、ここも今は亡き、イギリス・ピポディのカーフ。チャーチの「チェットウィンド」のブラッケンという色で使われていました。これも磨くと抜けが良くって。それと手で持った時にモチッっとした感触なんです。あともう一つ選ぶとすると、悩むなぁ……。というのが、2つ同率3位があって。ピポディの
ブックバインダーカーフのサンダルウッド、オールデンのコードバンの通称ナンバー8=ダークチェリー。この素材たちもやっぱり磨いた時の光り方がポイント。
もう出ました(笑)。 飯野さんが言ったピポディのチェットウィンドの革とチャーチのブックバインダーのサンダルウッド。急いでる時に本当に楽。やっぱり靴磨いてね、オイリーなブラシでみがくだけで輝きがすぐ戻るのがいい。あとチャーチの
ランチオックスハイドが好きですね。肉厚で柔らかくて
シボ加工がしてある。80年代のチャーチによく使われていますね。
ランチオックスハイドの革を使ったチャーチの靴
僕はスーツを着ないのでどちらかというと
カントリーカーフ寄りのものが今の装いに合うんですよね。華美な靴は合わないんで、エドワード・グリーンのカントリーカーフ、同じくジョンロブのコテージラインなどでよく使用されていたカントリカーフ、オールデンのウィスキーコードバンが好きですね。お二人と同じような話で、あんまり手を入れなくてもいいし、手を入れたら手を入れた分だけ輝きが増すってところがポイントですかね。楽しめる靴っていうのは手をいれられるってところで愛情も増しますよね。
詰まるところ靴は何が楽しんだろう?
ここまで話してきてなんですけど、靴って一体何が楽しいんですかね?
服とかその他の持ち物も含めて、自分の言葉になるってことでしょうね。 自分はこんな人間です今日はこうゆう思いでこの場にやってきました。 素直に表せるアイテムのひとつじゃないんかな。微妙なニュアンスをあらわすのに有効なアイテムなんじゃないかなと思います。 今日はオーダーで仕立ててもらったコットンのスーツ。季節も季節なので新緑の時期にリラックスした装い、あとそれに合う靴となるとちょっと深い色よりは軽い色の方がいいかな。今日はエドワードグリーンのこのカントリーカーフの靴を履いてきました。今日はそんな感じで。
飯野さんがグリーンのコットンスーツに合わせたのは、エドワード・グリーンのカントリーカーフ
もう段積み。僕は元箱全部とっておく派。入れる場所を時に入れ替えます。昔カビさせちゃったこともあるので。全部部屋にあります。怖い部屋ですよ(笑)。
家族というか、なんというか。当たり前の表現ですが、足そのものなんですよね。道具としての靴なんですよ。履いてあげようって気持ちが強いですね。
最近は今日履いているマッドガードを履く機会が増えましたね。たぶん楽なんでしょうね。
クレープソールでしょ、デニムに合うし普通の
フランネルにも合うじゃないですか。僕の生き方的にはジャケパンが多いしね。意外とジャーナリスト靴という印象がありますし。もちろん初めて買ったリーガルの
ブリティッシュコレクションもたまに履きますよ。種類的には圧倒的にフルブローグが多いですね。
倉野さんの足元。あらゆる装いと好相性、かつ履き心地の良さから最近のお気に入りなんだとか。
これも飯野さんに聞いた方が。僕のことはほぼ理解されていますよ(笑)。
何でなんですかね、飯野さん? 私がフルブローグ好きなのは。
見た目がしっかり足元にくるから。全体のバランスとして地に足ついた感じが出るんじゃないかなぁという気がしますね。
たぶんそうです(笑)。あと、装飾の
ピンキングとか。飾りが好きなんですよ。
僕も倉野さんの記事をみてフルブローグの穴の大きさを見比べてみたりして。だんだんハマってきましたね。
穴に靴クリームが入るでしょ。あれをどうやってとろうかブラッシングしたり歯ブラシ使ったり綿棒かね。ちまちまやってるのが好きみたいです。手入れはやるときはもう何時間もやりますよ。臭いで気持ち悪くなって、体調悪くなるくらい(笑)。
基本はクリーナーで汚れを落として、乳化性の靴クリームを塗って、ブラッシングして、布で磨いて、ですね。油性クリームは履く場に応じて使う使わないを決めますね。
お手入れだったり、靴クリームとの相性だったり。なんでも僕は分からないとすぐ飯野さんに連絡するんですよ。
僕もこれからはそうさせていただきますね(笑)。
最後になりますが、お二人のなかで靴はどんな存在で今後もどんな位置付けになっていくんですかね。
成松編集長の足元はジョンロブ「フィリップ」。ヴィンテージ生地の茶系ジャケットと合わせてセレクト。
やはり、自分自身の言葉ですね。それに尽きるんでしょうね。
かっこいいですね!(笑)ぼくは
トリプルソール、
ダブルソールは履けなくなってきたんですよね年齢的に。だからクレープソールとか、シングルソールになっていくんでしょうね。
私も、お二人の意見に共感します。これからも使いながら手入れしつつ楽しんでいくんだろうなと。
あと人って足元見るじゃないですか。腕時計と必ず靴を見ませんか? 古いチャーチを履いているとけっこう反応してくれる人が多いんですよ。例えば「それグラフトンの昔のラストだよね」って。言った人に対しての好感度もあるんですけど、やっぱり見る人は見てるんだな。そうゆう意味ではあまり変な靴は履けないですね。
やっぱり自分の好きなものを表現する発信する道具のひとつだってことですかね。
終わりに
およそ2時間にわたる対談でしたが、その間3名の会話はノンストップで続いておりました。あらゆる靴の用語が飛び交っていましたが、そこは靴好き。「それね!」「僕も欲しかったんだよね〜」とすかさず反応が返ってくるのが流石です! 始終笑顔で話している様子にみなさん本当に靴が好きなんだなぁというのがひしひしと伝わってきました。まだよく分からないけれど、なんだか面白そうだぞと感じた方は是非、ミューゼオスクエアの革靴記事もチェックしてみてくださいね!