革靴ソールの種類と特徴。レザーソールとラバーソールはどう使い分ける?

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文/ミューゼオ・スクエア編集部

ソールは靴のパーツの中でも唯一地面に設置する場所。靴の中ではもっとも耐久性が求められ、もっとも消耗が激しい縁の下の力持ちとも言えるパーツだ。

それゆえ素材や品質の違いが大きく見た目やはき心地を左右する。この記事ではソールを4種類に分類し、それぞれの特徴を取り上げる。

靴修理専門店「Shoesbox 尾山台店」にて、靴修理のスペシャリストとして活躍する山梨さんのコメントも合わせてご紹介。

そもそも、アウトソールとはどこの部分を指す?

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「外底」「本底」とも言われている、靴が実際に地面に接する部分のこと。足を疲れさせないための柔軟性や弾力性、それに通気性も関わるパーツだ。

素材もさまざま存在し、牛革や合成ゴム、ウレタンなどがある。耐久性に特化したものや、通気性に優れたものなどそれぞれ特徴があるので、用途によって選びたい。靴の中ではカスタムが行える、数少ないポイントだ。

靴の用途や製法により、インソールアウトソールの間に入れるパーツがミッドソール。ミッドソールを入れると重くなり足の返りも悪くなる一方、耐久性や頑丈さは上がる。素材はアウトソール同様の牛革や、パルプボード、それに発砲スポンジなどアウトソール同様使用される素材はさまざまだ。

ドレスシューズの王道、レザーソール

レザーソール(革底)はドレスシューズの王道とも言うべき、伝統的なソールだ。

フォーマルなルックスで、歩くたびに響く「コツ、コツ」という子気味良い音と、地面から伝わる独特の感触が魅力的。古くからレザーソールが紳士靴のスタンダードである理由は、伝統が重んじられているからだけではない。

レザーソールは極めて通気性と耐熱性に優れており、長時間履いていても足が蒸れない。また、弾力性が高く、履き込むごとに使用者の足に馴染んでいく。長年愛用することが前提の革靴において、牛革は靴底の素材として理にかなっている。

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山梨

履く方の好みにもよりますけど、革底はしなりがよく、足馴染みがいいことが特徴です。靴メーカーによって特徴があるので、違いを楽しむことができます。前半分にハーフラバーをはるなど使用シーンによって少しカスタマイズすることもできます。

Q1:レザーソールのメリット・デメリットとは?

レザーソールは、ブランドやモデルによって着用感・着地感の違いを深く愉しめるのも一つポイントになる。

代表的なものとして、植物タンニン鞣しを行う過程で、楢や樫の樹皮(おが屑)等にじっくり浸し、完成までに約1年掛ける「オークバークレザー」等が挙げられる。ドイツのJoh Rendenbach Jr.(レンデンバッハ)やイギリスのJ&FJ Baker(ベイカー)のものが有名だ。

植物タンニン鞣しの革は繊維が詰まっているため、見た目に高級感を与えるだけでなく摩擦への強みや屈曲性が向上する。

子気味よい優雅な足音を立てるレザーソールだが、得意としないシーンもある。砂利道などの悪路では、ソールがしなやかな分傷つきやすい。また、耐水性はアッパー部分同様、高いわけではないので注意が必要だ。


雨が降っている状況で使用し、そのまま放置してしまうと、カビてしまう原因になる。もし濡れてしまった場合は、必ず靴底を空気に触れさせて乾燥させてあげたい。

Q2:ハーフラバーや、スチールはなぜつける?

一般的に、レザーソールの靴は「よく滑る」といわれている。滑るのが嫌だったり、少し気遣いが必要だったりする理由でレザーソールを避けている人も少なからずいる。その滑りやつま先の減りを軽減してくれるのが、ハーフラバーとスチールだ。

1960年代~1990年代の古い靴は革底の割合がかなり高く、それらの中には踵の化粧釘が踵の端部分に一面に打たれていたり、スチールが貼られていたりと工夫している様子が見て取れる。

レザーソールをカスタマイズをするべきか否かは使用する人が何を求めるかにもよる。ただ、下記のような方法で使い心地をより自分好みに仕上げることができる。

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スチール

履き始める前に付けておくと、つま先が減っていくのをかなり軽減してくれる。 ソールを削って取り付ける場合も、削らずにはりつける方法もある。

トラディショナルな見た目で、レザーソールらしい小気味いい「コツコツ」とした音も楽しめる。通常、ラバーソールにスチールは使用できないため、レザーソールならではのカスタムだ。

ハーフラバー

レザーソールにありがちな悩み「滑って履きにくい」を解決する一つの手段がハーフラバー。皮底のグリップ力が増して滑りにくくなり、 クッション性も向上する。

レザーソールならではの返り+ラバーソールの接地感を得ることができる。また、元のソールが接地せずに削れない為、ソールの修理をするタイミングも延ばせるというコスト面のメリットもある。

Q3:ダブルソール、トリプルソールとは?

4.5〜5mm程度の厚さの一枚革で構成されたレザーソールをシングルソールと呼ぶ。アウトソールの上に、ミッドソールを1枚重ねている仕様をダブルソール、2枚の仕様をトリプルソールと言う。

シングルソールはミッドソールを噛ませている仕様に比べ、クッション性に優れ足馴染みが速いことが特徴だ。見た目はスッキリしており、最もフォーマルシーンに適した仕様である。

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J.M.Weston(ジェイエムウエストン)のクラシックウイングチップ。ミッドソールを二段重ねし、アウトソールを含めて三枚構成としたトリプルソールはカントリーシューズが起源の靴であるため、堅牢性が高く重さも重量級。

ダブルソールやトリプルソールは見た目にも重厚さが増し、シングルソールよりも耐久性と耐水性が向上する。しかし、分厚くなるために弾力性がやや劣り、足馴染みに関してはシングルソールよりは劣る。

靴自体の重みが増すことと、つま先やカカトの削れが目立ちやすくなるのもデメリットだ。出自はカントリーのためフォーマル向けのドレスシューズで採用されることは少ない。

Q4:レザーソールはどうやってメンテナンスすればいい?

レザーソールはメンテナンスすることで長く使い続けることができる。

手順としては、アッパーの手入れと同様だ。まずクリーナーで汚れを落とし、油分を補給してあげる。ただ、アッパーに使用するクリーナーでは小石や黒ずみを完全に除去することは難しい。そこで使用するのが、メラミンスポンジだ。普通は食器の汚れ落としなどに使う水ヤスリを使うと、黒い汚れもきれいに落とすことができる。

汚れを落とした後には、オイルを補給したい。レザーソールには蝋分があまり入っていないミンクオイルなどがおすすめだ。乳化性クリームなど蝋分が多く含まれているもので手入れをすると、滑りやすくなってしまうため。アッパー同様、塗りすぎには注意。革が柔らかくなりすぎるのを防ぐためにも、多めに塗ってしまった場合は布などで拭き取りたい。

雨に濡れてしまった場合は油分が抜け乾燥し、ひび割れてしまう原因にもなる。長く使い続けるために、定期的なメンテナンスは欠かさないようにしたい。

耐久性に優れたラバーソール

ラバーソールは、合成ゴムで作られた靴底全般のことを指す。共通することは、滑りづらく耐摩耗性に優れている。ゴムなので水にも強く、雨の日には最適なソールだ。手入れも簡単なため、日常的に履く場合は、ラバーソールが向いている。

難点として、レザーソールと比べ通気性は多少損なわれる。また、熱に弱いため真夏のアスファルトの上を歩くと軟化しやすい。フランスのParaboot(パラブーツ)など、独自のラバーソールを自社製造しているメーカーも存在する。

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山梨

レザーソールの靴を履いている方から「駅で滑りやすい」というお話を聞くことがあります。そういう場合は、グリップ力のあるラバーソールがおすすめです。また、雨用や雪用という用途であればラバーソールが最適だと思います。

ラバーソールの代表モデルその1:スタデッドソール(ダイナイトソール)

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ドレスシューズ用のラバーソールを選ぶときにまず選択肢に挙がるのがスタデッドソールである。「ビブラム社」もラインナップしているが、イギリスの「ハルボロラバー社」の「Dainite(ダイナイト)」ブランドがひときわ有名なので、一般的にはダイナイトソールと呼ばれる。

底面に施された凹凸が歩きやすく足元を支えてくれる。ラバーソールながら厚みがそこまでなく、外観もゴツゴツしておらずフラットなため、紳士靴にラバーソールをはるならば無難におすすめできる。欠点としては、ゴムが薄く柔らかいため、摩耗のスピードが高いことがあげられる。

ラバーソールの代表モデルその2:リッジウェイソール

ダイナイトソール同様、イギリスのハルボロラバー社が製造するソールがリッジウェイソール。「リッジウェイ=あぜ道」の通り、あぜ道状のスタッズが施されている。ダイナイトが点で支えるのに対し、リッジウェイは線で支える構造になっており、よりソフトなはき心地となる。

ボリュームがあるため、ダイナイトと比べるとよりカジュアルな印象に仕上がる。ブーツによく似合うソールだ。

ラバーソールの代表モデルその3:ラグソール

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ラバーソールの一種である、ラグソール。もともとは軍用やアウトドア用に開発された、野外を歩くために凹凸の激しいパターンを持つソール。ゴム底に凹凸をつけてグリップ力を強化している。厚みがあるので衝撃吸収力が高い。横から見たさいに凹凸が見えてしまうので、ドレスシューズ向きとは言えないかもしれないが、最近ではローファーなどに用いられる例が増えてきている。

カジュアル用途に適したクレープソール

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天然ゴムで作られたソール。デザートブーツでその名前を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。柔軟性とクッション性の良さが他のソールにはない特徴で、その反発力はクレープソールならでは。

独特な波状の模様はラテックスに酢酸を添加させる過程で生まれるもの。欠点は、ガソリン等の揮発性物質や高温に弱く、夏場のアスファルトを歩いていると粘りやすく、汚れも付着しやすい。天然ゴムの本来の色は黄色。独特の色味とボリュームがあるので、フォーマルな服装よりはカジュアルな服装に合わせやすい。

軽さとクッション性に秀でたスポンジソール

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スポンジソールは軽くクッション性に富むことが特徴。遊び心のきいたカジュアルなソールが揃う。カジュアルシューズだけでなく、ビジネスシューズに用いられる場合もある。中でも、EVAスポンジ素材はでできたものは、もっとも軽量で柔らかくクッション性にも富んでいて、長時間の歩行にも適している。

ただし、軽いだけに摩耗による減りがはやく、凹凸があるわけではないのでグリップ力は期待できない。また、素材の特性上滑り止めの意匠を施すことにも限度があるため、摩耗と共に滑りやすくなることは避けられない。ヘタってくると貧相に見えがちなため、ある程度履き続けたらソールのチェックをしたい。

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山梨

スポンジソールは見た目の割に軽く、クッション性がいいことが特徴です。ラバーソールなどと比べると減りやすいです。また、一体型なので例えばかかとを修理した時には修理した部分だけ少し目立ちます。

まとめ:革靴のソール、どうやって選ぶ?

紳士靴らしい履き心地や通気性を求めるならば、レザーソール。日常使いや雨用として、ラバーソールを使用するなど使い分けることがベターだ。クレープソールやスポンジソールは、ビジネスシューズよりはカジュアルな靴に向いている。

レザーソールはメンテナンスが大変で、重いという印象を持っている人が多いかもしれない。他のソールと比べると通気性に優れ、足なじみがよかったりと良いところはたくさんある。可能ならば、使用シーンに合わせてソールを選ぶようにしたい。

ーおわりー

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Shoes Box

尾山台にある「Shoes Box(シューズボックス)」。店員の山梨さんは靴修理職人として合計で10年以上のキャリアを持ち、難しい修理でも時間をかけて丁寧にやりきることを大切にしている。難易度の高い修理を依頼されることも多く、その技術は確かである。しかし、本音は”お客様自身で日々のケアをするのが一番経済的で良い”のだそう。靴とお客様の事お客様からリクエストがあれば日々のケア方法も店頭でレクチャーも行っている。

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公開日:2018年9月19日

更新日:2022年5月2日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

終わりに

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自分好みにカスタマイズすることができるソール。最近では切れ込みを入れてより屈曲性を高めたソールも発売されているそう。それぞれ触ってみると特徴がよりわかるので、気になったかたは近くの靴修理店に足を運んでみてほしい。

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