好奇心を感動に。国際鉄道模型コンベンションの歩き方

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文・写真/佐々木健人

鉄道模型ファンならば知らない人はいないほど規模の大きな祭典、国際鉄道模型コンベンション。ジオラマだけでなく、トークステージや物販などさまざまなコンテンツが用意されている。この記事では、会場を回ってみて見つけた鉄道模型の楽しみ方を紹介する。

18回目を数える鉄道模型のお祭り

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2017年8月18日〜20日に開催された国際鉄道模型コンベンション(JAM CONVENTION)に行ってきた。鉄道模型コンベンションは毎年8月にビックサイトで開催されている、国内最大級の鉄道模型イベント。2000年から開催されており、今年は18回目になる。

私は鉄道模型にあまり馴染みがなく、子どもの頃にプラレールで遊んだことがある程度。鉄道模型に詳しくない人がいっても楽しめるのか心配だったが、まったく問題はなかった。私は「鉄道模型を眺めて空想世界に没入する」楽しみを見つけてきた。誰しも自分なりの楽しみ方を見つけられると思う。

鉄道模型コンベンションとは

ビックサイトで開催されている鉄道模型イベント。ジオラマや物販はもちろん、トークショーやオリジナルグッズの販売など、さまざまな鉄道模型に関するコンテンツが催されている。2000年から開催されており、今年は18回目。2014年まで『特定非営利活動法人日本鉄道模型の会』の主催で実施されていたが、2015年からは株式会社井門コーポレーションが開催趣旨を引き継ぎ、井門コーポレーション内の「国際鉄道模型コンベンション実行委員会」が運営している。

NゲージもOゲージも!個性豊かなジオラマの世界

私が行ったのはオープンしてまもない10時半ごろ。会場である東1ホールまで歩く途中にある歩くエスカレーターに乗ると、非日常感を感じてワクワクしてくる。受付を済ませ、会場についてみると、ブースに人だかりができているのが目に入る。平日の金曜日だったので関係者の方が多いのかと予想していたが、大学生から年配の方まで幅広い年代の方が訪れていた。

まず足を運んだのはモデラー出展ブース。今回の国際鉄道模型コンベンションに出展していたモデラーは56団体。

実は人生で一度も鉄道模型のジオラマを見たことがなかったが、その精緻さに驚かされた。腰をかがめてジオラマと同じ目線に立ってみると、まるで世界に入ってしまったよう。中には、空を表現するために背景まで描いている人や、建物の中に光るライトまで再現している人も。場所だけでなく、時間も切り取ったジオラマはずっと見ていても飽きない。

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中でも思わず魅入ってしまったのはコンベンションに出展して5回目のモデラー「M8」のジオラマ。このブースでは小さめなジオラマに細かい世界観が詰まっていた。スタジオジブリのアニメーション映画「風たちぬ」のジオラマは建物一棟一棟を手作りしたそうで、製作期間はなんと六ヶ月だそう。

風たちぬ風ジオラマ「大震災後の上野広小路」

風たちぬ風ジオラマ「大震災後の上野広小路」

物販ブースでは予期せぬ出会いがあるかも

盛り上がっていたのは物販のブース。会場オープンしてすぐだったのにも関わらず、売り切れの商品があるほど賑わっていた。

展示ブースと出店ブースが近くにあると物欲を刺激されてしまう。例えば、モデラーの人と話してNゲージに興味が出てきたら模型を購入できる。車両本体だけではなく、人形やレールも売っているので簡単なジオラマならば一式揃ってしまう。作りたいディスプレイが浮かんだら、すぐに実践できるのも魅力の一つではないだろうか。

以前取材した英国鉄道模型専門店 <a href="https://muuseo.com/square/articles/357">メディカルアート</a>も出店

以前取材した英国鉄道模型専門店 メディカルアートも出店

出店していたのはグリーンマックスやKATOなどの大手だけではない。会場内のレールマーケットというエリアには個人で製作している方も多くいた。

心を掴まれたのが「MODEL工房P-6」のブース。こちらは大阪や京都を走る私鉄の鉄道模型のキットを販売しているお店。和風でレトロな雰囲気にみとれてしまった。話を聞いてみると、店舗は夫婦で運営しているとのこと。

「子どものころから鉄道模型を作るのが好きで、阪急電鉄に運転手として入社した後も鉄道模型を作り続けていた」と話してくれたのは製作者の船引さん。

一点一点全て船引さんが手作りで製作しており、塗装まで含めると一ヶ月に数台しか作ることができない。鉄道自体が持つノスタルジックな見た目とペーパーならではのかすれた雰囲気が組み合わさって、さながら昭和からタイムスリップしたよう。

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「平屋の間を走っていたらかわいいな。夕日が沈みかけている時間帯で、ポツポツとライトがついてて。夕飯の匂いがしてて、帰宅を急ぐ人がいて、、、」

「12時半よりスピードコンテストを開催します」
どんな風景に走っていてほしいか想像を膨らませているとスピードコンテストが始まるというアナウンスが耳に入った。

驚きの速さで走る鉄道模型

国際鉄道模型コンベンションでは鉄道模型を使用したユニークなコンテストが日替わりで行われている。例えば、線路上で綱引きをして牽引力を競う牽引力コンテストや、勾配のついた線路をどこまで駆け上れるかを競う登坂力コンテストなど開催されていた。

私が訪れた日に開催されていたのはスピードコンテスト。会場の一角に人だかりができていたので場所はすぐわかった。近くにいってみると長いレールが目に入る。

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スピードコンテストは以下の内容で行われる。
「16.5 mm ゲージ全長 50 m の直線線路を走行し計測区間の通過スピードで最高速を競い合います」

走行の前に、車両がコンテストの規定に沿っているかの検査が行われる。まだコンテストが始まっていないのに、少しドキドキする。無事全車両検査を通過し、いよいよコンテストへ。

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動画で撮影しようと試みたが、追えないほどの速さだった。「鉄道模型ってこんなに速く走るんだ」。

タイムもしっかりと計測される上、アクシデントで残念ながら走らない車両もあったりと、スタートの際の緊張感は本格的な車のレースのよう。

ミューゼオ・スクエアでも鉄道模型に関する記事を執筆していただいている、鉄道模型愛好家の斉藤さんにお話を聞いたら車体を改造してスピードを競うような楽しみ方ができたのは最近のことなのだとか。

夏休みの家族のお出かけにもぴったり

ちょうど夏休みの時期だからか、親子で来ている人たちを多く目にした。
会場内には子ども向けのコンテンツもたくさん用意されていたので、家族で遊びにいっても全員楽しめるに違いない。

ぺたぞうの電車王国

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プラレールを繋げて電車を走らせることができる。これだけ広くスペースが取られているので、好きなようにつなげられるのが楽しそうだ。

鉄太郎電鉄

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デパートの屋上にありそうな、子どもが乗れる鉄道模型。スタッフも一緒に乗ってくれるので安心だ。

関西学院大学鉄道研究会模型班OB

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ジオラマの電車を操作できるようになっている。操作する部分が実際の電車に似せて作られており、臨場感がある。子どもの目線とジオラマの高さが一致するので没入してしまいそう。

半田づけ不要!お子様でも楽しめる模型教室

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夏休みにうってつけな工作企画。開催時間が決まっている入れ替え制。参加費は1000円。

楽しみ方を拡張してくれる場、JAMコンベンション

一通り会場内を歩き回って感じたのは、出展している人たちが何より楽しそうにしていたこと。国際鉄道模型コンベンションは一般の人もモデラーとして出展できる。「営利目的ではなく好きだから出展している人」がほとんど。もちろん、お店の方々も鉄道模型への愛に溢れている。

ジオラマを作るのが好きな人もいれば、眺めるのが好きな人もいる。模型製作が楽しい人もいれば、改造してどれだけスピードが出るかに楽しさを見出す人もいる。会場ではそういった「好き」を形にしている人と話すことができる。

JAMコンベンションの公式HPのトップにはこう書いてある。
「鉄道模型の楽しさをより多くの皆様に伝え、様々な形で皆様と共に作り上げる参加型のコンベンションにしていきます」

主催者、出展者、来場者で作り上げる国際鉄道模型コンベンション。足を運べば鉄道模型の新しい楽しみ方に出会えるはず。

ーおわりー

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鉄道模型を一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

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Nゲージカタログ 2021-2022 (イカロス・ムック)

2020年7月から2021年6月までに発売された新製品を、1両ずつ写真入りで紹介。ほしいモデル、買い逃したモデルを探すのをサポート。また、主要模型メーカーであるKATO、TOMIX、マイクロエース、グリーンマックス、MODEMO、ポポンデッタのラインナップの特徴や最新情報も収録。

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凄い!ジオラマ[改]: 超リアルなミニチュア情景の世界

TV、ネットなど各メディアで話題沸騰となった超リアルなジオラマを創り出す作家、情景師アラーキー。
その著者自ら厳選した13作品を紹介・解説するオールカラーの写文集です。

作品別に写真を多角度・細部まで数多く掲載。
そして各作品に著者が込めた想いを綴った情緒溢れる文章が。
情緒の風景=情景、なのです。

さらには、HOW TO系コラムで作り方や制作ヒント、ジオラマを取り巻くあれこれが盛り込まれ、
創らない人でも、そのクリエイティブ魂にワクワクするはずです。

公開日:2017年9月30日

更新日:2021年8月23日

Contributor Profile

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佐々木 健人

エディター、プランナー。1993年東京都生まれ。時計メーカーを経てミューゼオに入社。オンラインジャーナル「ミューゼオスクエア」のディレクション、ECサイト「ミューゼオファクトリー」の製品開発などを担当。

終わりに

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記事内でも触れていますが、「MODEL工房P-6」さんのペーパー鉄道模型に見とれてしまいました。目にした時、頭の中に電車が走っている情景が浮かんできてしばし妄想。現実ではどういった様子で走っているのか、大阪に見にいきたいと思います!

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