マクドナルドの子ども向けのメニュー「ハッピーセット」に付いてくるおまけのおもちゃ「ミールトイ」。そのおもちゃに魅了されるのはなんでも子供だけではないらしい。ミールトイをコレクションする愛好家・マックけんいちさんにその魅力をたずねてみた。
始まりは息子のために購入したハッピーセットから
「遊ぶ用に1個、保管用に1個。最初は幼稚園に通っていた息子たちのために買っていたマクドナルドセットのおもちゃなのに、気づけば僕の方が夢中になっていました」
マックけんいちさんが抱えているこちらは1978年にアメリカで販売されたロナルド(日本ではドナルド)のクロスドール。「あらゆるメーカーから数多く発売されていますが、この人形が一番大きくてパッケージに入っているところが気に入っています」
そう語るのは、日本でも有数のミールトイコレクター・マックけんいちさんだ。
91〜92年ごろ、週替わりで登場するミールトイ(ファストフードのおまけについてくるおもちゃのことをさす)がどんなものなのか、気になって、集めてみたくなり毎週のようにマクドナルドへ通っていたという。
マクドナルドのキャラクター。左からBirdie(バーディー)、Hamburglar(ハンバーグラー)、Ronald McDonald(ロナルドマクドナルド)
「翌週にどんなセットが発売されるのか、一週間前に発行される告知のトレー用紙もとっておいて。それを見て、発売当日の朝にハッピーセットをおまけの数分、8種類あるなら8セット購入してましたね。(中身のハンバーガーは近所の方に振舞っていたそう)」
ざっくりと解説:ミールトイとは?
ファストフードやシリアルなどのフードプロダクトのおまけとしてついてくるおもちゃ。マクドナルドのミールトイは1979年にアメリカでスタート。日本では1988年頃からお子様ランチ(ハッピーセットの前進)のおもちゃとして普及されるように。ちなみにおもちゃが付いてくるセットメニュー名は海外ではハッピーミール、日本ではハッピーセットと呼び名も違う。マクドナルド以外でも、ウェンディーズやバーガーキング、アイホップ(パンケーキチェーン店)などさまざまなファストフードチェーンでミールトイが作られている。
ミールトイのコレクション市場は日本よりもアメリカでの市場がはるかに大きく、ミールトイアイテムを売買する業者も数多く存在する。日本では仮面ライダーやポケモン、妖怪ウォッチなど子どもに人気なキャラクターとコラボしたトイが製作されることが多い。
(写真提供/マックけんいちさん)
しばらくは、近所のマクドナルドでも入手できる国内現行のミールトイを中心に集めていたマックけんいちさんだが、90年代後半からその収集アイテムの対象範囲は海外へと広がっていく。
「国内のマクドナルドの現行アイテムがだんだんとプロモーション色が強くなってきてしまったということもあったのですが、海外には日本以上にミールトイの種類も豊富で、マクドナルドを含めファストフードチェーン全般におもしろいものがたくさんあることを知ってしまったんです(笑)」
マックけんいちさんのリビングにあるコレクションケース。バーガーチェーンのウェンディーズやキャンディのブランド・ライフセーバーズなどのミールトイが並ぶ。
食べ物がキャラクターに⁉︎ デフォルメされたおかしな容姿に一目惚れ
マックけんいちさんのミールトイ収集熱をさらに加熱させたもの、それはフードデフォルメ(食品をモチーフにデフォルメ)されたキャラクターのミールトイの存在だった。
「生のお肉がサングラスかけてキャップかぶって(笑)。食べ物が生きたキャラクターにデフォルメされているのがおもしくてかわいくて、『なんだコレ?』ってすごく心をつかまれましたね」
海外の雑貨を紹介した雑誌で掲載されていたマクドナルドのミールトイがこちら McDonald's Food Fundamentals(1993) 。特に一番右のキャラクターに心惹かれたんだとか。
マクドナルドでもチキンナゲットやフライドポテト、シェイクにバーガーまで、あらゆる食べ物がキャラクター化されていた。
さらに性別の違いや季節によってのコスチュームの違いなど、その細かく設定されたバリエーションの豊富さに一気にコレクション欲も高まったそう。
その出会いがあってからは、マックけんいちさんの収集対象はミールトイの中でもフードデフォルメされたもの、そして海外のものというポイントで絞られていった。
ディリークィーンアイスのキッズミール。クルマに乗ったアイスのキャラクターたちが面白い。
ホットケーキチェーンのアイホップのフードデフォルメされたパンケーキのミールトイ。カップはマクドナルドとファイヤーキングのコラボアイテム。
好きという気持ちが高じて、ミールトイファンクラブを発足。マックけんいちさんはその会長でもある。
不定期ながらオフ会で集まり、食事をしながら最近何を手に入れたか、今後何が発売されるかといった情報交換をするそう。以前、それぞれのお気に入りのコレクションを持ち寄って原宿のショールームスペースをレンタルして展示会をしたことも。
マックけんいちさんお気に入り! マクドナルドミールトイシリーズ
マクドナルド定番のチキンナゲットがハロウィーン仕様に
マクドナルドで定番のサイドメニューの一つ、マックナゲット。そのナゲットがハロウィーンの仮装で登場。McDonald's Halloween McNugget Buddies(1993年)
フライガイ&フライガール。マックフライがカラフルに登場。
バーガーの相棒的存在のマックフライがキャラクターになって登場。キャラクターにもガイとガールの性別がある。FUNNY FRY FRIENDS(1989ー1990年)
実はマクドナルド以外でも登場⁉︎ ポテトヘッドキッズシリーズ。
1952年にアメリカで誕生したジャガイモをデフォルメしたキャラクター・ポテトヘッドのキッズバージョン。マクドナルド以外でもウォールマートなどでおまけのおもちゃとして登場した。頭の帽子は着脱可能で、着せ替えをして遊ぶことができるもの。Potato Head Kid's&GI JOE Kid's Meal(1996年)
ユナイテッドエアライン機内限定!スカイミールセット。
1991年にユナイテッドエアラインとのプロモーションアイテムとして搭乗した子どもだけがオーダーすることができるというスカイミールセット。マクドナルドのキャラクターそれぞれが飛行機に乗っているおもちゃと機内食がBOXに入ってサーブされたそう。
「集める」ことから変化したミールトイの楽しみ方とは
マックけんいちさんは種類ごとに透明の収納ビニール袋に入れて保管しているとか。
世にあるミールトイを全てコンプリートすることは難しい。
「もちろん集めだした当初は、気になるものは全てコンプリートして、手元においておきたいという欲もありました。でも、今はある程度の期間自分の中で楽しめたら、手放すこともできるようになりましたね」
手放すことができるようになったという今、「集める」こと以外にどうやって楽しんでいるのかと聞くと、
「もちろん、シリーズのミールトイをディスプレイして眺める。ディスプレイケースも五月人形を飾っていたショーケースなどをD.I.Yで加工して自分好みのものを作ったりしました。
そして、自分なりに配置や小物をディレクションして撮影して1枚のポストカードにするんです」
海外へ出向く際は、その土地の名所スポットでドナルド人形を被写体に入れて撮影するのが恒例とか。
「昔から記録をとっておくという習慣があって、中学生の頃の日記もまだあります。あと、ミールトイに出会う前、大学生時代にマクドナルドでバイトをしていた時も、勤怠カードとか、社内誌、クルーハットやマニュアルなんかも全てとっていたんですよ」
マックさん曰く、集めているという感覚よりも、記録を残しておきたいという感覚なんだそう。
当時のメニュー表
従業員であるクルーのハット
「だから、手元においておきたい気持ちもあるけれど、自分の記録としてちゃんと残せれば、楽しんだと満足することができるようになったのかなと。もちろん、新しい面白いミールトイが出たら買ってしまったりもするんですけど(笑)」
好きなものを手に入れるという喜びももちろんある、ただ、そのアイテムをどう生かすか、楽しむか。マックさんのように自分の思い出と結びつけて記録に残すことも、コレクション愛ある楽しみ方だと感じさせてくれる取材だった。
ーおわりー
アメリカのハッピーミール専用のBOX。マックけんいちさん曰く「パッケージデザインやイラストに魅力を感じて、実はオマケ以上に楽しく、てついつい数が増えてしまいました」
マックのクルー(従業員)がお店で胸に付けるプロモーション用の缶バッジ。プロモーション毎に登場していたので世界各国で数多く存在する。
こちらはマックけんいちさんの自宅ガレージを改造して作られた、コレクションスペース。マクドナルド以外のコレクションが所狭しと並べられている。
コレクションを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
いつの時代にも、どの場所にも、愛される玩具がある
日本と世界おもしろ玩具図鑑
日本の江戸時代の玩具や近代玩具、世界の玩具など、日本玩具博物館が所蔵する約350点をカラー写真とともに紹介。
アメリカ製のみならずアメリカンな日用品を図鑑形式で紹介。
アメリカン雑貨図鑑 (エイムック 4177)
アメリカの映画やドラマ、雑誌に登場する様々なアメリカのプロダクツ。
繊細で緻密な日本製品とはうらはらに、ゴツくて合理的、そしていい意味で雑なデザインと作りに、なぜか惹かれてしまう。
そこで生活の中にある日用品を中心に、キッチン、ヘルス、ステーショナリー、ツール、ストレージ、アウトドア、グッズ、衣類、リビング、ガレージ、フードといったカテゴリーに分け、アメリカ製のみならずアメリカンな日用品を図鑑形式で紹介。
またおすすめのショップや、実際にアメリカン雑貨や日用品に魅了され、長年愛用している人たちにも登場してもらった。
終わりに
次から次に出てくるマックけんいちさんのコレクションがどれもユーモラス! 1点1点それぞれに違った個性がイメージできるのが見ていて飽きなかったです。それにしても、バイト時代の勤務カードにマニュアル、ハットに賞状などなど30数年以上たった今もきっちりとファイルして保管しているマックけんいちさんのマメさ、そしてマクドナルド愛をも強く感じました。