通は生地ブランドで選ぶ⁉︎ 知るほどに面白い主要ブランドをチェック
数ある生地の中で、何をセレクトしたら良いのか。元となる素材が同じであっても、その配合、織り方、柄などブランドごとでも大きな違いがある。
世界的に有名な生地ブランドのメーカーは主に、ウエストヨークシャーのハダースフィールド近隣(イギリス)や、ビエラ地方(イタリア)に集中しているが、今回は、イギリスの有名ブランドを主に紹介したい。ブランドごとの生地の特徴がわかるようになれば、あなたも生地通の仲間入りだ。
ミルとマーチャントとは?
これから紹介する中でたびたび登場する「ミル」と「マーチャント」。「ミル」とは自社の工場で自社ブランドの生地を織っている織物工場のこと。「マーチャント」とは織物工場と契約を結び生産された生地を自社ブランドとしてショップやテーラーへ生地を流通させている生地商社のことを指す。
HOLLAND & SHERRY(ホーランド&シェリー)
1836年ロンドンで創立された老舗マーチャント。英国テイストの生地を展開し、最大の特徴はその豊富なコレクション数。ウール素材から最高級素材までと幅広く、各シーズンで取り揃える素材数、それぞれの素材での色柄は世界一を誇っている。
「とにかく膨大なバリエーションもあることも、リニューアルを図ってよりモダンな生地が登場していますね」(岡田さん)
W. BILL(ダブリュー ビル)
1846年に創業。カントリー服地商社であり、名門テーラーからの信頼も大きくテイラー生地でも柔らかく仕立て映えするのが人気の理由。また、バラエティーに富んだユニークなジャケット地の取り扱いが特徴である。
「日本再上陸したブランドで個性的な色柄が魅力的ですね」(岡田さん)
LEAR BROWNE & DUNSFORD(リア ブラウン&ダンスフォード)
1895年にイギリスで創業。英国最大の同族経営マーチャントであり、しっかりとした打ち込みの伝統的英国服地を多く扱っている。さらに、サヴィル・ロウのほぼ全ての名門テーラーを顧客に多く抱える。
「特に50年前の素材かと見紛うほどの『ユニバーサル』というバンチには一部熱烈なファンがいますね」(岡田さん)
FOX BROTHERS(フォックスブラザーズ)
1772年にイギリス・サマセット州で創業。キツネのマークがトレードのミル(織物工場で服地の生産業者)であり、「英国フランネルの代名詞」とも言われる。ウィストン・チャーチルやウィンザー公なども常連顧客として生地を愛用していた。
「フランネルといえばやはりフォックスブラザーズですね」(岡田さん)
SMITH WOOLLENS(スミスウーレンズ)
1921年ロンドンのゴールデンスクエア(服地卸商が集まっていたことで有名な広場)で創業。2014年よりイギリス最大のマーチャントグループLBD-HARRISONSの傘下に入り、コレクションを刷新、本格的に日本再上陸を果たした。
「サビル・ロウのビスポークテーラも愛用する質の高い生地が揃っていますね」(岡田さん)
PORTER & HARDING(ポーター&ハーディング)
1947年にスコットランドで創立で、創業当時と同じ製法で織り上げられるツイードで名高いカントリー服地専門マーチャント。チェヴィオット種の羊毛を使用したツイード地が特に有名で丈夫で強く、しかも暖かく、世界中の紳士から愛されている。
「完璧なカントリージェントルマンスタイルを完成させるにはポーター&ハーディングの生地は欠かせないですね」(岡田さん)
HARRISONS OF EDINBURGH(ハリソンズ・オブ・エジンバラ)
1863年にスコットランドで創立。赤いバンチ(生地見本)がトレードマークで、しなやかでエレガントでありながらアイロンで癖付けがしやすく、仕立て栄えすることも特徴。高品質で豊富なコレクションは貴族や世界中のセレブから人気が高い。
「バランスのとれたオーソドックスな生地が揃っています。英国らしい王道のスーツ素材が特徴ですね」(岡田さん)
DORMEUIL(ドーメル)
1842年にフランスで創立。現存する世界最古の服地マーチャントであり、英国の伝統と格式とフランスのエレガンスを合わせた高級服地を中心に生産。「TONIK(トニック)」「SPORTEX(スポーテックス)」といったの世界中に愛された生地を生み出したことでも知られる。
「フランスらしさのあるドーメルならではの色毛のある他にはないコレクションが揃ってますね」(岡田さん)
DOMINX(ドミンクス/葛利毛織工業)
葛利毛織工業は1912年に愛知県木曽川町で創業。スロースピードの旧型織り機を使用して生産される、織りのしっかりとした上質な生地に定評がある。自社ブランド「DOMINX」は国内テーラーはもとより、海外の有名メゾンでも使用されている。
「昔ながらのものづくりと海外のビックメゾンからの支持も厚いです。日本を代表するミルですね。私も何回も別注生地を作ってもらっています」(岡田さん)
厳選した生地コレクションからスーツを仕立てられるテーラー
ここで紹介した生地は、決して安いものではない。せっかくならば信頼できるテーラーにお願いしたいところ。ミューゼオ・スクエア推薦のテーラーも合わせて紹介する。
LOUD GARDEN
LOUD GARDEN(ラウドガーデン)の特徴は、ズバリ遊び心。テーラーと普通のブティック的な要素を兼ね備えており、店内に展示しているモデルはイギリスのスーツがデザインのベースとなり、そこに店主こだわりのロックテイストが反映されている。一見アバンギャルドのようだが伝統的な製法やカッティングを行っている。オーダーを受けたアイテムは、その季節内に着用できるように、なんと一ヶ月半でのお渡しもしているという。これは普通のテーラーでは考え難い期間である。また、お店はテーラーでは珍しく予約制ではないため初心者でも来店しやすいおすすめの一店である。
THE KIRINTAILORS SHOP
江利角 卓也氏と上山善史氏の二人が主催する東京・自由が丘にあるテーラー「THE KIRINTAILORS SHOP(ザ キリンテーラーズ ショップ)」。伝統的なメンズテーラーリングを軸にモダンかつシンプルなスーツ・ジャケット作りを心がけている。メンズスーツの他にもカジュアルテイストのアイテムや、レディースアイテムにも柔軟に対応可能。顧客の要望に迅速かつ柔軟に対応するために、テーラーが在駐しアトリエ機能も併設している。
●KIRINTAILORS パターンオーダー
スーツ価格9万5000円~、中心価格帯13~15万円。
ジャケット価格6万9000円~。
納期1ヶ月(時期により~2ヶ月)。
●KIRINTAILORS ビスポークオーダー
スーツ価格29万円~。
スリーピーススーツ価格35万9000円~。
ジャケット価格20万1000円~。
納期3ヶ月~。
※詳細についてはお店へお問い合わせください。
Vorterano
Vorterano(ヴォルテラーノ)では店主でありテーラーであり、パタンナーでもある岡本さんがテーラー以外に自らデザインする既製品(メンズのみ)も販売している。既製品の良さとテーラーリングの良さの両方を知っていて、なおかつコミュニケーション能力に長けているからこそ、柔軟な対応ができるのである。また、お客さんが喜んでくれるなら面倒なことでも惜しまないという岡本さんの思いから、型紙の制作から縫製まですべての作業を一人で行っている。こだわりぬいたオーダースーツを希望の方におすすめの一店である。
現在は、南フランス、ニースに活動拠点を移し服作りを続けている。ご注文等は、下記メールアドレスまで。
vorterano@gmail.com
BESPOKEMAN
ロンドン Savile Row「サヴィル・ロウ」にある英国王室御用達テーラー「Meyer &Mortimer」でビスポークカッターとして勤務していた金子勝氏が2013年に設立したブランド。
ロンドンから帰国したのち、SNSを通じた出張テーラーを開始。2018年5月からは銀座にアトリエを構えている。アトリエではアットホームな雰囲気の中、オーダーした手縫いスーツの制作過程を見ることができる。
ビスポークスーツのほか、スーツの要となる箇所をBESPOKEMANアトリエにて手縫いで製作したパターンオーダーも受け付けている。
SHEETS
2014年立ち上げ。サビル・ロウの老舗「Kilgour(キルガー)」「Stowers Bespork(ストアーズ・ビスポーク)」にて修行を経た、森田智さんによるテーラー「SHEETS(シーツ)」。シンプルで落ち着いた内装には、お客様やご近所さんからもらった動物の置き物がちょこんと飾られており、ほっこりとした気持ちになる。
☎︎ 03-6256-9293
mail@sheets-studio.com
ご予約はメールでも受け付けています。氏名、ご希望日時を記入の上、ご連絡ください。
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