ウランガラスから透かし見る、アンティークガラスの世界と時を超えたストーリー

ウランガラスから透かし見る、アンティークガラスの世界と時を超えたストーリー_image

文/金山靖
撮影/米玉利朋子

エジプト香水瓶やガラス瓶を知ることで広がってきたガラスの世界。
海福雑貨さんの店内に溢れるガラスをはじめとした様々は雑貨は、商品でもあり店主である遠藤さんのコレクションでもあります。
ガラス雑貨は集めるだけでも良いのですが、遠藤さんならではのガラスの楽しみ方があるそうです。
これからコレクションする人にも是非知ってもらいたい、コレクションの楽しみ方を伺いました!

歴史やストーリーを感じさせるガラスを見つけてみる

古い宝物蔵のような海福雑貨2階の分室には、ヴィンテージやアンティークといった古いアイテムが並んでいます。古いガラス瓶だけでなく、古い時計や地球儀、なにかの機械の部品やドライグリーンなどがところせましと陳列されている様子は、まるで映画のワンシーンのよう。
遠藤さんが面白いと思ったものを集めているうちにこうなったという陳列棚。この場所は、お店でありながら遠藤さんのコレクションスペースとも言えます。

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古いものにハマるきっかけを遠藤さんが話してくれました。

「もともと古いものが好きだったのですが、妻のほうが僕よりも古いものが好きで、コレクションしていたんです。それに影響されて、僕もより好きになっていき、この店を始めてからは、さらにのめりこんでいきました。
2階は僕が好きな古いものを集めていますが、妻が好きなものの集まりでもあるんです。昔のガラス製のしびんとか(笑)。店の奥にたくさんありますよ」

アンティーク・ヴィンテージのガラスは、歴史やストーリーを感じさせるところが好きと語る遠藤さん。

「古いものからは歴史が垣間見えるんです。古いガラス瓶のラベルには、今はもう存在しない会社の名前が書かれていたり、右から左に書かれていたりして、当時の様子が伺えるんです。昔は盛んだったけど今はほとんど作られていないものとかも、その歴史を思うとより味わい深くなるんですよ」

お店の中から遠藤さんお気に入りの雑貨を紹介していただきました。

今では作れない神秘的な輝きを放つウラングラス

棚の一角には、一際目立つ不思議な空間。そこにはブラックライトに照らされ、幻想的なグリーンの輝きを放つガラス製品の数々が並んでいます。
「アメリカなどで作られていたガラス製品で、ウランガラスと呼ばれています。日本製のものは1930年代前後、
アメリカ製のものは1920年代〜1960年代前後のものがお店には多いです」と遠藤さん。

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ウランガラス(ウラングラス)とは

ごく微量のウラン化合物を含んだ素材で作られたガラス製品。19世紀前半にチェコで生産されはじめ、ヨーロッパやアメリカを中心に広く普及しました。透明感のあるグリーンが美しいだけでなく、ブラックライトをあてると蛍光色に光るのが特徴です。現在は、ウランの取り扱いが厳しくなったため、新しく製造されるウランガラスはごくわずかとなっています。ウランガラスは放射線を発していますが、その量はごくわずかで、人体に害がない程度です。

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「大正時代、精工舎(現:セイコー)で作られたウランガラスの時計です。昔は大理石など重厚感のある素材をボディにした時計がたくさんあったんです。シンプルな形ですが、角が削られていたりして、細部にこだわりが感じられます」
こちらは今も動いているので、時計として使うこともできるそう。

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ブラックライトに照らすと、鮮やかなエメラルドグリーンになりました。
「飾るときは、ブラックライトと一緒に飾ると面白いですよね。寝ようと思って照明を消したら、この時計が浮かび上がってくる。きれいだと思います」

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ウランガラスは食器も多く作られていました。このカップ&ソーサーの透明感は、インテリアとしても美しいですね。

日本でも作られていたウランガラス

ウランガラスは日本製もあります。

「戦前に作られた、胃腸系丸薬ビンです。『ピストル丸』という名前が面白いですよね。富山県の製薬会社が作っていたようです。ラベルのフォントや書かれている文字を読むのも楽しいですよね。
他のウランガラスと違って、一見すると普通のガラス瓶に見えますが、ちゃんと光るんです。こういう隠れウランガラスを見つける楽しさもあるんですよ」

手のひらに収まるぐらいの小さなビン。一見ウランガラスのように見えませんが……。

手のひらに収まるぐらいの小さなビン。一見ウランガラスのように見えませんが……。

ブラックライトで照らすと、鮮やかな蛍光色になります。

ブラックライトで照らすと、鮮やかな蛍光色になります。

大正モダンなワイングラス

大正時代に作られたワイングラス。持ち手部分はクリアーで、ワインを入れるボウルだけに色がついています。薄いブルーがどこか懐かしいですね。

「これもウランが含まれていて、ブラックライトで照らすと蛍光色に光ります。それよりも面白いと思っているのは、グラスに気泡が入っていることですね。当時は製造技術が発達していなくて、ガラス内に気泡が残ってしまうことがあったんです。そんな荒削りな感じも、手作りっていう感じがしていいですね」

細かく入った模様も大正時代を感じさせます。

細かく入った模様も大正時代を感じさせます。

アイテムが持つ歴史を知ると、アンティークがより愛おしくなる

いいものや好きなものは、それ自体のストーリーも知りたくなるもの。
それと同様に、ひと目見た瞬間にアイテムの持つ歴史を想像してしまうほど濃密なストーリーを持っているのが、アンティークやヴィンテージアイテムの魅力でしょう。
とはいえ、最初は単純に美しさに惹かれて手に取るところからで全然構わない、と遠藤さん。

「飾ってきれいだから、という理由でアンティークのコレクションを始めてもいいんです。興味を持つきっかけは様々ですし、最初からロマンを求めなくてもいいと思っています」

例えば、ウランガラスが製造されなくなったのを深堀りすると、1940年代にウランが原子エネルギーの原料として使われるようになったのが転機のようだというのがわかってきます。
ウランガラスの衰退は原子力の発展と密接にからんでいたという歴史ロマンに思いを馳せるのもアンティークの楽しみですが、今では珍しいブラックライトで輝くウランガラスを愛でるのも、またアンティークの楽しみのひとつ。
その美しさに触れながら、いつか歴史や背景に興味を抱くのも面白いものです。

歴史が刻まれたアイテムに囲まれて生活すると、毎日がより豊かになります。繊細なフォルムの裏に骨太の歴史を持つ、奥深きアンティークガラスの世界を、ぜひ味わってみてください。


ーおわりー

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海福雑貨

海福雑貨は、神奈川県相模原市にある小さなお店。2007年5月、東林間の住宅街に開店しました。
置いているのは、輸入雑貨・アンティーク小物、アクセサリー、ものづくりに携わる様々なジャンルの作家さん達の作品で、その多くは一点もの。
異国の情景・時代を経てやってきたモノたちのロマンの集積、手仕事のぬくもり、そこに込められた暖かい気持ちが自然と伝わってくるお店です。
同じ建物の2Fには「海福雑貨分室」も併設。古いアパートを少しずつ侵食しながら、お店が拡がっています。
公式HPではさまざまな雑貨をオンラインで購入することも可能です。

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公開日:2021年12月7日

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