おじ靴→革靴に呼び方を変えました
「革靴」と文字にすると、紳士靴=男性のものというちょっと遠い存在に感じる方もいるのではと考え、連載では親しみやすく「おじ靴」と呼んでいました。第1回を読んでいただいた方はご存知だと思いますが、実は連載当初から飯野さんと「おじ靴」という表現は違和感あるよね。と話していました。ただ、他に的確でしかも簡潔な表現を見つけることができず、代わりの名称を模索しながらのスタートとなりました。
連載が進むにつれその違和感がふつふつと大きくなり、座談会や靴のイベントで実際の声を聞くことで、改めて「おじ靴」という呼び名ってどうなの?と立ち返りました。アンケート調査ところ「革靴がいいのでは?」というご意見もあり、今後は「おじ靴」という呼び方をやめ、デザインにある程度以上のドレス性と古典性を有し性別も気にせず履ける靴の総称として「革靴」を用いてみようと思います。ただし、私達が気付いていないだけで、もっと相応しい呼称があるかもしれません。皆さんのご意見を賜りたく、引き続きSNSなどでお気軽にご意見いただけたら嬉しいです!
革靴ZOOM座談会のメンバー紹介
◉右上「plusu by chausser」プレス・山本さん Instagram▶︎@chausser_inc
◉左上「BRITISH MADE 横浜店」店長・尾山さん Instagram▶︎@british_made
◉右下「Mahogany」靴磨き職人・磯野さん Instagram▶︎@fuuspt
◉左下「東急ハンズ 新宿店」靴お手入れ用品担当・阿部さん Instagram▶︎@mao.photo
靴下はアクセ感覚で。みんなの革靴コーディネート
後半最初の質問は、コーディネートについて。普段の服装にどう革靴を取り入れていますか?こんなマイルールがありますという方、教えてください。
パンツと靴のバランスは、意識しながら組んでいます。細身のパンツだったら靴はちょっと重ためのボリュームがあるものを、ワイドパンツだったら足元をすっきりさせたいのでジョセフ チーニー(以下、チーニー)の「MILLY(ミリー)」のような少しキレイめな革靴を持ってきます。
なるほど。同じようなテイストを合わせるのではなく、わざと変化球にするんですね。それで全体的なバランスを整えていく作戦だ。
そうです。私は、そういう作戦のタイプです(笑)。
あとは靴下ですね。昔からよくホワイトソックスを合わせています。デニムに黒い靴、その間にホワイトソックスを挟んで軽さを出すみたいな。でも靴下の色を変えるだけで全体の雰囲気が結構変わるなと気づいてからは、靴とパンツと靴下それぞれの色合いで、カラーコーディネートを楽しむようにもなりました。
靴下選びは楽しいですよね。おすすめの色はありますか?
夏は、水色や黄緑のちょっと明るい色。秋冬はウールのパンツが増えてくるので、深めの色を選んでいます。ベーシックカラーだったら、無地ののっぺりしているのではなく、リブ編みのものが好きですね。奥行きが出ると思うので。
革靴と靴下のセットで、革靴コーディネート一式みたいなところわかります。仕事の日は基本デニムに革靴を履いているので、靴下は選びますね。
うん、うん。靴下でいうと、私は身長があるのでパンツを履いた時に、すねが出てしまうんですよね。どうしようかと困っていたらよく行く洋服屋さんから「もうメンズの靴下履いちゃえば?」と言われて。なるほど、その手があったか!と、最近はよく紳士売り場を覗いています。結構いろんな色柄があって面白いんですよ。
例えば、ピッチの違うオルタネートストライプがあったり、グレー地にさりげなくパープルのラインが入っていたり。あと気に入っているのはこのドット柄。一見チャコールグレーにピンクのドットですが、この柄には濃淡2種類のピンクと白が混じっているんです。細かくてさりげない仕様がツボです!
基本サイズが23.5cmですが、割としっかりフィットします。革靴を履く時もスッと滑りよく入って履き心地もいいです。パンツを履く時はキュッと履き口を伸ばして、スカートに合わせる時はクシュクシュっとルーズにしています。
デニムと黒靴に、鮮やかな青を差したコーデ。
大花柄のパンツは、フットカバーで足元をすっきりと。
特に夏場はTシャツにデニムでシンプルになってしまうので、アクセサリー感覚で靴下を色柄物にしていました。
仕事柄どうしてもパンツスタイルが多くなるので、パンツの色や柄によっては靴下ではなくフットカバーであっさり履くこともあります。フットカバーだと革靴をメインに見せることができますし、ちょっと派手な柄のワイドパンツを履く時も重宝しています。
皆さん靴下とのバランスに気をつけているということですが、その一方で色んな靴下に同じ1足が適用できるのは革靴の面白さでもありますね。フットカバーだけでなく、秋冬になるとストッキングやタイツなど、選択肢が多いのかなと思いました。
右から阿部さん、尾山さん、山本さん、磯野さん
座談会メンバーのある日の革靴コーディネートをご紹介してもらいました!
ビルケンシュトックのララミーローで、パテントレザーのタイプです。えんじ色に近い赤と黒の組み合わせがレトロな雰囲気でお気に入り!この日は靴を目立たせたかったので、カバーソックスであえて靴下を重ねない履き方にしています。
前半でも紹介したチーニーのMILLYです。先ほど話していたように、デニムと黒靴の間に白ソックスを挟んで軽やかさを出しました。ロンドンのブランド・
ドレイクスの秋らしいからし色のカバーオールにも、雰囲気がぴったり合います!
プリュス バイ ショセのローファー「
PC-5016」です。この日はローファーが主役になるよう、靴以外の色味を淡い同系色でまとめました。のっぺり感が出ないようにシアー素材かつ、ウエストマークできるデザインのシャツをセレクト。シャツとデニムなら、誰でもすぐに手持ちの服で革靴コーディネートができるのかなと思います。
靴は前編でご紹介したカルミーナのクォーターブローグです。紐靴はクラシカルなワンピースや柄スカートとの相性がいいなと思っています。写真には写っていませんが、普段はソックス(紳士用の上品なドットやストライプ)を合わせています。冬はタイツの色を選ぶのも楽しみです。
カビ予防に基本のお手入れ。革靴と長く付き合うために
続いて、革靴のメンテナンスについて教えてください。とても暑かった今年の夏。いつも以上に、お手入れや保管場所には気をつかったのでは?
木製の下駄箱に入れています。乾燥剤や湿気取りを置き、定期的に扉を開けて風を通しているのですが、今年は靴箱にカビが生えてしまいましたね。幸い靴は大丈夫だったのですが、今までなかったのでショックでした。カビ対策は他に、雨の日に帰宅したらソールに風が入るように立てかけて乾燥させています。その際、
シダードライや新聞紙を硬く丸めて入れるとさらに効果的かと。
あ、カビ対策でもう一つおすすめなのが、
ブリフトアッシュのソールオイルです。革が柔らかくなる効果があるので、頻回に塗布するのはおすすめしませんが、酢が入っていて抗菌効果があるんですって。
やはり今夏はカビに悩まされましたよね。私もその一人です。
お手入れの基本ですが、脱いだ後はほこりを取ることも欠かせませんね。
磨きの方はどうですか?磯野さんの靴は、お手入れを楽しむという目線でも選んでいるんじゃないかなと。
そうですね。鏡面磨きができる靴を選びたいみたいなところはあります。簡単にお手入れできるものにも良さはありますが、カビちゃうリスクがあるとか、形をちゃんと整えなきゃいけないとか、そういうことをわざわざやりたいんですよね。覚悟して引き受けているところはあるかもしれません。
「わざわざやる」のが、楽しみの一つですもんね。
商品を扱う山本さんや尾山さんから見て、「他の靴に比べて、こういうお手入れに気をつけてほしいな」ということありますか?
新品の靴を買われたお客様の話ですが、何回か履いた後にお手入れしていない状態で大事に靴箱に入れておいたそうなんです。しばらくして取り出したら靴の表面が真っ白になっていて「カビが生えた!」と。でもそれはおそらく、仕上げ用の靴クリームが白浮きしてたのではないかなと思うんです。輸送や保管時の乾燥を防ぐため、工場ではそれを最終工程でしっかり塗ってくれるので。
確かにそうですね。仕上げのクリームが析出して、表面が白くなることがあるんですよね。よく見るとカビ独特のふわふわもふもふしているのとは違うんですけど、知らないとカビだと驚かせてしまうかもしれません。靴クリームでお手入れができるということは、仕上げの最終調整はユーザーさん自身にかかっている。そういった部分もあることは、知っておきたいところですね。
はい。自分でケアした後でも、最後にしっかり乾拭きをしてから靴箱や下駄箱にしまうのが大事なポイントだと思います。
ケア用品繋がりで、私も気になっていることがあります。“茶色の靴”を購入されたお客様で、靴クリームを選ぶ際「“黒い靴”にも使えるように」と、透明なニュートラルのクリームを選んでしまいがちなんですよね。確かに便利ではあるのですが、そうするとどうしても元々の色が抜けてしまう。できれば茶色の靴には、茶色のクリーム、靴の色に近いクリームを使ってほしいと思っています。
というのもチーニーの靴で言うと、茶色が「バーニッシュ」という仕上げになります。アンティーク仕上げに近い感じで、色むら感をあえて残し、グラデーションを楽しめる色付け方でフィニッシュされているんですよね。そういった靴の色、特徴に合わせたケア用品を使うことで、それぞれの革の魅力がさらに引き立つのにって思うんです。
お店でも色んな提案をしていますが、革靴とクリームの色を合わせて選ぶことを知らない方は意外と多いかもしれません。「何にでも使えるものがほしい」と来られる方には無理せずまずはニュートラルから勧めることもありますが、「ずっと使っていると色が抜けちゃいますよ」と必ず伝えるようにしています。あとは靴を持ってきてもらえれば、より相性のいいものが見つかりますよとも。
革靴に興味を持ち始めたばかりでお手入れ用品に迷っている人に、一番最初におすすめするものは何でしょう?
最初におすすめしたいのは、「エム・モゥブレイ」のシュークリームジャーです。固くて力のいるクリームもあるのですが、これは伸びが良く扱いやすいと思います。革本来のツヤ感が出るのもいいんですよね。
ちょっと価格が上がっちゃうのですが、「
GMT FACTORY」さんのライスクリームもすごくおすすめです!ただ、クリームってなかなか使い切れないので、本当に個人的な意見ですけど、少量バージョンを出してほしいです(笑)。
なるほど(笑)。ミニサイズの靴クリームいいですね。
他にもハンズと「コロンブス」がコラボしたクリームもいいですよ。コロンブスは、元のクリームが割と固めなのですが、蝋分のキラッとしたツヤを強く出したい方におすすめです。
それぞれ自分の好みに合わせて使ってもらいたいですね。実は以前から考えていたのですが、シューケア用品の選び方は、化粧品の選び方と似ているんじゃないのかなって。ファンデーションやチークを自分の肌の色に合わせて選ぶ、それと同じように考えれば、実はお手入れアイテムを選ぶのも楽しんでもらえるのではないかなと思っています。色付きの良さもありますからね。
もし悩んだら、靴を持って新宿ハンズの阿部さんまでどうぞ!
靴の王様に極上の絨毯。次に欲しい革靴とは?
最後に聞かせてください!ある日ポーンと、臨時収入がありました。でも買えるものは「革靴」限定。さあ、皆さんは何を買いますか?
臨時収入すよね?何でもいいんですよね?それなら思い切り贅沢させてもらって、「ジョン・ロブ」ですかね(笑)。
やっぱり「靴の王様」と言われているものを履いてみたい。手に入れてみたいという感じです。自分が男性だったらスーツをキメて履いてみたいんですよね。磨いてみたい靴と、純粋に憧れの靴が混ぜこぜになっていますが。
実はシボ革の靴を持っていないので、何がしかは欲しいです。今のところ一番は、チーニーの「CAIRNGORM II R(ケンゴン II R、以下ケンゴン)」ですね。
ケンゴン、ありがとうございます!でも、今のところメンズだけなんですよね。
ケンゴンは、ずっと長い間イギリスで一部のカントリーシューズ好きのためだけに、細々と売っていたんですよ。でも数年前から日本で、ものすごいブレイクしているんですよね。
伝えておきます。私は、前半にお話しした通り、ウィングチップのような飾り穴がついた靴が多いので、そろそろプレーントウの靴を履きたいなと思っています。シンプルだからこそ、ちょっと手が出せなかったというか、履きこなす自信がなかったんですけど。
最近、靴の履き方が少しずつ分かってきたので、チーニーだったら「
LORA(ローラ)」、チャーチだったら王道の「SHANNON(シャノン)」もいいですね。あの辺りは、一度履きたいなと思っています。
どちらも素敵な靴ですよね。では、最後に山本さんは?
定番すぎるかもしれませんが、パラブーツの「MICHAEL(ミカエル)」がいいなと思っています。あと、欲しいとはちょっと違うんですけど、ドイツが好きなのでハインリッヒ ディンケラッカーも気になります。
周りから「靴のロールスロイスだ。まるで絨毯の上を歩いてるようで気持ちがいい」と聞いていて。実物を見たことはあるのですが、買えないからさすがに足を入れられなかったんですよね。一度は履いてみたいです。
恐怖のハインリッヒ ディンケラッカーね。走るロールスロイスなのか、歩くロールスロイスなのか、歩く重戦車なのかよく分かんないやつね(笑)。ドイツ東欧圏そのまんまの表情ですもんね。あれは、確かに一種のゾーンとしては、大いにありの靴ですよ。
さて、お時間がきてしまったので、ここまでにしましょう。今回はオンラインでしたが、また直にお会いできる機会があればと思っています。皆さん、ありがとうございました!
持っているのは、前編でご紹介いただいた革靴。
革靴トークはつきないようで……
後半は、革靴を取り入れたコーディネートとお手入れ事情、そして次に欲しいな・履いてみたいなと思っている革靴についてお話いただきました。革靴を所有してからの様々な面白さと、ココだけは押さえておこうという大切なことを教えてもらいました。
座談会メンバーの皆さんは今回が初対面でしたが、革靴トークはつきないようで、それぞれのショップやイベントなどでも交流が続いているそう。
さて、番外編はここまでですが、本編はもう少し続きます。お楽しみに!
ーおわりー