秋冬の代表的な生地「フランネル」を徹底研究。タフで味わいのある、その特徴と魅力、お手入れについて

秋冬の代表的な生地「フランネル」を徹底研究。タフで味わいのある、その特徴と魅力、お手入れについて_image

文/ミューゼオ・スクエア編集部

スーツ・ジャケットをオーダーする前に知っておきたいあれこれ。連載 服を仕立てる前に知りたい「生地」のことでは、服地一つ一つの起源や特徴、お手入れ方法などを詳しくお届けします。

今回は、「フランネル」について。

「フランネル」といえば、秋冬のスーツやジャケット、学生のブレザーなどの衣類から、ブランケットなどの寝具にも使われている、やや起毛したフェルト状の生地を思い出します。また秋口に人気のネルシャツの「ネル」にも関係があるよう。

様々なアイテムに使われている「フランネル」について、その特徴と魅力、お手入れ方法を探っていきます。

「フランネル」の歴史と語源。種類もいろいろある!

MuuseoSquareイメージ

「フランネル」は、18世紀頃の英国ウェールズ地方発祥で、主にウール(羊毛)で作られた軽く柔らかい毛織物のことを指していました。経糸緯糸ともに紡毛の単糸を使って平織りとし、縮絨(しゅくじゅう)を施して仕上げたものが本来の「フランネル」です。現在では、紡毛だけでなく、梳毛を用いたものも存在します。紡毛を用いたものを「ウーレン フランネル」といい、梳毛を用いたものを「ウーステッド フランネル」といいます。

織り方についても、経糸と緯糸を交互に織る平織りだけでなく、2〜3本おきに交互に織られる綾織りもあります。この綾織りの「フランネル」は、「サキソニー」という生地に似ており混乱しがちですが、綾目がより見えにくいものを「サキソニー フランネル」と見なされています。「サキソニー フランネル」や「ウーステッド フランネル」は、本来の「フランネル」よりも都会的な用途のスーツ生地に用いられているようです。

また、「フランネル」を和製英語で「フラノ」と呼ぶこともあります。諸説ありますが、より厚手に仕上げた生地を「フラノ」と称します。

「フランネル」の語源は、ウェールズ語でウールを意味する「gwlanen(グラネン)」がなまったものではないかと言われています。

豆知識

「フランネル」は当初、肌に直接触れる婦人用の素材として作られており、英国の貴婦人が毛織物を肌につけたのは「フランネル」がはじめてだと言われています。その後、徐々に改良され、テニス用のスポーツウェアに使用されるようになり、「スポーツ フランネル」「テニス フランネル」「クリケット フランネル」などの名称を持つ「フランネル」が誕生しました。ソフトで素材に腰がなかった生地でしたが、時代とともに腰のあるトラウザーズ素材として使われるようになりました。

「フランネル」とは、どんな生地なのか?特徴と魅力について

MuuseoSquareイメージ

「フランネル」の特徴は、ふんわり柔らかな起毛した生地表面。保温・保湿性に加え、軽い着心地なので、寒い時期には欠かせない服地の一つです。

また柔軟性・弾力性に優れているので、体にフィットしやすくシワになりにくいのも魅力。その着心地の良さにより、秋冬のスーツやジャケット以外に、寝具などにも使われています。チェックやストライプなど様々な柄とカラーが豊富で、男性はもちろん女性からも人気のある生地です。

「フランネル シャツ」と「ネルシャツ」には違いがある!?

MuuseoSquareイメージ

「フランネル」の代表的なアイテムとして「ネルシャツ」が紹介されることが多く、「ネル」は「フランネル」の略称とされています。しかし、実際には「フランネル」と「ネル」とは違う意味を持ちます。

「フランネル」は起毛した羊毛織物で、「ネル」は起毛した綿織物。

どちらも暖かい起毛素材ですが、強いて違いを言うならネルシャツはさらりと軽く、「フランネル」のシャツはネルのそれよりも暖かく着られます。

「フランネル」アイテムと長く付き合う、お手入れ方法とは?

MuuseoSquareイメージ

表面が起毛している「フランネル」は毛玉ができやすい生地ですが、正しいお手入れ方法を知ることで長く付き合うことができます。

◆毛玉がつきやすい「フランネル」のすぐできるお手入れ方法

ふんわり起毛した生地表面が特徴的な「フランネル」は、摩擦に弱く毛が絡まりやすいので毛玉ができてしまうことがあります。毛玉がができたら、無理やり手で取らず、ハサミを使って丁寧に一つ一つ切り取っていきましょう。

◆家庭用の洗濯機も手洗いもNG。日々のお手入れを欠かさないで!

まずは、持っているアイテムの洗濯表示を確認し、それに従うことが大切です。ほとんどのものが洗濯機洗いも手洗いもできないでしょう。起毛素材の「フランネル」は、静電気によりチリやホコリが吸い寄せられ、それが原因となって毛玉ができたりカビが繁殖したり、様々なトラブルがおきてしまいます。

ただ、難しく考えず、着用後に以下2点のお手入れを心がければ、長く愛用できる生地であることも知っておいてください。

①ハンガーにかけてブラッシング
ハンガーにかけ床と垂直に保ちながら、丁寧にブラッシングし、着用中についたチリやホコリをはらってください。
パンツであれば、パンツ用ハンガーを使用することをおすすめします。

②日陰で風通しのいい場所に干す
すぐにクローゼットやタンスにしまわず、ブラッシング後は風通しのいい日陰で半日ほど干しましょう。ただし、乾燥させすぎると毛がへたってしまうので注意してください。

MuuseoSquareイメージ

日々のお手入れも大切ですが、シーズンが終わったら可能な限りクリーニングに出しましょう。クリーニングに出す際、「柔軟仕上げ」を依頼するのもおすすめです。また、日々のケアに静電気防止のスプレーをかけることを加えるのも効果的です。

「フランネル」の資質上、毛羽立ちや生地が痩せていくのは仕方のないことですが、正しいお手入れをしっかりすること、連日使わないことを意識すれば、より長く上手く付き合っていけます。

ーおわりー

クラシッククロージングを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

この一冊があれば、ジャケット素材の知識は完璧⁉︎

41lfcavz9cl. sl500

メンズ・ウエア素材の基礎知識 毛織物編

スーツやジャケットをデザインや機能性ばかり意識して、何気なく着てしまっていませんか。本書では繊維や糸の特徴はもちろん、生地の製造工程、素材の品種などオールカラーで詳しく解説しています。メンズ・ウェア素材の奥深い世界の扉を開ける一冊です。

紳士服を極めるために是非読みたい! 服飾ジャーナリスト・飯野高広氏の渾身の1冊。

File

紳士服を嗜む 身体と心に合う一着を選ぶ

服飾ジャーナリスト・飯野高広氏の著書、第二弾。飯野氏が6年もの歳月をかけて完成させたという本作は、スーツスタイルをはじめとしたフォーマルな装いについて、基本編から応用編に至るまで飯野氏の膨大な知識がギュギュギュっと凝縮された読み応えのある一冊。まずは自分の体(骨格)を知るところに始まり、スーツを更生するパーツ名称、素材、出来上がるまでの製法、スーツの歴史やお手入れの方法まで。文化的な内容から実用的な内容まで幅広く網羅しながらも、どのページも飯野氏による深い知識と見解が感じられる濃度の濃い仕上がり。紳士の装いを極めたいならば是非持っておきたい一冊だ。

公開日:2019年10月17日

更新日:2022年5月2日

Contributor Profile

File

ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

Read 0%