国ごとのスタイルを楽しもう。Uチップの特徴と代表モデル

取材日: 2018年10月11日

文・写真/ミューゼオ・スクエア編集部

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「お気に入りの革靴を履いている」満足感は、仕事や学業のパフォーマンスをあげてくれるもの。この連載では、革靴のデザインごとに代表モデルやディテールについて解説します。

愛せる革靴を探す旅。今回は狩猟靴をルーツにもつ、Uチップを深掘りしていきます。

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カントリー由来の堅牢性に優れた「Uチップ」

Uチップとは、その名称が示すように靴のつま先がU字型の蓋のようにモカシン縫いされているデザインの靴の事を指します。

外羽根式でつま先がU字に縫われているものをUチップと呼ぶのに対し、つま先に2本線が落ち込むように縫われている形状のものはVチップと言います。

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Uチップの特徴の一つが靴の先端にある縦割りの縫い目です。単なる割縫いのステッチになっているものもありますが、中には縫い目が見えないような技術を駆使して縫われている場合もあります。

後者のような縫い目が露出しないような縫い方の事をスキンステッチと呼び、高度な縫製技術を要します。

ちなみに、このUチップやVチップという名称は日本独自の和製英語であり、海外では通用しません。

もちろん海外でもUチップに当たるデザインの革靴は存在しますが、海外では日本でUチップと呼ばれているデザインの靴はそれぞれ国によって独自の呼び名があります。

また、後述しますがもともとアウトドアスポーツが起源のため革靴の中でも機能性や堅牢性にすぐれています。

Uチップの歴史

イギリスではUチップと同様の形状の靴の事を「エプロン・フロント・ダービー(Apron Front Derby)」や「ノルウィージャン・ダービー(Norwegian Derby)」といった名称で呼んでいます。

前者はエプロンという名称のごとく、靴の前方がちょうどエプロンを垂らしたような形状に見えることからこの名がつけられており、後者は先ほど出てきたモカシン縫いという縫い方の名称がノルウェーの漁師の陸上靴に由来することからこの名がつけられたようです。

イギリスの靴ブランド「EDWARD GREEN(エドワードグリーン)」のUチップ。モデルは「DOVER(ドーバー)」。lastは202。

イギリスの靴ブランド「EDWARD GREEN(エドワードグリーン)」のUチップ。モデルは「DOVER(ドーバー)」。lastは202。

イギリスでは1920年代から30年代にかけてカントリーシューズとしてUチップのデザインが生まれました。なお、他の国では、国ごとに独自の発展を遂げています。

例えばフランスではUチップと同様のデザインの靴の事を「シャッス(Chasse)」と呼んでおり、これはフランス語で狩猟を意味します。つまりフランスでは狩猟用に進化を遂げてきたということがわかります。

フランス製のUチップの特徴として、イギリスのものよりもつま先が丸みを帯びていることがあげられます。

フランスの靴ブランド「J.M.WESTON(J.Mウェストン)」のUチップ。モデルは「Hunt Derby(ハントダービー)」。

フランスの靴ブランド「J.M.WESTON(J.Mウェストン)」のUチップ。モデルは「Hunt Derby(ハントダービー)」。

フランスはモダンとクラシックを共存させるような美意識を持つお国柄ですが、Chasseは狩猟をするために特化した極めて機能性の高いデザインとなっています。

第二次世界大戦後から1950年代にかけてこのタイプの靴は、野山用としてだけではなく街用として一気に広まっていきました。

一方、アメリカではこのタイプの靴の事を「ノルウィージャン・ブルーチャー(Norwegian Blucher)」または「アルゴンキン・ブルーチャー(Algonquin Blucher)」と呼んでいます。また、その風貌から単純に「スプリット・トウ(Split Toe)」と呼ばれることもあります。

トゥは尖ったものもあれば丸く仕上がったものもあったりとさまざま。モカシン縫いの意匠はあるものの、2枚の革が接合されているわけでは無い、飾りモカと呼ばれる装飾が施されていることが多いです。

アメリカではこのスタイルの靴は主にゴルフ用として用いられてきました。そのため、今日でもアメリカでは他の国以上にモカシン縫いはカジュアルなデザインと捉えられているようです。

Uチップの代表モデル

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Crockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)「WEXFORD」

世界中で最も多くの木型の種類を有する靴メーカー、クロケット&ジョーンズ。「ポールセン・スコーン」、「ジョージ・クレバリー」、「ジョン・ロブ・パリス」といった伝統的なハンドメイドのビスポーク靴店の靴を高級既製靴ブランドとして製品化させた実績も持っています。

WEXFORDは、同社のカントリーコレクションの1足。名作「モールトン」とトウのボリューム感、拝みモカとスタイルが共通しています。ボリュームがあるため、スーツに合わせるのはやや厳しいものの、ジャケットには十分対応可能。次世代の名作候補の一つです。

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John Lobb(ジョンロブ)「SENNEN」

革靴メーカーの最高峰、ジョンロブ。1858年に靴作りを始めて以降、素材、縫製、仕上げ・・・ どれをとっても一級品のものづくりを続けてきました。

SENNENは、シャンボード・ダブルソールにシャープでエレガントなスタイルで定評のある7000ラストを用い、エプロンステッチで仕上げられた一足。コンテンポラリーな雰囲気が漂います。

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RENDO(レンド)「 APRON FRONT DERBY」

浅草に店を構えるシューズメーカー「RENDO」。RENDOは全ての靴をグッドイヤーウェルテッド製法でつくっており、またビスポークシューズと見間違えるほどシェイプがきいた木型を用いるなど、手間暇を惜しまずに靴作りをおこなっています。

「APRON FRONT DERBY」はドレスラインとは別の新木型を採用。カジュアルに仕上げられているためオン・オフ問わずに履くことができます。

まとめ:気負わず、普段履きとして活用したい

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Uチップの革靴は、カントリーシューズをルーツに持っており、ストレートチップなどのドレスシューズと比べるとボリュームのある靴が多いです。

かしこまった場に履くというよりは、やはり気負わず普段履きとして活用したいデザインです。

使いどころを間違わなければビジネスシーンでも用いることができるものの、フォーマルシーンでは避けた方がいいでしょう。

イギリスブランドのUチップは比較的ロングノーズなので、フランネルのジャケットやスーツと合わせてクラシックに。フランスブランドのUチップはショートノーズでボリュームがあるので、ツイード製のカントリージャケットなど合わせるとより靴の特徴を引き出すことができます。

最近はそのオーセンティックなデザインにモダンな要素を織り込んだモデルが出てきていることも見逃せません。ジョンロブの「SENNEN」はその代表例と言えるでしょう。ジャケットを普段羽織る方にはオンオフ使える一足となるのではないでしょうか。


ーおわりー

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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