アウトドア料理人・小雀 陣二さんが愛用する、デザインと機能性を兼ね備えた調理道具たち

文/石原 たきび
写真/松本 理加

美味しい料理をつくる人はきっと、とっておきの調理道具を持っているに違いない。そんな期待を胸にお話を伺ったのは、アウトドアコーディネーターの小雀陣二さん。料理は独学ながらレシピ本を出版するほどの腕前だ。今回は「細かいところまでこだわって揃えた」という彼の調理道具を見せてもらった。

アウトドアでも、どうせなら美味しいものを食べたいでしょ

今回の取材場所は、横浜の小菅ヶ谷北公園に昨年オープンしたバーベキュー場。さわやかな秋晴れの下、慣れた様子で手際よく準備を始める小雀さん。ずらりと並んだ調理道具は、いずれも使い込んで年季が入ったものばかりだ。

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「機能はもちろんだけど、デザインがかっこ悪いと使う気になれないんです。『使いやすくてかっこいい』という観点で選んでいくと、結果的にほとんどがアメリカ製になりました。リーバイス501がいつまでも人気なように、メイドインUSAにはやはり憧れがありますね(笑)」

調理道具は洋服といっしょで、好みのものを長く使いたいという思いがある。また、購入する際は現在使っている道具との相性も考えるという。

「僕はもともとめんどくさがりなので、あまり手入れに時間をかけたくない。そのために、その都度、使った後の最低限のケアはきちんとするようにしています」

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アウトドアにはまったきっかけは、18歳で乗り始めたマウンテンバイク。山でお茶を飲むためにバーナーを買い、やがて簡単な料理を作るようになりという流れで、調理道具が増えていく。料理は独学で覚えた。

「小学生の頃からテレビの料理番組が好きで(笑)。当時から自分でいろいろ作っていました。アウトドアでも、どうせなら美味しいものを食べたいでしょ。持ち運ぶということは重さやサイズなどに制限があるので、道具選びはなおさら重要なんです」

小雀さんの道具欲は尽きない。好きなメーカーの商品から選ぶことが多いが、展示会にも足を運び、雑貨屋もチェックする。今回、料理を盛り付けた八角形のかわいい皿も雑貨屋で購入したそうだ。

ちなみに、家庭のオーブンは先に温めておくというのが調理の定番だが、小雀さんはいろいろと試してみて、ダッチオーブンでは「先に温めなくても問題ない」という結論に達した。「パンを焼くとき以外は気にしていない」そうだ。このように、彼の料理にはアウトドアでの実践によって培われた「手際のよさ」が随所に見える。これも、道具と真摯に向き合ってきた結果なのだろう。

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小雀さんのこだわり調理道具

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肉をジューシーに焼き上げる。ムラの出ないダッチオーブン

ロッジは100年以上続くダッチオーブンの代名詞的メーカー。主素材は鋳鉄とポリエステル。今では、面倒なシーズニング(使い始めの焼き慣らし作業)が不要なので、すぐに使えて初心者にもやさしい。「オーブン料理以外にも煮込み、炒め料理、蒸し料理など用途が広く、蓄熱性が高いので野外で使っていても料理ムラが少ない」。取材時は持ち手に鎖を掛けて、その長さで火力を調節していた。サイズは10インチ。4、5人分の料理ならこれぐらいのサイズで十分だという。脚無しタイプを買えば家庭のキッチンでも使えるそう。

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コーヒータイムを演出する、レトロな佇まいのケトル

円錐形のクラシックなデザインのステンレススチール製パーコレーター。アウトドアでは、これでコーヒーを淹れたりお湯を沸かしたりする。持ち易いハンドルで、注ぎ口はコーヒーのしずくがたれない設計。使いやすくてかっこいいという、デザインと機能美の両方を兼ね備えたアイテムだ。「置いたときに安定感があるし、つるが付いているので吊るして使うことも可能です。サイズはいろいろ出ていますが、火にかける際はこの大きさがベスト」。新品はステンレスの銀色だが、使い込むとこのような年季の入った色合いになる。

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トングは素材感とマットな色合いが気に入って購入。握った時のはね返りや掴みやすさなど細部にもこだわりがある。「安いやつは、先端のウネウネがもうちょっと開いいて掴みにくいんですよ。バーベキューの神様と言われるスティーブン・ライクレンからも『トングはいいものを買え』と言われたからね(笑)」。トラベラーズグリルは旅先で木や石の間に渡し、鍋やケトルを置いて直火料理で使用する。サイズがコンパクトなため、バックパッキングに便利。中空ステンレス製で軽いことなども魅力だという。

アウトドアでの鉄板の一品

ソースが決め手の特製「ローストポーク」

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今回、小雀さんが振る舞ってくれたのは、キャンプの定番料理だという「ローストポーク」。豚肩ロース、じゃがいも、いんげん、玉ねぎ、にんにくをダッチオーブンでゆっくりと焼く。「野菜は皮ごと焼くと中がふっくらします。味付けは最近お気に入りの小笠原の塩で」。決め手は、調理後のダッチオーブンに赤ワイン、たまり醤油、砂糖を入れて作る特製ソース。最後に、全体に引き立ての黒胡椒をかければ完成だ。出来立てのローストポークのおいしさに野菜のホクホク感が加わり、至福の一品となった。

ーおわりー

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雀家

神奈川県・三崎町にあるカフェ「雀家」(すずめや)。アウトドアコーディネーターであり、料理は独学ながらレシピ本を出版するほどの腕前である小雀さんが提供するサンドイッチやカレーを味わうことができる。営業日は土、日、月曜日だが、小雀さんがイベントやツアーなどで出張もあるので、事前にFacebook上に通知される営業スケジュールの確認をおすすめしたい。

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取材協力

小菅ケ谷北公園 バーベキュー広場
神奈川県横浜市栄区小菅ケ谷四丁目31番 
営業時間:10:00~16:00(14:00 受付終了)
施設利用についての詳細はHPをご確認ください。

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公開日:2015年10月26日

更新日:2022年6月27日

Contributor Profile

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石原たきび

塾講師、出版社勤務などを経て、現在は雑誌・ウェブ多方面でフリーライターとして活動。趣味は、たき火、俳句、酒。高円寺在住歴13年。編著に『酔って記憶をなくします』(新潮文庫)など。

終わりに

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それぞれの機能を熟知しているところからも、深い道具愛を感じました。完成した料理があまりにも美味しかったので、「特製小雀流ですね」と褒めると、「大したことはしてないから、ふつうのローストポークですよ」とはにかむように笑う小雀さん。いえいえ、皿に盛り付ける際も“アウトドアっぽさ”の演出にこだわるなど、細やかな心配りも勉強になる取材でした。

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