篠原 章公
編集者・ライター・カメラマン。日頃より多数のインタビュー取材を担当。近年はスイーツ全般とシガーを勉強中。
取材・写真・文/篠原 章公
自宅でレイアウトを組み、思いのままに好きな車両を走らせることができるNゲージ鉄道模型。その走行動画が現在YouTube上で人気を集めている。レイアウトの組み方や動画の撮影方法に至るまで、その魅力とともにtomy Hiratsukaさんに語っていただいた。
コレクション・ダイバー【Collection Diver】とは、広大なモノ世界(ワールド)の奥深くに潜っていき、独自の愛をもってモノを採集する人間(ヒト)を指す。この連載は、モノに魅せられたダイバーたちをピックアップし、彼ら独自の味わいそして楽しみ方を語ってもらう。
鉄道模型の走行動画は100本に迫る勢いのtomyさんだが、そもそもNゲージに触れるきっかけは何だったのだろうか。
「中学2年生の頃、Nゲージを走らせている友人と知り合ったのがきっかけです。それまでは鉄道模型と言えばプラレールしか知らなかったのですが、これを機にレールセットと「455系グリーンライナー」を父に買ってもらい、自宅で走らせて遊ぶようになりました」
1985年からJR東北本線を走った「455系グリーンライナー」。初めて手にしたNゲージ鉄道模型ということで、tomyさんにとって思い入れのある車両だ。
その後も鉄道模型への想いは深まるばかりだったが、現在のようなコレクションを揃えるようになったのは、ユーチューバーとしての活動を始めてからのことだという。
「他の方の動画を見て、自分でもやってみようと始めたのが2014年初頭。動画の再生回数が上がったり、コメントをもらえるのがうれしくて、コレクションを揃えるのにも拍車がかかりました。列車の走る姿をより本物らしく感じてもらえるよう、ジオラマにも凝るようになりましたね」
解説:Nゲージ鉄道模型とは?
電気を動力とする鉄道模型のひとつ。Nゲージはレールの中心間隔を9mmとする規格であるが、その一般性から模型を指して単に「Nゲージ」と呼ぶことも多い。鉄道模型の中では小型であり、そのために日本ではレイアウト製作に最適なサイズとして考えられている。「nine」「neun」など、数字の「9」を表すヨーロッパ言語の頭文字が由来。1960年にイギリスで発売された鉄道模型を皮切りに、徐々に普及。日本でも1970年代以降、ブームとともにNゲージの呼称が広まり、近年に至るまでファンに親しまれている。
日常的に走行動画を撮影し、投稿するようになったtomyさん。撮影する上でのこだわりについて伺った。
「1本の動画を撮影し、投稿するのにかかる時間は半日程度。車両の特性に応じて変化をつけながら、撮影・編集していきます。この車両は山間部を走ることが多いから、そういったカットを多くしよう、仮置きの建物を増やして、街の雰囲気を演出しよう、といった具合ですね。ローアングルや寄りのカットを多用することで、主役である車両をよく観られるように構成します」
「私自身の趣向としては、車両数や細かなディテールにおいて、それほど現実の車両を忠実に再現しようというこだわりはもっていないのですが、動画はたくさんの人に観てもらうことを想定してつくるもの。コメントで指摘をいただいたりしながら、可能な限り実際のものに近づけるよう取り組んでいます」
E259系にオリジナルの装飾を施した「マリンエクスプレス踊り子」の走行動画は、77万回以上の再生回数を誇っている。(2017年6月現在)
tomyさんが鉄道ファンになるきっかけとなった、一番好きだという車両。かつて東京~熱海間を走行しており、自身の最も身近に走っていた。KATO製の4両セットにTOMIX製の車両を追加している。終着駅はtomyさんの最寄駅「平塚」。
現在成田エクスプレスとして運行中のE259系をベースに、tomyさんが作り上げたオリジナル車両。シールなどは自作のもので、tomyさんの名刺代わりともいえるモデル。
東京~伊豆急下田間を運行している特急「踊り子」。国鉄時代から走行するこの車両は、現在でも現役。オールドファンにもなじみ深い車両だ。
大阪~金沢・和倉温泉間を運行する特急「サンダーバード」。近年リニューアルされ、このモデルが発売されてからすぐに買い求めた。西日本へ旅行に行った際、実際に見て気に入った車両。
首都圏に住んでいる方なら、乗車する機会も多いであろうJR東日本・主力車両のひとつ。愛好家の中でも人気が高い定番路線だ。
鉄道模型愛好家の中でも、一味違った楽しみ方をしているtomyさん。改めて、Nゲージ鉄道模型の魅力について聞いてみた。
「現行の車両も、昔の車両も問わず好きなように走らせることができるという、これに尽きると思います。また、私の場合は動画を通じて知り合った愛好家の方と交流する機会も生まれており、レンタルレイアウトでお気に入りの車両を走行させながら意見交換をしたりと、鉄道模型を通じて過ごす豊かな時間は、他では得られないものがありますね」
レンタルレイアウトでの走行動画
最後に、今後の展開について伺った。
「現在はKATO製のJRの車両が多いため、他のメーカーの私鉄路線もコレクションに加えていきたいと思っています。2017年9月にリリースが予定されている「伊豆クレイル」はぜひ手に入れたいと思っています。ジオラマのバリエーションも増やしていくことで、よりクオリティの高い動画作品を作っていきたいですね」
tomyさんの愛用撮影機材
動画の制作にはSONY製のハンディカム、コンパクトデジタルカメラ、低位置用の三脚を使用。Windowsムービーメーカーをメインの編集ソフトとして使用している。
収集するだけでなく、自分なりにカスタマイズしたレイアウトの中で好きな車両を走らせ、その姿を動画に収めてWeb上に公開。そこから愛好家同士の交流が生まれている。
誰もがコンテンツを発信できる今だからこそ、動画を軸としたコレクションの共有が広がりを見せるのかもしれない。
―おわり―
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公開日:2017年6月25日
更新日:2020年3月19日
Writer Profile
終わりに
tomyさんにお会いする前、30代から40代くらいの方なのかなと勝手に想像していました。実際にお会いしてみると20代半ばの礼儀正しい青年なのにビックリ。限られたスペースをうまく活かしながら、数々の動画を撮影したお話を伺う中で、「鉄分」の濃さを感じました。tomyさんは、今まさに「時代に乗っている」コレクション・ダイバーだという印象を受けました。