革靴の素材「スエード」のルーツや特徴。ヌバック・ベロア・バックスキンとの違いについて

文/ミューゼオ・スクエア編集部

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革の歴史や特色について解説していく連載「革づくりの真髄を知る」。一口に「革」といっても、スムースレザーやオイルドレザー、起毛革など、様々な革が存在します。

今回は、秋冬にぴったりの起毛革の一つ「スエード」を取り上げます。

「スエード靴を初めて手に入れたのは、Clarks(クラークス)のワラビーとデザートブーツかな」。編集長世代では、「スエードといえばコレ」といった王者的存在があったそう。現在はコレといった靴はなかなか登場しませんが、革靴の加工素材の一つとして詳しく見ていくと、意外な特徴やそれぞれの違いがわかって面白いんです。

革靴の素材「スエード」とは?

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スエードとは、皮を革になめす過程で肉面(裏側の皮)をサンドペーパーなどで毛羽立てて(バッフィング)、それを表面として仕上げた革素材のこと。原皮にはカーフスキン(生後6ヶ月以内の仔牛の革)などの薄く柔らかなものが用いられることが多く、キメ細かくフワッとした短めの毛足で暖かい素材です。

しなやかで繊細な小動物革で作られたスエードは「シルキースエード」と呼ばれ、高級品として扱われています。「シルキー」は、シルクのように繊細な素材という意味。

スエードの加工方法を開発したのは北欧のスウェーデンで、語源は「スウェーデン」の国名をフランス語表記にしたものと言われています。

スエードは雨にも強い!? 特徴と魅力について

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先述の通り、スエードは元々表面であった皮を裏にした素材です。

皮組織で一番丈夫な銀面(表面)を残した状態でなめされるケースもあり、その場合は見た目に比べ耐久性が強くなります。つまり一番丈夫ながら表面だと外部要因による割れのリスクが高まる銀面を裏側に持ってくることで、さらに丈夫な生地となるのです。

また、表面の毛羽のおかげで、自然な撥水性が得られるのも特徴。実は雨に強い革なのですが、濡れた後はしっかりメンテナンスしてあげることが大切です。
他のレザーに比べ、起毛革のお手入れ方法は簡単です!

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詳しいお手入れ方法は、こちらからチェック▶︎「初心者でも簡単!スエード靴のお手入れ手順

スエードと混同しがちなヌバック・ベロア・バックスキンとの違い

皮から革になめす過程で起毛加工した素材が「起毛革」です。その起毛革にはスエード以外にも、ヌバック、ベロア、バックスキンなどがあります。この4つの革は、見た目が似ていることや名称により混同されやすいので、それぞれの加工法や特徴と共に違いを知っておきましょう。

そもそも起毛させる“面”が違う「ヌバック」

エドワードグリーンのラスト82、ヌバック。

エドワードグリーンのラスト82、ヌバック。

スエードとは逆に、なめす過程で肉面ではなく銀面側(表面)をサンドペーパーなどで毛羽立て起毛させた革が「ヌバック」です。
銀面は肉面と比べ、平たく滑らか。元々、繊細な銀面を起毛させているため、スエード以上に毛足が短くキメ細かで、まるでビロードのような風合いになるのが特徴です。起毛革ながら、さらっとした手触りなので、元来は春夏向けの素材とみなされていました。

近年ではタンナーの技術革新などもあり、ヌバックの質感に近いスエードを見かけるようになりました。このようにスエードとヌバックの識別はだんだん難しくなってきていますが、ヌバックの場合は毛穴の跡などの地肌感がなんとなくわかるはずです。

スエードより毛足が長く艶がある「ベロア」

「なめす過程で肉面を起毛させ、それを表面として仕上げた革」であることと、「語源がフランス語」であることの2点がスエードと共通しています。

ただし、ベロアはスエードに比べ光沢感があり、ベルベットと質感が似ています。また「ベロア」という名称は、日本でしか使われおらず、海外では「スエード」として一括りにされています。日本では、成牛などの繊維が粗く厚めの原皮を用いた際に「ベロア」と呼ばれ、やや毛足が長くキメも粗く仕上げる傾向があります。

Backじゃないよ、“Buck”だよ!「バックスキン」

オールドチャーチのラスト73、バックスキン。

オールドチャーチのラスト73、バックスキン。

バックスキンは「バック」という名が入っているため、日本ではスエードやヌバックと混同されることが多いようです。この「バック」は、「Back=後ろ」ではなく、「Buck=鹿」を意味します。
なので、実際は牡鹿(雄の鹿)の皮をなめし、銀面を起毛させて仕上げた革のこと。

ちなみにバックスキンと同じ加工方法で、牛革で作った革が「ヌバック」です。

牛革に比べ、鹿革は柔軟で伸縮性があり、形崩れしにくく耐久性に優れていることが特徴です。本来、鹿の銀面は薄く剥離や傷がつきやすいという欠点があるのですが、それを削って起毛させ、未然にトラブルを防いでいるのです。

ちなみにこちらは、Avon House by Tricker'sのスタッグスエード。一見、ただのスエードに見えますが、実は牛革ではなく雄鹿=Stagを使用し、肉面を起毛させたもの。同じ鹿革でも銀面を起毛させた「バックスキン」ではなく、とても珍しい。詳しくは<a href="https://muuseo.com/square/articles/184" target="_blank">こちらの記事</a>で。

ちなみにこちらは、Avon House by Tricker'sのスタッグスエード。一見、ただのスエードに見えますが、実は牛革ではなく雄鹿=Stagを使用し、肉面を起毛させたもの。同じ鹿革でも銀面を起毛させた「バックスキン」ではなく、とても珍しい。詳しくはこちらの記事で。

いかがでしたか?
今回は、スエードを中心に、起毛革それぞれの特徴をご紹介しました。一見似たような質感でも、革の加工方法を知るとより違いがわかって革靴選びがもっと楽しめるようになります。

ちなみに編集長曰く「一見使いづらそうだけど、ちゃんとお手入れしながら使うといい感じにエイジングしてくれるんだよね」とのこと。

スエードをはじめ、起毛革を使った革靴は、コーデュロイやツイードなど、同じく起毛している服と相性がよく、見た目も暖かい着こなしが叶います。

ぜひ革の違いを見つけながら、秋冬のコーディネートを楽しんでみてください。

公開日:2019年12月24日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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