日本が誇るソフビ工房。その手仕事の全て!「シカルナ・工房」

文/佐々木健人
写真/佐々木孝憲 ミューゼオ・スクエア編集部

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こんにちは、ミューゼオ・スクエア編集部の佐々木です。突然ですが、こちらの写真を見てください。

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こちらはソフトビニールフィギュアの制作販売を行う工房「シカルナ・工房」が最近手がけたオリジナルのソフビ「大蛇(オオオロチ)」です 。いまにも動き出しそうな雰囲気があります。

1960年代後半。第一次怪獣ブーム時にマルサン商店が制作したソフビ怪獣が大ヒットします。アクションフィギュアほどではありませんが、接合部はそこそこ可動する上に、丈夫で水遊びにも使えるため、児童向けの玩具としてソフビは数多く作られてきました。

そんなソフビですが、近年は造形や塗装に力を入れた製品が次々と発売されています。香港や上海では造形にこだわったアーティスト系ソフビが大人気。タイやアメリカでもソフビに力を入れたトイ系のイベントが多く開催されています。

新しい波を作り、世界から熱い視線を浴びているのが先ほどのソフビを作った「シカルナ・工房」。原型制作から成型、塗装までこだわっているソフビは大人気。メイドイントーキョーにこだわった商品はオンラインショップに掲載されるとまたたく間にSold outに。ソフビをオーダーするためだけに海外からお客さんが工房に訪れるそうです。

今回は「シカルナ・工房」にお邪魔して、ソフビ制作についてお話を伺いました!

世界から熱視線を浴びるMade in tokyoのソフビ

シカルナ・工房があるのは東京都の江戸川区。水産加工業者の工場を改装したという工房は、外から見るといわゆる変哲もないアパートにしかみえません。表札もなにもないのです。いちど建物の周囲をぐるりとまわり、おそるおそる引き戸をあけるとたくさんのソフビが!よかった、合っていたみたい。

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「いやあ、よく来てくれました!」と声をかけてくださったのは造形師の宮澤博一さん。今日はよろしくお願いいたします!

「原型製作から成型、塗装まで東京・江戸川の自社工場で行っています。おもちゃと言えば、機械で作っていると考えられる方も多いかもしれませんが、うちでは一つひとつ職人が手作りしています。特に塗装に関しては、ファンの方に『シカルナ塗装』と呼ばれるくらい細部までこだわっています」

工房はこちらの一箇所のみ。20代〜30代の職人を中心に日夜ソフビを作り続けています。ここからは実際のソフビ制作の工程を宮澤さんに案内していただきます。

「ソフビはぬるい造形が特徴」なんて言わせない!

ソフビ作りは原型を制作するところからはじまります。シカルナ・工房が制作しているソフビのほとんどの原型は宮澤さんが制作しています。

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見てくださいこの腕の質感!原型は宮澤さんが一つひとつ手で造形しています。

「まず、ソフビは自立しなければいけません。原型の時に自立しても、成形の時点で伸びてしまい自立しないこともあるんです。そういったトラブルを回避できるようにパーツを分割したりと、原型の段階で工夫して造形していきます」

「ちょっと待っててくださいね」と言い、手に粘土とカッターを持ち始めた宮澤さん。

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なんと約2分で新しい怪獣の頭部を作ってしまいました。写真とテキストだとなかなか伝わりませんが、手が止まることがありませんでした。もちろんここから細部のディテールを詰めていくのですが、2分で作ってしまうなんて。

「原型制作をはじめてから、酔っぱらっていない限りはほぼ毎日作っています。誰に教わったわけではなく、独学だったので、最初のころはデザインナイフではなく、大きいカッターを使っていてよく手を怪我しました(笑)。この12~13年で何千体と作っています。中途半端なものから完成品まで家にはたくさん原型が置いてあります」

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ソフビならではの接合法に間着(かんちゃく)があります。これは部品端部にくびれを設け、本体に開けたくびれと同じ径の丸穴に熱で柔らかい状態ではめ込み、回転可能な関節を形成する方法です。間着を利用することで、写真のようにパーツとパーツを組み合わせることもできます。ゆるくもなく、きつくもない。この精度でできるのは精細な原型があってこそなんだそう。

成形は昔ながらのスラッシュ成形で

次に案内していただいたのは成形の工程。発火しやすいセルロイドに代わる素材として1950年代頃から製造が始まったソフトビニール。怪獣ブームの頃をピークに、ソフビ成型職人は激減しましたが、「スラッシュ成型」と呼ばれる昔ながらの製法でシカルナ・工房はソフビを作り続けています。

作業場は……暑い!

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スラッシュ成形は中が中空になるため、子ども向けの玩具に適した成形方法です。また、合わせ型ではないのでパーティングライン(金型の継ぎ目に表れる線)がないことも特徴です。

インジェクション成形は金型に材料を充填させるため、キャラクターフィギュアなど細かい造形を要するアイテムに適した成型方法です。金型費用はスラッシュ成形と比べると高くなりますが、大量生産できます。

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200度以上にもなる窯に金型をいれたあとは、一気に冷却。蒸気がぶわっとあがります。

成形できれいに仕上げるためのポイントは冷却したあとの抜きの工程!型からビニールを抜く作業はとても慎重にやらなければならないのです。なぜなら、力任せにぬくと傷がついたり、形が変形したりするため。金型によって抜き方を変えたり焼き付ける時間を調整するのだとか。高度な職人技を必要とするため機械化が難しく、職人の技と経験が大きくモノを言う世界なんです。デジタルな時代に逆行するような、ひとつひとつ手作業のアナログな製法です。

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両手にペンチを持って、ぐりぐり。

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手をクロスしているところに注目してください。これも、きれいに抜くための技術の一つなんです!

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スポッときれいに抜けました!

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このように、大きいソフビの場合は胴体や腕、足などいくつかのパーツにわけて成形し、あとで組み立てていきます。

ちなみに、材料となるポリ塩化ビニルには原色とクリアと蓄光の三つがあります。例えば、蓄光のポリ塩化ビニルを用いると……。

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このように暗闇で発光するんです!この他、例えば原色を混ぜ合わせてマーブル模様にしたりもできるんだとか。

これが噂のシカルナ塗装の現場!

最後に塗装を行うエリアを案内していただきました!

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冒頭でも少し紹介しましたが、シカルナ・工房を立ち上げて間もない頃のこと。オリジナルソフビにいくつもの色を重ねた(塗りすぎているくらいの)塗装はソフビ好きの間で「シカルナ塗装」と呼ばれていたそう。そのころから塗装スタッフが増えた現在は更にグレードアップ!

最近のソフビ制作では、成形の時に使用した素材の色を活かして部分的に塗装することが多いのですが、シカルナ・工房が作る多くのソフビは全体を一旦すべて塗ってしまう「くるみ塗装」が施されています。これにより、塗装の違いで質感まで違うものに見せることができています。

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基本的に塗装はエアブラシで吹き付けます。怪獣の歯や目など、細かい部分は筆を使います。1日にだいたい40個の塗装ができるそう。

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塗装を施して完成!じーっと眺めても、何色の上に何色を重ねたのか判別ができません。

塗装を施して完成!じーっと眺めても、何色の上に何色を重ねたのか判別ができません。

フリーハンドで、細かい塗装はマスクをかけて塗料を吹き付けていきます。サンプルを見ながらスタッフが塗装していくのですが、最後はペインターの方のセンスに任せているのだそう。スタッフの方々は美術系の大学を卒業した人が多く、その人の感性を信頼していることが伝わってきます。

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こちらがマスク。立体感のある塗装を施すには欠かせない道具です。

試行錯誤で身につけた技術をソフビに

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いかがでしたでしょうか。ソフビを制作する上で要となる造形、成形、塗装の技術。どれか一つでも欠けてしまうと、ここまで完成度の高いソフビを作ることができません。これらの技術は誰かから学んだものではなく、すべてが宮澤さんの独学!試行錯誤して身につけた技術はそう簡単に再現できるものではなく、だからこそ世界中からシカルナ・工房を目指してお客さんが来るのでしょう。

うーん、やはり実物を手にとって回したり、近づけたり離したりして見ていただきたい!シカルナ・工房の製品は小岩にあるショップ(2020年初春リニューアルオープン予定!)で販売されていますし、たびたびイベントにも出展しています。出展スケジュールはHPやSNSで告知されています。

シカルナ・工房のみなさん、ありがとうございました!

—おわり—

シカルナ・工房が送り出す渾身の造形!獣虫襲来!

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そんなシカルナ・工房と、”ずっと愛せるモノ"を生み出す新プロジェクト「Muuseo Factory」からソフビを発売します。その名も「獣虫(けものむし)」。ポイントは不気味さ、そしてかわいらしさ。絶妙にバランスが取れた仕上がりになりました。

獣虫「ムーア・ミーア」はMuuseo Factoryのオンラインストアで販売しています。
くわしくはこちらからどうぞ。

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画像クリックでオンラインストアへ

公開日:2019年12月10日

更新日:2020年4月6日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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