このかわいい目と細い脚をみてください!ソフビ対談 山﨑進一×宮澤博一

文/ミューゼオ・スクエア編集部

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このかわいい目と細い脚をみてください!ソフビ対談  山﨑進一×宮澤博一_image

”ずっと愛せるモノ"を生み出す新プロジェクト「Muuseo Factory」からソフビ(ソフトビニール人形)を発売することになりました。その名も「獣虫(けものむし)」。ポイントは不気味さ、そしてかわいらしさ。どうでしょう、絶妙にバランスが取れていると思いませんか?

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このバランスは、卓越した造形技術と巧みな重ね塗りによって実現しました。形にしてくれたのはシカルナ・工房です。東京の江戸川区に開業して13年。朝から晩まで、みんなでソフビを作り続けています。玩具メーカーで数々のヒット商品を世に送り出し、獣虫の原作のストーリーを創作した山﨑進一さんは「こんなに技術がある会社は日本にないですよ」とちょっぴり自慢げに話します。

今回はこのアイテムが生まれるまでの物語をお届けします。山﨑さんとシカルナ・工房のオーナーであり今回の獣虫の造形を手がけた宮澤博一さんに2時間じっくりお話を聞きました。

左:山﨑進一さん。企画会社Y-BOX代表。江崎グリコに21年、バンダイに16年勤務。『アーモンドクラッシュポッキー』や『タイムスリップグリコ』のヒット商品の開発、『ベルばらの大人向け化粧品』『ガンダムカフェ』などの新規事業創出に携わり、定年退職を機に起業、企画会社Y-BOXを立ち上げた。アナログレコードとクワガタをこよなく愛する趣味人でもある。

右:宮澤博一さん。1963年東京生まれ。高校卒業後、洋食のコックの道に進む。家庭の事情で家業を継ぐが、ほどなく古物商に転身。アンティーク玩具店を経営する傍ら、いきなり独学で原型製作を始める。2007年、その原型を元にソフビを製造する会社「シカルナ・工房」を設立。何事も“出来るようになるまでやり続ける”性格により、塗装、成型技術を会得した。家庭では、娘たちの高校時代に“冷凍食品を一切使わない弁当”を作り続けた父親でもある。

左:山﨑進一さん。企画会社Y-BOX代表。江崎グリコに21年、バンダイに16年勤務。『アーモンドクラッシュポッキー』や『タイムスリップグリコ』のヒット商品の開発、『ベルばらの大人向け化粧品』『ガンダムカフェ』などの新規事業創出に携わり、定年退職を機に起業、企画会社Y-BOXを立ち上げた。アナログレコードとクワガタをこよなく愛する趣味人でもある。

右:宮澤博一さん。1963年東京生まれ。高校卒業後、洋食のコックの道に進む。家庭の事情で家業を継ぐが、ほどなく古物商に転身。アンティーク玩具店を経営する傍ら、いきなり独学で原型製作を始める。2007年、その原型を元にソフビを製造する会社「シカルナ・工房」を設立。何事も“出来るようになるまでやり続ける”性格により、塗装、成型技術を会得した。家庭では、娘たちの高校時代に“冷凍食品を一切使わない弁当”を作り続けた父親でもある。

獣虫(けものむし)とは?

・分類学的には昆虫の仲間と言われているが、突然変異や何らかの外的要因により、1メートル以上に巨大化した生き物の総称。外見は2種類以上の昆虫の要素を持ち、生態はまるで獣のようである。
・様々な過去の文献や記録によると、紀元前から存在はしていたようだが、その殆どが子孫を残すことが出来ずに死んでいくため、生態が明るみになる事もなく、研究も不十分である。
・また、時に人を襲うことがあり、世界各地の伝説や言い伝えで、恐れられている。

【特記事項】
ラーオ族の言い伝えによると、1500年以上前の紀元500年頃、アルタイ山脈の南東エリアに毎年6月から8月頃には、金色のフサフサした毛を生やした巨大なカブトムシの様なムーアミーアという生き物が現れ、何人もの村人が喰われたとされる。1965年、昆虫学者のガレスピー博士は、ラーオ族の伝説の確認をすべく、ラオスの村に入った。部落の長をはじめ、多くの村人にこの伝説についての聞き込みを続けたが、特に有益な情報は得られなかった。

ジャングルに入って約10日間が過ぎた頃だろうか?その日はとても蒸し暑い日だった。いつものようにジャングルで捜索活動をしていたところ、今まで見たこともない金色に光り輝く直径1メートル位の球状の物体を見つけた。近づいてみると、微かに動いていて、どうやら生き物のようだ。ガレスピーは本能的に何らかの生物に違いないと確信はしたが、頭も手足も無い。どうにも不思議な形態だ。ともあれ、すかさず彼はシャッターを切った!と、その瞬間、その金色の毛が一気に逆立って、3メートルにまで巨大化し、グルグルと螺旋状に回り始めた!

この謎はムーア・ミーアに同梱のリーフレットで明らかに……。

このかわいい目と細い脚をみてください!

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——人を襲うとのことですが、目がかわいいですね。

山﨑:キョトンとしたかわいい目で人を襲う。ギャップがいいじゃないですか。

——大顎など他の細部の作り込みがすごい分、目が際立つというか。

山﨑:クワガタらしい大顎はもちろんのこと、すごく長い前脚を見てください。これはヤンバルテナガコガネという、前脚だけすごく長いコガネムシをモチーフにしました。コガネムシだから角とか大顎はないんですけど、前脚が長いところがやたらとかっこいい。これで人を抱きかかえるストーリーにしたんです。

宮澤:ヤンバルということは沖縄に生息しているんですか。

山﨑:沖縄にしかいません。天然記念物で採集禁止になっています。クワガタを捕りに沖縄に行った時、地元の森林組合の人にヤンバルテナガコガネの密猟をしているんじゃないかと疑われたこともあります。「何を捕っているの」と聞かれ「普通のクワガタです」と答えても信用されなくて、ずっと車で後をつけられました(笑)。

——精巧すぎず、かといって安っぽくもない。この塩梅が絶妙に見えるんです。最初からソフビで作ろうとイメージをしていたんですか?

山﨑:そうですね。とにかくシカルナさんに作っていただきたかった。東京23区内でこんな工場を持っているソフビメーカーはないですよ。おもちゃメーカーはみんなコストを考えて中国やベトナム、フィリピンに工場を移しています。このご時世にMade in tokyoを貫くその気概がすごい。しかも働いていらっしゃる方みんな思いが強い。素晴らしいなと思った。だって、ソフビでこの細い脚を作れるところなんて他にないですよ。

宮澤:細かい造形のおもちゃはほとんどの場合インジェクション成形で作ります。そこをソフトビニール素材を使いスラッシュ成形で作りました。インジェクション成形は堅い素材を使うので、かなりシャープにディティールが出ます。一方のスラッシュ成形は軟らかい素材を使っていて、曲線を帯びた線を出すのに向いていますが細かい造形は難しいんです。脚を可動させるのはもっと難しかった。スラッシュ成形だと中が空洞になるので、駆動軸が作りにくいんです。

山﨑:昆虫は手足が細いからソフビには不向きなんですが、作っていただきました。僕は16年間玩具メーカーで働いていましたけど、こんなに細いソフビのパーツは見たことありません。ソフビを作っている人たちも「よくこんなの抜いたな!」ってびっくりすると思います。なんとなく、インジェクション成形のフィギュアよりもスラッシュ成形で作ったソフビの方が人間味が感じられると思います。かわいらしいけど、細部は非常に凝っていて色もきれいにのっている。

宮澤:完成度を重視して塗料はソフビ専用のものを使用しています。ソフビ専用の塗料は溶剤が強いので、肉眼ではほぼ分からない程度ですが表面を溶かし食いつくため剝がれにくいんです。プラモデル用の塗料でも塗装できるんですけど食いつきが悪い。どうしても可動する部分の色が落ちてきてしまいます。

山﨑:入れ墨みたいなものです。ソフビは軟らかいから、表面に塗るだけだと剝がれてしまうんです。

原作:山﨑進一  原画:長谷茂雄

原作:山﨑進一 原画:長谷茂雄

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我流だから毎晩作り続けた

山﨑:宮澤さん、獣虫の大まかな造形を一晩で作っちゃいましたから。びっくりしました。

宮澤:僕は一気に作りたいんです。原型は夜に作るんですけど、ずっとDVDで映画を見続けています。洋画だったら吹き替えにして。たまに顔をあげて見ますけど、大概聞きながら作っています。時間の感覚が無くて(笑)。一晩に3本ぐらい映画を観て、気づいたら朝になっています。

山﨑:どんな映画を観るんですか。

宮澤:ホラーとSFとアクションしか見ません。この間は『アンブレイカブル』と『スプリット』という映画の続編である『ミスター・ガラス』を観ました。昨日はなんだったかな……。そうだ、『アウトロー』と『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』、それから『コラテラル』を観たんだ。『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』と『コラテラル』はトム・クルーズ主演の映画です。同じ役者が出ている作品を続けて見ることが多いですね。

——造形をはじめた当初からうまく作れましたか?

宮澤:作れませんでした。学校を出ているわけでもないし、誰にも教わっていないですから。誰に聞いたらいいかも分からなかった。

山﨑:我流で全部やっているんですか。

宮澤:全部我流です。造形だけでなく、言ってしまえば成形だってほぼ我流です。僕よりもはるか昔から家業で成形をやっている人が1~2回教えてくれただけ。造形に関しては誰からも教わっていないので。粘土すら何を使っていいか分からなかったです。今はデザインナイフを使っていますけど、最初はでっかいカッターを使っていて(笑)。よく手を切りました。

山﨑:すごいなあ。そういう試行錯誤から素晴らしい製品が生まれるわけですよ。

宮澤:大変だったこともあったけど、色々試した分いま楽しんでいます。飲んで酔っぱらっていない限りはほぼ毎日作っていました。この12~13年で何千体と作ってきたので、家に原型が完成品から中途半端なのものからいっぱいあります。

秋田書店に許可を取って復刊した「世界の怪獣」。この本に出てくる怪獣もオリジナルとして制作している。「オリジナルのソフビは色々な塗装を試せる利点があります。獣虫も現実にいるようなリアルな雰囲気を考えながら塗装しました」(宮澤さん)

秋田書店に許可を取って復刊した「世界の怪獣」。この本に出てくる怪獣もオリジナルとして制作している。「オリジナルのソフビは色々な塗装を試せる利点があります。獣虫も現実にいるようなリアルな雰囲気を考えながら塗装しました」(宮澤さん)

山﨑:シカルナ工房さんではいわゆる版権モノも制作されているんですけど、精巧に同じように作るのではなく少しアレンジされます。正しく同じものを作るんだったらCADを使って原型を作った方がきれいにできます。だけど、それでは見飽きた造形にしかならない。ソフビは素材が柔らかいから手作り感が残ります。そういう点では、シカルナ・工房のオリジナル製品は宮澤さんの想像で作っているから作り込みがすごい。

宮澤:言ってしまえば、そこら辺でしか勝負できないんです(笑)。

——このソフビの背中のヒダなんか波打っていますよ。

宮澤:オリジナルの怪獣を作る時は思いつきです。「今回は木をモチーフにして作ろうかな」とか「恐竜みたいなフォルムの怪獣はマルサンがうまく作っていたけど、今僕が作ったらどうなるかな」とか。僕は基本的に絵も描けませんから……。

——先ほど絵も描けないというお話がありましたが、宮澤さんの作業机の上には何が乗っているのでしょう。

宮澤:獣虫はイラストがあったので別ですが、作るときは机の上に粘土とデザインナイフしか置いていません。作る時はまず手を動かします。手はずっと動いているので、作りながら考えているんだと思います。「顔がちょっと違うな」と思ったらつぶして、また作り直す。僕は右利きなんですけど、右手でナイフを使い、左手で造形しています。細部のディティールは全部左手で作るんです。コックをやってたときも左右使っていましたから、その影響があるのかもしれないですね。

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偏愛が人を作る

山﨑:コックだったんですか。

宮澤:高校を卒業してすぐフレンチのコックになったんです。そのあと、実家がラーメン屋をやっていたので手伝いに戻りました。ラーメン屋をやっていたころ、新小岩駅のそばに東てる美さんの「まんが堂」という漫画専門店があって。僕は学生のころから漫画を集めるのが趣味だったこともあり休憩時間に毎日行っていました。そしたらある日突然、「宮澤君、うちの在庫を買わないか」と言われて。金を1銭も持っていないのに「わかりました、買います」って勝手に決めて。

山﨑:思い切りましたね。

宮澤:25歳で結婚する直前でした。買うと言った手前、引っ込みがつかなくて家族に話したら、じいさんと大げんかになって。最終的には「そんなにやりたいんだったらお前はもうやり通せ」と。それで「まんが宿(じゅく)」というお店をはじめました。最初は漫画だけだったんですが、次第におもちゃも扱うようになり、おもちゃも扱うようになったら自分でソフビを作ってみたくなったんです。

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山﨑:古いモノは面白いですよね。僕は切手を集めるのが趣味で、日本の古い記念切手はほとんど揃っています。あとレコードも好きで、部屋中レコードだらけで大変なんです。ビートルズの初期の初版の何十万円もするようなやつを買ったり…もうやめろって妻に言われています。

宮澤:知り合いが江戸川乱歩のコレクターだったんですけど、その人も「宮澤くん、コレクションを買ってくれないか」って言うんです。聞くと「8割5分ぐらい持っている」と。それを買ってから古い小説を集めるのにはまりました。夏目漱石のオリジナルはほぼ持っています。『吾輩は猫である』は上・中・下巻があるんですけど、初版と再版でカバーの装丁が若干違うんです。上巻と下巻は初版本を持っているんですが、中巻だけ持っていません。

あとは、僕が宮澤という名前なので宮沢賢治のオリジナルが欲しくなり、『グスコーブドリの伝記』と『銀河鉄道の夜』の初版を買ったり。『注文の多い料理店』の初版特装版は、中古の車くらいするんです。

山﨑:それはいい値段しますね!その初版本は読みますか?ビートルズの初版のレコードもものすごく高いんだけど、惜しげもなく聞くのが僕は好きで。

宮澤:そこが山﨑さんと僕の違うところですね。僕はコレクションをしている本は読まないです。飾ってあるわけでもなく本棚の中にずっと入りっぱなしです。そもそも、旧仮名遣いで読みづらい(笑)。いつも文庫を買ってきて読みます。

山﨑:本とか映画は創作にいろんな影響を与えますよね。獣虫のストーリーを作る上で一番意識したのは「バシャー」とか「ブワー」という擬態音。これは夢枕獏の影響です。夢枕獏の小説を読んだ時、「おどろおどろしい書き方するな」とか「擬態音が面白いな」とか思ってたんです。

宮澤:いや、本当に僕もびっくりしました。小説を読んでるみたいでした。絵を一枚見せてもらっただけで作れるのはストーリーがしっかりしているからです。ベースがはやめにできたので、細かいディテールを詰めていくのに時間を使えました。

山﨑:実はもう次のストーリーとイラストもできているんです(笑)。

宮澤:そうなんですか!次も楽しみにしています。

—おわり—

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獣虫「ムーア・ミーア」はMuuseo Factoryのオンラインストアで販売しています。
くわしくはこちらからどうぞ。

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公開日:2019年12月10日

更新日:2020年4月6日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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