ウルトラマンや仮面ライダーのオモチャとして定番のソフビフィギュア。造形や彩色はちょっと甘いけれど、ヒーローだけではなく怪獣や怪人もたくさんラインナップされていて子供でも手をしやすい。価格もそこまで高くはないのですが、コレクション対象となっているものはとんでもないプレミアがついているものもあります。
このソフビフィギュア、いま中国やアメリカの若年層を中心に注目が高まっています。
ソフビフィギュアブームのその後
怪獣や怪人、世代によっては『タイガーマスク』のプロレスラーなど、特に40~50代男性ならほぼ全員子供の頃に持っていたであろうソフビフィギュア。怪獣ブームが起こったときにはその中核商品として展開されることも多くあります。現在でも子供向けに多数販売されており、価格が安いこともあって定番商品となっています。
現在フィギュアというと、より精巧な造形&塗装が施されたPVC(ポリ塩化ビニル)製塗装済完成品も一般的になっています。1/8スケール程度で固定ポーズのスケールフィギュア、ねんどろいどなどのデフォルメフィギュア、figmaなどの可動フィギュアなどさまざまなタイプのフィギュアがさまざまなメーカーから発売されています。ゲームセンターに行けば『ワンピース』や『ドラゴンボール』などが多数並んでいます。使用されているPVCという素材は、加工や塗装がしやすく肌色の再現に向く透明感もあるのが特徴。実は素材としてはソフビフィギュアも同じなのです。
PVC製塗装済完成品を見慣れたいまの目で見ると、昔のソフビフィギュアはぬるい造形で彩色もざっくりしているように見えるかもしれません。ただ、その独特の味やノスタルジーでそれを好むコレクターも多くいます。子供が遊ぶもので劣化もしやすいので、レアなプレミア品では100万以上という価格がつく場合もあります。
このあたりのことはお宝鑑定番組などでご存じの方も多いかもしれません。
80年代後半から90年代あたりでは、一風変わったマニアックな商品群が出てきました。それはコアなファン層を対象にした組立キットとしてのソフビ。怪獣などだけではなくメカや美少女キャラクターなどがソフビ製キットとして発売されるようになりました。
その造形は非常にシャープでクオリティも高く、中には彩色済みソフビキットや完成品の形で発売されたものもあります。海洋堂やマックスファクトリーなど、現在も知られるホビーメーカーもこのソフビ製キットを数多く手掛けていました。
その後マニアックなフィギュアは、原型からの正確な複製も容易で個人でも製作できるレジン製組立キットが中心になり、こういったソフビ製キットは減っていきました。
瞬く間に売り切れるアーティスト系ソフビ
一時は下火になったソフビフィギュアですが、新たな潮流が生まれています。それはアーティスト系と呼ばれるオリジナルのフィギュアです。
これは香港のトイ・デザイナー、マイケル・ラウなどを中心に生まれて発展してきた流れです。表現の1つとしてアーティストの名前を出した上でオリジナルデザインのソフビフィギュアを発表&販売するというもの。クリーチャーやキャラ、メカなどをテーマに個性あふれるデザインのフィギュアが多数発表されています。ソフビフィギュアはPVC製塗装済完成品と比べると金型の投資額がグッと落ちるため参入しやすくなっていることが理由の一つです。
投資額は少ないとはいえ、フィギュアを型から抜き取る作業は熟練職人の技術が必要です。その技術は、オモチャ屋などで販売されている子供をターゲットにしたソフビフィギュアを長年製造してきたことによって培われてきました。
子供のころに親しんだ40代〜50代の男性だけでなく、男女問わず10代〜20代の若年層に受け入れられつつあるソフビフィギュア。国内でも前述のイベントに加えてデザインフェスタなどで多く出品されていますし、国外での人気は更に高くなっています。
ファンから根強い人気のあるシカルナ・工房のソフビは、オンラインショップに掲載されると文字通り「瞬く間」に売りきれてしまうこともしばしば。
中国や香港などアジアを中心に、アーティスト系のソフビフィギュアはそれ専門のイベントが開催されています。そういったフェスでは個人で出展している人も多くいます。「お宝探し」感覚で足を運んでみると、ひときわ輝いて見えるソフビフィギュアが見つかるかもしれません。
—おわり—
シカルナ・工房
2007年に設立した、オリジナルの造形やアニメキャラクターなどのソフトビニールフィギュア(ソフビ)を製造・販売しているシカルナ・工房。
「メイドイントーキョー」にこだわり、原型製作から成型、塗装まで全ての工程を東京・江戸川の自社工房で行い、昔ながらの「スラッシュ成型」という製法でソフビを作り続けています。細部まで一切手を抜かず、一つひとつ職人が手作りするシカルナ・工房のソフビは国内外のファンが虜になるのも納得できます。
常にチャレンジ精神を持ったシカルナ・工房から今後も目が離せません。
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