きっと革靴好きの編集長の影響に違いない⁉︎ 「自分の一足」を購入したい欲がむくむくと大きくなってきたこの頃。どうせなら、10年20年先も共にできる相棒的な存在を見つけたい。ということで、革靴のことを知り尽くした「ワールドフットウェアギャラリー」さんに革靴の選び方のアドバイスをいただきに行ってきました!
10年、20年先も共にいたい。私の相棒・本気の革靴を買いに行く。
こんにちは、足元いつもコンバース。アラサー編集部員Aです。
さすが長年愛されている定番シューズだけあって、どんな服装にも主張しすぎず馴染みやすい万能スニーカーだなぁとここ数年は愛用中です。
そんな「安定の友、コンバース党」支持派の私ですが、実は最近その鉄壁の存在を揺るがす新党が赤き彗星のごとく登場したのです。
それが「ニュータイプ、紳士靴党」
正しく言うならば、紳士靴と同じ製法で作られた本気の女性革靴です。
最近は女性ファッションでも紳士靴テイストの革靴(女性誌では“おじ靴”、“ハンサムシューズ”と表現されたりします)が取り上げられるようになりました。
つまり性分であるミーハー心に火がついた!のは否めませんが(笑)
当サイトの革靴好き編集長の影響も多分に受けているのです。
(編集長の靴偏愛についてはこちらの記事をどうぞ)
見かけだけ真似した紳士靴風のファッションシューズではなく、10年以上付き合える本気の一足を履いて育てていきたいと思っています! フンフンフーン(鼻息荒目)
パッと見のデザインで、直感で選ぶこともできるけれど、できれば革靴の作りを理解した上で質実剛健な一足が欲しい。
価格も私が買う通常の3倍!
高い買い物(もちろん自腹)になるならば、なおさらハズしたくない!
そんな希望から、行ってきましたよ!こちらのお店。
選りすぐりの革靴を取り扱うセレクトブティック・ワールドフットウェアギャラリー。
バイヤー日高竜介さんにしっかり靴選びのコツを伺ってきました。
靴好きの方は既にご存知の情報かもしれませんが、
靴選びをする上で押さえておきたいポイントに絞ってレポートさせていただきます。
靴の生命線は靴底にあり!
編集部A(以下A):「日高さん、10年先も履き続けることができる質実剛健な靴が欲しいんです」
日高さん(以下H):「なるほど。ところで靴で一番負担がかかるのはどこだと思いますか?」
A:「よくすり減ることを考えるとカカトとか。シワが入りやすいつま先とかですかね?」
H:「カカトもそうですが、足底全体ですね。全体重が靴底にかかるわけですから。古代エジプト時代でサンダルを履き始めたころから、いかに靴底を外れないようにつけるか、それが死活問題だったんです」
A:「つまり足底がしっかり付いている靴が質実剛健な靴のポイントであると」
H:「靴底をつける手法はいくつかあるのですが、質実剛健といえる手法の一つにグッドイヤー・ウェルテッドという手法があります。英国ブランドの靴の製法として採用されることが多いですね」
A:「知ってます(待ってました!)パンのミミのようなパーツ・ウェルトを挟んで縫っていくんですよね!」
この用語、靴作りの連載記事で私学習済み。ウェルテッド製法について詳しい解説はこちらの記事でどうぞ!
H:「グッドイヤー・ウェルテッドの良さは、ウェルトと靴本体を最初縫って、その後靴底とウェルトを縫う。2度縫い上げているという点でまず丈夫です。靴底と本体の間に緩衝材のコルクがみっちり詰まっているので足裏への負担も少ない。そして、靴底の縫い目が直接本体部分には繋がっていないので、靴底の縫い目から水がしみても靴本体には滲みにくい」
こちら靴底をベリっと剥がした分解靴。中底を縁取るようにぐるりと縫われているのがウェルトです。
ウェルトを縫い付けた中底と本底の間に、クッション材のコルクを詰めて本底を接着。そしてウェルトと本底を縫い合わせて出来上がるのがウェルテッド製法。靴底に縫いのステッチが見えるのが特徴です。(グッドイヤーでも伏せ縫いをした靴はたくさんあります。高級な靴はまずステッチを隠してあります。)
A:「なるほど(ですよね、ですよね〜!)。じゃあ、買うならやっぱりグッドイヤー・ウェルテッドの靴で……」
H:「でも、硬いです。重いです。コルクがみっちり詰まったうえで、しっかり縫われてます。新品を履くとときには血豆ができる。内出血する可能性も有る」
A:「……へぇ。ちょっと大きめを買えばいいって話ではなく?」
H:「履いているうちにだんだんとコルクのクッションが圧縮されて足型に凹んできます。最初はきついっていうぐらいで履いていただきますね、でないとサイズが合わなくなってきます。なので、履き慣らし(数回短い時間履いて足になじませること)が必要ですね。慣れるまでは痛い思いも覚悟してください」
A:「痛い思い…か…。(おしゃれは我慢ってピーコも言ってるもんね)足元で我慢してるのは高っかいヒール履いてる女性か、シークレットブーツを履いているごく一部の男性だけかと思いましたが、一般男性も意外と我慢されてたんですね」
H:「もちろん、履き慣らし時期をこえれば足の形に馴染んでくるので履きやすくなりますよ」
A:「10年以上の相棒になってくれるなら一時の我慢は易いもの……。ですか」
履きやすさの鍵は生活のスタイルと製法の組み合わせ。
A:「逆に最初から我慢しなくてもいい優しい履き心地の靴ってあるんですか?」
H:「もちろんございます。同じ革靴でも靴底の製法がマッケイ製法というものは最初から履きやすいです。イタリアの靴ブランドでよく採用される製法ですね」
なんでも、マッケイ製法は本底と中底を直接縫い付けているので、ウェルテッド製法と比べると底が軽く、足の動きに合わせて靴底が柔軟に反れる。つまり、履き始めの血豆や内出血とは無縁!(なんと素晴らしい!)
こちらがマッケイ製法で作られた靴。
グッドイヤー・ウェルテッド製法と比べるとウェルトも縫われていなければコルクも詰まっていないので見た目の印象もスリム。
マッケイ製法でもう一つ特徴的なのが、靴底に縫い目が出ていないこと。伏せ縫いと呼ばれる手法で本底と中底が縫われています。マッケイ製法の見分け方としては、靴の中敷きを外してみるとその伏せ縫いの縫い目を見つけることができます。(マッケイでも伏せ縫いではなく縫い目の見えるものはたくさんあります。安価なマッケイ靴は縫い目が出ている事が多いです。)
A:「では、我慢したくない私はマッケイ製法を選ぶべきですか?」
H:「グッドイヤー・ウェルテッド、マッケイどちらの製法の靴を選ぶか。ポイントはどんな生活スタイルで履くかにあります」
A:「と、いいますと?」
H:「外回りが多く一日中靴を履いて歩いている人におすすめなのが、グッドイヤー・ウェルテッド製法。逆に、オフィス仕事で椅子に座って室内で過ごすことが多い人にはマッケイ製法がおすすめですね。グッドイヤー・ウェルテッドは履き始めこそ硬くて痛いですが、足に馴染めばしっかりとつまったコルククッションで足をサポートしてくれる。1日中外回りをして歩いても、他の製法の靴と比べて足が疲れにくいんです。マッケイは履きやすいですが、クッション性に欠けるので長時間歩くのには向かないですね。私も外回りの時はグッドイヤー・ウェルテッド、店舗対応の時はマッケイと履き分けています」
A:「スタイルに合わせて相性があるんですね! 馴染むまでは硬いグッドイヤー・ウェルテッドも履きならせば良い相棒になるんですね。ツンデレ靴だな〜!」
H:「……。そうですね。あと、グッドイヤー・ウェルテッドの靴でも、レースアップタイプのものは紐で緩めたりできるので比較的最初から履きやすいかもしれません。逆に、かなり覚悟がいるのはグッドイヤー・ウェルテッド製法のローファーですね。まったく調整ができないので馴らすまでは痛い。この辛くて痛い感じが好きな人も中にはいますけれども……」
ちなみに、日高さん個人的な好みは、「グッドイヤー・ウェルテッドの製法はリスペクトしていて何足も持っているけれど、普段履くならマッケイ。なぜなら、歳を取ると辛くなるし我慢するのがいやになるから」だそうです。グッドイヤーをタフに履きこなすには体力&耐力がいるんですね……。
いざ、試着!ダブルモンクにウイングチップ豊富な革靴のバリエーション。
私の足の長さは36とちょっと(およそ23.5cm)。横幅(ボールジョイントの幅)が指し示しているのは、2E。少し幅が広めの足のようです。
お話ばかりもなんなので、実際に履かせていただきました!
の、その前に、足のサイズを測っておきます。
H:「靴を試着する時に確かめたいのが足の幅。親指と小指の付け根どうし、人間の足で一番足の広いところ、ボールジョイントと言われるポイントです。ここの幅がしっかりあうモノを選ぶと履きやすいです。逆にその位置が合っていないともう履き続けられないですね」
さてサイズ測定を元に私が試したのは、こちら。
スペイン産まれの靴、コードウェイナー。赤いインソールがかっこいい‼︎
Cordwainer(コードウェイナー)というブランドの靴。
「靴職人」という意味の名のブランドは、スペイン産まれ。
2007年創立のブランドですが、もともと他社ブランドの靴製作を請け負っていたため製作技術は確かとのことです。
グッドイヤー・ウェルテッドの製法でしっかりと作られた、ウィングチップデザイン(つま先の切り替え部分W字型の部分に飾り穴がある)とダブルモンクデザイン(修道僧=モンクが履いていた靴に似せたデザインで、2箇所の留め具がついている)の2足を履いてみました!靴の種類って色々あるんですね。
真っ赤なインソールもちゃんとベジタブルタンニンでなめされた革を赤く染めているそうです!
ワールドフットウェアギャラリーさんの本域は紳士靴の豊富さ。
同行していた、Sカメラマンも一緒に試着です。
紳士靴のデザインで主流のタイプを並べてみました。
左から、ストレートチップ(ミヤギコウギョウ)、プレーントウ(チャーチ)、ウイングチップ(チャーチ)、ダブルモンクストラップ(ミヤギコウギョウ)、ローファー(セントラル)。
どちらもグッドイヤー・ウェルテッド製法で作られたもの。カチッとしたビジネススタイルにも、カジュアルなジャケパンスタイルにも合いそうです。
Before:いつものSさんですね。素朴な印象で親しみやすい(笑)
After:艶やかな黒ブーツで大人っぽくなったんじゃないですか?
黒ブーツはグッドイヤー・ウェルテッド製法のもの。Sさん硬いのと脱げないのとで苦笑い。
カメラマンSさんにグッドイヤー・ウェルテッド製法と、マッケイ製法とを履き比べてもらいましたが
S:「グッドイヤーは普段履いている靴とくらべると、だいぶフィットして引き締まった感じ……というよりかったいですね。。ぬ、脱げない」
では、マッケイは?
S:「だいぶ違いますね、、グッドイヤーと比べるともうすこし柔らかい履き心地です」
新品の靴の履き心地には差があるようですね。
一方の私は、目下悩みはダブルモンクストラップデザインにするかウイングチップデザインの靴に決めるか。
どちらもグッドイヤー・ウェルテッド製法の靴ですが、もはや若干の硬さはご愛嬌かと腹をくくりました。
H:「ダブルモンクはレディースの世界ではトレンドですね。スーツに合わせて履く方が多く、ちょっと都会的な装いにもはまりますね。ウイングチップはもともとイギリスのカントリーシューズなので、装いもチェックやカントリー調のものとの相性が良いですね」
私の中で一見ダブルモンクは、マニッシュな男性的な感じを受けましたが。履いてみると悪くない(笑)。若干芋っぽい私なので、足元くらいは都会派を目指してみたいと思いました。(あと、やっぱりトレンドに弱い……)
決めました! 私はこのダブルモンクシューズと10年、20年先まで添い遂げます!
A:「日高さん、長ーく愛用するためのポイントはなんですかね?」
入れないという選択肢はない! 靴寿命を左右するシューキーパー。
A:「革靴は1日履いたら1日休ませろ!というのは、すでに編集長から聞いて知っています」
H:「続けて履かないのはマストですね。あと、絶対にシューキーパーは木製のものを入れてほしいです」
さまざまなバリエーションがありますが、やはり実際に靴に入れてみて相性の良いシューキーパーを選ぶのが大事!
A:「(追加で買うのかぁ……)入れると入れないのだとそんなに変わるんですか?」
H:「靴は1日履いているうちに足の形に合わせて靴底が反ったり、甲にシワもできます。そして、足の水分や汗をすった靴は、その湿気がとれるときに変形するんです!プラスチック製のシューキーパーでは湿気は取れずにムレるだけ。だから水分を吸う木製である必要があるんです」
A:「なるほど……(ケチったらあかんのですね)買いましょう。でも、木製ならなんでも良いというわけでもないんですよね?」
H:「大事なのは靴の型にあって、シワの入る甲や反りやすい靴底をピンと張ってくれるテンションが大事なんです」
A:「私が選ぶときに真似できることはありますか? 安い値段のものは避けるとか、同じブランドからでてるものを選ぶとか」
H:「こればっかりは、入れてみないとわからないです。同じブランド名が入っていても、シューメーカーがシューキーパーを作っている訳ではないんです。シューキーパーも僕たちが見れば、合うか合わないかは一目瞭然なんですけど……」
足元にツヤ。シュッと締まった印象に。
A:「なるほど、靴を購入したときに合わせて確認する!が大事。靴とシューキーパーは切っても切り離せない関係なんですね」
結局私も、コードウェイナーのダブルモンクストラップの靴に合わせてシューキーパーを購入。これで準備は万端だろうと!
H:「ブラシをかけてホコリを払う。そしてときには靴クリームで艶を出す。靴磨きをしてあげると、ちゃんと長持ちしてくれますよ」
A:「はい!」
革ももともとお肌ですものね。やっぱり保湿、保湿!
手入れを忘れず自分の一足と馴染むように付き合っていきたいものです。
「良い靴は履き主を良い場所へ連れて行ってくれる」という諺を聞いたことがありますが、
少し背伸びをして履いてみた革靴は、確かにいつもとは違った場所に歩いて行けそうな気分にさせてくれたのでした。
World Footwear Gallery
革靴を中心に、鞄、ベルト、革小物など、目利きのバイヤーによって選りすぐられた革製品のセレクトショップ。
イギリス、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、日本など世界各国のシューズブランドのアイテムを多数展開。服装、TPOに合わせた靴選びや、フィッテング、お手入れのコツについてまで、革を熟知したスタッフの丁寧な接客も靴好きから厚い支持を受けている。
終わりに
日高さんから「痛みも覚悟してください」と言われていた通り、靴をおろしたその日にやってきましたその痛みが(笑)。革と底の硬さに長時間履き続けていられない! 意気揚々とおニューの革靴で出社したものの、結局、途中から靴を脱いだ状態でデスクワークをしておりました(とほほ)。「この硬さを耐えてこそ一人前!」と強がったのも束の間、編集長に「ストレッチャーで広げてもらうと楽になる」と助言をもらい早速靴修理屋さんに駆け込んだのでありました〜。ちなみに新品の靴底にゴム底をつけておくのも長持ちさせるコツですよ!