「機械式時計」という名のラグジュアリー戦略とは?
クオーツショックによって一時は大打撃を受けたスイス業界が、どのような歩みを経て復活を遂げたのかに迫った一冊。日本製のクオーツ時計が世の中に出てきた時に、スイス勢はどのように考えていたのか。なぜスウォッチグループという一大グループが多様なブランドを吸収してきたのか。スイスだけでなく時計史のことがよくわかる内容になっている。
スイスの時計をどうラグジュアリー分野に押し上げたのかという「ブランディング」の話に加え、それに向かうための生産体制の再編について触れていることもこの本のポイントになるだろう。もともと、時計は家内製手工業で作られるものだった。ただ、急速にグローバル化していく(=クオーツ時計が世界中に普及していく)時代に産業として保っていくためには、それなりの生産体制と流通網を構築しなければならなかった。表面的なブランディングに終わらない、泥臭い話が盛り込まれている。
一度衰退仕掛けた地場産業を復活に導いたという点で、時計愛好家はもちろん、マーケティング担当者や地域産品に携わっている人にも手に取ってみてほしい。