会場中には所狭しと革、革、革、そして革にまつわる製品のサンプルが並びます。
製品を展示するのは、実際に革を鞣すタンナーから加工会社、輸入会社、小さな工房までさまざまです。
特徴的な展示を行なっていたブースをピックアップしてご紹介します。
富田興業株式会社
富田興業株式会社は東京・台東区に本社を構える、大正12年創業のレザーの老舗専門商社。
日本中、世界中から、作りたい製品に合った革をタンナーに発注し、仕入れを行います。
製品に最も適した革を自在に選べるのは、長く革に携わってきた当社ならでは。
ブースでは当社が革原料の輸入から企画制作まで携わったバッグなどの製品も展示されていました。
革の質感を上手に使ったバッグは、危うくお持ち帰りしてしまいそうでした。
富田興業
革の風合いは、革工場である各タンナー独自のレタン(Retanning=風合いや染色性を調整する工程)、工場によって取り扱う原皮の産地(国内、北米、ヨーロッパ、アジア)の違いによって仕上がりが異なる。たくさんのパイプを持っているためそれぞれの求める用途、風合いによって、最適な素材を提案できる。
品揃え色数は5,000色以上、協力工場が40社以上。
ライフスタイルに合わせた「革を育て」やすい素材をコーディネートしている。
株式会社山陽
革の本場・姫路市で100年以上の歴史を数える老舗タンナー、株式会社山陽は、KOKUYOの直営ショップ「THINK OF THINGS」とコラボレーションしたコンセプチュアルな革製品を展示していました。(現在は販売終了)
EUREKA!(分かったぞ!)と題された革のペーパーウェイト。
「革といえば、靴や鞄。ずっと使えるものだから、定番のデザインのもの。でも、定番だけにしておくのは、ちょっともったいない。」というテーマの下に制作された、革を使った「考えるときに使う道具」という新しい切り口のアイテムたち。
ゴルフ場や街頭アンケートで出てくる安価な「あのペン」も革のケースをつけると、ちょっと特別な存在に。
「世界一気軽に書けるペンだからこそ、いつでもどこでも気軽にアイディアが湧いてくるペンになれば」という思いで作られたそうです。
好みの素材を使った道具は、クリエイティブな仕事に好影響を与えてくれるもの。
鞄や靴、財布だけじゃなく、仕事の道具にも革素材を取り入れてみようと思わせてくれる展示でした。
革素材を実際に加工してみるワークショップも開かれていました。
山陽
100年以上の歴史を持つ山陽では、風合いや色表現、柔軟さなど、革の性質を左右する「鞣し」において全国でも珍しく、3つの鞣し革を作っている。
革は、厚み・風合い・色味が品質の3大要素であり、その内の色味を左右する染色工程では山陽の歴史が育んだ2000を超える膨大な色データがある。
国内唯一の検査機をはじめ、充実の試験設備で、スピーディな素材開発、多様な品質基準に対応している。
100BASIC 特設WEBサイト
「100 BASIC」は株式会社山陽が、100年以上の歴史の中で磨いてきたヌメ革の加工手法を伝えるために始めたプロモーション。一言でヌメ革といっても、その表情は千差万別。100種のサンプルを手貼りしたサンプルブックなどを通じて、ヌメ革の多彩な表情に触れることができます。
株式会社コロンブス
革靴好きにはお馴染み。靴クリームで有名な株式会社コロンブスも出展していました。
いちど紹介させて頂いたことのある、Boot Blackブランドの製品がずらり。
ハイシャインが素早くできる専用クリーム、ラピッドハイシャインも紹介されていました。
靴磨き日本選手権大会が開催されるなど、靴磨きにスポットライトが当たる近年。
「鏡面磨きなどにSNSでも注目が集まりますが、靴磨き初心者の人が見よう見まねで靴磨きをすると、かえって靴を痛めてしまったりもします。クリームで磨く前には靴の汚れをしっかりと落とすなど、靴磨きの基本的なところを、メーカーとしてしっかりと伝えていきたい」と、企画部の小高さんは話します。
基本の大切さに改めて気付かされました。
コロンブス
靴クリームを生業として1919年に創業。近年では“メイドインジャパン”の信頼性を活かし、ハイエンドの商品“Boot Black”の欧州進出や世界的有名ブランドとの取り組みなどを行う。
コロンブスの靴クリーム・クリーナーのすべてを生産している松戸FACTORYには創業以来100年もの長きに渡ってお客様と築き上げた靴クリームや靴仕上げ剤に関する実績とノウハウがぎっしりと詰まっている。
パティーヌ仕上げに用いる業務用の塗料も紹介されていました。
群馬県桐生市の伝統技術、桐生織りを施した靴ベラは今期の新製品です。
ハシモト産業株式会社
ハシモト産業株式会社は革の加工製造を行う、大阪に本社を置く会社です。
1977年創業の老舗企業は、革紐の製造も得意としています。
会場にも高品質でカラフルな革紐がたくさん展示されていました。
染色と加工により、色鮮やかな表情を見せる革素材。壁一面のサンプル展示が圧巻です。
「革素材はこんな一面も見せることができる」という可能性を感じさせてくれます。
ハシモト産業
革の加工製造を行う、大阪に本社を置く1977年創業の老舗企業。革紐の製造も得意としている。
Webページには革ごとの特徴についてや染色方法、加工方法、専門用語の解説などがまとめており、大変わかりやすくおすすめだ。
セカンド オーシャン
浅草地区で古来から続く、皮革製品の分業加工を行う工房 セカンド オーシャンも出店していました。
修理しながら使っているという古い底抜い機械も展示されており、機械好きには堪らない内容に。
工房では4種類の底縫い機械(出し縫い、マッケイ、オパンケ、すくい縫い)を揃えています。
革靴メーカーから独立開業した当工房。底抜い技術に特化した生産者として、東京の革産業を支えています。
セカンドオーシャン
4種類の底縫い機械(出し縫い、マッケイ、オパンケ、すくい縫い)での事業を行う。機械での加工業務になるため、生産における作業効率の改善や生産量など、メーカーや個人でやられてる事業主の方々への協力・手助けをしている。
Webサイトはセカンドオーシャンの入居する「浅草ものづくり工房」の公式サイト。台東区の地場産業である靴、鞄、バッグ、ベルト、帽子、ジュエリー、アクセサリーなどものづくり分野で事業を始めた個人や、創業間もない企業を受け入れ、ワークショップを行うなど、産業の活性化に貢献している。
会場では芸術的な革の展示も多く行われていました。
会場中に展示されたレザーの種類や量はとにかく圧倒的です。
ひとことで革に携わると言っても、タンナーから加工会社、輸入会社、小さな工房まで出店者は千差万別。
各ブースから共通して感じたのは、革そのもの、革製品の持つ魅力を、新たな角度から表現しようというチャレンジ精神でした。
近年、元気が無いなんて言われる日本の革産業ですが、とんでもない。
次回で100回を迎える当イベント。革好きな方は、日本の革産業の熱量を感じに、ぜひ足を運んでみて下さい。
ーおわりー
終わりに
仕事柄 プロダクトまで加工された革に触れる機会は多いものの、素材のママの状態の革に触れた回数は、間違いなく人生で一番多い1日になった。余談だが、出店ブースでは各社の革サンプルを使ったコースターを無料で配っている。各社の革の違いが楽しくて、ついつい何枚も貰って回ってしまった。我が家の革製品濃度がささやかながら上がった1日にもなった。