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平成生まれの若月さんが5歳から集めてきた1000本以上のカセットテープ。時代の流れを巻き戻すコレクションの数々_image
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平成生まれの若月さんが5歳から集めてきた1000本以上のカセットテープ。時代の流れを巻き戻すコレクションの数々

時代の変化は、テクノロジーの進化で表現されることがある。
よく使われるのが「音楽の聴き方」である。

一般的な家庭に音楽が流れ始めたのは1930年頃であり、ラジオが最初だった。1950年頃にアナログレコードが普及し、その後は、カセットテープ、CD、MD、MP3と音楽を保存する媒体が変化してきた。現在では、Apple Music、Spotify、AWAなどの音楽サービスを使えば、インターネットを通じて、好きな時に、好きな音楽が聴ける時代である。

私が小学生時代を過ごした1990年頃は、カセットテープが主流だった。ラジオ番組を録音したり、好きな曲をダビングして、カセットウォークマンで聴いたものである。しかし、時代は1990年中頃になると、急速にCDが主流になり、カセットテープは姿を消し始めた。

そして、2015年の春。
知人を通じて、カセットテープのコレクション・ダイバーに出会った。当時22歳の大学生だった若月さんである。はじめて若月さんを紹介された時、不思議に感じたことがある。
「22歳の若者がカセットテープを集めている。なぜ?」
その疑問を、若月さんに訪ねてみた。

コレクション・ダイバー【Collection Diver】とは、広大なモノ世界(ワールド)の奥深くに潜っていき、独自の愛をもってモノを採集する人間(ヒト)を指す。この連載は、モノに魅せられたダイバーたちをピックアップし、彼ら独自の味わいそして楽しみ方を語ってもらう。

取材日: 2015年2月25日

文・写真 / 井本貴明

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6歳の少年がクリスマスでお願いしたプレゼントは、ラジカセだった

カセットテープの歴史

カセットテープは、1962年にオランダのフィリップス社開発したオーディオ用磁気記録テープ媒体であり、コンパクトカセットと呼ばれることもある。フィリップス社が製造に関する著作権を放棄したことで世界中の製造メーカーが販売に乗り出し、日本でもSony、TDK、AXIA(現:富士フィルム社)、SANYO、日本Victorなどの多くの会社が販売をしている。テープには使用する素材の磁気特性により複数の種類があり、主なものとしてノーマル (Type I/NORMAL)、クローム/ハイポジション (Type II/CrO2)、メタル (Type IV/METAL) の3種類がある。

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カセットテープを集めている若月さんは、現在、約1200本のテープを所有している。
初めて興味を持ち始めたのは、5歳の時だと言う。
「僕が5歳ぐらいの時に、親がCDをカセットテープに移す作業を見て、自分もやってみたいと思いました。それがきっかけでオーディオなどの音が鳴る機械に興味を持ち始め、親からカセットテープを貰い、カセットデッキにテープを入れて録音などをしていました。
そして、小学校1年生の時のクリスマスプレゼントに、ラジカセをお願いしました。自分だけのラジカセを手に入れたのがとても嬉しくて、そこからカセットテープを集め始めましたね。

パッケージの画で覚える!? 1000個以上のカセットテープを頭の中で管理

カセットテープを集め始めた若月さんは、リサイクルショップを歩き回り、日に日にその数を増やしている。
若月さんの収集熱を感じるエピソードがある。それは、若月さんが小学6年生の頃、近くの電気屋が在庫処分セールを実施していた。その中には、未開封のカセットテープが300本ほど売りに出されていた。そして、若月さんが半分の150本を購入したのである。1本50円ほどだったが、合計すれば7500円。その大金をお年玉で払ったのである。
電気屋の主人も驚いたことだろう。小学生が大量のカセットテープをオトナ買いしたのだから。

カセットテープの数が増えると、どうやって管理するのか不思議だ。なにしろ1000個を超える数である。新しく購入したテープが、家に帰ったら既に持っていたなどの失敗談はないのだろうか。
「頭の中で全て覚えています。なので、何かに書き出して記録をすることはしていません。頭の中でパッケージの画を覚えているので、既に持っている物を、間違って再度購入することはないですね」

1000個以上のカセットテープを所有する若月さんに聞いてみた「お気に入りの1個」、「いま欲しい1個」

若月さんに、1000個以上あるカセットテープのコレクションの中から、お気に入りのテープ。いま欲しいテープを訪ねてみた。

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<お気に入りのテープ>TDK MA-R

見た目のかっこ良さで言うと、「MA-R」ですね。回りがメタルフレームなので、とても重いのが特徴でして、定価で 1000円以上するテープです。しかも初期モデルなので、そのテープにはメタルテープの判別穴がなく、普通のラジカセでは使えなく、特殊なラジカセでしか使用ができません。初期モデルならではの不便さが好きです。

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<いま欲しいテープ>SONY スーパーメタルマスター

Sonyの「スーパーメタルマスター」ですね。白いセラミックのテープです。ヤフオクでは2000円ほどで売っているのですが、、、。ヤフオクでは値段がとても高いので、手を出さないようにしています。例えば、先日僕が一本50円で買ったテープが、ヤフオクで800円ほどで売られていました。地道に足を使って、定価以下で買えるお店を探しています。
(注:写真は異なるSONYのメタルテープ)

最終的な目標は、全銘柄のカセットテープを集めること!

若月さんに、カセットテープの魅力を訪ねてみた。
「ひとつひとつのカセットテープが ”違う” ことですね。例えば、CDingという銘柄のテープがあるのですが、その46分と60分のパッケージは異なるデザインです。テープ自体もハブの大きさが違う。太さが違う。そういう細かい点がいいなと思い、さらに集めたくなりますね」
さらに、カセットテープは、価格もそこまで高くなく、コンパクトなサイズなので集めやすいのも魅力だと付け加える。一時期、ビデオテープも集めていたが、保管する場所が確保できずに諦めた経験があるのだ。
若月さんの最終的な目標は、全銘柄のカセットテープを集めることだ。まだまだ遠い道のりだが、集めている過程が楽しいのだと語る。

今回の取材で若月さんと話していると、私が子供の頃に集めていたビックリマンのシールを思い出した。小学3年生だった私は、テストで良い点を取るたびにご褒美で、親からビックリマンを買うお小遣いを貰っていた。新しいシールが増える度に心は踊った。そして、いつの日か全種類のシールを集めようと考えていた。
あれから20年以上が経ち、今では「全種類が揃うまで集めてやろう」という熱くなれる物がなくなった。いつからか、何かを手放したり、諦めたりすることを覚えたのだろう。

最近、雑誌では「モノを持たないライフスタイル=ミニマリズム」を推奨している特集を目にする機会が増えてきた。若月さんのように、大人になっても楽しみながらカセットテープを集めている姿を見ると、「モノを集めるライフスタイル」も支持したくなるのだ。

(おわり)

若月さんのご自宅の様子

若月さんのご自宅の様子

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