東京都清瀬駅南口から徒歩5分のところにある「ラジオ・ラジカセミニ博物館」。懐かしさを感じさせるオーディオ・ビデオ機器のコレクションと資料を多数展示している私設の博物館です。
ラジオ、オーディオ、テレビ、ビデオなどの博物館もインターネット上で発表しています。
今回は「ラジオ・ラジカセミニ博物館」の中村さんに取材してきました。
並べるラジカセが増え続けて行くと、仕事場が博物館っぽくなってきました
館長の中村さん。とても丁寧に説明をしてくれました。
Muuseo(以下mso):最初の質問になりますが、ラジオ・ラジカセミニ博物館の成り立ちを教えてください。
ラジカセ博物館(以下中村さん):私自身、以前は映像製作会社で仕事をしており、1996年に会社を辞めて個人で映像の仕事を始めました。自宅は父が1階で薬店を経営しており、ビデオ編集などの仕事を3階の自室で行っていました。
2002年に父が亡くなりお店を閉める事になり、自分の作業場所を薬店があった1階に移動しました。翌年、映像の仕事以外にラジカセなどの修理を副業として始めました。
しばらくして、インターネットのオークションで、偶然、昔欲しかったラジカセを見つけて購入しました。その後、薬店で使用していたショーケースに、オークションで購入したラジカセを並べました。ラジカセが増え続けた結果、まるでラジカセ博物館のようになってきました。
そこで、ラジオ・ラジカセミニ博物館と名前を付けて、常設展示室として公開できるようにしました。同じ頃に、ホームページを立ち上げ、ホームページ上でもラジオ・ラジカセミニ博物館の展示を見れるようにしました。それが平成15年頃の話です。
仕事場に並べられているラジカセは、普段使用している物も有ります。
コレクターとしてのゴールは、自分でも分かりません(笑)
mso:現在、ラジカセは何点ほど所有しているのですか?
中村さん:100個を超えた時点で正確な数は把握していないのですが、おそらく300個近くはあると思います。
mso:中村さんが集めているラジカセの傾向、特徴はありますか?
中村さん:当時憧れて欲しかった物が多いです。それと、自分が持っている機種の保守部品集めとしてのラジカセですね。
その後、博物館として展示していたので、資料的にあるとよいラジカセを集めました。
現在の仕事場に並んでいるラジカセは当時好きだったラジカセが中心です。他の資料的に集めたラジカセは収納棚や倉庫に保管しています。
当時、とても憧れていたラジカセは今でも修理しながら現役のラジカセとして日々利用しています。
mso:ラジカセのコレクターとして、ゴールはありますか?
中村さん:自分でも分かりません(笑)。オークションでいい物を見つけても置ける場所が無いので、今はこれ以上集めようとはしていませんね。
”どうしても欲しかった”物で、値段が届く範囲だったら今後も購入する可能性はありますが、”ちょっと欲しいかな程度”の物では、購入しないようにしています。
ほぼ、自分が欲しいと思った物は、揃え終わったと思っています。
今でもどうしても欲しいラジカセはあるのですが、それらはオークションなどに出回ってきませんね。
mso: 中村さんが探している、どうしても欲しい1台って何ですか?
中村さん:それは教えられないですよ。言ってしまうとライバルが増えてマズいでしょ(笑)
これからラジカセのコレクションを始める人は大変だと思う
珍しいテレビ付きのラジカセ。当時は、けっこう流行っていたそうです。
mso:ラジカセコレクションを集める上で、困った事はありましたか?
中村さん:オークションを始める前は、中古家電としてリサイクルショップなどにラジカセが出回らない時代が一時期あり、困りました。
オークションで購入を始めた頃は、欲しかったラジカセが比較的簡単に手に入れる事が出来るようになりました。
頑張って毎日オークションをチェックしていると、数年後に見つかる事もあるので、根気よく探す事が大事ですね。
ただし、ここ数年はオークション上でもいい物が集まらなくなってきている。
なので、これからラジカセのコレクションを始める人は大変だと思う。
今はいい物がオークションで見つからない時代です。仮に見つかっても海外のコレクターが入札に加わると、価格が一気に上がる事があります。
もう1つ困った点は、ラジカセやオーディオ機器だと、中身をいじられた物が出回る事。中身の部分的な整備や整備失敗した物が出回るのは困りますね。買った後にしか気づく事ができないので。
mso:人が見に来れる、私設ミュージアムを作って良かった事はありますか?
中村さん: 「良ければどうぞ」と貰える事がある。ある程度物が集まると、不思議と物が寄って来るという感じで集まって来る。
ただし、リサイクルショップと勘違いされるのは困りますね(笑)。
mso:私設ミュージアムを開いて困った事はありますか?
中村さん:ラジカセのように動く物を展示する場合は、そのメンテナンスをどこまでやるのか困ります。定期的に動くことを確認して、整備点検が必要になるので。
全てのラジカセのコンディションを確認出来きないのが一番の悩みですね。
本来、ラジカセは道具として使う物なので、出来るだけ使える状態で展示出来るのが理想と思っています。
あとは、置き場所に困る。見せる状態でやろうと思うと、ラジカセの大きさから言ってかなり難しい。
自分の好きな物を、好きなように集めて、何とかすればいいんじゃないかな(笑)
日本で初めて発売されたとされるAIWAのラジカセ
mso:今後のラジカセ博物館の展望を教えてください。
中村さん:どうしようか、悩んでいます(笑)。
展示を増やすと仕事場のスペースが減るので、普段使うラジカセ以外は収納棚に入れたいです。
mso:今後もラジカセ博物館の訪問は可能ですか?
中村さん: 大丈夫です。ただし、深くラジカセが好きの方だと1日では時間が足りないかも(笑)。
ラジカセは見るだけでなく、音の比較も出来ます。音を聞き出すと、すぐに時間が経ちますね。
ラジカセのカタログなどの資料もたくさんあるので、ラジカセ好きな人は、いくら時間があっても足りないかもしれません。
見学の時に、ご自分の所有しているラジカセを持ってくると、他のラジカセとの比較試聴が出来ます。
さらに聴きなれた音源を持って来てもらえれば、音の違いもわかりやすいかと思います。ラジカセの修理が好きな人であれば、ホームページでは紹介出来ないような、細かい修理の話も出来ます。
mso:実際に、訪問するにはどのようにすればいいですか?
中村さん:まずは、電話かメールで連絡をください。
お互いの日程が合えば、基本は大丈夫です。
突然来られると、仕事の最中で対応出来ない事があるので、事前に連絡が欲しいです。
mso:最後の質問ですが、ラジカセに興味を持たれた方にメッセージがあれば、お願いします。
中村さん: ラジカセの世界は個人個人の考え方が違うので、難しいですね。
自分の好きな物を、好きなように集めて、何とかすればいいんじゃないかな(笑)。
ーおわりー
日本で初めてのステレオラジカセ。SONY製。
VICTORが初めて出したステレオラジカセ。
Technicsの再生専用機。
バイノーラル録音をスピーカー再生できるVictorのラジカセ。
中村さんの家には、昭和時代の物がたくさん。写真は、月面着陸当時に発行されたLIFE誌。
マイク付きのラジカセ。マイクを取り外して録音が出来ます。
アナログレコード付きのラジカセ。
ラジオ・ラジカセミニ博物館
東京都清瀬駅南口から徒歩5分のところにある、70年代から80年代の、懐かしいオーディオ・ビデオ機器のコレクションと資料を多数展示している私設の博物館。
コレクションを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
20モデルを追加、カタログ56種を新たに掲載し、質・量ともにパワーアップした世界初のラジカセビジュアルブック!
ラジカセのデザイン! 増補改訂版 (立東舎)
高度経済成長期に登場したポータブルオーディオ=ラジカセの魅力は、なんといっても自由奔放なインターフェースデザインにあります。『1つの筐体の中にいろいろな機能を盛り込む』という、日本人ならではのサービス精神が遺憾なく発揮された各モデルは、今こそ評価されるべきでしょう。国内随一の家電系ガジェッターである著者の膨大なコレクションの中から、選りすぐりのモデルをご紹介していきます。今では作ることが困難な、消えてしまった機械の姿を堪能してください。
ラジカセ&カセットテープの現在と未来
ラジカセ for フューチャー: 新たに根付くラジカセ・カセット文化の潮流
世界的に、ラジカセとカセットテープへの熱い視線が集まっている。
ラジカセの中古市場価格は高騰し、レコードショップではアナログに続いてカセット売り場が新設され、また、世界各地にカセットテープ専門店が新たに出現。人気ミュージシャンたちもこれまでのCDやダウンロードに加え、カセットでのアルバムリリースを行い始めた。
デジタル全盛の中、ラジカセやカセットテープというアナログなカルチャー/テクノロジーへの注目はなにを意味しているのか?
このブームの日本における仕掛け人のひとり、松崎順一(家電蒐集家)を中心に、2016年、最も新しいものとしてのカセット/ラジカセの現在と未来とを明らかにする。
終わりに
東京都清瀬市にある「ラジオ・ラジカセミニ博物館博物館」。
館長の中村さんが作った私設ミュージアムで、ラジカセ以外にも、ラジオ、オーディオ、テレビ、ビデオなどの博物館もインターネット上で発表しています。
取材で訪れて驚いたのが、コレクションの数です。ラジカセは大きいものだと映画ポスターと同じぐらいの大きさになるのですが、仕事場にある収納棚に、数多く保管されていました。
館長の中村さんは、ラジカセの収集だけでなくオーディオ関連にも詳しいので、音の聴き比べの体験は面白かったです。
現在は常設展というよりは、予約した方に対して説明をする形なので、事前に連絡が必要だそうです。
ラジカセ好きな方は、訪れてみると楽しい時間を過ごせるはずです。もしかしたら、1日では時間が足りないかも!?