必死に受験勉強をしていた時にも、深夜のバイト明けの眠い授業でも、いつも手に握られていたシャープペンシル。社会人になってからボールペンの出番が増えて疎遠になった人もいるのでは?
今回、ミューゼオ・スクエア編集部きってのモノ好き成松が、最も愛用する筆記具・シャープペンシルを紹介します。モンブランやシェーファーなど、4本のシャープペンシルを使い分ける編集長。なぜ大人になってシャープペンシルを持つようになったのでしょうか?ブランド毎に異なるディテールにも注目してみてください。
流れるような書き味が、アイデアを生み出す
僕はシャープペンシル愛好家である。もちろん昔から勉強などに使っていたけれど社会人になってからは、敢えてシャープペンシルを選んで使うようになった。
大人になると万年筆を手にしたり、実用性から多色ボールペンを使う人が多いように感じる。もちろん僕も使うけれども、手に握られている時間で言えばシャープペンシルが圧倒的に長い。
シャープペンシルを愛用している理由。それは、流れるように書ける書き味。
僕は考え事をする時にはもっぱらシャープペンシル。仕事をする時にはアイデアを書き留めたり、書きながら思考を深めることが習慣になっているので、ざっとイメージを書き起こす時に役立つ。
ボールペンは早く手を動かし過ぎると、ローラーの回るスピードが追いつかなくてガリガリと擦れることがある。あのインクが途切れてしまう瞬間に、考えていることも一緒に頭の中から消え去ってしまうような気がする。とりとめもなく頭に思い浮かんだことを残していく時にはサラサラと書けるシャープペンシルが心地いい。僕以外に読めないのはご愛嬌。
そして芯は決まって0.9mm以上。太めなのも、流れるように書けることへのこだわりが反映されている。
モンブラン(MONTBLANC)「マイスターシュティック・モーツァルト」
社会人になり最初に手に取ったのがモンブラン。当時コードバンの手帳を使っていて、手帳に合わせたペンということで小ぶりなタイプを購入した。ボルドーの気品ある色味は華やかさを与えてくれるので気に入っている。ジュエリーや時計も扱う宝飾メーカーらしく、美しさと外観に凝っている。
ファーバーカステル(Faber-Castell)「クラシックコレクション」
ドイツのメーカー、ファーバーカステルの伯爵コレクションは、バイオリンの弓に使われる木とシルバーのコンビネーションモデル。両素材とも異なった経年変化するので使い込んでいく楽しみがある。芯を補充し、グリップと軸を合わせた時の緩みのない感触には驚かされる。文字通り「ピタッと」ハマる。ドイツらしい、中の部品が精巧に作り込まれている洗練された工業製品だ。
デルタ(DELTA)「ドルチェビータ」
イタリアのメーカー、デルタの「ドルチェビータ」というシリーズ。この大胆な色使いは洒落ているイタリアだからこそ。グリップと軸がグラグラしたり、クリップがずれていたりと精度がイマイチなところもあるが、それは手作業で作られているから。完璧過ぎず、少し劣っている部分があった方が愛着が湧いてくる。
ヤード・オ・レッド(Yard-O-Led)「セプター」
イギリスで生まれたヤード・オ・レッドの特徴は、ずっしりとした重み。加えてスターリングシルバーを使用したボディには細かい装飾が施されていて、職人の細かな手作業が感じられる。シャープペンシルの芯は1.18mmで太めなのは、まだ芯を細く出来る技術がなかった時代の意匠を受け継いでいるため。実用的かと言われると頷けはしないが、伝統を重んじるイギリスらしい、タイムレスな魅力に溢れているところが気に入っている。
共通しているのは、作り手のこだわりが反映されていること
万年筆、水性ペン、シャープペンシルとそれぞれ用途が異なるように、4本のシャープペンシルも担う役割は少しづつ異なっている。
ヤード・オ・レッドは今の所もっとも登場シーンが多い。スターリングシルバーの重量感を感じながら使う。モンブランは旅先などで。デルタはそれほど登場シーンは多くないが時々ふと出番が訪れる。ファーバーカステルは家でアイデアを纏めたりする時に、なぜか手にとっていることが多い。必ずしも合理的な判断ではないと思う。ただそうするのがしっくりするという理由だ。
登場シーンは異なるけれども、いずれのシャープペンシルにも共通しているのは、作られた国の歴史やブランドのこだわりが反映されていること。誰がどんな想いでどんな風に作ったのかを知ると愛着が湧いてくる。手が止まった時に筆記を進める後押しをしてくれる気がする。
今日はどのペンで書くのか。作り手の設計思想を知った上で、気分やシーンに合わせてその日の相棒を選ぶ時間はとても楽しい。
ーおわりー
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