ファッションに迷える羊。 初めてのオーダーシャツにトライしてみました

取材・文/廣瀬 文

前回、編集長こだわりのジャケット話を聞き、今後の自分のファッションについて少し考えてみたくなった編集者A。ここいらで大人っぽく一皮剥けたいと思いつつ一体何から始めたらいいかと悩んだ末、以前から気になっていたシャツのオーダーにトライ。その過程で浮き彫りとなった、本当の「自分好み」とは?

シャツのオーダーで登る、大人の階段

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こんにちは。 夏はデニムスカートにTシャツが定番ウェア。アラサー編集部員Aです。

編集職という仕事柄か、スーツにネクタイ、ヒールにジャケットといったビジネスウエアを着ることはほどんどなく、(良く言えば)自由な服装、あまりオンとオフのはっきりとした境目のない服装が常です。

ファッションに興味がないわけではないのですが、好きなものをあれこれ試して着て満足していた20代を疾うに過ぎ30代、正直今、何を着たい気分なのか、何を着るべきかはっきり言ってわからない! なんとかしなきゃと焦りつつも何から始めて良いかわからない。今はそんな状況です。

いままでとは違った服選びを試みることで、何か道は開けるかも⁉︎
と思い、以前から気になっていたシャツのオーダーに思い切ってトライしてみることにしました。
まだ何も始まっていませんが、大人の階段登れそうな気がします(?)


さて、今回は場所は南青山にあります、アヴァンギャルドなテーラードウェアを提案する、LOUD GARDEN(ラウドガーデン)さんにお邪魔します。こちらではショップスタッフの方がお客さんとのセッション(対話、カウンセリング)を元にお洋服作りをしてくださるそうです。(しかし、外観からオシャレな匂いがぷんぷんと……私が入っていいんでしょうか……)

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今回私のお悩みを聞いてくださったのは、お店の看板娘・Loud Girlこと大川知沙子さんです。本日の装いもデニムシャツにベスト、迷彩柄ワイドパンツにサンダルをサラッとオシャレに着こなしていらっしゃいます。


まず、今回お邪魔した経緯お伝えしてからセッション(カウンセリング)がスタート。

大川さん:「もともとは、どんなものがお好きなんですか?」

:「ちょっと変わったデザインとか、柄ものとか。何これ? って面白がれるもの、あえて他の人が選ばないような珍しいものが好きだったんですよね」

大川さん:「そういえば、今日も面白い柄のブラウスを着てらっしゃいますね」

:「わかりますか? これ蛾(が)柄なんです〜! よくあるかわいい蝶じゃなくて、蛾ってとこがポイントです〜。近づいて初めて昆虫だってわかるので友達にも驚かれるんです〜」(すごく嬉しそう)

ちなみにブラウスの柄は、こちら。

ちなみにブラウスの柄は、こちら。

大川さん:「すごくお似合いだと思いますよ」

:「ただ、いつもとは違った自分を探したいと思っていて。柄物も大好きなんですが、今回はシンプルな白シャツを作ってみたいなと思っています。定番ですけど、実は体にフィットしたものを一枚も持っていなかったので」

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大川さん:「なりたいイメージはありますか?」

:「白いシャツをさらっと着ているのに、エレガントな印象がただよう大人っぽい女性になりたいんです。理想は、吉瀬美智子とか、滝川クリステル、ジーン・セバーグみたいに!」(望みや目指す先は高いほうがいいですからね!)

大川さん:「そ、そうですね……」


ということで、まずはシャツの生地をセレクトするところからスタートです。
今回はデザインを考え、仮縫いをしてから仕上げるフルオーダーではなく、ある程度型がある中から選び、組み合わせてオーダーするパターンオーダーでトライします。

◆パターンオーダー順序◆

1生地を決める
2シャツボディーの型を決める
3衿・袖・前たてなどパーツデザインを決める
4ボタンを選ぶ
5採寸とサンプルシャツ試着
6オプショナルオーダーがあれば追加

白一択のはずが……。難航する生地選び。

さあ、まずは生地選び!
生地バンチという様々なブランドや価格帯に分けられた生地見本が綴じられたブックを見ながらセレクトしていきます。

いや〜無地やストライプなどの定番柄だけかと思いきや、柄物も豊富なんです!
見ているだけでも楽しいです。

LOUD GARDEN オリジナルデザインの生地もあります。

大川さんデザインの生地もあります。ハートのカモフラージュ柄です。かわいい! カモフラージュ柄になっているので、男女選ばず着れそうですね。

大川さんデザインの生地もあります。ハートのカモフラージュ柄です。かわいい! カモフラージュ柄になっているので、男女選ばず着れそうですね。

こちらは、ぱっと見ストライプですが、よく見るといろんな国の愛の言葉「Je t'aime」「I Love You」が織り込まれてます。定番のストライプにもオリジナリティが感じられますね。

こちらは、ぱっと見ストライプですが、よく見るといろんな国の愛の言葉「Je t'aime」「I Love You」が織り込まれてます。定番のストライプにもオリジナリティが感じられますね。

繊細な花柄プリントで有名な、ロンドンの有名生地メーカー・リバティの生地バンチも。
よく見るとすごく個性的なプリントに目が釘付け!

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見つけてしまいました!
リバティプリントといえばお花柄だけかと思いきやこんな面白い柄まで‼︎‼︎ (けっこう攻めてるなリバティ)
全身レオタードの人たちが踊っています!(まるで漫画のキャッツアイ!)しかもヒゲの男性も全身タイツ! 
遠くからはわからないのに、近くで見ると、なんだこれって見入ってしまう‼︎ 気づいた人がちょっと笑ってしまいそうな茶目っ気のある柄。まさに私好み!直球ど真ん中です!

急にテンション上がってしまいましたが、
いやいや今日はシンプルな白シャツと決めていましたからね、、、(落ち着け私)

ちゃんと無地の生地もチェックしていきましょう。

夏の時期から着れるリネン素材もいいですね。涼しげ。

夏の時期から着れるリネン素材もいいですね。涼しげ。

こちらのオックスフォード(たて糸・よこ糸を2本ずつ引きそろえて、平織りにした生地。)も少し生地に厚みがあってシワにはなりにくそう。アイロンがけ苦手な私にはいいかも。

こちらのオックスフォード(たて糸・よこ糸を2本ずつ引きそろえて、平織りにした生地。)も少し生地に厚みがあってシワにはなりにくそう。アイロンがけ苦手な私にはいいかも。

でも、どうしてかいつも柄物に目がいってしまうせいか、全くの無地だと何か物足りなく感じてしまい……。

とここで、ラウドガーデンのハートのカモフラージュ生地に白もあるということでチェック。

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一見無地の白ですが、よく見ると織りでハートが織り込まれています。
ちょっと変化球が欲しくなる私の好みにもぴったりです! 
うん、かわいい! 生地はこれにします!


さあ、決まるか!と思いましたが
人気生地で、ただいま生産分が在庫切れとのこと。(チーン)残念……。


シンプルなコットンの白に襟裏や袖裏の裏地に別の布を当ててアレンジをするという方向に。
(どうしても何かしたい衝動が)
チラリと見える裏地にはポイントで赤とか入れたいな……。
しかし、濃い色味の生地を選ぶと表からも色が透けてしまうということが判明。

なかなかイメージ通りというのは難しいです。
やはり、初めてのオーダー。初志貫徹、白一色にしようか……。

なかなか定まらない気持ちの中、天使のささやきが。

大川さん:「着たいものを着るのが一番ですよ」

確かに、せっかくオーダーして作ってみても、着たいと思えなかったら意味がない。さらに、ひと声。

大川さん:「柄物のシャツでも、組み合わせのアイテムで大人っぽくも着こなせますよ」



大川さんの控えめでやさしい一声が、脳内に大音量でリフレインします。
「着たいものを着るのが一番〜着たいものを〜一番」
視界も急に明るく広がってきたような。

もう迷いはありません! 私はあの生地。
一瞬で目が釘付けとなったリバティプリントの体操柄をを選びたいと思います!

ふぅ、この決断にいたるまで1時間半もかかってしまいました。

ちょっとしたディテールにこだわりたくなる。 自分らしい型選び。

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パターンオーダーとも言えど
まだまだ決めるパーツがありました。

襟のデザインも13種ほど!
これだけあると一つ一つどんな違いがあるのか気になってしまいます。
選ぶ衿型によって、衿越(衿が立ち上がる首後ろの部分)の幅や、剣先(衿の尖った部分)の長さも変わり、印象もそれぞれ違います。
第2ボタンまでを外して着ることを考えると、襟は鋭角のものより、少しハの字に広がった方がバランスが取りやすいとのアドバイスから「ホリゾンタルワイド」型を選択。


袖の長さは、半袖、7分袖、長袖と3種類。
手首の見える7分袖にも惹かれましたが、通年通して着まわせることを考えて長袖を選択。


袖口のデザインもいくつもあり、ここでも少し迷いました。
ベーシックな一つボタンに、角がなく柔らかい印象の「大丸(おおまる)」型を選択。大丸はアーチが深い丸で、ミシンできれいに縫うのが難しいとされている型のようです。


ポケットの有無も選べます。無地の生地ではポイント使いで締まった印象になります。今回は個性的な柄を生地でチョイスしたこともあり、ポケットなしのシンプルなものに。


シャツの前身頃を留めるボタンがならんでいる部分もデザインが選べます。
前立てといって、そのボタンが見えないように上から生地をかぶせたようなデザインにすることも。
私は前立てなしの裏前立てを選択しました。かがんだときにボタンの隙間から中のインナーが見えないように内側に隠しボタンを2箇所入っているものです。
女性のために配慮された作りかなと思いましたが、そうとも限らないようです。
なんでも、海外の男性はインナーなしでそのままシャツを着用することが多いそうで、ネクタイ着用時は隙間から肌がみえないけれど蝶ネクタイ着用時は見えてしまう。
それを防ぐために前立てや隠ボタンをつける作りのものができたそうです。
紳士の身だしなみからきていたんですね〜。

ボタンの色味も選びます。他の人からみたらあまりわからない小さなパーツですが、またここでも悩みました。ただの黒だとなんだか物足りないので、ダークグリーンを選択。

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これぞオーダーっぽい! 採寸&試着で体型に合わせたフィット感をさがす。

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一通り、型やパーツをいろいろと選んだ後、次は採寸をしてもらいます。
ここで肩幅、胸囲、胴囲、ウエスト、腕の長さをチェック。

採寸でだいたいどのサイズが合うかを定めた上で、試着タイム。
一番小さなサイズレギュラー0からレギュラー10までの段階があるなかで、
私にあるだろうと推測していただいたレギュラー1と2を試着させてもらいました。レギュラー1はだいたいXS、レギュラー2はおおよそSに相当するサイズのようです。


レギュラー1がぴったり! ですが、女性の場合ホルモンバランスで時期によって胸囲のサイズが変わることがある(あんまり実感したことなかったです。。)そうで、少しゆとりをもった方が安心だということ。

大は小も兼ねますし、レギュラー2を選択しました。
採寸サイズによって、肩部分やウエスト部分を微調整することもできるようです。
これで、なで肩、薄め体型の私のお悩みも解消されそう。

丈の長さも調節できるので、大川さんと相談してシャツをインしても、出しても着まわししやすい長さに設定してもらいました。

アレンジしたい欲がむくむく。極め付けのオプション選びでフィニッシュ!

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好きな柄、パーツも自分で選ばせてもらって、ここまできたらとことん希望を盛り込んで自分だけの一着にしたい! 

オプションでは、クローバーやハートなどの刺繍を袖口入れたり、ボタンホールの糸の色を変えたりこまかな変化をつけることも。
私はリボンタイをつけて2WAYの着こなしができるようにしました! 

カウンセリングやパーツ選びですでに3時間ほど。
(オーダー時間には個人差があります。だいたい2時間程度)
ようやくオーダーは終了!(何もしていないのに疲れた)


セミオーダーと聞いて、生地さえ決まれば終わりだと勝手に思い込んでいたんですが、これほどまでに、自分で選択できるパーツやオプションがあることに驚きました。


一つ一つの小さなパーツ、他の人から見たらその違いはわからないかもしれませんが、随所に自分の好みやこだわりを盛り込めるものなのですね。
いざ「選べます」と決定権を与えられると、小さなボタンの色を選ぶことにさへ自分の個性が反映されてしまうと感じて、真剣に悩んでしまいました。 
昔、小さい頃は何色が好きだったかとか思い返したり、なんでその色が好きなんだっけと自問自答したりまで。

定番のシャツ、セミオーダー。
ある程度限られた範囲内で可能な限り自分を表現する時間はかなり濃い時間に感じられました。


さあ。あとは、出来上がりを待つのみです! 楽しみ〜!

待ちわびたシャツにご対面! じわじわとこみ上げる気持ち。

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オーダーをしてから待つこと3週間!
遂に完成品を受け取る日がやってきました〜!

こちらです〜! リボンタイ付き!


早速着てみました。

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左がビフォア、右がアフターです。あ、インしたシャツが歪んでる……

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大川さんからのアドバイスを受けて、紺のタイトスカートとヒールを組み合わせてみました。

どうですか? サイズもジャストフィット! ちょっとは大人っぽく見えませんか?
シューズやバックなど、組み合わせるアイテムによっては格好いいメンズライクなスタイルにもなりそう。

当初は白のシャツをつもりだったのですが、
悩みに悩んで結局、本来好きだった個性的な生地を選んだこと。
パーツデザインも選んで作っていただいて、自分だけの一着に仕上がった満足感があります。


当たり前ですが、改めて洋服はいろんなパーツで構成されているということを知り、今後、既製品を選ぶときも、襟や袖、ボタンの一つ一つ。洋服のディテールが気になりそうです。

出来上がりを着てみて、やはり直感的に好きだと思えるポイントのある洋服は気持ちをぐっと持ち上げてくれるパワーがあります。
いつもの好きなテイスト(私だったら、ちょっと個性的でコケティッシュなもの)を選ぶときは、組み合わせるアイテムのデザインや色味でバランスをとると落ち着いた大人っぽい印象に仕上がる。その大川さんのアドバイスを今後生かしたいですね。

主張の強いアイテムをいれるのは一点だけに絞って他はベーシックなものを選ぶとか、色味を同系色に統一するとかですね。あと、なんといってもサイズ感! 自分の体型やぴったりのサイズを知るというのは大事ですね。

自分の「好き」を貫きながら、サイズ感のあったアイテムを組み合わせて調整する。このバランス感覚を養うことが、自分の目指すオシャレな人への第一歩なんじゃないかと感じた今回の体験でございました。

自分の気持ちと体型にあった一枚を手に入れることができたので、
今年下半期はこのシャツを大いに着まわしてみたいと思います‼︎

ーおわりー

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The three WELL DRESSERS 白井俊夫・鈴木晴生・鴨志田康人――3人の着こなし巧者の軌跡

日本のメンズ服飾業界で絶大な支持を得る白井俊夫、鈴木晴生、鴨志田康人。世界的にも著名な3人は、日本を代表するウエルドレッサーである。彼らの人生を追うことは、戦後のメンズ服飾業界を俯瞰し、その歴史をなぞることでもある。3人の人生を生い立ちから描くとともに、スタイルブックとして活用できる写真も掲載。

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LOUD GARDEN

LOUD GARDEN(ラウドガーデン)の特徴は、ズバリ遊び心。テーラーと普通のブティック的な要素を兼ね備えており、店内に展示しているモデルはイギリスのスーツがデザインのベースとなり、そこに店主こだわりのロックテイストが反映されている。一見アバンギャルドのようだが伝統的な製法やカッティングを行っている。オーダーを受けたアイテムは、その季節内に着用できるように、なんと一ヶ月半でのお渡しもしているという。これは普通のテーラーでは考え難い期間である。また、お店はテーラーでは珍しく予約制ではないため初心者でも来店しやすいおすすめの一店である。

公開日:2015年8月16日

更新日:2022年5月2日

Contributor Profile

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廣瀬 文

オトナかわいい女性に憧れるアラサー編集部員。憧れの女史は、石田ゆり子さまと本上まなみさま。ずぼら脱却にお茶か日舞を習ってみようかと思案中。最近気になる被写体の組み合わせは「おじさんと犬」。

終わりに

廣瀬 文_image

オーダーをしてみようと決意した瞬間、お値段もそれなりにするのでかなり背伸びしたかな〜と思いました。 体験してみて、細かい所まで自分の要望を盛り込みながら、どうしようか迷うこの時間がすごく楽しかったですね。行き詰まるたび、いいタイミングで助言をくださった大川さんの存在は大きいです。 出来上がったものにはもちろん満足感はありますが、他にも試してみたいという欲がもうすでに……。次回オーダーの際は、記念日のご褒美に。今度こそ白シャツオーダーをトライしたいと思います!(笑)

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