筆跡が残ることも利点! 土橋流のシャープペンシル活用術。
万年筆以外でいえば私はラミー2000のペンシル0.5ミリと0.7ミリを使い分けています。
このペンシルに個人的に注目したきっかけは、ドクターラミーにインタビューをさせてもらったとき、お気に入りのペンはと聞いて真っ先にあげたのがラミー2000のペンシルでした。
「30年以上使ってます」というものを見せてくれました。ドクターラミーはペンシルというペンはクリエイティブなフィーリングをどんどん出してくれると話していました。
どちらもラミー2000。デザインは同じだが芯が0.5ミリ(写真左)、0.7ミリ(写真右)。
そうですね。それもひとつです。消した後もかすかな筆跡がわかるのはシャーペンだと思うんですね。筆跡が残るんで、そういえばこの予定、こうだったと一応確認できるよさってシャーペンにあるなと思っていて。
0.5ミリは手帳用。細かくみっちり予定を書けるので。0.7ミリはノートの筆記用で、ほんのわずかですが書いた文字に主張が生まれるんです。
0.7ミリはBですね。ノートに滑らかに書きたいんです。
0.5の場合はHだとちょっと薄くなってしまうので、HとHBの間「HBハード」。ちょっとHBよりの硬めのものを使っています。ぺんてるのシャープ芯です。
シャーペンの芯は、試験管の小さいやつを東急ハンズの理化学機器コーナーで買ってラベルを付けて入れています。
手帳を書くときはキャップの後ろの消しゴムを使うので、専用の替えの消しゴムも常備しています。専用品じゃないと入らなくて、3個入りで500円+税という価格(笑)。
短いね。一般的な消しゴム程消し味はよくないけれども、とりあえず消すという目的は達成できる(笑)。
さっきの跡を残すという意味でも、ちょうど具合がいいくらいですかね。
すごく納得。土橋さんの合理性は別格だね。
万年筆を選んでいるのも、ただただ機能的だからという付き合い方なので、ペンも機能性で選んでいますね。
ちなみにこちらは、いつ何時でもメモしたいときにメモできるという、土橋さんが商品企画をディレクションした鉛筆付きミニ手帳 「すぐログ」(ダイゴー)。
0.9ミリ、1.3ミリ、さらには4ミリ。芯が太くなればなるほどリラックスして書ける。
ぺんてるのタフ0.9ミリと0.5ミリ。グラフ1000(フォープロ)の0.9ミリ。マークシートシャープの1.3ミリB。あとパイロットのクロッキー4ミリ2B。
タフは後ろに消しゴムが付いてる。絵を描く時にこの消しゴムも使うんですよ僕。
私が持っているものに付いてる消しゴムよりも、本格的なちゃんとした消しゴムだ。消し味がいい!(笑)
あと原稿を書く前の調べ物をレポート用紙にバーッと書いちゃうんですよ。作業はスピードがいるから、0.9ミリが使いやすい。
倉野さん愛用のパイロット、クロッキー4ミリ2B。
太くなればなるほど、僕は緊張しないんですよ。僕はとにかく書くことに緊張しちゃうから、それを緩和してくれるのって0.9ミリとか1.3ミリ。
下手すると、このクロッキーを使うことも。基本、自分はぺんてるが好きみたい。
万年筆と鉛筆はこすって書く。ボールペンは転がして書く。
ちなみに万年筆と鉛筆、シャープペンって私の中での共通項は、こすって書くという点。そして、ボールペンは転がして書く。
ボールペンは、ときどき転がらなくてどうしようもないやつがあるよね。もっと転がせよっていうのがある(笑)。
カランダッシュの849シリーズ。飯野さんはペンシルとボールペンをセットで使用。
でもやっぱりボールペンの「転がる」だったら、断トツでカランダッシュですよ。
エクリドールも849も、どちらも使いやすい。
ちなみに後者で芯が2ミリと太めのフィックスペンシルは、最近シャーペンよりも出番が多くなってきています。
飯野さんが最近よく使っているという、カランダッシュのエクリドールのボールペン。今や貴重な純銀軸で、模様は未だにファンの多いベネシアン。
僕はこのぺんてるのタフシリーズが一番楽かも。やっぱり高級感がないから気兼ねなく使えて楽なのかな。
ぺんてるって細かなところが使いやすくて、ノック部分の色を変えていて0.9ミリと0.5ミリでペン立てに入っていても区別がつくんですよね。
デザインを使いやすいように合わせているんだよね。いつかぺんてるのデザイナーさんにも取材してみたいな。
万年筆は紙との相性で書き味が大きく変わる!
お気に入りの紙や、筆記具と相性のいい紙についてお聞きしたいです。
そうですね。オリジナルの敷居って最近本当に下がってきていて、手軽に作れる時代になってきました。
書く仕事をしていて使うペンはいろいろ使い分けているけれど、紙は既成のものだけを使っていて果たしていいのかと。紙もあつらえようと思って、特注しました。
「きれいに書かなくていい」と思えるような原稿用紙にしようと思った時に、ゆるゆると途切れているような線だと、汚い字で書いたって殴り書きしたって全然いいんだよって受け止めてくれる気がしたんですね。
原稿用紙のクリームにグレーの罫線というのは、今までの文豪からのオーダーによってできた完成形なのだそうです。書いたものがしっかりと目立つところもいい。
クリームの紙にブルーのインクだと、確かにちゃんと識別ができますもんね。
一発で決まりましたね。
満寿屋さんの担当者さんが私の人となりも把握してくれているので、「ゆるゆるでお願いします」という意図がすごく伝わって(笑)。
最近、一筆箋も作りました。請求書を送る際などに使います。
紙は
竹尾のアラベールという紙なんですが、筆記性もなかなかよくて書きやすいんです。スノーホワイトという色でとにかく紙の白色度が高い。ブルーのインクで書くととても映えます。
紙はやっぱりお気に入りの万年筆をさらにもう一つよくしてくれる要素だと思います。特に万年筆は紙で書き味が結構大きく変わるので。
原稿用紙はスピードライティングをしてもインクがさっと乾いて2行目に行けるように、すごく染み込みがいい。その分にじみが少なくて筆跡はちょっと細めに出る。
この一筆箋は万年筆の筆跡の太さがそのまま出るという違いがあります。どっちがいいか悪いかじゃなくて。
そうそう、自分のホームグラウンドを決めようと思って、紙といつも書くノートも決めています。
ノートは
月光荘のスケッチブック、2Fうす点です。ここ数年はこればかり使っています。ちなみにこの「118」の数字は通算118冊目という意味で、自分でレタリングしたシールを貼りました。
通算118冊目を意味するシールも土橋さんが自作して貼ったもの。
ぼくはお気に入りにたどり着くまでが長い道のりだったんです。
結果的にたどり着いたのがニーモシネの180。選んだ理由は、やっぱりペンが走りやすいから。
飯野さんお気に入りのノートと、万年筆が使えない環境で出番となるパーカーのボールペン「ジョッター」(左)とカランダッシュのエクリドール スターリングシルバー ベネシアン(右)。因みにこのパーカーは1970年代製。つまり小学生の頃からずっと使っているもの。
紙質がいいですよね。これとジェットストリームの組み合わせが私は好きですね紙もペンも滑らか。
あとニーモシネはやっぱりこのデザインがノートとして主張してないところがいい。
逆に自分が苦手なのが、紙質はとても素晴らしくて、評価が高いんだけど、例えば製品名や「ノートブック」とかって文字が、デカデカと表紙に入っているもの(笑)。その点でもニーモシネは心地良かったので。
私、いまだに革の重たくて分厚いカバンを使う人なので。そこから出てくるものがファンシーすぎたりするものだったりすると、なんとなくバランスが悪くなってしまうと感じているのかもしれないです。
僕は、二人ほどこだわりが強くないですよ(笑)。前はツバメノートを使っていたりしたけれども、白地ってすごく目が疲れちゃうから、結局紙質云々よりも、色で無印良品を選びました。どこでも手に入って、目に優しい。紙質はむしろ悪いほうが書くとき緊張しないですね。
汚い字も好きになれる。万年筆が生み出す味ある筆跡。
こだわりの万年筆やボールペンなど、筆記具を使うことの面白さはどこにあると思いますか。
私の場合は、原稿を書くことがメインなので、思考のスピードに付いてきてもらえる筆記具としての実用性を重視しています。逆に、ゆったりとスローライティングで手紙を書く時も使いますけどね。
もともと自分の汚い字にすごくコンプレックスがあったんですがその汚い字が好きになれたっていうのは、万年筆を使って経験したことです。万年筆の独特の筆跡に「あ、何か味があるな」っていう、いい面が出てきたのを感じましたね。端から見て字がきれいだと思う人でも、多くの人が自分の字にコンプレックスをもっていますよね。万年筆にはそういう面もあるので、積極的に使ってほしいですね。
原稿をPCで書く人が多いなかで、土橋さんは原稿を「書く」ということですが、原稿も全て手書きにするというこだわりなんでしょうか?
頭の中に浮かんだものを、いち早く自分から引き離す。その間にあるツールは、パソコンとかペンとか音声入力とかいろいろあるけれども、よどみなさは、私の場合はペンです。
キーボードは漢字変換という作業があります。英語だったらダイレクトに打って変換をしないじゃないですか。でも、日本語だと変換キーを押す。そこはタイムラグを感じるんです。
つまずきってありますよね。私は多分、土橋さんの前の段階。特にBを使うのは、草稿の前の段階で、今、自分は何を考えているかというのを、とにかく殴り書きしていくという時です。
土橋さんと一緒ですが、やっぱり自分の考え、頭の中で考えていることを「文字という表現」にダイレクトアクセスさせてくれるありがたい道具というか、そんな気がします。さらに言うと、例えば軸のデザインだとか、インクとかで、個性が表現できる。そういうところが文字も含めて面白い筆記具なんじゃないかなって思います。
シャーペンに関して言えば、完全な「道具」です。でもそこが僕にとってはリラックスできる範囲で、0.9ミリ、1.3ミリ、あと0.5ミリ。それを使い分ける喜びというのはすごくあります。
絵を描いたりとか、一番好きなことはポエムを書くことなんだけど、やっぱりシャーペンなの。一番リラックスできる。失敗しても消せるっていうも、安心感がある。
取材の時はボールペン。スピードでバーッと書けるし。万年筆はまだ「特別なもの」というのがあって、僕にとって、日常の書くイコール万年筆ではないんですよね。デザインであったり自分の生き方とか理想とするものを具現化する形をずっと探しているだけなんですよ。
自分の理想の形を探しているということで、完全な理想はまだ見つかっていないということ??
これとか理想かもしれない。飯野くんの苦手な白ですけど(笑)。
ウォーターマンのエレガンス。水性のローラーボールペンでしょ。
デザインしたベアトリス・フォンタナがミラノの人で、フェンディのデザインをやっていた人なんです。元々デザインのベースとなっているのは古い時代のウォーターマンの「ウォータミナ」。そこにアイボリーとゴールドって、組み合わせがもう信じられないじゃないですか(笑)。こういう筆記具を作っちゃうところがウォーターマンっぽくて、こういう生き方をしたいなっていうのはあるんですよ。
簡単に言うとラグジュアリー(笑)。ラグジュアリーな抜け感というか。そういうのに憧れる。美意識はそこ。でも、現実はこっち(タフのシャープペン)っていう。だからレタロンにしてもそうなんだけどそこをずっと追い求めているところがあって、自分の精神性を具現化しているもんね。
私にとっての「自分の美ってこれだ」という一本はこれですね(中屋万年筆のシガーモデル、#3776センチュリー)。禅みたいな(笑)。
土橋さんが禅と表現する一本、中屋万年筆のシガーモデル、#3776センチュリー(写真奥)
土橋さんと僕。筆記具も並べてみると全然違う人だな。あらためて。
そこで考えると、私のセレクトって「普通」でしょ?(笑)
文房具を一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
さまざまな職業の「文具上手」12人に、普段の文具術を徹底インタビュー
文具上手
プロダクトデザイナー、経理のプロフェッショナル、医師、商社マン、新聞記者、TVプロデューサー、グラフィックデザイナーなど、さまざまな職業の「文具上手」12人に、普段の文具術を徹底インタビュー。明日からあなたの仕事にも役立つヒントが盛りだくさん。 十人十色の文具術。
仕事の創造性を高めパフォーマンスをアップさせる全235アイテムをビジネスシーンごとに紹介
仕事文具
仕事の創造性を高め、あなたのパフォーマンスをアップさせる!
ロングセラーから最新の文具まで。ビジネスシーンで実際に使われることを切り口に、数多くのカラー写真とともに、あまり知られていないツールや、ひと味違った使い方などを紹介。取り上げるのは全235アイテム。アイディア発想やプレゼン、スケジュールや名刺の管理など、それぞれの仕事のシーンごとに厳選したアイテムの蘊蓄から具体的な使い方までを詳しく説明します。