【対談】北原照久、吉川照美の二人が語る、テディベアの魅力とは?

取材日: 2016年3月15日

文 / 井本 貴明
写真 / 松本 理加

【対談】北原照久、吉川照美の二人が語る、テディベアの魅力とは?_image

「テディベアの魅力を北原さんと語りたい。」
テディベア作家として有名な吉川照美さんが対談相手に指名したのは、ブリキや雑貨、おもちゃなどのコレクターとして有名な北原照久さん。19歳の時に初めてヨーロッパでテディベアと出会い、現在では、数多くのテディベアをコレクション。
北原さん、吉川さんのお二人に、テディベアの魅力から、コレクションする楽しさまで、幅広く語ってもらった。

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本日はテディベア対談、よろしくお願いします。
テディベアのコレクターでもある北原照久さんは、みなさんがご存じだと思うので、紹介は割愛させて頂きますね。
吉川照美さんは、テディベア・アーティストで1988年からテディベアをオリジナルで作られています。そして、自分で作っているだけではなくて、気になるテディベアをコレクションして集められています。
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最初の質問なのですが、現在、お二人はテディベアを全部で何体ぐらいお持ちですか?
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実はですね、よく言うんですけど、コレクションの数が数えられるうちは初心者。数が数え切れなくなったら中級者。もう数が分からないみたいな感じだと上級者。
僕は、色々なテディベアがあって。例えば、こういう昔のシュタイフのものだとか、(テディベア)作家が作るテディベアとか。
もう種類がものすごいあるんですよ。それを言ったら数は分からないですね。だから、上級者っていうのが事実(笑)。
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吉川さんも、数えられないぐらいのテディベアを持っているのですか?
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とんでもない。私は500体あるかな。
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すごい数ですね。
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まあ、それは自分の作品も入れてなので。
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お二人はテディベアを集められているわけですが、初めてテディベアと出会ったのは、いつごろで、どういうシチュエーションだったのですか?
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初めては、僕が19歳の時にスキーの勉強でオーストリアのインスブルックに行ったとき。冬季オリンピックを2回やった場所なんです。ヨーロッパだと、アンティークショップとか、けっこうあるじゃないですか。そういうお店に、こういうテディベアみたいなのが置いてあって、「なんか、癒やされるな」って。
僕は、コレクションを集め始めたのが20歳の時からなので、19歳の時はそういうものを見て、刺激を受けていた。ヨーロッパの人は古いものを大切にしたり、暮らしを楽しんでいるんですよね。
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暮らしを楽しんでる?
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そう。好きなものに囲まれて、古いものを上手に使いながら。そうすると、それを作った人だとか、その時代の流れの中で、物と人との関係がすごくいいなって感じたんですね。
それで、僕は20歳で日本に帰ってきてからコレクションを始めたんです。
最初にテディベアを見たのは19歳の時。ヨーロッパのアンティークショップでテディベアがちょこんと置いてあって、「あ、かわいい」と思ったのがきっかけ。それは集めるきっかけではなくて、見て興味を持ったきっかけですね。
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その後、日本に戻られて、実際にテディベアを集め始めたのは何年ぐらいになるのですか?
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そうだね。20歳から物を集めはじめて、最初は時計、ラジオ、それから映画のポスターだとか広告のポスターだとか。とにかく自分の部屋を自分の好きなもので飾りたいと…。どのテディベアを一番最初に買ったんだろう?
当時、銀座に「シェルマン」というお店があって。ちょうどマガジンハウスの目の前ですね。そこで小さなテディベアを買ったのが最初と言えば最初の頃ですね。
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なるほど。
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あと「クロア」っていうお店があったね。そこにボロボロのテディベアがあって…日本製なんだけど、それが外国に行って、外国から日本にまた誰かが買ってきて、それが今お店に置いてあるっていう。ボロボロで擦り切れてるような物なんだけど、なんか愛おしく感じられた。
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それから徐々に集めていった感じですか?
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僕は、熱しやすく冷めにくいという、とても「いい性格」なんですよ。
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あはは(笑)。
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本当に驚くべきことで、全然テンションが下がらないんです。コレクターって、(テンションが)ドワァ~ッて行って、ストーンと落ちて、またグワァ~ッてなる人がいる。こういう波があるのが普通なんです。でも、僕は20歳の時から45度の角度でずーっと上がっている。いま69歳なので、49年間集めっぱなしです。
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テンションがそのまま?
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テンションが下がってない。だからいい物を見ると、やっぱり、ときめきは変わらないですね。いい物って、自分の琴線(きんせん)に触れたものなんですよ。
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琴線?
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琴線って、「琴」の「線」って書くんだけど。もう良いか悪いかっていう基準は、僕の場合は琴線に触れるか触れないかという問題であって、たとえそれが古い物でも新しい物でも、なんかこう、かわいいなって思う物があるわけですよ。これ、いいなって。これ部屋に置きたいなって思う物が、僕の琴線に触れた物。
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なるほど。
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だから、例えば、この部屋にも色んなものを置いてあるんですけど、全て、僕の琴線に触れた物です。それは「どういう基準で集めたのですか?」って本当によく聞かれるんだけど、基準は自分の琴線です。
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北原さんのオフィスには、おもちゃから、現代作家のリアルな作品まで、琴線に触れたコレクションで埋め尽くされている

1体のテディベアとの出会いは、その後の人生を大きく変える出会いだった。

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吉川さんの場合は、最初にテディベアと出会ったきっかけは何ですか?
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私は元々輸入雑貨のお店を自分で開きたくて。当時は新潟にいたのですが、上越にそういうお店がなかったので、じゃあ、自分で始めようと思って。その仕入れ先を探すために代官山のお店や、その当時有名なお店をぶらっと見て回ったんですよ。その時に、この子と出会っちゃったんですよ。
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その子とは?
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この子はイギリス製なんですけど、どこのメーカーか、ちょっと分からないんですよ。織りネームとかも付いてない。だけど、くたっとした顔のこの子になぜか一目惚れしちゃって、手に入れたんです。8万円だったんですよ。
写真中央の大きなテディベアが、吉川さんが運命的に出会ったテディベア

写真中央の大きなテディベアが、吉川さんが運命的に出会ったテディベア

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カドリーブラウン
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カドリーブラウンではないですね。
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でも、いいデザインだね。
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本当にボロボロで、汚いのに8万円するの?って、正直思ったんですよ。テディベアのことをまだ知らなかったの。だけど、いろんなかわいい雑貨がガーッと並んでるところに、これがポツンといたんですよ。で、これはなんですか?って聞いたら、テディベアであることを初めて聞いて、それでこの子を買ってきた。そして、この子を見てるうちに、自分でも作れるんじゃないかな?と思っちゃって。それでテディベアを作り出したのがきっかけなんですよ。
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いいねえ。いい話だね。
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そうなんです。それが1988年の話だから、もう来年で私も作家生活30年。
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30年?
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はい。それこそ、北原さんの話ではないけど、私もテディベアの熱は下がらず、テンションそのままでずっと今に至るんです。自分の今のこの仕事っていうのは、自分の中で天職と思っています。だから、死ぬまで生涯、目が見えて手が動く限り、ずっと作り続けていきたい。このテディベアに出会ったことによって、私の人生が変わったというか。
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出会いだね。
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そうですね。人生、出会いですね。
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人生はね、人とか物とか一冊の本とか、すべてが出会いなんですよ。何かと出会ったことによって、自分の感性だとか、どこかに刺激を受けて、何かを始める。やっぱり出会いだよね。はっきり言って、そのテディベアは、(一般的な)テディベアみたいな顔をしてないんだけど。でも、なんか惹かれる要素があるんですよ。
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そうなんですよ。この子に惹かれたんですね。
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琴線がね。
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はい、そうでした。
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またね、ぽつんと置いてあるのがなんかね。
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そうそう(笑)なんかね。
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私を連れてってみたいな。
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そうそう! それです。同じです。まさしく私もそうでした。「連れていって」って聞こえたんですよ。本当に。
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アンティークショップや骨董市だとか、いろんな朝市があるじゃない? 古い物を手に入れようと思ったら、やっぱりそういうところに行かないと。あと海外のトイショーなんて行ったら、もう桁違いの大きさなんですよ。もうテーブルだけで1000点ぐらいありますから。でも、それが慣れてくると…って、変な言い方なんだけど、熟練すると本当に走るように行って、ポン、ポン、ポンッて手に入れられるんですよ。
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その子たちがきっと北原さんを呼んでるんじゃないですかね。
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そう。一緒に行った人から「なに買ったの?」って聞かれて、買ったものを見せると「ええ? そんなのどこにあった?」っていうような物があるんだよね。
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探しに行くというよりは、向こうが待ってくれてる?
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出会いだね。
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出会い。私もそう思いますね。

やっぱり”物”には物語があるので、そういう物語を表現していくってすごく良いことだと思う。

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さきほど北原さんは、琴線が触れたテディベアを集めるという話をされましたが、テディベアの全部を集められてるわけではないと思うんです。
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もちろんそう。だってテディベアを全部集めたら、もうどれだけあるかわからないね。
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そうですよね。北原さんの中で、どういうテディベアに、自分の琴線が触れやすいみたいな傾向はありますか?
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僕の場合だったら、シュタイフ。シュタイフ社の創始者で、マルガリータ・シュタイフの「子どもにこそ、いい物を与えるべきだ」というコンセプトがいい。小さいときから価値のある物を連れて持っていれば、物のよさっていうものが身につくと。そういう方が本当に良い物を作って、それが残っていく。

例えば、「テディーガール」っていう1700万円ぐらいで落札されたテディベア。英国のボブ・ヘンダーソン大佐が子どもの時、お兄さんからもらった物だとか。それをずっと子どもの時は大切にしていた。いつも部屋に置いてあり、癒やされたと。そして、彼はノルマンディー上陸作戦にも、なぜかテディーガールを持っていったんですよね。
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そうですよね。
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戦争って恐怖がありますから、そういう中で、自分の部屋にある何かを持って行きたかったんじゃない?
そして、それが本当に癒やされたと。ヘンダーソンは軍人を退役した後、自分がこんなに癒やされたのだからと、心の病がある人やたくさんの人にテディベアで癒やされてほしいということで、テディベアを普及させたり、そういう方たちに配った。そのストーリーがいいよね。
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そうですね。
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背景もあって、時代背景もある。それで1700万ぐらいの値段で取引されたわけですよね。
テディベアって、手に触れるものなんですよ。例えば、コレクションの中には、あまり手に触れないものってたくさんあるわけですよ。でも、テディベアは本当に手に触れるから。そういうことでは、ある面、人の「ぬくもり」だとかを感じられる。
それから、このテディベアって昔に作られて、そこから今までの間に何人かの手を経て、今ここにあるわけです。そういう時代の、そのテディベアが経てきた時間軸っていうのを考えた時に、「ああ、この時代に残って偉いね」って思う。だって、1905年ですからね。1905年って言ったら、僕が生まれる前です。そこから、今では僕の膝の上にいますから。それを考えたときに、なんか愛おしいじゃないですか。
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今日、ここに並んであるテディベアは、とても貴重なものだと思うのです。僕からすると貴重なものだから手で触っちゃいけないっていう感覚があるのですが、お二人は手で触って楽しんでますよね。
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テディベアは元々触るものだから。
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そうそう。
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ねえ。
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そうです。物に触れないほうがいい物と、物に手で触れたほうがいい物がある。よく鑑定団で、白い手袋だとかあるじゃないですか。でも、何でもかんでも白い手袋をして触るものでもないんですよ。例えば、漆器などは白い手袋したほうがいいけれど、例えば陶器だとかこういうものは、「手の感触」が必要なんですよ。
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なるほど。
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手の感触。だから、何でもかんでも手袋をして触るものではないんですよ。
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手袋する=大事に扱う、と言うことではないのですね。
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そうですよね。物って触った時に、なんか感じるものがあるから。
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テディベアは、本当にぬくもりっていうか。
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ぬくもりだよね。
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毛のモヘアの質感とか、やっぱりみんな違うじゃないですか。だから、やっぱり触ってみて、なでてみて。テディベアは、元々はハグする物ですからね。欧米では赤ちゃんが誕生したときに、テディベアを必ずベッドサイドに置いて。
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僕もね、子どもが生まれたって聞くと、テディベアをプレゼントするのが多いです。
そこにね、その子が生まれた年をサインして。それで、その子がいくつになっても持っててくれたらいうれしいなとか、癒やされたらうれしいなと。
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贈られたらうれしい。
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吉川さん、先ほどの質問に戻ってしまうのですが、数多くのテディベアを集められてると思うのですが、その中でも集める集めないっていう、基準があるのですか?
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私もやっぱり北原さんと一緒で、自分がその時「ビビッ」とくるかどうか。その時その時に、自分と気が合うというか、呼ばれるというか…。そういうテディベアを集めてます。
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そうだね。
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次の質問は少し難しいと思うのですが、数多くの愛着があるテディベアの中から、あえて数点、お気に入りのものを選ぶとしたら、どういうものがあるのか知りたいです。
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私はもうこれです。
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それは?
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名前が「しんのすけ」というテディベアです。これは1993年に自分で作ったテディベアなんです。お客様からのオーダーで作ったのですが、顔ができた時点で、誰ににもあげたくないって初めて思ったんですよ。
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ほお。
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そして、この子をお客様に差し上げないで、自分でもう一つ別の作った子をお見せして。そしたら、それをお客様が気に入ってくださったからいいんですけど…。私は、なぜか知らないけど、この子に運命と夢を感じてしまって。そしたら、あれよあれよと、なぜかテレビや映画に出たり、海外の記念切手に使われたり。
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素晴らしいな。
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それから、本も出ました。ネックレスのペンダントヘッドに使われたりとか、タレントベアみたいな感じになっちゃって(笑)。
それからは、しんのすけが私の定番の子って感じで、「ROSE BEAR(ローズベア)」=「しんのすけ」みたいな。
写真右下が、作家・吉川さんの代表作である「しんのすけ」

写真右下が、作家・吉川さんの代表作である「しんのすけ」

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「しんのすけ」って名前はどこから来たの?
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まだ公に言ってないんですけど、実はピーター(池畑慎之介)さんからとったんです。
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俺、すごい仲良し。
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え?
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めちゃくちゃ仲良しですよ。
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私、ピーターさんのすごいファンだったんです。この子にワンピースとか着せると女の子に見えて、普通にしてると男の子に見える。だから私は、「ピーター・しんのすけ」って、自分の中だけで呼んでました。
本当は、テディベアって男・女ってないじゃないですか。だけど、お客様から「性別をはっきりして」って言われたんですよ(笑)。
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性別をはっきりする必要はあるんですか?(笑)
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私もよく分からないけど…。でも、名前は「しんのすけ」にしようと。
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ああ、そこからきてるんだ。
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そうそう。
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「しんのすけ」って、池畑慎之介、ピーターからなんだ。俺すごい仲良しで、葉山に住んでるし、一緒にゴルフ行ったりしてるんで。「しんのすけ」って、あんまりそうはいないじゃない? だから、どこから来たのかなって(気になっていた)。
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そうなんですよ。だけど、本当だったら事前に伺うべきですよね。
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言っとくよ、あいつに。
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本当に?くれぐれもよろしくお伝えください。(笑)
その後、この「しんのすけ」が奥さんを迎えたんですよ。で、赤ちゃんも生まれて。それで「しんのすけ物語」って言うファミリーが出てくるんですよ。
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そのストーリーはいいよね。やっぱり物には物語があるので、そういう物語を表現していくってすごくいいことだと思う。
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僕らは、メディアとして伝える立場にいますが、その物が持っている「物語」を伝えて、もっと物の魅力というのを多面的に表現できたらと思っています。
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そうだね。

コレクションを集めることは、物が増えるだけではなく、自分の世界が広がること。

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北原さんは、お気に入りのテディベアをあえて挙げるとしたら?
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あえて挙げるとしたら…。よく言うんだけど、僕は本当に数え切れないぐらいいろんなものをもっているじゃない?
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はい。
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その中で、よくベスト10を選んでくれだとか、ベスト3選んでくれと言われるんだけど難しい。
例えば、子どもが3人いたとします。「どの子が一番かわいいんだ?」って言うのって、難しいよね。ある時は長男で、ある時は末っ子であり、ある時は次男がかわいいとかさ。それと同じで、物に順列を付けるのは難しい。
「一番最初に手に入れた物」という質問なら答えられるんですよ。例えば、「僕がブリキのおもちゃで一番最初に手に入れたのは、90円で買ったブリキの消防自動車。場所は門前仲町ですよ」というようにね。もしくは、コレクション集めのきっかけとなったのは?だったら、「拾った柱時計かな〜」とかね。
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柱時計の話、お聞きしたいです。
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19歳の時にヨーロッパで、古い物を大事にする暮らしを目の当たりにしたんです。そして、日本に帰ってきた時に、柱時計が捨ててあったんですよ。八角形の振り子時計、ぼんぼん時計って言うんだけど。粗大ゴミで。
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路上に捨ててあった?
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路上というか、粗大ゴミ置き場。今はないけど、昔は月に一回不要になったトランクだとか、ちょっと大きい物を捨てる日があった。そこに柱時計が捨ててあって。ヨーロッパだったら、こんな物は絶対に捨てないと思うほど、けっこうきれいな時計だった。雰囲気があるんですよ。それを拾ってきて、最初は動かなかったんだけど、油差したら動き出したの。それで、時間が来るとボーンって。2時になるとボーンボーンってね。自分で物に命を吹き込んだような気持ちになって、すごくうれしかった。だから、もしも「コレクションの中からお気に入りを1個選ぶ」って言ったら、その柱時計か消防自動車かな。それは一つの「きっかけ」だから。
ただし、自分のテディベアの中でベスト3とか選んだら、(選ばれなかったテディベアが)やきもちを焼くんじゃないかな(笑)。
あと、コレクションは物が集まるだけじゃなくて、そこで出会いがある。
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出会い? さきほどは「物との出会い」の話をされていましたよね。
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物との出会いだけでなく、人との出会いも。今まで経験しなかったような出会い。例えば、(吉川さんが作ったテディベアが)海外の切手のデザインで使われたりっていうのは、普通だとあり得ないじゃないですか。そういうことって、やっぱりコレクションの醍醐味であり、楽しみなんじゃないかなって。
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なるほど。新たに人と出会って、新たな機会にも出会うということですよね。
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そう。だから物が集まるだけじゃなくて、世界が広がる。この部屋に(僕のコレクションを観に)デミ・ムーアが来てるし、映画「トイ・ストーリー」のジョン・ラセター監督も来てるし。
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ジョン・ラセター監督が来たんですか?
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うん。ジョン・ラセターは何回か来てるね。でも、僕がコレクションをしてなかったら、デミ・ムーアとの出会い、ポール・マッカートニーと食事、ミック・ジャガーと食事、なんてあり得ない。J.D・サウザーだとか、それこそジョン・ラセター監督。あんな人たちに会う機会はなかった。でも、コレクションしてたおかげで、そういう方たちと食事が出来たり、うちへ来てくれたり。世界が本当に広がる。これは、皆さん知ってる名前を言っただけであって、(それ以外にも)たくさんの人と出会いがある。
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なるほど。コレクションを通じていろいろな出会いがあるというのは、すごい醍醐味ですよね。
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すごい醍醐味ですよ。
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そうですよね。まさに今日の私がそうです。テディベアを作ってたり、集めてなければ、こういう対談のお話もなかったし、今日こうやって北原さんに貴重なものを見せていただくこともなかった。ありがとうございます。
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いえいえ。とんでもないです。

吉川さんから北原さんへの、素敵なプレゼントとは?

吉川さんが作成した「北原照久・テディベア」。洋服の細かい部分まで、忠実に再現されている

吉川さんが作成した「北原照久・テディベア」。洋服の細かい部分まで、忠実に再現されている

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今日、北原さんの膨大なコレクションの中に、新たにコレクションが加わったんですよね? 吉川さんがプレゼントしたテディベア。
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そうなんですよ。もう感動して、うれしいよ。このブレザーにストライプのシャツって、僕がよく着てるんですよ。
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私が持っている、北原さんのイメージはこういうスタイル。
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ありがとうございます。
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でね、お顔の中で、眉毛がとっても特徴的なの。
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そうですよね。普通のテディベアって、眉毛ないですもんね(笑)。
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そうだね(笑)。
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私は、実在する人物をテディベアで表現するということもよくやってるので。
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あ、そうなんだ。
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過去には、雅子様・愛子様をはじめ、スポーツ選手や著名人の方達をお作りさせていただきました。
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そうですか。ありがとうございます。本当にうれしいです。とてもトラディショナルなテディベアですね。
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では、そのテディベアと一緒に写真を撮りましょう!

北原さんがコレクションを続けられる秘訣である、「100の苦しみ」と「101の喜び」とは?

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普段の生活の中で、テディベアとどのような感じで過ごされてるのですか?
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「テディベアと会話をする」ことはないけれど、インテリアとして自宅にいくつかテディベアが置いてあります。寝室には、それこそ「Tiny Bear(タイニーベア)」だとか「創作ベア」が。それだけで何百という数だよ。それは女房が大好きで。
夫婦でいろんなものをコレクションしてるわけじゃないんだけど、女房は漆器だとか、そういう使える物が好きなんだ。そして、「タイニーベア」という手のひらに乗る大きさのテディベアが大好きで。古い物は1920年代、30年代のもの。
それから、作家が作ったのもコレクションしていて。それは寝室のケースにびっちり入っていて、眺めると癒されるよね。暮らしの中に、それがあることによって癒やされることがある。
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それで言うと、本当に部屋のあちこちにあって、それをただ眺めてるだけで癒やされます。
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和むんだよ。テディベアのいる生活、テディベアのいる暮らしがね。例えば、うちは、わんちゃんもねこちゃんも大好きなんだけど、犬がいることによって癒やされたり、和むじゃないですか。
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はい。
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犬と一緒の時は物を投げたりして遊ぶよね。でも、テディベア一緒に遊んだりできない。それでも、いるだけで存在感があるし、部屋の中に置かれていれば、生活のなかで気持ちが和むってあるじゃないですか。
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ありますね。
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だから、今はソファーにこうやってテディベアを並べて置いてあるんだけど、本当に、落ち着くんです。
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そうですね。
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ずっと、(ソファーの上で)こうしといてあげようかな。
うちはミュージアムやってたり、あといろんなイベントをいつもやってるんで、そういうときに、テディベア・コレクションを提供しています。もちろん外に出てるテディベアもたくさんあるんだけど、倉庫にしまわれている物も、まだまだたくさんある。いつかそれを表に出したいな。(表に出すと、テディベアが)喜ぶのがわかるんだよね。
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みんな笑ってますもんね。
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笑ってるでしょ。うれしそうでしょ。
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表情ありますよね。
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表に出したらね、うれしそうな表情するんだよね、不思議。
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それは、私もわかります。
二人の会話を聞いて、嬉しそうな表情をしているテディベアたち

二人の会話を聞いて、嬉しそうな表情をしているテディベアたち

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この先、いつか手に入れたいテディベアは、あるのですか?
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あるけど…。高くて手が届かないです。
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いい物、年代の物とか、そういうものは、何十万とか100万単位でするわけだから、おいそれと買える物ではないじゃないですか。でも、出会って、そこに何かを感じたら、それを手に入れるために、いつも果敢にアタックはしてる。僕の人生はいつもそれだもんね(笑)。出会って、それを手に入れるというプロセスにも「ときめき」があるわけだし。
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はい。
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本当に思うのだけど、コレクションをしていて、100の苦しみがあるんですよ。
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100の苦しみ?
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100の苦しみ。そして101の喜びがあるのです。
それを手に入れるためには、まず、お金が要るんですよ。そして、保管場所も要る。でも、それを手に入れたとき、苦しみを紙一重で上回る喜びがある。だから100の苦しみで101の喜び。
(101の喜びがあるから)だから、ずーっと続けられるわけだし。まして、うちはミュージアムという、それを見せて仕事になってる。好きなことが仕事になってるわけですから、本当に幸せ。いつも言ってるのは、僕は物を本当に大事にするし、物へ恩返しをする。
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物へ恩返し?
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僕が集めたいろいろな物たちって、こんなに私たちを大切にしてくれる。「何か恩返ししなきゃ悪いよね」って、みんなで話し合ってさ。ミュージアムを作るのが、僕にとっては夢でした。(自分のコレクションでミュージアムを作るのは)周りから無理だって言われていた。でも、ミュージアムが実際にできて、1軒、2軒、3軒、4軒って増えた。さらに、海外でも、サンフランシスコ、ロス、ニューヨーク、フロリダのディズニーワールドで6年間ミュージアムができた。
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ディズニーワールド?
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6年間やりました。ディズニーワールド内の「エプコットセンター」で。しかも、タイトルを付けてくれたのがジョン・ラセター監督で、「Tin Toy Stories Made in Japan Kitahara collection」というね。当初は3年契約だったのに、(人気があって)それを6年間やった。そして香港でも。今は、中国の深センでもコレクションを展示している。
だからそうやって日本だけじゃなくて、海外でも展示会ができる。それはね、物たちが「自分をこれだけ大事にしてくれる。だから、喜ぶことを僕たちやろうね」みたいな(笑)
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そういう声が聞こえてきそう。
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頑張りまーすってさ(笑)。それで、たくさんの人にコレクションを観てもらう。フロリダのディズニーワールドなんて(入場者が)800万人とかだからね。
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年間に?
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エプコットセンターは、みんな一度は立ち寄る場所だから、年間800万人は見てなくても、少なくともそれの10%、20%の人たちが僕のコレクションを見てくれてるわけじゃないですか。何十万人という人たちがね。それって、最高だよね。
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そうですね。
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「うわあ、懐かしい」とか、「うわあ、よく集めたね」とか、「これ持ってた」とか、「これ欲しい」とか、そうやってたくさんの人がコレクションを見て言ってくれるなんて、本当に幸せだよね。コレクター冥利に尽きるというか。
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コレクションの展示という観点では、吉川さんが製作したテディベアが、各地の美術館や博物館などで展示される機会が多いですよね。吉川さんはテディベアを作る時に、どういう点にこだわりながらテディベアを作ってるのですか?
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やっぱり孫子の代までじゃないけど、本当に末永く大事にしていただきたい。そのためにも、作る時には一体一体に愛情込めて作る。だから、縫製にしてもそうだし、気持ちを込めていつも作ってます。
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自分が作った物を大事にしてくれて、その自分の作った物で誰かが癒やされたりする。そうやって想像するだけでも楽しいよね。
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はい。実際にお便りいただいたりとかも。そうすると、また私も頑張ろうって気持ちになる。
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(テディベアの誕生は)ルーズベルト大統領が狩りに行って、その地元の人たちが、やっぱり大統領が来たからなんか獲物がなきゃいけないって言って、小熊を逃がした。でもルーズベルトは、「私はそんなことまでして狩りはしたくない」と言って、その小熊を逃がした。
それが、「ルーズベルトは優しいよね」ということになり、彼の愛称が*テディだから、それでテディベアという。そのストーリーからしていいよね。

*アメリカではセオドア・ルーズベルト大統領のファーストネームである「セオドア」を、「テディ」または「テッド」と呼ぶ風習がある。

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はい。
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やっぱり「優しさ」って大事なんですよ。
ちょっとコレクションとは違うんだけど、僕ね、司馬遼太郎の言葉が好きなの。あれだけ歴史小説をお書きになった最後に、残したい三つの言葉というのがあって。これさえみんなが感じてくれたら、争いがない、いじめもない、戦争のない世の中になっていく。その三つの言葉っていうのは、「優しさ」「思いやり」「人の痛みを知る」という三つなんですよ。そういう言葉って、本当に大事なこと。テディベアって、名前の由来のストーリーからして、優しいじゃないですか。
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そうですよね。
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(子熊を)逃がしてあげるとかね。だから、そういうところからして、テディベアの癒やされるっていう要素は、もう(テディベアという)名前がついた時から、あるんじゃないかなって。
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お二人にとって、テディベアの魅力とは?

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最後の質問になってしまうのですが、お二人にとってテディベアの魅力とは何だと思いますか?
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テディベアって、物語を考えることができる。想像ができる。このテディベアがどこで生まれて、どこで誰に遊ばれて、そして今ここにあるというその時間。時間を想像することもひとつの楽しみだし、そして、それを追うことによって空間が和む。癒し、愛とかね。
難しいけど、本当に一言で表現するんだったら、「愛」かな。
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なるほど。吉川さんはどうでしょうか?
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一言で言うのは難しいですね。でも、やっぱり自分が集めてても、作ってても、何してても「癒やされる」のが一番かな。本当に精神的に落ち着くんですよ。作ってる時点で、縫ってる時点で、モヘアのぬくもりというか、手触り、肌触り。これでもうすでに、私はスーって気持ちが落ち着くんですよ。
どんな顔にしようかなって想像して作るのも楽しいし、私は死ぬまでテディベアを作り続けようと思ってる。生涯現役で、作家活動をするって言っているので、テディベアなしの生活は考えられない。
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いいですね。本当にテディベア愛を感じます。今日、僕がインタビューさせてもらっていますが、お二人のテディベア愛で僕が癒やされています。
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よかった(笑)
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それはよかったね(笑)
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では、本日は長い時間、テディベア対談、ありがとうございました。
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いえいえ、ありがとうございます。
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ありがとうございました。
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取材協力:横浜ブリキのおもちゃ博物館

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横浜ブリキのおもちゃ博物館

ブリキのおもちゃ博物館では、1890年代から1960年代にかけて主に日本で製造された玩具約3,000点を常設展示しています。北原館長が1973年頃から収集したコレクションの一部です。多くの人達に見てもらいたい、そんな思いから1986年4月にオープンしました。
古い洋館を改装した博物館に展示されたブリキのおもちゃたち。 外人墓地や古い教会の並ぶエキゾチックで異国情緒あふれるこの横浜で、夢中で遊んだあの頃に帰ってみてはいかがですか。

横浜市中区山手町239

045-621-8710

*お店に足を運ぶ前に、HomePageで最新の情報を確認することをお勧めします。

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