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テディベアが誕生した歴史。100年以上愛されつづけるテディベアの魅力とは?

欧米では、生まれた赤ん坊にテディベアを与える習慣がある。
子供にとってテディベアは玩具以上の存在であり、自分の兄弟であるかのように扱われる。テディベアは話し相手となり、時には誰にも言えない秘密を告げる相談相手にもなる。
100年以上の歴史があるテディベア。しかし、19世紀までは”ただ”の熊のぬいぐるみだった。
現在のように、”テディベア”という愛称で呼ばれるようになったのは、1902年の出来事がきっかけだった。

取材日: 2016年11月20日

文 / 井本貴明
監修/吉川 照美

ルーズベルト大統領の優しさから生まれた熊のぬいぐるみは、全米中の人気者になる。

第26代大統領セオドア・ルーズベルトの肖像画。(伊豆テディベア・ミュージアムにて撮影)

第26代大統領セオドア・ルーズベルトの肖像画。(伊豆テディベア・ミュージアムにて撮影)

1902年、当時のアメリカ大統領はセオドア・ルーズベルト。
ルーズベルト大統領は休暇を利用して、趣味であるハンティングに出かけた。部下の一人が1匹の小熊を捉え、最後の息の根を止める役をルーズベルトに提案。しかし、瀕死の状態の熊を見て、ルーズベルトは仕止めることを拒み、熊を解放させた。

そのハンティングに同行していた新聞記者が、「ワシントン・ポスト」に一枚のイラストと共にルーズベルトの行動を記事にしたのだ。傷ついた小熊を助けた大統領として世間に広まり、ルースベルト大統領の人気は高まっていく。

ニューヨークのブルックリンでお菓子屋を経営をしていたモリス・ミットムは、そのワシントン・ポストの記事を読み、あるアイデアを思いついた。それは、新聞にイラストで描かれていた熊を、”ぬいぐるみ”として作り、お店に飾ること。そして、店頭に飾ったぬいぐるみには「テディのベア」という解説を添えた。

なぜ、”テディ”なのか?
アメリカではルーズベルト大統領のファーストネームである「セオドア」を、「テディ」または「テッド」と呼ぶ風習がある。「テディ(セオドア・ルーズベルト)」の「ベア(熊)」ということで、「テディベア」と呼ばれるようになった。

シュタイフ社のテディベアたち

シュタイフ社のテディベアたち

同じ頃、ドイツではマルガリータ・シュタイフ女史が熊の人形を作っていた。子供の頃から小児麻痺の為に車椅子で生活していた彼女は、大人になり子供服を作る仕事に就いた。手先が器用だった彼女は、動物のぬいぐるみを作る会社を立ち上げ、「シュタイフ社」という名称にした。

当初、熊のぬいぐるみはあまり人気が無かったのだが、1903年にドイツで開催された見本市にて、ニューヨークの百貨店である買付け人の目に留まり、3000体の注文を受けることになる。輸出された熊のぬいぐるみは、前述したルーズベルトの出来事と重なり、大人気となった。その後、シュタイフ社はアメリカへ向けてテディベアの輸出を増やし(1907年には100万体に近い数を輸出)、会社は成長していった。この時期に販売されていたテティベアは、アンティークとなり、テディベアのコレクターの間では大人気なのである。

テディベアの魅力は可愛いだけじゃない!? 人の心を癒す不思議な能力

テディベアを眺めると、とても癒される気持ちになるから不思議

テディベアを眺めると、とても癒される気持ちになるから不思議

1980年代に、テディベアはアメリカで二回目の大ブームを迎える。
いくつかの理由があるが、テディベアを個人作成する”テディベア・アーティスト”が増えたことが大きいと思われる。テディベアを作るのに必要な素材であるモヘアの価格が安くなり、企業だけでなく個人でも入手できるようになった。それがきっかけとなり、個人でテディベアを作る人が増えたのである。

また一方で、アメリカでは中流階級の家庭では共働きをする人が増加し、子供達は家で留守番をする機会が増えた。子育てに費やす時間がなくなり、結果として二人目の子供を作らない家庭が多くなる。一人っ子になった子供の”兄弟”として登場したのがテディベアであったのだ。

また、テディベアは社会の役にも立っている。心の支えを必要としている人に対して、テディベアは精神的なやすらぎを与えるという結果が科学的にも証明されているのだ。全世界で1万人以上の会員がいるボランティア組織「グッド・ベアーズ・オブ・ザ・ワールド」は、会費収入、寄付金を元にテディベアを購入し、病院、難民収容施設、警察、老人ホーム、ホームレスのための施設などにテディベアを寄付しているのである。この活動により、心に平和を取り戻した人の数は多いと言われている。

5万5000ポンドで落札された”Happy”は、愛する妻へのクリスマスプレゼントだった

伊豆テディベア・ミュージアムには、アンティークのテディベアが数多く展示されている

伊豆テディベア・ミュージアムには、アンティークのテディベアが数多く展示されている

1980年代に訪れた二回目のブームでは、1900年代前半に登場したテディベアがコレクター品として高値で取引されるようになった。
その一例として、1989年に英国のサザビーズが主催したオークションにて、1体のテディベアが5万5000ポンド(現在のレートで約700万円)で落札をされたのである。

落札したのはカリフォルニアに住んでいるヴォルップ夫妻。オークションにかけられていたシュタイフ社の1926年製のテディベアを妻のローズマリーが大変気に入り、夫のポールは42回目の結婚記念日にプレゼントしようと決めた。実際の競売では、イギリスにいる親友に入札を任せ、金額は気にせずに競り落としてもらうようにお願いしたのだ。競売が始まると、手強いライバルが出現し、価格はみるみる上がっていき、最終的に5万5000ポンドまで跳ね上がったのである。
その価格に驚いたポールだが、無事に入手したテディベアは、”結婚記念日おめでとう”(Happy Wedding Aniversary)にちなんで、”Happy”という名前で呼ばれるようになった。

ちなみに、ポールは「競売にかかっても、当時のテディベアの相場からして70万円ぐらいで落札できると思っていた」と後に語っている。このように、アンティークのテディベアは高値で取引される美術品としての側面を持つようになった。

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<こぼれ話>約2000万円で落札された「テディーガール」は、日本で会える!

1994年12月5日、ロンドンで世界的に有名なオークション・クリスティーにて、110,000ポンド(当時の円換算で約2000万円)の価格で「テディーガール」が落札されたことが大きなニュースになった。
落札者は、静岡県伊豆にある「伊豆テディベア・ミュージアム」。なんと、その貴重なテディベアは日本で見ることができるのだ。シュタイフ社が1904年に作成したテディーガールは、持ち主であった故ボブ・ヘンダーソン英国陸軍大佐が幼少期から一緒だったテディベア。ここまで保存状態が良い1900年代初期のテディベアは珍しく、これを日本で眺められるのは、とてもラッキーである。

「くまのプーさん」「パディントン」も、みんなテディベアである

ここで、テディベアをモチーフにした有名な映画、絵本、キャラクターを紹介したいと思う。

「くまのプーさん」(英題:Winnie the Pooh)

イギリスの作家 アレン・アレクサンダー・ミルンが1926年に出版した物語。くまのプーさんのモデルは、1921年にミルンの妻が、百貨店ハロッズで購入したテディベアである。ミルンの息子であるロビンは、このテディベアに「Winnie the Pooh」という名前をつけた。”Winnie”は、ロビンの家の近くにある動物園にいた熊のな雨。”Pooh”は、近所の池にいた白鳥にロビンがつけた名前である。
ロビンがテディベアと楽しそうに遊んでいる様子から、くまのプーさんの物語を思いついたと言われている。

「くまのパディントン」(英題:Paddington)

イギリスの作家マイケル・ボンドが1958年に出版。パディントンのモデルは、1956年にロンドンの百貨店セルフリッジで、マイケル・ボンドが妻のクリスマスプレゼントとして購入したテディベア。ボンドはそのテディベアで物語を思いつき、彼の家がパディントン駅から近かったので、名前をパディントンと名付けた。
マーマレードとダッフルコートが大好きなパディントン。南米のペルーからイギリスにやってきて、必死に英国様式を学ぼうとする姿が好感を呼び、イギリスで大人気になったキャラクターである。

テッド(英題:TED)

アメリカの、セス・マクファーレンが脚本、監督、制作をした2012年に公開された映画。主人公であるジョン・ベネット少年が、クリスマスプレゼントでもらったテディベアに「テッド」という名前を付け、一緒に話をしたり遊びに行けるように命が宿るようにお祈りをしたところ、実際にテディベアに命が宿り、親友として人生を過ごす。35歳になったジョンとテッドの可笑しな生活を描いたストーリー。

スモーキー・ベア(英題:Smokey The Bear)

アメリカの森林火災防止組合のシンボルとして生まれたスモーキー・ベア。1940年代にはアメリカの全土で森林火災が発生し、それに伴い森林火災防止組合の活動を促進するために生まれたキャラクター。スモーキーは、監視用の帽子をかぶった熊として、人形、マグカップ、貯金箱などあらゆるグッズとなって登場。今でもアメリカでは、スモーキーグッズのコレクターが数多くいる。
ちなみに、スモーキーの名前の由来は、1920年代にニューヨーク市で働いていたスモーキー・ジョー・マーチンの名前を借りたものである。

テディベアとの出会いは、待っているだけじゃ何も始まらない!

現在、テディベアは幅広いラインナップが存在し、いろいろな場所で入手することができる。

ドイツのシュタイフ社(Steiff)は、毎年のように新しいテディベアを発表し、最近は日本のアニメキャラクターなどとコラボレーションしたことでも話題になった。
また、英国の老舗であるメリーソート社(Merry Thought)は、エリザベス女王が名付けた「チーキー」を代表とする表情が可愛らしいテディベアを生産し、こちらも日本限定品などを展開している。 どちらも日本に直営店、もしくは代理店があるので、実際にお店でテディベアを確認しながら購入ができるので、足を運んでお気に入りのテディベアを探してもらいたい。

もしも、個性的なテディベアを探しているのであれば、日本テディベア協会が主催している年に一回のコンベンションがオススメである。国内外からテディベア・アーティストが一堂に集まり、オリジナルで作成したテディベアが購入出来る。少量生産なので、お気に入りの一体と出会ったときには運命的なものを感じるかもしれない。次回は、2017年は7月15日(土)・7月16日(日)に東京国際フォーラムで予定されている。

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日本テディベア協会が主宰するコンベンションの様子。日本全国から、テディベアファンが集まる一年に一回のお祭り。運命のテディベアに出会えるかもしれない!

日本テディベア協会とは?

テディベア文化を普及させることを目的とした、テディベアが好きな方たちが集まった団体であり、 テディベアのもつ愛らしさ、やさしさを伝え、 テディベアを通してボランティア活動などの社会的文化貢献を目指す会員組織の非営利団体。
HP:http://www.jteddy.net/

最後に、1900年代前期、中期のアンティークのテディベアを見たいのであれば、「テディベア・ミュージアム」がおすすめである。古いテディベアだけでなく、現在活躍する世界中のテディベア・アーティストの作品も展示されているので、テディベアの歴史の流れを感じることができる。もちろん、お土産用にテディベアを購入することもできるので、小さなお子さんがいる家族連れでも楽しめるミュージアムになっている。

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伊豆テディベア・ミュージアム

1995年にオープンした日本初の本格的なテディベア・ミュージアム。
1960年以前に作られたアンティーク・テディベアや、世界中のテディベア作家が作った1点物のオリジナル・テディベアなどが数多く展示されている。また、館内では動くテディベアや、触れるテディベアもあるので、小さな子供から大人までが楽しめる。そして、館内は写真撮影が全てOKなのが嬉しい。
館内には、自然にたっぷりの中庭、休憩できるティールーム、テディベアが購入できるショップもあるので、ゆったりと時間をかけて楽しめるミュージアム。

静岡県伊東市八幡野1064-2

0557-54-5001

<開館時間>
午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
<休館日>
2・3・6・12月第2火曜日(休館日が祝日にあたる時は開館)。
6月は第2火曜、水曜日が連休となります。年末年始、GWは開館。

*お店に足を運ぶ前に、HomePageで最新の情報を確認することをお勧めします。

Shop

このように100年以上も前に誕生したテディベアは、現在も進化を続け、世界中の人に愛され続けている。実際のテディベアに触れてみて、その魅力を肌で感じてもらいたい。

そして、お気に入りのテディベアが見つかったら、入手してみてはいかがだろうか。
”テディベア”という新しい兄弟ができたら、毎日の生活が、もっと楽しくなるはずだから。

(おわり)

<こぼれ話>テディベアを愛した著名人

英国のチャールズ皇太子は、お気に入りのテディベアを肌身離さずに可愛がり、学校にも連れて行き、周りの級友からひやかされていたという話が残っている。
アメリカのロックシンガーであるエルビス・プレスリーは「Teddy Bear」という楽曲を発表。1957年には、小児マヒ救済募金運動団体にトラック1台分のテディベアを寄付している。
日本では、皇室の美智子皇后のストーリーがある。4歳の時に父親がロンドンお土産にテディベアを購入しプレゼントされた。美智子さまにとても可愛がられたテディベアは、ご結婚をした際にも、美智子さまと一緒に皇室に持ち込まれたのである。

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