時計が作られた時代に思いを馳せる:ヴィンテージウォッチ専門店スタッフの私物時計

時計が作られた時代に思いを馳せる:ヴィンテージウォッチ専門店スタッフの私物時計_image

文/ミューゼオ・スクエア編集部
写真/新澤遥

ヴィンテージウォッチに魅せられ仕事にしてしまった人たち。仕入れをしたり、修理をしたり、販売をしたり。日々数多くのヴィンテージウォッチに触れる彼ら彼女らはどのような時計を愛用しているのだろう。本企画では、ヴィンテージウォッチ専門店のオーナー・スタッフの私物の時計を紹介します。ヴィンテージウォッチとの出会いは一期一会。ご縁があれば手元に置いておきたい時計も聞きました。

今回はヴィンテージウォッチ専門店「ケアーズ表参道ヒルズ店」副店長 石川智一さんにお話していただきました。

1969年製ロレックス オイスター Ref.6426(左)

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1969年製のオイスター。リファレンスはRef.6426。ムーブメントはキャリバー1225を搭載。

「近年アパレル関係の方を中心に人気が広がっていったコマンドーというモデルがあります。リファレンスは6429で、米軍基地に入っていた売店で売られていたというのが通説です。エクスプローラーと同じ3,6,9の夜光のインデックスでブラックダイヤル。長短針も凝っているミリタリーライクな手巻きの時計です。このオイスターが入荷してきた時には、ディテールの違いはあるものの、コマンドーの白文字盤仕様のように感じてしまいました。Ref.6426というリファレンスだけ聞くと一般的な時計ですが、60年代後半では珍しい3,6,9のインデックスのデザインや、アメリカ由来のコマンドーに対して、この時計はイギリスから入荷してきたところにも、何となく“らしさ”を感じています」

1954年製ロレックス オイスターデイト Ref.6494(右)

1954年製ロレックス オイスターデイト Ref.6494。文字盤が緑色に変色している。クサビのインデックスやテクスチャーダイヤルなど、1950年代らしい仕様が散りばめられている。ムーブメントはキャリバー1210を搭載。

「文字盤がブラックから茶色に変色した時計や黄色に変色した時計はよく見かけます。しかし、緑に変色している文字盤はほとんど見たことがありません。『夜光の放射線量が強くて茶色くなる』『下地の金がうつってきて黄色くなる』といったそれらしい理由もわかりません。本当に不思議な経年変化をした文字盤です。変色しているにも関わらず、文字盤が汚く見えないのはケースコンディションが良いからだと思います。それと50年代らしいディテールが好きです。40年代はクラシックなデザインのものが多い一方、ムーブメントは発展途上です。60年代になるとムーブメントは進化しているけれども、量産化も進み個性のあるデザインは減ってきてしまいます。あいだの50年代は、アンティークらしいテイストを残しつつ、ムーブメントを改良するべく各メーカーが試行錯誤していた痕跡が見受けられます」

1960年代製オメガ シーマスター Ref.165.002

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オメガ シーマスター Ref.165.002。1960年代の時計はクロノメーターがより一般的になりカレンダー機能が備わっていることが多いが、この時計はノンクロノメーターのノンデイトの自動巻き。ムーブメントはキャリバー552を搭載。

「165.002はオメガ入門に位置付けられるリファレンスです。当時は誰でも購入しやすい時計だったかもしれません。ただ、このリファレンスをキャンバスに見立て、スピードマスターやシーマスター300、レイルマスターなどの人気モデルのエッセンスを取り込んだものも一部ありました。ノンクロノメーターであってもスワンネックの緩急針を採用していたり、オメガ入門時計としてオメガの機械の魅力を多くの人に伝えたモデルだと思います。フラットで幾何学的な文字盤が気に入っています」

1940年代製ロレックス オイスター Ref.4377

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1940年代製ロレックス オイスター Ref.4377。12,3,6,9がローマ数字になっている手巻きの時計。直径は34mmと1940年代にしては比較的大きいサイズ。

「1940年代のロレックスの時計は機械が小さかったこともあり、バブルバックやスピードキングをはじめ直径の小さいものが多い傾向です。このオイスターは当時にしては比較的大きく、センターセコンドです。『スモセコが主流の時代に、当時としては斬新なテイストだったんだろうな』と想像してしまいますね。時計を選ぶときには、『その時代の人がかっこいいと思うものはなんだったのか』を考えて選ぶこともあります。その時代に当たり前にあった良いものよりは、特徴があり試行錯誤されていることがわかるものに惹かれます」

1940年代製 IWC ラウンドモデル

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1940年代製のIWCのラウンドモデル。文字盤は薄く緑に経年変化しており、アラビアインデックスはエンボスで浮き上がっている。ムーブメントはキャリバー61を搭載。

「1940年代のセンターセコンドのモデルは、スモールセコンドのムーブメントに出車を足しているのが一般的です。そんな中、IWCのキャリバー61は出車式ではなく、分割された綺麗な受けですべての歯車を覆った美しいレイアウトです。ちなみに、センターセコンドでありながら、出車式ではないIWCのムーブメントとしてキャリバー60があります。すごく似ているのですがキャリバー60には機械の中心付近に秒カナ押さえの溝があります。この溝がない方がスッキリしていて好みだったのでキャリバー61を購入しました。防水ケースでほどよい厚みがありかっこいいです」

ご縁があれば手元に置いておきたい時計 パテックフィリップ Ref.96 ステンレススチールケース センターセコンド

「パテックフィリップというブランドに興味があるというよりは、Ref.96のセンターセコンドに憧れがあります。Ref.96は完成度の高い時計だと思います。1930年代から1970年代まで基本的なデザインはずっと変わっていません。特に30年代のセンターセコンドのものは実にかっこいいです」

ーおわりー

公開日:2020年9月4日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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