直接肌に触れるベルトは時計のルックスと装着感に大きく影響します。ヴィンテージウォッチの場合、純正で状態のよいものが見つかればよいのですが、それ自体がコレクターズアイテムになってしまっており普段使いできるものを探すのはなかなか難しいのではないでしょうか。
今回、ヴィンテージウォッチ専門店「キュリオスキュリオ」オーナーの萩原秀樹さんと、「ケアーズ東京ミッドタウン店」に勤める石川智一さんの対談を企画。私物の時計などを交えそれぞれの持論を展開しました。
司会を務めたのはヴィンテージロレックスを収集する戸叶庸之さん。実は戸叶さんにも私物の時計をお持ちいただいたのですが、萩原さんと石川さんのお話が盛り上がったこともあり残念ながらタイムアップ。どのようにロレックスとベルトを組み合わせているのか戸叶さんに寄稿していただきました。
可能な限りオリジナルのブレスレットにこだわる
ヴィンテージロレックス、とりわけスポーツウォッチを収集している人にとって、オリジナルのブレスレットは非常に重要なアイテムだと思います。
ブレスレットは文字盤や針と比べたら後から見つけられる可能性も高いのですが、すごく手間もかかるし、価格も高騰しているので仮に探せたとしても割高になることが多い…。そうなると、購入の時点でなるべくブレスレットを押さえたいというのが本音です。
サブマリーナーRef.1680/8(左)とGMTマスターRef.1675。こちらの2本のように、所有するヴィンテージロレックスのほとんどはオリジナルのブレスレットを着用している。
実際に、パーツの整合性が完璧な時計を手にすると、「わざわざ社外のストラップに交換する必要があるのかな?」と思ってしまうほど、ロレックスのスタイリングは優れているように感じます。
そんなこともあって、僕は基本的にはブレスレット派です。特別マニアックなこだわりはないんですけど、リベットブレスとジュビリーブレスが好きです。所有する時計の年式が合うブレスレットに関しては、スイス製とアメリカ製ともにある程度のバリエーションを押さえています。
1963年製のGMTマスターは、この他にもベゼルインサートやブレスレットをいくつか所有しており、気分転換を兼ねて組み合わせを変えることも。
正直に言うと交換用のストラップの出番は少ないのですが(笑)、たまに気分転換を兼ねて着用しています。
気分や服装に合わせてストラップを楽しむ
そもそもの話になりますが、個人的にヴィンテージの時計を集めてはいますが、そこにものすごい執着があるわけではないんですね…。
特に見た目に関しては、懐古主義的な趣味は皆無です。セリーヌなどのハイブランドの服を着ることが多いので、時計を身につける時には、そこでの相性をかなり考えます。
ストラップの購入、あるいは組み合わせで1番重視していることは、自分が心地よく感じられるバランスです。僕の場合、ちょっとアンバランスに見える遊びを効かせた感じがちょうどいい。これは服装にも言えることで、セオリー通りだと窮屈に感じてしまうし、何事もそうですが、常に今の空気を吸っていたいと思っています。
デイデイトのRef.1803/9は、かなり前に購入したホディンキーのストラップを合わせている。夏場はレザーストラップの着用を避けているため、秋から冬にかけて着用する機会が増える。
分かりやすい例が、6~7年前から使い続けているデイデイトでしょうか。この時計は18金ホワイトゴールドで、当時は時計を買いまくっていた頃で常に資金不足だったこともあり(笑)、ブレスレットを買うには予算が足りなくて、なんとか時計だけは買うことができました。それ以来、手持ちのイタリアンカーフストラップを合わせて、あえてカジュアルなテイストにまとめています。
GMTマスターはかなり好きで、Ref.1675を年代別に2本持っているのですが、そのうちの1977年製のモデルはストラップを付け替えて楽しんでいます。
今年に入ってからお試しということで、10年前ぐらいに購入して冬眠状態だったクロコダイルの台座付きのストラップに引っ張り出してみましたが、リストバンド並みにゴツいので着る服をかなり選びますね(笑)。袖口にある程度ボリュームがあるアウターでないと手元だけ浮いてしまうので、ミリタリー系のコートに合わせています。
さすがに夏場はしんどいなと思って、約10年ぶりにフェニックス社のG10ストラップを購入しました。とても快適なので夏はコレで回そうと思っています。
ごく最近、Ref.1675用に購入した20mm幅のG10ストラップ。無地だと地味に感じたため、ストライプ柄を選ぶことで腕元のアクセントに。
この他にもう1本、コスモグラフ デイトナ用に18mm幅のG10ストラップを買ってみたのですが、組み合わせに関して言えば、デイトナの方が気に入っています。
実はデイトナを毛嫌いしている時期があったんですが(笑)、自腹を切って使ってみると、いろんな発見があり、どっぷりハマる人の気持ちが分かってきました。
手巻きデイトナとG10ストラップの組み合わせ。予想していたよりも面白くまとまったので、当面はこのまま着用する予定。
僕が持っている初期のRef.6239は、文字盤に「DAYTONA」の表記が入らないソリッドな表情が人気のモデルです。G10ストラップに付け替えると、一見するとロレックスの時計にすら見えないのですが、こういう主張しない見せ方も嫌いじゃないです。
クロノグラフを着用すると文字盤そのものが腕元のアクセントになるので、前述のRef.1675とは逆の考えで、引き算を意識してストラップは黒を選んでいます。時計は主役ではなく、あくまでもコーディネイトの一部。つまるところ、服に馴染みやすいスタイリングに収まっています。
思っていた以上にG10ストラップの手応えがよかったので、サブマリーナーのRef.1680/8用にオリーブグリーンのレザーストラップを購入して、秋口に備える予定です。
ーおわりー
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