NYCのヘルシー系飲料会社「DIRTY LEMON」からぼくたちが学べること

文/ 梶原由景
写真/新澤遥

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クリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表、梶原由景氏による連載「top drawer」。第三回は飲み物の無人販売所について。ハイテクノロジーな技術を体験しようと人が来ている……わけではないようです。

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話題の新スポットにも出店した無人販売所「THE DRUG STORE」

前回に続きニューヨークの話。2019年の春に超巨大複合施設Hudson Yards(ハドソンヤード)が誕生した。その中にあるモール「THE SHOPS & RESTAURANTS」に、「THE DRUG STORE(ドラッグ・ストア)」というショップが入っている。名前だけ読むと薬局なのかと思うが、薬品や化粧品を売っているわけではない。飲み物を販売している。

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看板は出ておらず、窓にICE COLD BEVERAGESという文字が書かれているだけ。中に入ると店員はおらず、レジもない。外から見たまま冷蔵庫しかない。冷蔵庫の横のディスプレイにはこのように表示されている。

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1. 好きな商品を取って(Take what you want)

2. 何を取ったかメッセージを(Txt what you took)

3. 元気にいこう(Get on with life)

テキストとはiPhoneでいうメッセージ、つまりSMSのこと。「これをとったよ」とテキストすると「決済はテキストでおこなうよ、名前とメールアドレスを教えて」と連絡がくる。その後届くフォーマットにクレジット/デビットカードナンバーを入れると最終確認の連絡がくる。「YES」と答えると、購入処理が終わる。

ドリンクはひとつ10ドル。10種類以上あるフレーバーのなかからchromiumを飲んでみた。パッケージがブルーならば、中身もブルー。内容物の表示形式はサプリメントに近い。どうやらものすごい機能性飲料みたいだ。卸もしているらしく、Orchard Grocer(オーチャード・グローサー)などの高級グローサリーでも見かけた。主にミレニアル世代に支持されていて、僕が撮影している間にも若い女の子が買っていった。

体感型ショップのロールモデルとなるか

この変わったショップを運営しているのはブルックリン発のヘルシー系飲料会社「DIRTY LEMON(ダーティー・レモン)」。2015年にテキストメッセージベースでドリンクの販売をはじめた同社はそのパッケージや販売方法などが注目され急成長。SNSでは10万人以上のフォロワーを抱え、ミレニアル世代を中心に支持されている。 2018年9月にはトライベッカに初の実店舗を構えた。

トライベッカの店舗には自動販売機以外に何もないが、ハドソンヤードの店舗には大きなカウンターが印象的なバーが併設されていた。併設というより、占有面積から考えるとバーがメインなのだろう。奇をてらった手法に頼らず拡大していく方針なのだ。ハドソンヤードという大規模ショッピングモールに出店するハードルは決して低くないはず。「しっかりと経営できていて今後も期待できる」と判断されたのだろう。

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それにしてもプロモーションがうまい。最近ビジネスの現場で耳にするイノベーション風の話題からは一線を画し、単純に体験として面白くて強い。決済方法はある種原始的。専用のアプリは必要とせず、テキストメッセージという誰でも利用できるサービスをベースにしている。顧客とコミュニケーションが生まれるところが何より秀逸。ただ、アメリカでこんな信用ビジネスをして大丈夫なのかと心配になる。実際その場で会計せずボトルを取って出て行く人も目にした。

実店舗を開いて1年が経ちデータも溜まっているだろう。今後どのようなプロモーションをするのか注目している。商品の魅力を伝えるにはいろいろな手法があるのだとひさしぶり心が動いた。

—おわり—

公開日:2019年10月18日

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梶原由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。モトローラ、Palmなどと業界を超えた取り組みを行い、ソニーとはデザインホテル・プロジェクトに取り組むなど異業種コラボレーションの草分けとして知られ、ファッションリテールとしてのセレクトショップの再定義を行なった。ルイ・ヴィトンとKDDIのプロジェクトを手掛けるなど現在デジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。2017年には藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げた。

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