LOOPWHEELER。僕にとって車のサスペンションの役割を果たす服

LOOPWHEELER。僕にとって車のサスペンションの役割を果たす服_image

文/梶原由景
写真/ミューゼオ・スクエア編集部

クリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表、梶原由景氏による連載「Top drawer」。第六回は梶原さんも別注企画で関わりの深い「LOOPWHEELER(ループウィラー)」のスウェットシャツを取り上げます。

腕を通してガラガラと崩れ去った西洋信仰

セレクトショップで働き始めた初期のころは、「洋」服というように洋服とは西洋のものだと思っていた。

スニーカーだったらNIKEが良い、デニムだったらLEVI'Sが良い。

スウェットシャツも同じ。チャンピオンのリバースウィーブや、ラッセルのラグランスリーブが至高。日本のメーカーが作るスウェットシャツはカットソーに過ぎないと思っていた。そんな凝り固まった価値観をガツンと打ち崩す決定打となったのがLOOPWHEELERだった。

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LOOPWHEELER代表の鈴木さんと最初にお会いしたのは食事の場だった。その後、オフィスに来ていただいた際にスウェットシャツをいただいた。せっかくいただいたので一度水を通して天日で乾かし腕を通してみた。古着にはない、このコシがありしなやかな生地はなんだ?スウェットに求められるありとあらゆる要素が詰まっている。

「リバースウィーブに代表されるガサガサ、ゴワゴワ感がスウェットの魅力」。それが僕の思い込みだったと気づくのに時間はいらなかった。そうして吊り編み信仰者になり、その状態は今現在も続いている。

信仰者の僕は年に1回の受注会を毎年楽しみにしている。そこはLOOPWHEELERの、鈴木さんの実験場で、吊り編み機を使って色々なテクニックが披露される場になっている。ここ何年かはカシミヤという紛うことなき高級素材でスウェットを作っている。メゾンブランドのようなクオリティで、この冬は毎日のように着た。

多分数枚もあれば一生スウェットシャツには困らないとは思うが、家の棚には20〜30枚くらいのLOOPWHEELERが並んでいる。なぜなら僕にとって一番機能的な服だからだ。

仕事柄外に出る機会が多い。電車に乗る、打ち合わせにいく。冷たいものを飲む、移動する。気持ちよく働くためにはそのギャップを埋める服が必要だった。LOOPWHEELERは着心地がよく、車のサスペンションのように僕をサポートしてくれる。冬はカシミヤ、春秋は裏毛。夏はライトウェイト。盛夏でもLOOPWHEELERを着たかったので、今年は天竺の素材で作ってもらった。

2019年には創⽴20周年を記念した初の書籍が発売された。

2019年には創⽴20周年を記念した初の書籍が発売された。

ほつれるネームはインラインとして認められるものを作る覚悟の現れ

鈴木さんはスウェット作りの豊富な経験と知識をベースに、吊り編み機のプロの職人とともに新しい素材を開発する一方、時代に合わせたスウェットを企画するクリエーターでもある唯一無二の人。僕などが何か要望しても一蹴されると思いつつも、清水の舞台から飛び降りるつもりで別注企画をお願いした。奇跡的に快諾頂き、ボーダーのスウェットパーカーを作っていただいた。

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吊り裏毛でボーダーを作るのは難しい。なぜなら白の裏糸が表に出てきてしまうからだ。彼らは完全なネイビーにするのが難しいと判断しこれまでやったことがなかったのだが、なんとか納得いくクオリティに到達するよう試行錯誤してくれた。

OEM生産のように「自分が考えたアイデアを形にする」ような別注ではなく、
LOOPWHEELERと一緒にやる理由を僕は大事にしたいと思っている。文脈を作っていると言い換えてもいいかもしれない。

ネームはいずれほつれて僕のLOWERCASEのロゴが消え、LOOPWHEELERの通常ネームになるデザインにしている。LOOPWHEELERのファンの人たちからインラインとして認められるようなものを作るという覚悟の表現である。もう何年も別注企画をお願いしているが、その気持ちは変わらないどころか回を重ねるたびに強くなっている。

ーおわりー

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LOOPWHEELER

1時間におよそ1mしか編むことのできないクラシックな吊り編み機を用いて、「世界一、正統なスウェットシャツ」を作る“ループウィラー”。
古着にはない、このコシがありしなやかな生地でスウェットに求められるありとあらゆる要素が詰まっている。

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メイドインジャパンの老舗スウェットブランド〈ループウィラー〉創立20周年 記念書籍

41f01zwheul. sl500

loopwheeler

1時間におよそ1mしか編むことのできないクラシックな吊り編み機を用いて、「世界一、正統なスウェットシャツ」を作る“ループウィラー”。20周年を迎えたその活動を、膨大なアーカイブによって振り返ります。それぞれの時代を映したグラフィックはもちろん、糸、編み方、縫製というスウェットの本質を考え尽くした足跡を収録。ファウンダー鈴木諭へのインタビュー、現場である「工場」との対話、多くの著名ファンによる寄稿文など、“ループウィラー”の哲学が網羅されています。

貴方の生活をUPDATEする カジワラ的生活必需品100点

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BEAMSクリエイティブ・ディレクターを前任、SONYなどの世界的ブランドとのコラボを手掛けたトップクリエイター厳選のアイテムを大公開!!

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本物中の本物を知りたい貴方のための 買い物アドバイスブックです。

公開日:2020年4月27日

更新日:2022年6月3日

Contributor Profile

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梶原由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。モトローラ、Palmなどと業界を超えた取り組みを行い、ソニーとはデザインホテル・プロジェクトに取り組むなど異業種コラボレーションの草分けとして知られ、ファッションリテールとしてのセレクトショップの再定義を行なった。ルイ・ヴィトンとKDDIのプロジェクトを手掛けるなど現在デジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。2017年には藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げた。

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