「スーツケースといえばリモワ」生まれたもう一つの選択肢

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文/梶原由景
写真/新澤遥

クリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表、梶原由景氏による連載「top drawer」。第五回は日本でも話題のD2Cブランド「アウェイ(Away)」のスーツケースを取り上げます。

「スーツケースといえばリモワ」生まれたもう一つの選択肢

MuuseoSquareイメージ

スーツケースは長らくRIMOWA(リモワ)以外の選択肢がなかった。しかし、ここ数年で「お、これは」と思うものがでてきた。それがAway。

Awayは2015年に誕生したスーツケースブランド。創業者ステフ・コーリー(Steph Korey)とジェン・ルビオ(Jen Rubio)は、ユニコーンとして知られるメガネブランド「ワービーパーカー(Warby Parker)」出身だ。僕は2年前、「SUITCASE」という雑誌に広告が出ていたのを目にして知った。欧米ではこのような旅行雑誌がたくさん発行されている。

欧米ではこのような旅行雑誌がたくさん発行されている。

欧米ではこのような旅行雑誌がたくさん発行されている。

Awayは手頃な価格ながらコンテンポラリーな味付けが施されているスーツケースとして人気が出ている。最近のジョン・F・ケネディ国際空港では本当によく見かけるようになった。

無印良品を意識しているデザインであることは見てあきらか。Awayのスーツケースを「なんてことのないデザイン」ということもできるが、逆に「なんてことのないデザイン」のスーツケースが見つからなかった。

耐久性に優れたポリカーボネイド製で、外付けで充電バッテリーがついている。使い心地はリモワや無印良品と比べて優れているとは決して思わない。が、とにかく取り回しは良い。プロダクトに対する哲学やこだわりを感じることはないけれども、結果的に他にはない面白いスーツケースに仕上がっている。

Awayはマーケティングがとても上手。インスタグラムや雑誌を中心に付加価値の高いブランドイメージを発信している。デジタル上での販売を前提にした施策なのだろう。

スーツケースをおみやげに買って帰る

日本でも「D2C(Direct to Consumer)」というワードを耳にすることが増えてきた。D2Cとは、ブランドがエンドユーザーと直接の接点をもち、より深い関係性を構築するビジネスのこと。顧客への情報発信、マーケティング、決済まで購買に関わる全てがデジタルで完結していることが特徴だ。Awayは創業よりデジタル上での販売を主にしている。それは2017年に最初の実店舗をオープンさせて以降も変わらない。カタログからメールオーダーすることに慣れているアメリカの人々にとって、いまさらインターネットで注文することになんの障壁も感じないのだろう。

僕はニューヨークの実店舗でスーツケースを購入した。これはどうやら珍しいことらしい。ニューヨークに住んでいる友人はみんなECサイトで買ったそうだ。なお、店舗にいったからといってすごく特別な体験ができるわけではない。

日本ではまだそこまでECが浸透していないと思っているのかはわからないが、2020年2月時点では日本にAwayは進出していない。個人的には、日本はとても大きい市場だしニーズもあると思う。

いま日本に住んでいる人がAwayを購入するのであれば、本国のサイトから注文するか、旅行や出張の際にショップで買ってくるかの二択になる。であれば、行きは身軽にして旅の道中にスーツケースを買う。そんな旅行の楽しみ方を提案したい。

ーおわりー

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公開日:2020年3月19日

更新日:2021年7月7日

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梶原由景

LOWERCASE代表。元BEAMSクリエイティブディレクター。モトローラ、Palmなどと業界を超えた取り組みを行い、ソニーとはデザインホテル・プロジェクトに取り組むなど異業種コラボレーションの草分けとして知られ、ファッションリテールとしてのセレクトショップの再定義を行なった。ルイ・ヴィトンとKDDIのプロジェクトを手掛けるなど現在デジタル、デザインからアパレルまで幅広い業界にクライアントを持つ。2017年には藤原ヒロシ氏とコンテンツサイトRing of Colourを立ち上げた。

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