古代メソポタミア文明から続く石の文化
そもそも古代の人々は石との繋がりは深く、世界最古の文明と言われている古代メソポタミア文明(紀元前3000年頃)の遺跡でもラピスラズリやカーネリアンなどの宝石や金で作られた装飾品が発掘されている。精神文化が発達したギリシャでも、精神の安定と集中のために「握り石」が使われてきた。
ギリシャ哲学は、現在でいう狭義の哲学という枠に止まらず自然科学や数学、そして医学までをも包括した学究的な行為や態度の総称をいう。「すべての人間は生まれながらにして知らんことを欲す。(アリストテレス)」や「私は生きている中で最も賢い人間だ。なぜなら、私は何も知らないということを知っているから(プラトン)」、「生きるために食べよ、食べるために生きるな。(ソクラテス)」などなどギリシャ哲学の賢者の残した名言には含蓄の深い趣がある。ギリシャ哲学は、今のようなハウツーやノウハウなどの表面上の知識を求めるのではなく、あらゆる事象の本質である智慧を求めたのである。
そのためにはまず、心の平穏と執着をなくした中庸が求められた。だからこそ握り石が必要だったのだろう。
「ポケットの友達と相談している」チャーチルは語る
“歴史上で、最も偉大なイギリス人”と尊敬されている英国首相ウィンストン・チャーチルも手に物を握って考えごとをし、厳しい場面を乗り切った。「ポケットの友達と相談している」と言いながら、ポケットにひそませた愛用の小物を握り、気持ちを充分に落ち着かせた上で、歴史を動かす判断を下した。
チャーチルといえば葉巻に蝶ネクタイ、ホンブルグハットにステッキという、英国紳士的なスタイルで知られている。天性の演説家であり、歴史家、政治家であるばかりでなく、ノーベル文学賞作家にして風景画家でもあった。そんなチャーチルも小物を手に握ることで、激務の中、心を安定させたり、天からの啓示を受けて歴史に大きな足跡を残したのだ。
親ゆびは意欲の象徴
それでは手を動かしたり、手の感覚を研ぎ澄ますとどんな効果があるのだろうか?
大脳生理学の泰斗であり、元京都大学霊長類研究所所長であった久保田競先生は「手は外部の脳である」と断言している。著書である『手と脳』(紀伊國屋書店)によると「私たちが、手を自由に操れるのは、神経が手と脳の仲だちをしていて、脳が外部環境情報をうけいれ、指令を出して筋肉を収縮させるからである。手がうまく使えるのは、脳をうまく使えるからで、脳にはそのための構造がある。手は外部の脳という言葉はこの関係をうまく表現している」。
手を使うようになってはじめて脳が発達し、脳が発達したことで、さらに手を器用に使うことができるようになった。人間にとって手こそが、人間であるための条件でもあるのだ。
さらに面白い研究がある。医学博士であり、日本有数の認知症専門医である長谷川壽也先生は指と脳の密接な関係性を研究する中で、手の中でも親指に注目する。
著書の『親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす!』(サンマーク出版)の中で「人間の親ゆびは、特別だ。他の4本の指の腹と向かい合わせることができるし自在にぐるぐる回すこともできる。(中略)人間は親ゆびをつかってはじめて、望む動作を行うことができます。親ゆびは、意欲的な行動をするうえで、もっとも大切な部位なのです。だからこそ私は親ゆびは“意欲”の象徴であると考えてます。(中略)逆に言えば、親ゆびを刺激することこそが、脳を活性化し、血流を上げ、若返らせるわけです」
そう親指こそ、脳を活性化させ、創造力と想像力を高め、若返ることまでできてしまう秘密兵器だったのである。歴史的にも大脳生理学でも実証されている握り石。知的で豊かな人生は親指への刺激から。これこそ脳の活性化の決定版といえるだろう。
—おわり—
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言葉を最大の武器とし、演説の名手でもあったチャーチルの経験、考え、困難の足跡をたどる。
チャーチルは語る
チャーチルの少年時代の回想をはじめ、従軍記者時代に書いた新聞や雑誌の記事、選挙戦や議会な足跡を残したか、あらためて知ることができる。本書のように少年時代の回想から晩年の演説にいたるまでを網羅し、200篇もの原稿を年代順にまとめた作品は、日本では類がない。チャーチルは「言葉の力を知り尽くし、巧みに使いこなした」と、編者の序文に記されている。ルの最大の武器だった。本書は、チャーチルの偉大な足跡を彼自身の言葉でたどる作品だと言える。
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