知っているようで意外と知らない。家具メンテナンスのいろは

知っているようで意外と知らない。家具メンテナンスのいろは_image

取材・文 / 松田 佳祐
写真 / 新澤 遥

ダイニングテーブルや椅子、キャビネットなど、自宅にある家具には木を加工して作られているものや、そこに布地やレザーなどの異素材を組み合わせてあるものが多い。

天然素材である以上、素材の味わいを楽しめることと経年劣化をしてしまうことは表裏一体。

そして、家具はあくまで生活を豊かにするための道具なので、愛用すればするほど、汚れたり傷が付いたりしてしまうのは仕方のないことだ。

だからこそ、洋服や革靴と同じように日頃のちょっとしたメンテナンスが大切。適度なケアで良い状態をキープすれば、気持ち良く長く使い続けることができる。

そこで、今回は家具リペアの達人であるFizz Repair Worksの代表・西原弘貴さんにお願いし、家庭でできる簡単なメンテナンスと揃えておきたいケア用品を教えていただいた。

木材編

木製のテーブルに関しては、最近は表面をウレタン塗装で仕上げているものが多いので、食事の際に必ずランチョンマットを敷くことを勧めています。なぜかと言えば、一番付きやすいのが食器の輪染みだからです。

それに塗膜塗装仕上げの家具に直接食器を置いてしまうと、擦り傷が付きやすいんですよね。根本は生活の道具なので、傷に気をつけて慎重に食事をするというのはナンセンスですからね。

ランチョンマットを敷いた方がオシャレですし、食事を終えたらそれを外して木目の美しさを楽しめば良いと思います。その上で汚れてしまったら水拭きと乾拭きをすれば問題ありません。たまにワックスを塗ることで光沢感を保つことができますが、それも1年に1回程度でOKです。

オイル仕上げの家具を愛用している場合は、塗膜がない分だんだんとオイルが抜けてきますので、あまりに染みやムラが気になったらオイルを塗った方が良いです。

ここで注意したいのは、この状態のままオイルを塗ってしまうと染みや汚れの上からオイルを塗ることになってしまうので、一度リセットする必要があるということです。

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まず、100~120番手の目の荒い紙やすりを用意して白木の状態になるまで研磨していきます。その後に240番手くらいの紙やすりで荒いやすりで付けた傷を消していきます。最後に400番手くらいの目の細かい紙やすりをかけて滑らかにしてフィニッシュ。3工程ほどで済みますが、手でやると半日くらいはかかる作業ですね。

その後、ぬるま湯に浸した布で吹き上げることで木の行間を開きオイルが染み込みやすくし、乾かしたらオイルを塗り込んでいきます。

逆に塗膜仕上げの家具にはオイルは絶対におすすめできません。

ヴィンテージの家具の中にはウレタンでなくラッカーで仕上げられているものが多く、見た目では区別がつきにくいんです。ラッカー仕上げの場合、溶剤に弱く溶け出してしまうので、たとえば、アロマポットのオイルが垂れただけでも染みになってしまいますし、除菌クリーナーで拭くとアルコールの成分で曇ってしまい艶が損なわれてしまうことになります。

揃えておきたい道具(オイル仕上げの木材)

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じつは革用のワックスと家具用のワックスってそこまで成分は変わらないらしいんですよ(笑)。いずれにせよ成分が蜜蝋のものを一つ持っておけば良いです。塗装に関してはプロに任せた方が良いと思いますが、色付きのビーズワックスであればワックスポリッシュの際に多少色を付けることもできます。

張り生地編

日頃のメンテナンスはとてもシンプルですよ。

すぐに実践できることとしては、椅子やソファの張り生地を叩いてホコリを出し、洋服や革靴と同じようにブラッシングをしてあげることです。

大概の椅子やソファは生地の中にウレタンが貼ってあるのですが、シートを通じて汗やほこりが落ちてくるので、表面的な部分だけではなく中に詰まっていることも多いんです。ブラッシングの頻度は一週間に一回程度で良いでしょう。

揃えておきたい道具(ファブリック)

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基本は馬毛ブラシがあれば十分。定期的にブラッシングをして、ホコリがたまらないようにしましょう。テキスタイル用のプロテクターは効果が半年ほどでなくなるので、半年に一度掃除した際に散布してあげると良いです。

揃えておきたい道具(レザー)

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日頃は定期的に馬毛のブラシでブラッシングを。レザーに汚れを付きにくくするプロテクションクリームも持っておくと便利です。着なくなったTシャツを切ったもの(ウエス)でも良いですが、レザー用のクリーニングクロスのような目の細かい布で磨くと光沢感を出すことができます。

メンテナンスボックスを開発中

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じつは、今度うちのお店でもオリジナルのメンテナンスボックスを作ろうと考えているんですよ。

自分の使っている家具に対して、どんなメンテナンスをすれば良いのかわからないというご相談があまりにも多いので、家具別にこちらでセレクトして提案していけたら喜ばれるのではないかと思っています。

自分で定期的にメンテナンスをすれば長持ちしますし、どうしても手に負えなくなった時にはうちのお店を頼ってください!

ーおわりー

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Fizz Repair Works

2012年にオープンした全面ガラス張りの家具リペアショップ。店内の什器はすべてオーナーやスタッフの手作り。とくにレジ台として使われているはめ板のカウンターの出来栄えは圧巻。主に椅子、ソファ、テーブル、チェストなどのリペアを請け負っており、アンティーク家具に限らず持ち込めば相談に乗ってくれる数少ないお店。店内には男心をくすぐる地下階段が設置されているが、倉庫として使用されているため立ち入りは不可。定期的にワークショップも開催している。

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公開日:2019年5月11日

更新日:2021年10月8日

Contributor Profile

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松田 佳祐

1987年生まれ。新潟県三条市出身。大学在学中にセレクトショップに勤務し、洋服のカルチャーと小売業の仕組みを学ぶ。卒業後、フリーランスの編集・ライターとして活動をスタート。数々のファッション・ライフスタイル誌に携わる。その後、編集プロダクション・広告代理店・デザイン会社を経て2017年に独立。現在は、フリーランスの編集者/コピーライターとして活動。

終わりに

松田 佳祐_image

家具は洋服に比べて高価だからこそ、購入時には慎重になりますが、手入れについては意外と知らないことも多いです。今回、西原さんから簡単なメンテナンスを教わりましたが、やはり洋服と同様に日頃のちょっとしたケアが大事だということが分かりました。これからは面倒くさがらずに家具のメンテナンスにも目を向けていきたいです。

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