コカ・コーラグッズはアメリカの歴史を物語る

取材日: 2019年2月19日

文/佐々木健人

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1969年のアメリカ。まだブレない軸が出来上がっていないみずみずしい感性に刺さったのがコカ・コーラのロゴだった。

アパレルメーカーの株式会社ジョイマークデザインは、代表の下山好誼(しもやまよしみ)さんが22歳の時に立ち上げた会社だ。2019年で創立50周年を迎える。

下山さんが会社経営と同じ年数続けていることがある。それがコカ・コーラグッズの収集。その数2万5000点以上。

「コカコーラは自分のものづくりの原点」そう下山さんは語る。世の中はモノ、モノ、モノで溢れていて、一つのモノに半世紀に渡って情熱を注ぎ続けるのは並大抵のことではない。22歳の青年に鮮烈なインパクトを残し、人生を方向付けたコカ・コーラグッズをご紹介。

コレクション・ダイバー【Collection Diver】とは、広大なモノ世界(ワールド)の奥深くに潜っていき、独自の愛をもってモノを採集する人間(ヒト)を指す。この連載は、モノに魅せられたダイバーたちをピックアップし、彼ら独自の味わいそして楽しみ方を語ってもらう。

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グラフィックを学ぶ青年はまずコカ・コーラのロゴに惹かれた

取材は株式会社ジョイマークデザイン本社で行われた。3Fの社長室のドアを開けると、天井の高い部屋には文字通り隙間なくコカ・コーラグッズが陳列されている。足元にも、壁面にも下山さんの手できれいにディスプレイされたグッズが並び、一世紀以上にわたるアメリカのもうひとつの歴史を感じさせる。

ボトルや缶、人形など「コカ・コーラグッズ」と聞けば容易に想像できるものもあれば、小銭入れに葉巻を巻く紙など、ディープなグッズもある。世界中にコレクターが存在し、コレクターが研究した内容をまとめたZineなども発行されているがその正確な数は誰にも把握されていない。

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下山さんがまず最初に心奪われたのは缶。22歳の時に見たコークレッド・ロゴに惹かれ缶を洗って持ち帰る。このロゴは1886年、フランク・M・ロビンソンによって書かれたもの。当時会計士の間でよく使われていた書体「スペンサリアン体」をベースに作られている。この伝統的なロゴは鮮烈なイメージを伴って、人々の頭に浸透していった。

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非売品にも手を抜かない、コカ・コーラのクリエイティブ

下山さんは「人生で一番大切なのは、出会いです」と語る。コカ・コーラのグッズは、ノベルティや販促物などいわゆる非売品が多い。出回る数が限られているので、収集している方同士で交流して入手することも多い。

例えば、1974年に設立された、コカ・コーラコレクターズクラブは、「コカ・コーラ社に関連する製品の保存と収集の促進」を目的とする独立した非営利団体。定期的に会員が交流できるイベントを開催しており、その場では情報交換が盛んに行われている。

また、コレクターズクラブでは、愛好家たちによってオークションのようなイベントが開催されていて、下山さんもよく参加していたそう。買い付けたグッズを日本に運ぶための「コンテナ」も用意していたんだとか。

クーラーボックスの形のラジオ。コーラを取り扱っていた飲食店に、ノベルティとしてプレゼントされていた。

クーラーボックスの形のラジオ。コーラを取り扱っていた飲食店に、ノベルティとしてプレゼントされていた。

なぜここまでグッズの数が多いのかというと、それはコカ・コーラの宣伝戦略に他ならない。1886年、ジョン・ペンバートンによって作られたコカ・コーラは、発売初年度の売り上げは1日平均9杯程度だった。

その後、販売権を取得したエイサ・ G・キャンドラーは、コカ・コーラの認知度を上げるために、無料試飲クーポンを配ったり、「Coca-Cola」ロゴをあしらったカレンダー、時計などをさまざまな場所で配布した。

ブランドイメージの徹底した統一はその後も看板、販促用のミニチュア、ユニフォームなど、消費者が直接手に取るグッズだけでなくコカ・コーラを取り巻く全てに及ぶ。世界で名を轟かせるブランドは、細部のクリエイティブまでこだわり続けた企業努力によって支えられていた。

1908年〜1912年に作られた美しいトレイ。コカ・コーラのトレイには、お釣り用のチェンジ・トレイ、ボトルやグラスを運ぶサーヴィングトレイ、TVを観ながら食事をするための3種がある。

1908年〜1912年に作られた美しいトレイ。コカ・コーラのトレイには、お釣り用のチェンジ・トレイ、ボトルやグラスを運ぶサーヴィングトレイ、TVを観ながら食事をするための3種がある。

1923年の12月24日に作られたボトル。貝塚から出てきたもので、ボトルに貝が付いている。ニューオリンズのアンティークの家具屋に並んでいるのを見たものの、最初はオーナーから売ってもらえずホテルを延泊して次の日購入した。

1923年の12月24日に作られたボトル。貝塚から出てきたもので、ボトルに貝が付いている。ニューオリンズのアンティークの家具屋に並んでいるのを見たものの、最初はオーナーから売ってもらえずホテルを延泊して次の日購入した。

1918年に作られたカレンダー。ロサンゼルスで同様の製品をショップで見た時には2000ドルしたが、ハワイでは400ドルで販売されていた掘り出しもの。アンテナをはっていると、そういう出会いもある。

1918年に作られたカレンダー。ロサンゼルスで同様の製品をショップで見た時には2000ドルしたが、ハワイでは400ドルで販売されていた掘り出しもの。アンテナをはっていると、そういう出会いもある。

出会いの哲学は人だけではなくてグッズに対しても当てはまる。下山さんは目当てのグッズを探しにアメリカに行くことはない。決めてはインスピレーション。アンティークショップを巡り出会いを探す。周波数があったものにはピーンと来る。「アメリカが好き」「アメリカを感じたい」純粋な気持ちで集まっていったコレクションなので、数や価値にはこだわりがない。

「『キャプテンサンタ』というブランドを立ち上げるに当たり、コカ・コーラを参考にしたところはたくさんあります。色づかいやグラフィック、ロゴ。具体的には、コカ・コーラサンタの緑と、ロゴの赤の対比などがそうです」

コレクションという意識がなく、「自然と好きだから集まっていった」下山さんのコカ・コーラグッズ。ダイナミックな企業戦略や、ものづくりの血脈は日本にしっかりと輸入され昇華されている。

ーおわりー

終わりに

アメリカから日本にまだ持ってきていないグッズは家一軒ぶんほどあるそうで、そのスケールの大きさに圧倒。取材の時にいただいたスターバックスのコーヒーもグランデサイズで、五感を通してアメリカを感じられる取材となりました。下山さんのコレクションは「Museum and Museum Captain's Collection Caca-Cola」という本にまとまっているので、ぜひそちらもご覧ください。

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