「お気に入りの革靴を履いている」満足感は、仕事や学業のパフォーマンスをあげてくれるもの。この連載では、革靴のデザインごとに代表モデルやディテールについて解説します。
愛せる革靴を探す旅。今回はモンクストラップを深掘りしていきます。実は長い歴史があること、ご存知でしたか?
モンクストラップとは?
BONORA(ボノーラ)「Matta」last470
モンクストラップとは、バックル留めのストラップで甲をホールドするタイプの靴です。
主なデザインとして「シングルストラップ」と「ダブルストラップ」、「サイドストラップ」の3種類が存在します。「シングルストラップ」が対のバックルとストラップで足を固定させるのに対し、「ダブルストラップ」は、文字通り二対のバックルとストラップで靴を足に固定させます。
John Lobb(ジョンロブ)「William」last9795R
また履き口を押さえるようにストラップを配置したバックル留めのシューズを「サイドストラップ」あるいは「サイドモンク」と呼びます。以前の記事で紹介したストレートチップやセミブローグなどと比べると、カジュアルな印象になります。
ビジネススタイルでは使えないことはなく、少し個性を演出する際、例えばプレゼンの場などには適しています。ただ、バックル部分が華やかに見えることから弔辞での使用は避けた方が無難です。カジュアルな慶事であれば、ブレザーとチャコールグレイのトラウザーズに合わせて着用できる場合もあります。
また、甲周りを大きなストラップで強く押さえつける構造ゆえに、甲が低めの人の方にフィットしやすいという特徴も持っています。
エレガントな意匠は16世紀には生まれていた?モンクストラップのルーツ
モンクストラップの原型は古く、15世紀まで遡ります。アルプス地方のモンク(修道士)が履いていたサンダルがその起源とされています。
タウンシューズとして用いられるようになったのは1930年代。この頃の「シングルモンクストラップ」は、クレープソールにボリュームのある木型を用いた靴が多く、スポーティーなものが多く作られていました。潮目が変わったのは1940年代。アメリカでドレスシューズとして一躍脚光を浴びるようになります。
「ダブルモンクストラップ」の起源は、かのエドワード8世のリクエストに応じて、ロンドンのジョンロブが「普段履き」としてあつらえたものです。パリ支店がエルメス社に買収され、ジョンロブ・パリ(ロブパリ)としてレディメイドを展開するようになった際にも、このデザインを採用しました。オリジナルのデザインを創った頃の当主、ウィリアム・ロブにちなみ、その靴は「ウィリアム」と名付けられました。
日本において、モンクストラップは2007年ごろから人気が再燃。2008年に世界中でブームとなりました。
モンクストラップの代表モデル
三陽山長「源四郎」
「技」「粋」「匠」を理念に掲げ、日本人の足に合った靴を提供し続けている三陽山長。徹底した品質管理と丁寧なものづくりにより、2001年の創業から着実にファンを増やしてきました。日本人向けに作られたラストで作られた靴たちは、機能的であり造形物としての美しさすら感じられます。
そんな三陽山長が作りあげたダブルモンクストラップが「源四郎」。クラシックでありながらも華やかな足元を演出します。木型は小振りなヒールカップ、絞り込んだ土踏まず、低く抑えた二の甲によるしっかりとしたホールド感が特長のラウンドトウR2010を採用しています。
John Lobb(ジョンロブ)「WILLIAM」
ブーツメーカーの最高峰、ジョンロブ。1858年に靴作りを始めて以降、素材、縫製、仕上げ・・・ どれをとっても一級品のものづくりを続けてきました。
WILLIAMは、1940年代にジョンロブが考案したダブルバックルスタイルのアイコンシューズ。耐久性に富み、機能性と洗練されたスタイルを兼ね備えたデザインです。
JOSEPH CHEANEY(ジョセフ チーニー)「HOLYROOD」
1886年に、グットイヤーウェルトシューズの生産地として名高い英国ノーサンプトン(Northampton)州の郊外、デスバラーで設立されたジョセフ チーニー。
ビスポークの雰囲気や意匠を感じさせるインペリアルコレクションのHOLYROODは、コバの張り出しを少なくしたエレガントなダブルモンクシューズ。木型にはコレクション専用ラスト208を採用。 ほっそりとシャープで、ややロングノーズ、英国靴伝統のエッグトウが用いられています。
アッパーにはインペリアル専用のハイグレードレザーを、アウトソールにはオークバークソールを使用。さらには半カラス仕上げやヒドゥンチャネルといった既成靴には中々ないビスポークのようなディテールの数々が見受けられます。インペリアルコレクションは古き良き英国シューメーカーのクラフトマツシップをたっぷりと堪能できる、ジョセフ チーニーのトップコレクションです。
RENDO(レンド)「DOUBLE MONK」
浅草に店を構えるシューズメーカー「RENDO」。
RENDOは全ての靴をグッドイヤー・ウェルテッド製法でつくっており、またビスポークシューズと見間違えるほどシェイプがきいた木型を用いるなど、手間暇を惜しまずに靴作りをおこなっています。型紙のみならず、木型もブランドを主宰する吉見氏が自らの手で設計したものを用いています。
「DOUBLE MONK」はあまり量感をださないように丸みを持つ華奢な形状のバックルが選ばれており、かつそれを通る細身のストラップの長さと角度を考慮し、全体のバランスが整えられています。
まとめ:一通りの革靴を試してから、モンクストラップを履いてみよう
モンクストラップは、普段履き用として作られただけあって、例外はあるものの基本的にはフィット感がありかつ脱ぎ履きしやすい機能的な靴です。
今回はバックル部分を主に取り上げましたが、つま先のデザインはさまざま。プレーントウもあれば、Uチップのようにモカシン縫いが施されている靴もあります。
本格紳士靴の一足目として最初に購入するよりは、一通りのデザインを履いてみてモンクストラップを購入してみると、より洋服を選ぶのが楽しくなるかもしれません。
ーおわりー