ミニカー専門店を初めて作ったレジェンドが主催するおもちゃの蚤の市「ワンダーランド・マーケット」に行ってみました

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取材・写真/手束毅

大人がハマる自動車のホビーを取材する連載の第3弾。
ミニ四駆やラジコンなどカートイの中でも、とくにファン人口が多いと言われているのがミニカー。
なかには数十万、数百万円で取り引きされる製品もあるミニカーの魅力とファンの実態を探るため、コアなミニカーファンが必ず訪れるという展示即売会「ワンダーランド・マーケット」と主催者の宇野規久男さんに取材した。

昼食代を削ってミニカーを購入! 海外製ミニカーに魅了されたのが収集のきっかけに

ミニカーやプラモデル、ブリキ製モデルカーなどカーグッズを中心としたビンテージ製品が展示即売される「ワンダーランド・マーケット」。2015年12月20日に行われたイベントで93回目を迎えた。

ミニカーやプラモデル、ブリキ製モデルカーなどカーグッズを中心としたビンテージ製品が展示即売される「ワンダーランド・マーケット」。2015年12月20日に行われたイベントで93回目を迎えた。

12月20日、神奈川県横浜市の横浜産貿ホールで開催された「第93回・ワンダーランド・マーケット」。
このイベントは、国内外のミニカーディーラが参加し、ミニカーを中心にプラモデルやカタログなどのカーグッズ、ドール、キャラクターグッズなどビンテージ製品を展示即売するおもちゃの蚤の市だ。

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ワンダーランド・マーケットが開催された会場内に多くのブースが出展し、貴重なミニカーをはじめとするアンティークトーイを見つけるため多くの人が来場していた。

1981年からスタートした日本で最も歴史のあるアンテークトーイの展示即売会であるワンダーランドマーケットは、ミニカーファンには“特別なイベント”として認知されている。それはレアなミニカーを探しにファンはもちろん、ミニカー専門店の関係者が会場を訪れるほどだ。
また、貴重なビンテージ製品が出展されるオークションも開催されるため、レアなミニカーを入手するため海外からも多くのファンが駆けつけるイベントだ。

そんなワンダーランドマーケットを主催するのが横浜元町にお店を構えるアンティークトーイショップ「サンセット」のオーナー、宇野規久男さん。テレビの鑑定番組では鑑定士としても活躍する宇野さんだが、日本で初めてミニカー専門店をオープンした“レジェンド”として、ミニカーファンからは一目置かれている人物である。

「ワンダーランド・マーケット」を主催する宇野規久男さん。画像は、会場で行われたオークションでの模様。

「ワンダーランド・マーケット」を主催する宇野規久男さん。画像は、会場で行われたオークションでの模様。

昭和30年代に発刊されていたミニカー本「コレクター」。宇野さんはこの本などでミニカーの知識を得ていたという。

昭和30年代に発刊されていたミニカー本「コレクター」。宇野さんはこの本などでミニカーの知識を得ていたという。

「1977年にサンセットを開業したのですが、いままでにミニカーを専門に扱うお店がなかったからかオープン時には行列ができるほどお客さんが駆けつけてくれました。オープンから3年間くらいはミニカーだけでなくブリキ製モデルカーを購入するお客さんが多かったですね」

子どもの頃から牛乳瓶のふたやグリコのおまけなど収集していた宇野さんがミニカーに出会ったのが中学生の頃。同級生が所有していたドイツ製とイギリス製のミニカーだった。

「中学1年のときに友だちがドイツ製メルセデスベンツとイギリス製ロールスロイスのミニカーを学校に持ってきて見せてくれたとき、その完成度の高さに驚き『絶対に欲しい!』と。そこで私は昼食代としてもらっていた100円をちょっとずつ溜めて横浜の伊勢佐木町にあったデパートでミニカーを買い求めるようになりました」

そこから当時発売されていたミニカー情報誌やデパートでもらえるカタログをチェックしながらミニカーを集めていく。そんな宇野さんにミニカー専門店のパイオニアとして、ミニカーとミニカーを求めるファンについてのお話を聞いてみた。

幻といわれたミニカーに160万円の値が! プレミアミニカーの条件とは

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ワンダーランド・マーケットのブースやオークションに出展されたビンテージ・トミカたち。なかには5万円以上の値段がつく製品もあった。

「日本では、やはり日本車のミニカーが人気で圧倒的に人気が高いのはタカラトミーが販売するトミカです。その人気は2015年にネットオークションで“幻”といわれていたタクシー仕様のクラウンが出展され、163万円の値がついたほどです」

トミカは63分の1という小スケールミニカーで、1970年から販売を開始したミニカーシリーズだ。毎月第3土曜日に新車が発売され、累計出荷台数は現在までに6億台を超えるほど高い人気を誇る。
ただ、1台500円以下で販売されるトミカに100万円以上の値が付くことは非常にまれだというが、稀少モデルであれば1万円以上のプレミアがつくものは少なくない。初期の稀少製品であれば10万円を超える価格で取引されるトミカも珍しくないという。

国内で圧倒的な人気を誇るトミカ。ワンダーランド・マーケットに出店したブースで販売されている商品は、圧倒的にトミカが多い。

国内で圧倒的な人気を誇るトミカ。ワンダーランド・マーケットに出店したブースで販売されている商品は、圧倒的にトミカが多い。

そんなトミカをはじめ、国内で取引されるプレミアがつくミニカーとはどういうものなのか。

「1961年から大盛屋酒井通玩具が販売を開始した“ミクロペット”、その後継ブランドとして1965年に米沢玩具から発売され現在はアガツマが販売している“ダイヤペット”の初期モデル、また1959年に本格的な国産ミニカー第一号として旭玩具によって発売された“モデルペット”はプレミアがつくモデルが多いですね。あと、海外メーカーではイギリス、フランスに会社を持つ“DINKY(ディンキー)”が濃いファンを抱えています」

◆ミクロペットとは◆

大盛屋酒井通玩具(のちに大盛屋に社名変更)が1961年から1965年にかけて販売していたミニカーシリーズ。生産終了まで75車種を販売したが、現存しているモデルが少なくプレミアがつくモデルが多い。

◆ダイヤペットとは◆

大盛屋が販売していたミクロペットの金型を引き継ぎ1965年8月から米沢玩具が販売を開始したミニカーシリーズ。とくに大盛屋の金型を使ったモデルに現在はプレミアがついている。

◆モデルペットとは◆

1959年に旭玩具製作所が発表したミニカー。シリーズ最初に登場したトヨペット・クラウンのモデルペットが国産ミニカーの第一号としてミニカーファンに知られている。

◆DINKY(ディンキー)とは◆

イギリスで1934年から販売を開始したミニカーのブランド。フランスでも同ブランドで販売をしていた。とくに年配の海外ミニカーファンから高い人気を誇るブランドだ。

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ミニカーファンにとって憧れの製品はトミカだけではない。ワンダーランド・マーケット会場ではダイヤペットやDINKYなど海外ブランドのミニカーにも熱い視線が注がれていた。

これらの中でも、“ミクロペット”や、大盛屋の金型を使って製作された“ダイヤペット”の一部製品は数が少なく貴重なことで、とくにプレミアがつくそうで、箱付きで乗用車をベースにしたタクシーやパトカー仕様であれば60万円以上の値がつくこともある。
そんな貴重なミニカーをコレクションするミニカーファンはどういう方が多いのかを宇野さんに聞いてみた。

「元々、クルマ好きだった人、また子どもの頃からミニカーを集めていた人などミニカーに興味を持つ人は様々ですが、学生の頃集めていた人は結婚するとコレクションを一時、休止する人が多いですね。ミニカー集めにお小遣いを思う存分使うことができないし、なによりミニカーを収集すると奥さんに怒られる(苦笑)。なので本当にミニカーが好きな人は、子どもが大きくなり生活が落ち着いた頃、30代半ばくらいになるとミニカーに戻ってくる人が多いですね。ファンが所有しているミニカーの台数は、昔はせいぜい200台~300台くらいだったけど、いまは何千台と所有している人は珍しくないです」

宇野さんによると、国内ミニカーファンが求める製品のブームは時代によって代わり、現在は1970年代後半に流行したスーパーカーブーム時に発売されたミニカー、ランボルギーニ・カウンタックやフェラーリなどの製品が人気を得ている。また、シトロエン、プジョー、ルノーなどのビンテージミニカーが密かなブームになりつつあるそうだ。

ミニカーファンのコア層は40代だが、年代問わずにその魅力に取り憑かれる

ただ、国内ではミニカーをコレクションすることがやや落ち着き始めたという。一方で、トミカを求める海外ファン、とくに香港人が多くなったそうだ。事実、ワンダーランドマーケットのオークションでは香港のミニカーファンが貴重なトミカに高値をつけて落札していた。

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ワンダーランド・マーケットに展示されていたブリキ製ミニチュアカーやスケールモデル。ブリキ製ミニチュアカーには一時期、何十万という値段がつくこともあったという。

「日本人は熱しやすいけど、飽きやすいから(苦笑)。一時、ワンダーランドマーケットで1台何十万円するブリキ製モデルカーが飛ぶように売れていたけど、いまは値段が下がってきて当時人気が高く5、6万円していたトライアンフのブリキ製モデルカーがいまでは1万5000円でも売れない。ただ、日本人がミニカーについて興味をなくしたとしても国内でのミニカー熱は冷めることはないでしょう。島国である日本は商品が外(国外)になかなか出て行かないこともあり、海外から超一流のバイヤーがミニカーを手に入れるために来ていますから」

ただ落ち着いたとはいえ、ミニカーファンの熱度はいまだに高いようだ。ワンダーランドマーケットのオークションでは、大金を惜しげなく投入する香港人のミニカーファンに負けずにトミカを中心とした出展物を競っていた日本人ミニカーファンは決して少なくない。

話を聞いたミニカーファン。オークションでは貴重なトミカを何台も落札していた。

話を聞いたミニカーファン。オークションでは貴重なトミカを何台も落札していた。

そんななか、トミカのを中心に数十万円分競り落とした、会場でとくに目立っていたミニカーファンに話しを聞いてみた。

「オークションに出展されたトミカは、できれば全部競り落としたかったです(笑)。今日、オークションで落としたトミカのセットは、以前お店で見つけたとき目の前で別の人にで購入されてしまって…。そのとき付いていた値段より少し高い価格となってしまいましたが、やっと手に入れることができたことは嬉しかったですね」

現在26歳だという彼は、中学2年のとき、図書館で見たトミカの大百科をきっかけにミニカーに興味を持ったという。他の趣味同様、ミニカーファンも中心は40代以上がコア層となっている、ただ、話を聞いた若いミニカーファンのように、ミニカーの魅力にひとたび取り憑かれると年代問わずどっぷりとハマるようだ。
ミニカーはファンでない人にとって「実車の代用品」と思われがちだ。しかしワンダーランド・マーケットを取材し感じたことは、サイズこそ実車に比べ小さいながらも、デフォルメされた造型の魅力や所有者それぞれがミニカーを手にして思い描く世界観は決して小さくないということ。子どものおもちゃでもあるミニカーだが、大人だからこそミニカーにハマる理由が少し理解できた取材となった。

ーおわりー

File

ワンダーランド・マーケット

アンティークトーイショップ「サンセット」が主催し、春・夏・冬の年3回横浜で開催されるおもちゃの蚤の市。
ミニカーをはじめ、キャラクターグッズ、カーグッズ、ドール、ティントーイ、プラモデルなど数多くのアンティークグッズが展示即売されるほか、貴重なグッズが出展されるオークションが開催される。

2016年は、
第94回(春):2016年5月1日(日)
第95回(夏):2016年7月31日(日)
第96回(冬):2016年12月18日(日)
の日程で開催される予定だ。

File

サンセット

フランスにある小さなおもちゃ屋の所狭しと絶版になってしまったミニカーや、その他さまざまなミニカーが陳列されているのに感銘を受け、「これを日本のコレクターにも楽しんでもらいたい」と思い、横浜元町にオープン。

トイ・フィギュアを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

2020年から2021年にかけて発売された世界各地の最新ミニカー1,900台以上を収録

51kukjyhzal. sl500

ミニカー年鑑2021

世界各国のメーカーからリリースされる数多くのミニカー。

その膨大なモデルを網羅、ブランドごとに紹介していく毎年恒例のミニカー年鑑の最新版、「ミニカー年鑑2021」が遂に登場!

今年も老舗・有名ブランドから新進気鋭の新興メーカーまで、話題の新製品を一挙掲載しています。

ミニカーの歴史を写真とともに辿る

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ビンテージ・ミニカー―懐かしい海外ブランド・ミニカーの世界 (Neko mook―Neko hobby mook (618))

ミニチュアカーの歴史、それは自動車の誕生とほぼ時を同じくして始まった。精巧さやリアルさでは現代のミニカーに及ばないが、素朴な出で立ちや心和むディテールで魅了する黎明期のミニカーたち。その歴史を写真とともに辿る。

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公開日:2016年1月25日

更新日:2022年6月27日

Contributor Profile

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手束 毅

自動車専門月刊誌の編集を経て現在はフリーエディターに。クルマはもちろん、モノ系、ミリタリー、ファッション、福祉などなど「面白そう」と感じた様々な媒体やテーマに関わっているものの、現在一番興味がある「もつ焼き」をテーマにした出版物の企画が通らないことが悩みの種。

終わりに

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「ミニカーや、ああミニカーやミニカーや」、と頭がミニカーだらけになるくらいの数が出展されていたワンダーランド・マーケット。とくにミニカーを集めているわけではないのに気がつけば手には購入したミニカー(BMW・イセッタ)が…。ミニカーだけでなく数多くのアンティークトーイが展示販売されているワンダーランド・マーケットは多くの人が楽しめるイベントであることは間違いありません。

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