モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。
文/写真 ミューゼオ・スクエア編集部
必要な人にとっては起きている時間の全てを共にする相棒、メガネ。
人類が長い歴史の中で発明した、自らに発生した故障を補う為の、優秀な道具のひとつです。
この記事ではそんなメガネの、特にフレームに焦点を当てて紹介します。
素材という観点からメガネのフレームを眺めたことがありますでしょうか?
古今東西、メガネには様々な素材が用いられてきました。金属などの無垢素材、金張り素材、プラスチック。
この項目ではメガネのフレーム作りに用いられる素材について紹介します。
1800年代の銀無垢フレームのメガネ。提供:ソラックザーデ
金属の無垢素材で作られたフレームのこと。金や銀、銅、鉄、近年ではチタンや形状記憶合金なども使われています。
19世紀末までのメガネは主に貴族や富裕層向けの贅沢品。金や銀といった高価な無垢素材を用い、職人の手で一つ一つ、手工芸品として作られていました。
1900年代初頭の金張りフレームのメガネ。提供:ソラックザーデ
1891年、それまで金属の無垢素材しかなかったメガネのフレームに、新たな素材が加わります。
金張りという、真鍮などのメタルに金を張り付けた素材です。
この背景には世界中で発生した産業革命がありました。メガネも工業製品として、原料コストを削減し、大量生産を行う流れが生まれていくのです。
プラスチックフレームのメガネ。提供:ソラックザーデ
プラスチック製のフレームも時を同じく1891年前後から登場します。
初期は象牙の代替品として開発された可燃性の素材、セルロイドが用いられましたが、品質が安定しませんでした。
品質の良いプラスチックレンズが登場するのは1940年代くらいから。
現在もメガネのフレームの主要な素材として使われる、植物の繊維素材から作られるアセテートというプラスチックが素材として使われ始めます。
アセテートは金属素材と比べると耐久性に劣りますが、色合いのバリエーションが豊かであり、また比較的安価で購入することができることから、メガネのフレームの主流な素材となりました。
白鼈甲フレームのメガネ。提供:ソラックザーデ
鼈甲とはその名前の通り亀の甲羅を材質に使用したものです。金や銀などの無垢素材と並び、古くからメガネの素材として用いられてきました。
背甲・腹甲・爪甲の3種類の部位に別れており、それぞれ色合いが異なります。
メガネのフレームに使われるための厚さを確保するためには何枚を重ねることが必要で、熟練した職人の技がないと加工できません。
中でも腹甲は非常に薄く幾重にも重ね合わせる必要があります。腹甲を重ね合わせたものを「白甲」と呼びます。
幾重にも重ね合わせることによって生まれる世の中に二つとない文様は見とれてしまいます。
鼈甲の加工は中国で生まれました。日本で発展してきたのは、江戸時代です。
職人の技術が上がるにつれ、メガネのフレームや櫛、かんざしなどに用いられるようになりました。
意外と知らないフレームの基本パターン。イラスト付きで紹介していきます。
顔の形の特徴により、似合う形状パターンがあります。
タマゴ型の定番タイプで、男女問わず好まれます。柔らかく自然な印象になるので、誰にでも似合いやすいです。
顔の主張を抑え、優しく理知的な印象をあたえてくれます。あごのラインが細めな、三角顔タイプの方に向いています。
逆三角形近い楕円型で知的な印象をあたえます。日本でも昔からある定番タイプの一つで、レトロな印象を受けますが、近年は男性の間で流行している形です。
アメリカのボストン発、アイビーファッションで流行したことからこう呼ばれています。縦長な印象をカバー出来るので、面長顔の方にも向いています。
丸みを帯びた逆台形型で、正方形に近い形。昔からある定番タイプ。
ジョニー・デップが掛けたことで有名なフレームです。こちらも縦長な印象をカバー出来るので、面長顔の方に向いています。
レンズの形が四角で横長の長方形タイプ。直線的でシャープな印象をあたえることができます。顔を引き締める効果があるので、丸顔の方にも向いています。
円形タイプで、少し横長の楕円の形。アメリカの喜劇役者ハロルド・ロイドがよくかけていたことから、「ロイド型」とも呼ばれています。
正円に近い丸型のフレームで、ジョン・レノンもかけていました。小顔な方や堀が深い方、シャープな輪郭の方に向いています。
メガネは毎日使うものだから、長く使うためには日々のお手入れが重要です。
この項目では自宅で簡単に出来るメガネのお手入れ方法を写真付きで紹介します。
まずは水洗いです。流水でレンズやフレームなどの汚れを落とします。
乾拭きは目には見えない細かな傷がレンズに入る可能性があり、見え方にも影響が出てきますので避けましょう。
洗う際はお湯ではなく水の使用を。現代のレンズの表面には反射防止や汚れを付きにくくするコーティングが施されていることが多く、それらが熱によってはがれてしまいます。
鼻パッド部分は皮脂が付いているので、指を使って水で押し流してください。
レンズやフレームも指を使い、細かなところまで洗います。
耳に掛ける「つる」の部分は、指でつまみながら複数回スライドすると汚れが早く落ちます。
メガネについた水滴や油はね。拭かずに放置すると、跡になってしまうことも・・。
そんな時は中性洗剤を使うと汚れが落ちやすいです。指に洗剤をとり、指でこすっていきます。
優しくゆっくり、レンズの中心から外側へ渦を描くように洗ってください。
洗剤で洗うときは、酸性やアルカリ性は避けましょう。
汚れが落ちにくいことに加え、レンズに傷やひびが入っていると、染み込んでコーティング加工がはがれてしまう恐れがあります。
ご自宅の食器用洗剤を使用しても問題ありませんが、液の成分は事前にチェックを。
レンズやフレームを拭くときは、水滴が残らないことがポイントです。拭き取りには柔らかいティッシュペーパーや、市販のマイクロファイバークロスを使います。
レンズとフレームの隙間や鼻パッドなど、細かいところまで徹底を。
特に注意がいるのはフレームのネジ部分。水気が取れていないと錆びてしまい、ネジを交換しないといけなくなる場合もあります。
レンズの汚れを落とすには、市販のメガネクリーナーの使用もオススメです。
パール メガネクリーナー スぺリアル-P S スプレー タイプ
参考価格:582円(税別)
レンズの両面に吹き付け、柔らかいティッシュペーパーやマイクロファイバークロスで拭き取ります。
GreatShield マイクロファイバー クリーニングクロス 超極細繊維
参考価格:599円(税別)
ネジは定期的に締め直しましょう。締め直しの目安は眼鏡を傾けると自然とつるが落ちる状態の時。
フレームのネジは小さく、精密機器などに使う工具が必要になります。
工具が手に入らないときは、眼鏡店へ行けば締め直してもらえます。
服の袖でレンズを乾拭きしたり、胸ポケットにそのまま入れたりするのは避けたいところです。
レンズの汚れはもちろん、傷によって見え方が変わってしまいます。
直射日光が強い場所だと、熱でフレームが変形してしまいます。
車の車内などは要注意。運転時にかけるサングラスをそのまま放置してしまいがちです。
日が当たらない場所に収納するのがベストです。
大事なメガネを長く使い続けるためにも、丁寧な扱いと定期的なお手入れを心がけたい所です。
ーおわりー
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【追記:2019年12月18日】金張り素材についての解説を修正いたしました。
公開日:2018年9月29日
更新日:2020年6月11日
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